スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり | 投資信託 | スパークス・アセット・マネジメント

スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり

日経新聞掲載名
BPFⅡH有
分類
追加型投信/内外/株式/特殊型(絶対収益追求型)
設定日
決算日
毎年2月27日および8月27日

基準日:2024.04.12

基準価額
10,498
前日比
+14
+0.13%
純資産総額
5.1億円
分配金情報(税引前)
0

基準価額推移

分配金実績

決算頻度:2回/年

設定来合計
360
直近12期計
360

分配金実績一覧

2024年02月27日
0
2023年08月28日
0
2023年02月27日
0
2022年08月29日
0
2022年02月28日
0
2021年08月27日
120
2021年03月01日
120
2020年08月27日
120
2020年02月27日
0

月次報告書

2024年

2023年

2022年

2021年

2020年

2019年

  • 発表年
  • キーワード検索

「」の検索結果

2024年3月の運用コメント

株式市場の状況

<⽇本の株式市場>

 2024年3月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比4.44%上昇し、日経平均株価は前月末比3.07%の上昇となりました。
 当月の日本株式市場は、月前半は前月から引き続き半導体関連銘柄の上昇などが相場をけん引し、日経平均は史上初となる4万円台に到達するなど堅調な推移となりましたが、月半ばにかけては米国半導体関連銘柄が下落した影響や、日銀のマイナス金利政策解除を示唆する報道、春季労使交渉(春闘)での高い賃上げ実現への期待の高まりなどから日銀の金融政策正常化への思惑が広がって円高が進行したことなどが重しとなり、下落しました。月後半にかけては、日銀が金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除や長短金利操作の撤廃、上場投資信託(ETF)の買い入れ終了などを決定したものの、当面は緩和的な金融環境が継続するとの見通しが示されたことなどを受けて円安進行とともに上昇し、最終的に前月末を上回る水準で取引を終えました。

<アジアの株式市場>

 当月、アジア株式市場はまちまちの値動きとなりました。⽇本を除くアジア市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、台湾、韓国、シンガポールなどに牽引される形で前月末比2.58%上昇しました。テクノロジーセクターは引き続き堅調な値動きを見せ、代表的な銘柄であるTaiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)の株価は過去最高水準に達しました。AI(人工知能)に対する投資家の期待感は、NVIDIA社(米国)がGPUGraphics Processing Unit、画像処理装置)技術に関するカンファレンス「GPU Technology Conference 2024」で最新GPUBlackwell GPU」を発表したことでさらに高まり、AI関連事業を展開するアジアのテクノロジー企業、特に台湾銘柄と韓国銘柄の株価を押し上げました。
 韓国市場ではテクノロジーやAIに対する期待感に加え、政府の「企業価値向上プログラム」が投資家の関心を集めたことも追い風となりました。同プログラムには企業経営陣にコーポレートガバナンス、ROE(株主資本利益率)、株主還元の改善を促すことで、最終的に韓国企業の評価を向上させる効力があるというのが一部投資家の見方です。
 中国政府が発表したマクロデータは予想を上回る内容でしたが、市場が景気回復の持続性に対して慎重姿勢をとったことから、当月中の株式の上昇は小幅に留まりました。香港市場の当月のパフォーマンスはアジア市場の中で最低水準でしたが、これは不動産セクターとヘルスケアセクターの低迷が原因と考えます。
 インドでは、規制当局が中小型銘柄の流動性とバリュエーションに懸念を示したことを受け、当該銘柄の株価が調整しました。しかし同国の大型銘柄はアウトパフォームし、中小型銘柄の低迷を相殺する形となりました。

ファンドの運⽤状況

 当⽉パフォーマンスにプラスに貢献した銘柄は、Taiwan Semiconductor Manufacturing CompanyCNOOC(中国/エネルギー)、Samsung Electronics(韓国/情報技術)などでした。一方、Mitra Adiperkasa(インドネシア/⼀般消費財・サービス)、E Ink Holdings(台湾/情報技術)、Lemon Tree Hotels(インド/⼀般消費財・サービス)などがマイナスに影響しました。

韓国の企業価値向上プログラム

 韓国の尹錫悦大統領は20241月、韓国取引所の開場式に出席し、韓国株式市場はきわめて過小評価されていると述べました。また2月には韓国金融委員会(FSC)が日本の東京証券取引所の改革と同様に、上場企業のバリュエーション向上を目的とした「企業価値向上プログラム」の概要を公表しました。
 ここ数年、韓国の個人投資家による株式市場への参加が大幅に増加しています。個人投資家の数は2019年の約600万人から2022年には約1,400万人に増加しており、これは韓国の有権者数のおよそ3分の1に相当します。一方、2021年には家計資産全体に占める不動産など非金融資産の比率が60%を上回りました。ちなみに、この比率は日本ではわずか39%、米国では29%に過ぎません。資産が非金融資産に集中すると、家計は物件価格の変動といったシステミック・リスクにさらされます。そのため、韓国政府には韓国市場のパフォーマンスを改善し、家計資産をより多く金融資産に振り向けたいという意向もあると考えます。
 韓国市場のパフォーマンス低迷は、「コリアディスカウント」と呼ばれる慢性的なバリュエーションの低さに起因しています。Goldman Sachs社(米国)によると、20242月上旬の時点で韓国株の70%近くがPBR(株価純資産倍率)1倍を下回る水準で取引されています。当ファンドは、1) 韓国企業の多くが景気循環の影響を受けやすい業界に属していて、特に中国との熾烈な競争に直面していること、2) 地政学的リスクにさらされていること、3) コーポレートガバナンスが全般的に好ましくなく、株主還元率が低いことが、こうしたバリュエーションの低さの要因となっていると考えます。政府が取り組もうとしているのは、このうち3番目の問題です。企業価値向上プログラムが発表される前も、アクティビストが経営陣に積極的に提言を行う事例は増加していました。そうした提言が通る場合もあり、例えばSM Entertainment社(韓国)では創業者の李秀満氏が退任を余儀なくされるなど、市場ではコーポレートガバナンスの改善に向けた機運が高まっています。
 しかし、「コリアディスカウント」の根幹に横たわっている問題はきわめて複雑なものです。例えば、韓国は相続税率が非常に高く、最も高い場合は60%に上ります。Samsung Electronicsの李健煕元会長が亡くなったあと、相続人が総額12兆ウォン以上の相続税を支払うことになったという報道が2021年に流れました。課税額が多額に上るため、支配株主には株価を低水準に保ち、相続税評価額を下げることで納税額をできるだけ抑えたいという気持ちが働きます。多くの場合、支配株主は配当を通じて現金を受け取る代わりに、別の方法で上場企業から現金を持ち出し、他の株主の利益を著しく損なっています。例えば「サービス」を提供する別会社を設立し、上場会社に料金を請求することもあり、その一例がSM Entertainment社です。このように、問題は証券取引所の改革だけで解決するほど単純なものではなく、政府が様々な側面から首尾一貫した取り組みを行わなければ決して解決できないものと考えます。実は、相続税改革は尹大統領の選挙公約の一つです。そして相続税以外にも、改革を通じて根本的に解決しなければならない問題が別にあると考えます。
 企業価値向上プログラムが発表されたあと、自動車メーカー、銀行、コングロマリットといったPBRの低い銘柄の多くで、株主還元改善に対する期待感から株価が上昇しましたが、この試みはすぐに頓挫しました。Samsung ElectronicsSamsung Biologics社(韓国)の株式を保有し、Samsungグループの事実上の持ち株会社であるSamsung C&T社(韓国)は、3月に開催された株主総会でアクティビストから出された株主還元の大幅拡大要求を拒否しました。Samsung C&T社も韓国の他のコングロマリットも、保有株式の税引き後市場価値に大幅なディスカウントを適用した水準で取引されています。これは「コリアディスカウント」の典型例です。アクティビストはSamsung C&T社に株主還元率の引き上げを求めましたが、この要求は行き過ぎとみなされ、国民年金機構を含む株主の大多数が反対票を投じました。これは企業価値向上プログラムにとっては残念な出来事だというしかありません。当ファンドは韓国コングロマリットのバリュエーションの低さに注目していましたが、問題の複雑さを認識していたため、組み入れを行っていませんでした。そうした企業の持株会社は後継問題や財閥の利害と直結しており、政府の改革だけですぐに状況が変わると期待するのは非現実的です。日本の株式市場は現在大きく改善していますが、その発端は10年以上前のアベノミクスにあると考えられ、そこから上昇基調に乗るまでにはかなりの時間を要しました。当ファンドでは、韓国市場で有望なのはJYP Entertainment(韓国/コミュニケーション・サービス)やClassys(韓国/ヘルスケア)など、K-POPや美容製品といった分野で革新的な製品やサービスを提供する高成長企業であると考えていたため、PBRの低い銘柄にはあまり目を向けてきませんでした。企業価値向上プログラムが進展すれば、PBRの低い銘柄の一部に投資機会が広がるでしょう。重要なのは、当ファンドの現在の保有銘柄と相関性が低いところに機会が生まれるということです。当ファンドは今後も調査を続け、状況を注視しながら投資を行っていく所存です。

「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(⽇本・アジア)マーケットヘッジあり」の株式市場変動リスク低減について

 当⽉、「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(⽇本・アジア)マーケットヘッジあり」は、株式市場の変動リスクの低減を図ることを⽬的として、投資する投資信託証券を通じて投資する株式の市場感応度(ベータ値)に応じて、投資する投資信託証券を通じて株価指数先物取引等の売建て額を調整しました。

2024年2月の運用コメント

株式市場の状況

<⽇本の株式市場>

 2024年2月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比4.93%上昇し、日経平均株価は前月末比7.94%の大幅上昇となりました。
 当月の日本株式市場は、月前半はFOMC(⽶連邦公開市場委員会)の内容を受け早期の米利下げ期待が後退し一進一退の動きで推移しましたが、月半ばから後半にかけては内田日銀副総裁がマイナス金利解除後も日銀は緩和的な金融環境を維持するとの認識を示したことや、生成AI(人工知能)向け半導体需要の増加が期待される米国で半導体関連企業の株価上昇が続き、日本の半導体関連企業にも資金が集中したことから、続伸しました。22日には日経平均株価は39,098.68円で終え、約34年ぶりに最高値を更新しました。その後の日本株式市場の推移は緩やかだったものの、月末まで日経平均株価は39,000円台を維持したまま当月の取引を終えました。

<アジアの株式市場>

 当⽉、アジア株式市場は力強く反発しました。⽇本を除くアジア市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、中国、韓国、台湾などに牽引される形で前⽉末⽐5.62%上昇しました。中国市場が堅調に推移したのは、マクロデータが市場予想を上回ったことや、旧正月の国内観光収入がコロナ禍前の水準を上回ったことなどによるものでした。バリュエーションの割安感と政府系ファンドによる買い支えも、中国株式市場の底打ちに対する信頼感の増大要因となりました。
 韓国では、政府が「企業価値向上プログラム」を導入し、PBR(株価純資産倍率)の低い企業に対策を講じるよう促したことを受けて、株式市場が上昇しました。同プログラムは日本で東京証券取引所などが進める市場改革と同様、企業経営陣にコーポレートガバナンス、ROE(株主資本利益率)、株主還元の改善を促すことで、企業のバリュエーション向上を狙ったものです。
 また、当月はインドネシアで大統領選挙が行われました。過半数の票を獲得する候補がなく、6月に2回目の投票が実施されると予想されていましたが、世論調査機関4社の集計によると、プラボウォ・スビアント氏が初回投票で約58%の票を獲得し、過半数に到達して当選を確実にしました。新政権の正式発足は10月ですが、短期的には現行の政策方針に大きな変更はないというのが大半の投資家の見方です。

ファンドの運⽤状況

 当⽉パフォーマンスにプラスに貢献した銘柄は、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、セブン&アイ・ホールディングス(生活必需品)、三菱商事(資本財・サービス)などでした。一方、ソニーグループ(一般消費財・サービス)、Shenzhou International Group Holdings(香港/一般消費財・サービス)、HDFC Bank(インド/金融)などがマイナスに影響しました。

Taiwan Semiconductor Manufacturing Company

 半導体セクターは当月も堅調に推移しました。当ファンドの主要な組入銘柄のひとつである「Taiwan Semiconductor Manufacturing Company」の株価は、前月末比約9.9%上昇、2022年末比では約53.8%上昇し、世界の株式市場が不安定な中で当ファンドのパフォーマンスを下支えしました。同社は前月、2023年の業績が予想を上回ったと発表し、2024年についても明るい見通しを示しました。経営陣によると、2024年は売上高が伸び、第1四半期の売上総利益率は52%~54%程度になる見込みです。データセンター用AI半導体と3nm先進半導体の出荷増によって力強い成長が実現できると考えています。
 2023年は「ChatGPT」が話題となり、生成AIの用途が拡大しましたが、今後はデータセンターだけでなく、スマートフォンのようなエッジデバイスにも用途が広がっていくことになるでしょう。多くの大手テクノロジー企業がAI分野の開発にしのぎを削っている中で、同社はその最先端技術、生産能力、効率性の高さを生かして大きな市場シェアを獲得すると考えています。
 同社はこの数年の間に多額の設備投資を行いましたが、経営陣によると今後は投資額が減り、収穫期に入る模様です。同社には過去およそ20年間、需要の大幅な伸びに先駆けて生産能力増強計画を実現してきた実績があり、収益は今後数年間で大幅に増加すると当ファンドは考えています。同社の熊本工場は2024年に稼働を開始する予定で、熊本第2工場の設立も発表されました。また、米国アリゾナ工場も建設中です。
 同社の強みの1つとして、コストに対し顧客にとって最大のPPA(パワー、パフォーマンス、エリア)を提供しようと絶え間なく努力を続けている点が挙げられます。同社は顧客向け半導体IC(集積回路)製品の製造に特化する「ファウンドリーモデル」を採用していますが、そのモデルの強みは同社が一定の規模に達し、一定レベルの製造能力、技術的能力を蓄積すると、競合他社が容易に追随できなくなるという点にあります。同社の年間設備投資額がおよそ300億米ドル程度に達していることを鑑みると、その困難さが伝わるかと思います。同社はそうした優位性を生かすことで、5G(第5世代移動通信システム)スマートフォン、自動運転、データセンター、IoT(モノのインターネット)、AIなど、人々が夢にも思っていなかったあらゆるアプリケーションを含め、半導体が関わるあらゆる技術トレンドを捉えることができます。足元のAIの台頭によって、当ファンドの同社に対する信頼感はさらに確固たるものになりました。 
 前年末時点で売上総利益率が約53%、純利益率が約38%ROEが約26%に達し、キャッシュフローが潤沢であることから、当ファンドは同社がセクター内における支配的地位と高い収益性を今後も維持すると考えます。同社はこれからも当ファンドの主要組入銘柄であり続けるでしょう。

「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(⽇本・アジア)マーケットヘッジあり」の株式市場変動リスク低減について

 当⽉、「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(⽇本・アジア)マーケットヘッジあり」は、株式市場の変動リスクの低減を図ることを⽬的として、投資する投資信託証券を通じて投資する株式の市場感応度(ベータ値)に応じて、投資する投資信託証券を通じて株価指数先物取引等の売建て額を調整しました。

2024年1月の運用コメント

株式市場の状況

<⽇本の株式市場>

 2024年1⽉、⽇本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前⽉末⽐7.81%の上昇となりました。
 当⽉の⽇本株式市場は、能登半島地震の影響精査のため⽇銀が利上げを⾒送るとの⾒⽅が⾼まったことや、⽶連邦準備制度理事会(FRB)⾼官のタカ派な発⾔を受けた⽶⻑期⾦利の上昇を背景に円安が進み、⽉前半は⼤きく上昇しました。また、新NISA制度の開始による個⼈投資家の買い需要や、東京証券取引所の市場改⾰への期待感から海外投資家の資⾦も多く流⼊しました。⽉半ばから後半にかけては、利益確定の売り圧⼒や、⽶国半導体⼤⼿の業績⾒通しが市場予想を下回ったことから半導体関連銘柄を中⼼に⼀時下落基調に転じる場⾯もあったものの、最終的に前⽉末を上回る⽔準で⽉を終えました。

<アジアの株式市場>

 アジア株式市場は軟調な値動きで年明けを迎えました。⽇本を除くアジア市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、前⽉末⽐5.44%下落しました。中国政府が⾦融緩和や景気刺激策などで政策的⽀援を⾏ったにもかかわらず、中国市場と⾹港市場に対する投資家⼼理は冷え込んだままでした。国内要因(不動産危機、消費低迷、⼀貫性のない規制)と国外要因(中国に対する⽶国の規制強化、紅海の海運混乱など)が、中国に対する投資意欲をさらに減退させました。
 ⼀⽅、台湾では、AI(⼈⼯知能)投資の加速とスマートフォン回復への期待から、テクノロジーセクターが好調な勢いを維持しました。台湾総選挙は想定内の結果で決着し、現政権を担う⺠主進歩党(⺠進党)が総統選を制した⼀⽅で、野党の台湾国⺠党(国⺠党)が議席を伸ばしました。また、第三党の台湾⺠衆党(⺠衆党)は獲得議席数こそ少ないものの、今後数年間の政策の⽅向性を左右しうる新たな政治勢⼒として台頭しました。
 インドは強⼒な政府、若年層⼈⼝の多さ、⻑期的成⻑⼒といった⽀援材料に恵まれ、引き続き投資対象として投資家の注⽬を集めています。インドネシア市場では消費⽀出に若⼲陰りが⾒られ、とりわけ低価格帯商品にその傾向が⾊濃く表れました。同国では間もなく⼤統領選挙が⾏われる予定で、次期政権発⾜まで⼀時的に投資家の関⼼が向かなくなる可能性があると考えます。

ファンドの運⽤状況

 当⽉パフォーマンスにプラスに貢献した銘柄は、⽇⽴製作所(資本財・サービス)、Taiwan SemiconductorManufacturing Company(台湾/情報技術)、CNOOC(中国/エネルギー)などでした。⼀⽅、Classys(韓国/ヘルスケア)、JYP Entertainment(韓国/コミュニケーション・サービス)、Samsung Electronics(韓国/情報技術)などがマイナスに影響しました。
 

E Ink Holdings(台湾/情報技術)

 E Ink Holdings(以下E Ink)は、電気泳動式技術(ePaper based on Electrophoretic technology)の開発、及び電⼦ペーパーパネルを供給するメーカーです。新型コロナウイルスの⼤流⾏による労働⼒不⾜を背景に根強い需要が⽣まれた2022年を経て、2023年はE Inkにとって正常化に向かう年となりました。同社の株価はSES-Imagotag社(フランス、E Inkの⼤⼝顧客)を標的とした空売りの影響で振れ幅が拡⼤し、電⼦棚札(ESL︓Electronic Shelf Label)の在庫増加も短期的に投資家⼼理の⾜枷となりました。様々な情報が⾶び交っていますが、ESLの普及はまだ初期段階であり、今後、⻑期的なトレンドになるのは間違いないと当ファンドでは考えます。
 SES-Imagotag社は2023年6⽉、同社のVUSIONプラットフォーム(電⼦棚札やIoTデバイスを追跡、監視、管理できるリテールIoT管理ソリューション)を今後12〜18ヵ⽉間で500店舗に導⼊することでWalmart社(⽶国)と合意したと発表しました。Walmart社はプレスリリースの中で、「店内で棚札の価格表⽰を変更する作業には⼤変時間が掛かり、店員の苦労は計り知れません。そこで当社はこの作業を電⼦的に⾏えるデジタルソリューションを探していました。」と述べています。
 ESLの普及が⻑期的に続くと考えられるのは、①コストが節減でき、②O2O(Online to Offline、オンラインからオフラインへ購買⾏動を促すマーケティングの⼿法)が⾏うことができ、③ESG(環境・社会・ガバナンス)に取り組めるという3つの点からです。欧州のスーパーマーケットでは、労働⽣産性の観点からESLへの移⾏を推進してきました。スーパーマーケットが率先してESLに移⾏したのは、⾼頻度で値札を変更する必要があるためです。スーパーマーケットの多くは未だに紙の値札を使⽤し、週に数回⼿作業で交換を⾏っています。仮に値札を変えるのに20秒かかるとして、従来型のスーパーマーケットの商品点数を約30,000点と想定した場合、週に⼀度全ての値札を変えるだけで約165時間かかります。これを1年間に換算すると、値札の変更に費やす時間は8,500時間以上になります。⽶国Walmart社の最低賃⾦は、店舗によって異なりますが、時給14⽶ドルから19⽶ドルです。つまり、値札の変更にかかる年間⽀出は⼈件費だけでも119,000⽶ドル以上になります。⼀⽅、⼀般的なESLの費⽤は、サイズや表⽰能⼒にもよりますが、5〜15⽶ドルです。スーパーマーケットの平均商品点数を30,000点とすると、紙の値札をすべてESLに置き換えるのにかかる費⽤は150,000〜450,000⽶ドル、ESLのバッテリー寿命は⼀般に3年以上なので、スーパーマーケットはESLへの移⾏によって相応のメリットを享受できることになります。さらには、ESLは店内の価格表⽰をリアルタイムで変えられるので、スーパーマーケットはタイムセールを⾏って在庫の回転を促し、⽣鮮⾷品を売り切ることができます。また、ESLに移⾏することで、価格表⽰の誤りや値札紛失のリスクも軽減します。また広告を表⽰することもできるので、スーパーマーケットにとっては新たな収⼊源になり得ます。今後、ESLのコストが低下し、賃⾦が上昇すれば、ESLの普及が数年内に加速するのは間違いないと考えます。
 コストの削減だけではスーパーマーケットを説得できなくても、O2Oという機能が加わることで、ESLの受注はかなり容易になるはずです。現⾏のESLソリューションには、⼀般的にワイヤレスでクラウドに接続できるソフトウェアがインストールされています。そのため、オンラインを含む店舗ネットワーク全体で価格と在庫を⼀元管理することができます。ESLに組み込まれたセンサーとLEDライトには、商品の補充が必要になったことを従業員に知らせる機能があり、さらにオンラインで受注された商品を棚から取り出す作業の所要時間を短縮する効果もあります。将来的には消費者が店頭で商品を探し出すのが今よりずっと簡単になるでしょう。
 最後に、世界では「ESG」と「サステナビリティ(持続可能性)」が注⽬のキーワードとなっており、上場企業の多くがエネルギーの節約、再⽣可能エネルギーへのシフト、廃棄物の削減など、積極的なESG⽬標を掲げています。例えばWalmart社は、2040年までに世界全体で温室効果ガス排出量ネットゼロを達成すること、2035年までに再⽣可能エネルギーで電⼒を100%賄うことを必達⽬標として掲げています。ESLへの移⾏は、Walmart社がこうした⽬標を達成する上で⼤きな⼒となるでしょう。E Inkのサステナビリティレポートによると、過去7年間に全世界で設置された3インチ型ESLは6億個に上ります。価格変更を1⽇4回⾏うと想定すると、⼆酸化炭素排出量を紙の値札の32,000分の1に削減することができます。このような必達⽬標を掲げているのはWalmart社だけではありません。Kroger社(⽶国)やAlbertsons社(⽶国)といった他の⼤⼿スーパーマーケットも同様の⽬標を掲げています。紙の使⽤量を減らすことで節約できる⽊の数は⾔うまでもありませんが、消費電⼒が少ないというESLの特性も考えれば、ESLは今後を占うパズルの重要なピースになると当ファンドは考えています。

「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(⽇本・アジア)マーケットヘッジあり」の株式市場変動リスク低減について

 当⽉、「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(⽇本・アジア)マーケットヘッジあり」は、株式市場の変動リスクの低減を図ることを⽬的として、投資する投資信託証券を通じて投資する株式の市場感応度(ベータ値)に応じて、投資する投資信託証券を通じて株価指数先物取引等の売建て額を調整しました。

2023年12月の運用コメント

株式市場の状況

<日本の株式市場>

 2023年12⽉、⽇本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前⽉末⽐0.23%の下落となりました。
 当⽉の⽇本株式市場は、⽉前半は⽇銀の植⽥総裁と氷⾒野副総裁両名の発⾔を受けて⾦融政策修正の思惑が⾼まったことや、FOMC(⽶連邦公開市場委員会)のハト派の内容を受けて⽶⻑期⾦利が低下したことで、円⾼が進み下落しました。⽉後半は、⽇銀⾦融政策決定会合における⾦融緩和維持の決定が好感される場⾯もありましたが、年末の閑散相場もあって円⾼基調が継続する展開が重しとなり、最終的に前⽉末を下回る⽔準で⽉を終えました。

<アジアの株式市場>

 当⽉、アジア株式市場は中国を除いて概ね堅調に推移しました。⽇本を除くアジア市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、前⽉末⽐3.55%上昇しました。中国市場のリターンはマイナスとなりましたが、これは中国経済の成⻑に関する懸念が拭えないためと考えます。⽉後半に中国でオンラインゲームに関する包括的な規制案が公表されたことを受け、今後こうした規制が消費者の⾏動全体に及ぶのではないかという懸念が投資家の間に広がり、その影響はオンラインゲーム関連のセクターに留まらず幅広い分野に及びました。
 中国以外のアジア株式市場は、インフレと⾦利の圧⼒が緩和したことで、前⽉以上に好調に推移しました。インド市場は当⽉、企業のファンダメンタルズの底堅さ、安定政権、⻑期的な構造的成⻑のポテンシャルが好材料とみなされて市場への資⾦流⼊が続き、史上最⾼値を更新しました。台湾市場は⽣成AI(⼈⼯知能)に対する期待感の⾼まり、スマートフォンの需要回復、データセンターの成⻑によって半導体セクターが堅調に推移したことで、2023年通年ではまずまずのパフォーマンスをみせました。
 ASEAN各国市場は、国内経済の成⻑と「チャイナ・プラス・ワン(中国のみに⼯場を構えるリスクを回避するため、他のアジアの国に製造拠点を展開すること)」関連の投資に⽀えられ、底堅く推移しました。インドネシアでは2023年、海外直接投資(FDI)が増加、とりわけ鉱物セクターの川下にあたる製造業でその傾向が顕著にみられました。またマレーシアでも⽶国企業や中国企業を含む⼤⼿グローバル企業から半導体産業に対するFDI増加の動きが継続しました。

ファンドの運用状況

 当⽉パフォーマンスにプラスに貢献した銘柄は、信越化学⼯業(素材)、リクルートホールディングス(資本財・サービス)、Samsung Electronics(韓国/情報技術)などでした。⼀⽅、Classys(韓国/ヘルスケア)、ICICI Lombard GeneralInsurance(インド/⾦融)、Indofood CBP Sukses Makmur(インドネシア/⽣活必需品)などがマイナスに影響しました。

⽇⽴製作所(資本財・サービス)

 2021年7⽉⽉次報告書で新規投資銘柄としてご紹介した⽇⽴製作所は、その後概ね当ファンドの⾒解通りに状況が進展しています。投資を開始してから速やかにファンドの主要組⼊銘柄に引き上げた同社の株価は2021年末以降63.24%上昇し、これまでのところ順調と⾔えます。
 2016年に始動したLumada事業は当初から社外だけでなく社内でも実態の分かりにくいビジネスというイメージが強かったようです。Lumada事業は特定の技術やソフトウェアに依存したビジネスではありません。当ファンドでは、同社がハード(やシステム)の売り切り型ビジネスから決別し、コンサルから製品販売後のアフターサービスまで⾃社内のあらゆるリソースを駆使・動員してソリューション提案形式で収益を稼いでいくための「事業ブランド」と捉えています。別の⾔い⽅をすれば「⽇⽴がもつ⾊々なプロダクトやサービスを、⽇⽴がもつデジタル技術で横串を通すもの」(同社役員のコメント)とも⾔えるようです。このコンセプトを創り出したのは、惜しくも2021年に急逝した中⻄元社⻑の功績です。
 同社は事業ポートフォリオが広範囲に及びますが、圧倒的なシェアを持つ製品分野は殆ど持ち合わせていません。しかしコングロマリットだからこそ、ITシステムのノウハウや、社会インフラの制御ノウハウ、モノづくりノウハウなど多岐にわたっていることが、Lumada事業を可能にしています。また社内リソースは、過去10年のグループ再編を通じてGlobal Logic社(⽶国)や、⽇⽴エナジー㈱(旧ABB社)など新たなアセットを獲得したことで範囲が広がっていること、そして今後需要が伸びるであろうDX(デジタルトランスフォーメーション)、GX(グリーントランスフォーメーション)分野をターゲットにしていることがポイントです。
 最近の総合電機業界では三菱電機㈱も、⾃社コンポーネントを顧客が利⽤することで⽣まれるデータを集め・分析して、製造業などに対して課題解決のためのソリューション提供する事業モデルを謳っています。富⼠通㈱もFujitsu Uvance事業で社会課題を明らかにすることで市場発掘し、⼩売、ヘルスケア、製造業界などを対象にSX(サステナビリティトランスフォーメーション)ソリューションを提供していくなど、似通った戦略が聞かれるようになりました。しかし⽇⽴製作所は電⼒インフラまわり(送電網)や鉄道システム関連など、他社とは差別化された注⼒領域を10年以上前に⾒いだし、すでに重点投資も進めてきたので、⼀⽇の⻑があると考えます。
 財務戦略⾯でも、経営陣のKPIは10年前に⽐べて明らかに変わってきています。「ROIC(投下資本利益率)」、「EPS(⼀株当たり純利益)成⻑率」、「フリーキャッシュフローのコンバージョンレート」など成⻑・資本効率性・キャッシュフローの3つに⼒点をおいた経営管理がなされているのは正しい⽅向と考えます。特にROICはここ数年、⽇本企業がこぞって経営指標として採⽤しています。ROE(株主資本利益率)の場合はどうしてもビジネス⾃⾝がもつ資本収益性だけでなく、当該企業の財務レバレッジ⽅針や、所在国における法⼈税率にも左右されてしまいます。当ファンドもROICやROCE(使⽤資本利益率)のほうが企業ビジネスを評価する上でより適切だという⾒解です。
 2024年3⽉期上期業績に⽬を転じると、売上39,248億円(前年同期⽐12%増)、調整後EBITA※3,596億円(同492億円増)、調整後EBITAマージン9.2%(同0.3ポイント増)と堅調です。売上先⾏指標となる受注残⾼もデジタルシステム&サービスセグメントで約1.5兆円、⽇⽴エナジーセグメントで約3.9兆円と⼤変豊富であり、Lumada事業も2024年3⽉期通期⾒通しで売上全体の約3割、調整後EBITAの約4割を占めるところまで拡⼤しています。

※調整後EBITAは同社が重視する利益指標で、調整後営業利益から無形固定資産の償却費を⾜し戻し、持分法損益を加算したもの。調整後営業利益=売上-原価-販売管理費

 同社にとって成⻑に必要な駒は全て揃っていますので、今後は事業環境の追い⾵をうけて受注をどこまで積み上げていけるか、そして受注残をうまく売上・利益につなげられるか、現経営陣の執⾏⼒にかかっています。うまくいけば引き続き利益拡⼤だけでなく株価バリュエーションの切り上がりもありえると考えます。

「スパークス・ベスト・ピック・ファンド(日本・アジア)マーケットヘッジあり」の株式市場変動リスク低減について

 当月、「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり」は、株式市場の変動リスクの低減を図ることを目的として、投資する投資信託証券を通じて投資する株式の市場感応度(ベータ値)に応じて、投資する投資信託証券を通じて株価指数先物取引等の売建て額を調整しました。

2023年11月の運用コメント

株式市場の状況

<日本の株式市場>

 2023年11⽉、⽇本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前⽉末⽐5.42%の上昇となりました。
 当⽉の⽇本株式市場は、⽉前半はFOMC(⽶連邦公開市場委員会)での政策⾦利の据え置きや、市場予想を下回る⽶雇⽤統計を受けての⽶⻑期⾦利の低下を背景に上昇しました。⽉半ばは、⽇本企業の良好な決算や、市場予想を下回る⽶国のCPI(消費者物価指数)を受けた⽶追加利上げ観測の後退などから、⽉中⾼値をつけました。⽉後半に⼊ると、中東情勢の地政学リスクの後退や⽶⻑期⾦利低下等を好材料に上昇した後、⼀時1ドル=146円台後半まで進⾏した円⾼が重しとなって下落基調に転じましたが、最終的に前⽉末を上回る⽔準で⽉を終えました。

<アジアの株式市場>

 当⽉、アジア株式市場は反発しました。⽇本を除くアジア市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、韓国と台湾に牽引される形で前⽉末⽐6.96%上昇しました。⽶国の労働市場とインフレに関するデータが軟化したことで、市場関係者の⾒⽅は2024年に利下げが⾏われ、低いとはいえ妥当な⽔準の経済成⻑が続くという⽅向に変化しました。これは⽶国市場のソフトランディングシナリオと⾔ってよいでしょう。こうした変化を受けて、テクノロジー関連やインターネット関連セクターなどの成⻑株、とりわけ韓国と台湾の銘柄が底堅く推移しました。
 ⼀⽅、中国市場は当⽉も引き続き低迷しました。政府の緩和政策にもかかわらず、不動産セクターの状況にはほとんど改善が⾒られませんでした。経済成⻑率の低迷も消費⽀出の抑制要因となり、消費者の間に低価格志向が広がっています。
 インドは引き続きアジア諸国の中で⾼い成⻑率を保っている数少ない市場の⼀つで、2023年第3四半期GDP成⻑率は前年同期⽐7.6%上昇しました。構造的な⻑期成⻑が⾒込める市場は、新事業に果敢に取り組もうという気概のある企業に時流に乗じる機会を与えます。政府の⽀援策も効⼒を発揮しており、特に様々な優遇措置を通じて国内の製造業を下⽀えし、海外直接投資を誘致することで、成⻑に寄与していると考えます。

ファンドの運用状況

 当⽉パフォーマンスにプラスに貢献した銘柄は、Classys(韓国/ヘルスケア)、Taiwan Semiconductor ManufacturingCompany(台湾/情報技術)、Samsung Electronics(韓国/情報技術)などでした。⼀⽅、Yum China Holdings(中国/⼀般消費財・サービス)、Samsonite International(⾹港/⼀般消費財・サービス)、JYP Entertainment(韓国/コミュニケーション・サービス)などがマイナスに影響しました。

Shenzhou International Group Holdings(⾹港/⼀般消費財・サービス)

 Shenzhou International Group Holdingsは主にNIKE、adidas、PUMA、ユニクロといったグローバルブランドにサービスを提供する世界最⼤級の垂直統合型(製品の開発から⽣産、販売にいたるまで上流から下流のプロセスをすべて⼀社で統合したビジネスモデル)アパレルメーカーで、世界のアパレルサプライチェーンにおいて同社の重要性は際⽴っています。同社は投資家からも⾼い注⽬を集めており、売上⾼と純利益は過去10年間で⼤きく増加し、ROE(株主資本利益率)も⾼い⽔準を維持しています。
 しかし新型コロナウイルスの⼤流⾏によって、そうした安定的な成⻑軌道にいくつかの点で乱れが⽣じました。第⼀に、政府の景気刺激策が⽶国とEUの消費を押し上げたことで売上⾼は2021年初頭の新型コロナウイルス流⾏初期に⼤幅に増加しましたが、各国中央銀⾏がインフレ抑制を狙って引き締めサイクルに移⾏したため、需要はすぐに軟化し、在庫が増加しました。⽶国とEUの景気減速と時を同じくして、2022年には中国の景気が悪化しました。第⼆に、粗利益率が2021年末には⼤きく低下しました。これは、1) 2021年7⽉から9⽉にかけてコロナ禍のロックダウンによってベトナム⼯場の稼働率が低下したこと、2) エネルギーコストと物流コストの上昇がサプライチェーンに波及し、原材料価格、特に綿花価格が上昇したことによるものです。

信頼性の⾼いビジネスモデル- 粗利益率は平均回帰

 同社のビジネスモデルはコストプラス⽅式(実際にかかったコストに、利益を上乗せして価格を算出する⽅法)の価格設定に基づいており、⾐料品1着あたりの粗利益はほぼ固定されています。粗利益率が低下したのは、1) 原材料費と⼈件費が変動したこと(ただし、これは⼀般的に若⼲の時間差で顧客に転嫁されます)、2) スポーツウェアや機能性ウェアなどの複雑性の⾼い製品の⽅が粗利益率が⾼いという製品構成⾯の特性があることによって説明できます。同社の財務記録をみると、粗利益率は10年以上にわたって⾼い⽔準で安定的に推移していることがわかります。
 したがって、稼働率と原材料価格が正常化すれば粗利益率は⾼⽔準に戻るというのが当ファンドの⾒⽅です。同社が中国、ベトナム、カンボジアで運営している⽣産施設の稼働率は順次改善しており、当⽉以降は多くの労働者が残業を始めたことからも、回復の兆しが現れていると考えます。原材料価格も2022年にピークへ達し、2023年に⼊ってからは安定化してきています。同社は新たな⽣地⽣産技術への投資を続けており、今後は粗利益率がさらに拡⼤する可能性があります。同社は現在、lululemonやFILAと緊密に協⼒し、伸縮性を有する⾰新的な⽣地の開発に取り組んでいます。

⻑期的な業界再編トレンドは不変

 アパレル⼩売業界と異なり、アパレル製造業界では⻑年にわたって再編の動きが進められてきました。品質、環境基準、スケールメリットの向上により、追随できない中⼩企業は淘汰されたり、⼤⼿企業に買収されたりしています。この傾向は今後も続く⾒込みで、当⾯は加速する可能性さえあると考えられます。⼈権、安全性、環境負荷といった点は、いずれもこの数年、世間の注⽬を集めている問題です。環境⾯では、同社は再⽣可能エネルギーに多額の投資を⾏っています。同社は2025年までに、⾐料品⼯場の50%、⽣地⼯場の20%で再⽣可能エネルギーを使⽤することを⽬指しています。⽔の使⽤については、節⽔と再⽣技術を通じて2025年までに⽔の利⽤効率を20%改善し、廃⽔を減らすことを⽬指しています。

 当ファンドが先⽇業界関係者と⾏った会議では、ブランドにとって重要な意味を持ちつつあるキーワードとして「事業の継続性」と「⽣産体制の柔軟性」という⾔葉が挙げられました。⽣産体制の柔軟性が重要性を増してきたのは、主に2つの要因が考えられます。第⼀に、⽶中間の緊張によっていわゆる「チャイナ・プラス・ワン」の動きが発⽣し、多数の企業が中国以外の地域、特に東南アジア(インドネシア、ベトナム、カンボジアなど)やインドに⽣産拠点を設⽴していることです。こうした動きは、中国の⼈件費⾼騰を受け、コロナ禍以前からありましたが、両国の緊張関係が近年より⾼まったために、⽶国やEUの顧客とビジネスを⾏う上で避けて通れない課題となっています。ここで指摘しておきたいのは、⽶国とEUのブランドが関⼼を持っているのは主として⽣産施設の所在地であって、⽣産施設の所有者ではないということです。同社は「地産地消」戦略を採⽤し、中国の⼯場では中国国内の需要に応え、ASEAN諸国の⼯場では中国国外からの受注案件に対応しています。今後インドネシアなどで⽣産能⼒を増強することで、今後ASEAN諸国の⽣産量の割合が更に⾼まる⾒通しです。
 第⼆に、⽣産体制の柔軟性には短納期案件に対応する⼒も含まれていることです。短納期案件とは、⼀般に受注から出荷までの期間が3ヵ⽉未満の受注案件を指します。マクロ経済の先⾏きがますます⾒通せない中、在庫の積み増しを回避したいというのがブランドの基本姿勢であることから、こうした案件の割合が近年増加してきています。短納期案件の増加は、⾃動化が進むことで強⼒なサプライチェーンを持つ⼤規模事業者に有利に働くと考えます。先⽇発表されたNIKE社(⽶国)の決算をみると、来期の⾒通しが依然不透明であることから、来年は短納期案件がさらに増えることになるでしょう。先⽇、ある業界の専⾨家と話したところ、同社の総売上に占めるNIKEの割合は今後更に拡⼤する可能性があるということです。
 興味深い点は、同社の成⻑が需要⾯よりもむしろ供給⾯(すなわち「⽣産能⼒の拡⼤」)の要因の⽅が⼤きいということです。コロナ禍以前は、⼤⼿アパレルメーカーはほぼフル稼働していました。同社の売上⾼が増加しているのは、主に⽣産能⼒の拡⼤によるもので、その幅は年間10%程度に制御されています。世界のスポーツウェア産業は今後5年間で年平均6%成⻑すると予想されており、⼤⼿サプライヤーが業界再編によって成⻑を加速していることを考えると、これは合理的な想定であると考えます。結論を述べると、同社は有望な投資先でありながら、コロナ禍による混乱、さらに中国、⽶国とEUの市況悪化によって⼤幅に評価を下げてしまいました。しかし、粗利益の圧縮と売上の鈍化は本性的に⼀時的なものであり、⽶国で重⼤な対外紛争やハードランディングシナリオが発⽣しなければ、来年には正常化すると考えられます。そうなれば業界再編は加速し、最終的には最⼤⼿のアパレルメーカーがその恩恵を受けるだろうというのが当ファンドの⾒⽅です。

「スパークス・ベスト・ピック・ファンド(日本・アジア)マーケットヘッジあり」の株式市場変動リスク低減について

 当月、「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり」は、株式市場の変動リスクの低減を図ることを目的として、投資する投資信託証券を通じて投資する株式の市場感応度(ベータ値)に応じて、投資する投資信託証券を通じて株価指数先物取引等の売建て額を調整しました。

2023年10月の運用コメント

株式市場の状況

<日本の株式市場>

 2023年10⽉、⽇本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前⽉末⽐2.99%の下落となりました。
 当⽉の⽇本株式市場は、⽉前半は堅調な⽶雇⽤統計を受けての⽶⻑期⾦利の変動や、中東情勢の緊迫化などを受け乱⾼下の展開となりました。⽉後半に⼊ると、中国の景気刺激策が好感される場⾯があったものの、⽇銀の政策再修正への思惑や⽶テクノロジー企業の低調な決算への失望が株式市場の重しとなり、最終的に前⽉末を下回る⽔準で⽉を終えました。

<アジアの株式市場>

 当⽉、アジア株式市場は前⽉に引き続き軟調に推移しました。⽇本を除くアジア市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、前⽉末⽐3.86%下落し、3か⽉連続の下落となりました。世界的な景気減速が進⾏していること、FRB(⽶国連邦準備制度理事会)が「より⾼く、より⻑期に」という偏った政策を続けていることが世界の株式市場の下落につながりました。また、イスラエルとハマスの紛争が地政学的リスクの新たな震源となりました。
 中国政府は1兆⼈⺠元の特別国債発⾏を決議し、各種インフラプロジェクトに資⾦を充当するなどの複数の景気⽀援策を発表しましたが、消費者⼼理は依然弱含みで、市場は引き続き下⽅圧⼒にさらされています。また、⽶国はAI(⼈⼯知能)半導体の対中国への輸出規制をさらに強化し、中国におけるAI能⼒の急速な発展を抑制しようとしています。
 韓国市場もEV(電気⾃動⾞)⽤電池とEV⽤素材セクターが調整したことで、アンダーパフォームしました。EV需要の鈍化に対する懸念、Tesla社(⽶国)をはじめとするEVメーカーの値下げが投資家⼼理の重荷となったと考えます。⼀⽅、台湾市場では、5G(第5世代移動通信システム)に対する楽観的⾒⽅とスマートフォン需要の底打ちが要因で、MediaTek(台湾/情報技術、当ファンド組⼊銘柄)などのハイテク部品銘柄の株価が上昇しました。

ファンドの運用状況

 当⽉パフォーマンスにプラスに貢献した銘柄は、ICICI Lombard General Insurance(インド/⾦融)、TaiwanSemiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、⽇⽴製作所(資本財・サービス)などでした。⼀⽅、Classys(韓国/ヘルスケア)、Mitra Adiperkasa(インドネシア/⼀般消費財・サービス)、CNOOC(中国/エネルギー)などがマイナスに影響しました。
 当ファンドは、世界的に有名なアニメキャラクターを制作する⽇本企業や、韓国のK-POP企業など、複数のエンターテインメント企業の経営陣と⾯談を⾏いました。エンターテインメント事業とは、端的に⾔えば、知的財産(知財)の販売に他なりません。知財には様々な種類がありますが、例えば、あるテクノロジーを他社にライセンス供与して使⽤を認める場合も知財に含まれます。ソフトバンクグループ㈱が株式の過半数を保有し、先⽇⽶国で上場したArm Holdings社(英国)は、プロセッサアーキテクチャ(コンピュータの中央処理装置(CPU)の設計と構造)を知財として半導体チップ設計事業者に販売しています。⼈々が毎⽇使っているスマートフォンのプロセッサは、同社のアーキテクチャの⼒で動いているのです。⼀⽅、当ファンドの⾯談先企業が販売しているのは、⾳楽やアニメキャラクターといったエンターテインメント関連の知財です。当ファンドはこれまで数社のエンターテインメント企業に投資を⾏ってきましたが、その理由は 1) 知財はコモディティや⼯業製品と違って模倣が困難であるという点、2) 当該企業が最⼩限の資産で事業を運営できるという点、3) 知財を⼤量に複製することで、多額の利益が得られる可能性があるという点にあります。エンターテインメント知財を売るということは、いわば「幸福感」を売るということです。ハローキティが描かれたカップがよく売れるのは、何も描かれていない真っ⽩なカップよりハッピーな気分になれるからだと思います。多くの⼈は幸福感を感じられるもの、持っているだけで嬉しい気持ちになれるものにはお⾦を払います。そのため⼈気キャラクターの知財を保有する企業は、強⼒な価格決定⼒を⼿にすることになります。
 アジアでエンターテインメント知財関連の投資機会が⾒られるのは主に⽇本と韓国ですが、中国にも⼀部存在していると考えます。⽇本はアニメ、ゲーム、マンガの制作能⼒の⾼さが群を抜いており、ポケモン、スーパーマリオ、ガンダム、ハローキティといったキャラクターが世界的に⼈気を博しています。過去10年間でそれに迫ってきたのが韓国だと当ファンドは考えており、K-POP、韓国ドラマ、ウェブトゥーン(縦スクロールのフルカラーマンガ)は世界中で⼈気を集めています。
 テクノロジーの進歩はエンターテインメント知財事業に多⼤な恩恵をもたらしています。ゲームの世界において、テクノロジーがグラフィックとユーザー体験を向上させたのは誰の⽬にも明らかでしょう。テクノロジーは流通の⾯でも⼤いに役⽴っています。例えば、ガンダムシリーズの最新作「機動戦⼠ガンダム ⽔星の魔⼥」は、アジアの様々な国において、Netflixで視聴可能です。これが20年前なら、知財所有者は各国の地上波テレビ局と交渉し、さらに⾔語をローカライズする必要がありました。Netflixに代表されるグローバル・プラットフォームのおかげで、グローバル展開にかかる労⼒は⼤幅に軽減されました。⼀⽅、⾳楽の世界では、Spotifyのような⾳楽ストリーミング・プラットフォームによって業界全体が活⼒を取り戻し、K-POPはYouTubeをうまく活⽤することで、⼈気を⾼めることができました。K-POPは視覚と同時に楽しむことでその良さが伝わると⾔われており、動画での再⽣に適しています。K-POPアーティストの最新動向を追いかける場合、Spotifyのような⾳声のみのプラットフォームより、YouTubeを使うことが多いのが⼀般的です。YouTubeの台頭には、モバイルデータ通信の向上によって、携帯機器で気兼ねなく動画を楽しめるようになったという背景があるのです。
 さて、ユーザーへのリーチが格段に容易になった⼀⽅で、様々なメディアが台頭してきたことで、企業はいかにしてユーザーの定着を図るかという問題に頭を悩ませるようになりました。⼈々の時間の使い⽅が断⽚的になり、関⼼が⻑く続かないのです。複数のメディアがひしめきあって⼈々の関⼼を得ようと躍起になっており、⼈々はすぐに気をそらされてしまいます。つまりどれほど⼈気のある知財でも、翌年には他の知財に取って代わられる可能性があります。そのため、複数の「接点」を設けて⼈々とのつながりを保つことが重要になってきます。当ファンドは数年前、韓国のドラマ制作会社と⾯談しました。ところが韓国ドラマの⼈気は確かでも、その会社の創作物である知財には魅⼒が感じられませんでした。ハローキティはいつまでも⾊あせない知財で、何千種類もの商品にプリントすることができますが、ドラマの知財は他ではほとんど使えないからです。全16話のドラマは放映が終わればそれだけで終わりです。関連商品を作って継続的に販売するのは困難で、早晩忘れ去られてしまいます。⾳楽業界も同様で、Spotifyのおかげで独⽴系アーティストの楽曲発表は容易になりましたが、サポートやリソースがなければ、Spotify上の楽曲以外にユーザーと触れ合う接点を作ることはできません。それどころか、ユーザーは楽曲を聴いていてもアーティストが誰なのかさえ知らないことが多いのが実情です。
 当ファンドが関⼼を持っているのは、⾃社の知財をさまざまな形態に変換し、顧客との接点を複数作り出すことができると考えられる企業だけです。例えばソニーグループ(⼀般消費財・サービス、当ファンド組⼊銘柄)は⾳楽、映像、ゲームなどの各部⾨間の連携を強化し、より優れた知財を創造、活⽤することを⽬指しています。その好例が、⼈気ゲーム「The Last of Us」のテレビドラマ化です。⾳楽業界では、K-POP企業がこうした⾯で⼀歩先を⾛っています。欧⽶ではアーティストの収⼊の⼤部分をアルバムやコンサートから得るのが⼀般的ですが、K-POP企業は関連グッズの制作やブランドとのコラボレーションなど、派⽣商品を通じた収益確保に積極的です。
 K-POP関連企業がコロナ禍の恩恵を受けた⼀⽅で、ゲーム会社は全般的に社会活動の再開によって困難に直⾯しました。この明暗を分ける要因となったのが、顧客と複数の接点を確保できたか否かという点でした。コロナ禍の間、⼈々は家に引きこもり、YouTubeを⾒てK-POPファンになりました。そして社会活動が再開すると、コンサートがファンとのつながりを保つための、もう⼀つの重要かつ収益性の⾼い接点となったのです。社会活動の再開によって、YouTubeを視聴する機会は減ったかもしれませんが、⼈々はアーティストを⾒ようとコンサートに⾜を運ぶようになりました。コンサートを観たファンはアーティストにより親近感を抱くようになり、複数のチャンネルを通じてより多くの情報を得ようと努めるようになります。⼀⽅、ゲーム会社には⼀般に⼈々が外出を再開した時にユーザーとの関わりを保つ⽅法が他にありません。
 アジアのエンターテインメント知財には投資機会が豊富に⾒いだせますが、その基盤となっているのはアジア各国の⽂化発信⼒の⾼まりと世界的なコンテンツ流通難易度の低下です。適正に⾏いさえすれば、知財の世界的流通は以前よりはるかに容易にできるようになりました。当ファンドはアジアの知財の⼈気がこれから世界的に⾼まると予想し、その好機を⽣かしたいと考えています。当ファンドの優位性は⽇本と他のアジア市場に資本を柔軟に配分できるという点にあり、前述の投資機会を活⽤する上で有利な⽴場にあると考えています。

「スパークス・ベスト・ピック・ファンド(日本・アジア)マーケットヘッジあり」の株式市場変動リスク低減について

 当月、「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり」は、株式市場の変動リスクの低減を図ることを目的として、投資する投資信託証券を通じて投資する株式の市場感応度(ベータ値)に応じて、投資する投資信託証券を通じて株価指数先物取引等の売建て額を調整しました。

2023年9月の運用コメント

株式市場の状況

<日本の株式市場>

 2023年9⽉、⽇本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前⽉末⽐0.51%の上昇となりました。
 当⽉の⽇本株式市場は、⽉前半は中国製造業購買担当者景気指数(PMI)の改善により中国の景気後退不安が⼀時的に後退したほか、国内では早期衆院解散・総選挙への期待感が⾼まったことを受け、上昇基調となりました。⼀⽅⽉後半は、FOMC(⽶連邦公開市場委員会)で⾦融引き締めの⻑期化が⽰唆されたことや、⽶議会の予算協議が難航し政府機関閉鎖への警戒感が⾼まったことから、市場⼼理が悪化し値を戻す展開となり、最終的に前⽉末を若⼲上回る⽔準で⽉を終えました。

<アジアの株式市場>

 当⽉、アジア株式市場は前⽉に引き続き軟調に推移しました。⽇本を除くアジア市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、前⽉末⽐2.65%下落し、フィリピンとインドを除くアジア市場全体が軒並み下落して⽉を終えました。
 原油価格の上昇、景気の減速、各国中央銀⾏が「より⾼く、より⻑期に」という偏った政策を続けていることなどから、世界各国の株式市場と債券市場が下落しました。
 中国の不動産セクターは当⽉も中国と⾹港の株式市場の重しとなりました。過剰債務をかかえる不動産開発業者は依然として流動性問題の解決を迫られており、政府が住宅ローンの融資条件緩和という⽀援策に踏み切ったにもかかわらず、不動産販売件数に⼤幅な改善は⾒られませんでした。⼀⽅、鉱⼯業⽣産や⼩売売上⾼など、中国の8⽉の経済指標が⼀部プラス成⻑を⽰す数値となったことは好材料と考えます。
 インドのNifty50指数は当⽉に最⾼値を更新しました。その要因としては、⽣産年齢⼈⼝の割合増加に由来する経済成⻑、都市化、インフラ投資、「チャイナ・プラス・ワン(中国のみに⼯場を構えるリスクを回避するため、他のアジアの国に製造拠点を展開すること)」の動きが同国経済の⻑期的成⻑を後押しするという⾒⽅が投資家の間に根づいてきたことがあげられます。また、タイの株式市場は観光客数の多さと新政権による景気刺激策にもかかわらず、下落幅がASEAN諸国中で最⼤となりました。

ファンドの運用状況

 当⽉パフォーマンスにプラスに貢献した銘柄は、東京海上ホールディングス(⾦融)、CNOOC(中国/エネルギー)、Samsung Electronics(韓国/情報技術)などでした。⼀⽅、Mitra Adiperkasa(インドネシア/⼀般消費財・サービス)、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、ソシオネクスト(情報技術)などがマイナスに影響しました。
 当⽉は、当ファンドが現在の⽇本経済の状況についてどのように考えているかをご説明します。
 1989年のバブル崩壊以降、⽇本は⻑い間デフレに苦しみました。これまでの経験から、デフレやそれに伴う超低⾦利・マイナス⾦利環境は様々な弊害を⽣み出すことがわかっています。まず、モノやサービスの価格が下がり続けると、消費者は更なる価格下落を期待して購⼊を控えてしまいます。消費者が購⼊を控えれば企業収益は悪化しますので、労働者の賃⾦は上がらず、それが消費⾏動のさらなる抑制につながり、悪循環となります。
 また超低⾦利環境では、消費者による住宅や⾞の購⼊といった⾼額品消費が後押しされるものの、企業において採算性の乏しい投資計画が実⾏されたり、競争⼒のない企業(いわゆるゾンビ企業)が存続することで、経済システムにおける資本の最適配分がうまく機能しなくなります。企業淘汰が進まなければ、不⽑な価格競争がいつまでも終わらず、デフレの⻑期化につながってしまいます。
 これらを考えると、近年国内でインフレの兆候や⾦利上昇観測が出てきたことは、⽇本経済にとってプラス条件が揃ってきたと⾔えます。
 ここではっきりと「プラスである」とまだ⾔い切れないのは、インフレには「良いインフレ」と「悪いインフレ」があるからです。良いインフレとは、適度なインフレが定着し、⺠間消費が刺激されることで好循環が⽣まれることです。これに対し、悪いインフレとは、物価⾼が⼈々の⽣活を苦しめてしまう、いわゆるスタグフレーションです。最近の状況を⾒る限り、今の⽇本はこのどちらになるかの岐路に⽴たされていると考えます。
 物価⾼で景気が悪くなれば、デフレに逆戻りするという意⾒もありますが、当ファンドでは⽇本でも想定外にインフレが⾼⽌まりする可能性があると考えています。⽇本の消費がいくら弱くなっても、海外のインフレ要因が、⽇本に波及することが明らかになっているためです。例えば、⽶国でインフレの⾼まりによって⾦利が上昇すると、ドル⾼をもたらします。これが⽇本において輸⼊物価の⾼騰を通じたインフレを引き起こしているのは昨年来、周知の事実です。
 以下に挙げるように、昨今の世界的なインフレには構造的要因が多くあります。

  • 半導体産業に象徴されるように⽶中の貿易摩擦によって、過去20年以上続いたグローバリゼーション(技術の⾰新によって物事が地球規模で進⾏すること)が転換期を迎えました。経済規模で世界1位の⽶国と同2位の中国の分断が進むことで、企業は世界的なサプライチェーンを分散して構築することを余儀なくされています。また、ウクライナ紛争をきっかけとした脱ロシアの動きもこれに拍⾞をかけています。これらは企業にとってビジネスを展開するコストが嵩むことを意味します。
  • 2008年の世界⾦融危機以降、天然資源開発が低⽔準に留まっていることで、資源価格が⾼⽌まりし、原材料コストやエネルギーコストが増加しています。かつては燃料価格が⾼騰すれば、油⽥の新規開発が進み、供給増・価格下落が誘発されました。しかし世界的な脱炭素化によって、従来のように価格上昇がストレートに供給増に結び付かず、当⾯は⾼価格が常態化する可能性があります。
  • ⼈⼿不⾜が深刻になっています。⽶国では、労働⼈⼝の⾼齢化により働き⼿がピークアウトしていること、移⺠政策が厳しくなったため、新たな労働⼒の流⼊が細っていること、⼈々のライフスタイルの変化に伴い、早期退職を選ぶ労働者が増えたことなどがみられます。⽇本では過去10年、⼈⼝減少による労働⼒縮⼩を⼥性の就業率増加や⾼齢者の再雇⽤が補ってきましたが、これが近年頭打ちになってきていること、また外国⼈労働者の流⼊も⽇本の労働⼈⼝全体に⽐べると⼩規模に留まっていることなどが労働⼒供給の減少・⼈件費上昇の原因になっています。
  • ESG投資はもはや世界的なトレンドです。企業が環境⾯で⾃社が与えるインパクトをモニタリングし、規制対応するための⼈件費や設備投資額などが増加しています。これも企業がビジネスを営むために必要な経費の増加と⾔えます。

 これらはいずれも、最終的に消費者に価格転嫁されることで消費者物価の上昇をもたらすものです。
 さて、⽇本がスタグフレーションに陥らず、「良いインフレ」を実現するには何が必要でしょうか。まず、インフレ圧⼒があるなか、過去2年で⽇本⼈がモノやサービスの値上げを受け⼊れ始めているというのは朗報です。東京⼤学の渡辺努教授が⾏っているアンケート調査によると、2021年8⽉実施時には⽇本の消費者6割近くが値上げされた商品の購⼊を避け、4割の⼈たちが値上げを受け⼊れる傾向がありました。2022年5⽉になるとこの⽐率が逆転し、6割近い消費者が値上げを受け⼊れる傾向にあることが明らかになっています。これはインフレ環境が⻑年⽇常となっている⽶国、英国やドイツとほぼ同じ⽔準です。
 ⼈々が物価上昇を予想し始めるなか、賃⾦伸び率がインフレ率を下回ってしまうと、所得が増えたという実感が湧きません。よって次に待ち望まれるのは、⻑年横ばいで推移してきた⽇本の実質賃⾦伸び率が、企業による持続的な賃上げを通じてプラスに転じることです。なぜなら、将来の所得の伸びがインフレ率を上回っていくという⾃信を⼈々が持てれば、消費意欲が刺激されるからです。
 本来賃⾦の伸びは、労働⽣産性の伸びによってもたらされるべきものです。別の⽅法として最も⼿っ取り早いのは、労働分配率を上げることですが、それでは企業の収益性は低下してしまいますし、ローンを組んでモノを買う⼈が借⾦を永遠に増やし続けられないように、家計債務の増加を伴う消費拡⼤にも危うさが伴います。⽇本のバブル崩壊時や、2008年⾦融危機時の世界経済にみられたように、過剰債務が⼤きな反動リスクにつながることは歴史が⽰している通りです。
 ⼀⽅、2021年の⽇本の労働⽣産性は経済協⼒開発機構(OECD)加盟国の中でも下位グループ(38か国中27位)、とりわけ主要先進7か国(G7)では最下位という結果に終わっています。
 ⽣産性が万年低迷しているということは改善余地も⼤きいということです。具体的に⽇本企業が取り組めることとして、DX(デジタルトランスフォーメーション)の積極推進や、売上収益に必ずしも結びつかない過剰な顧客サービスや、不⽑なサービス残業などから決別すること、徹底した能⼒・成果主義の給与制度を導⼊することなどが挙げられます。
 これらのうち、能⼒・成果主義型の給与制度の拡充は、従業員や経営陣のモチベーション向上を通じて労働⽣産性改善に貢献します。残念ながら、この⾯において⽇本企業は海外に⽐べて⼤幅に遅れていると⾔わざるを得ません。例えば、⼤企業の役員報酬のあり⽅は、経営陣の意欲を削ぐような構造のままです。⽇本経済新聞によると、2022年の⽇本の⼤企業の経営トップの報酬⽔準は英国の約4分の1、⽶国の13分の1以下に留まります。
 このような格差には合理的な理由が⾒当たりません。さらに憂慮されるのは、同⼀の⽇系企業内でも、外国籍の取締役と⽇本国籍の取締役との間で報酬に⼤きな差がつけられているケースが散⾒されることです。当ファンドは、格差を是正しより公平な報酬制度が確⽴されるべきとの⽴場です。
 労働⽣産性改善に寄与するのは、少ない労⼒でどれだけの⽣産量を⽣み出せるかという物的労働⽣産性(⽣産量/単位当たり労働)が重要視されがちですが、付加価値額をベースとした労働⽣産性の改善も重要です(付加価値額/単位当たり労働)。
 この指標は、物量ではなく⾦額に着⽬したもので、適正な値付けによる利幅を確保することで改善されます。⽇本のモノやサービスの値段は国際的にみて、かなりの低⽔準にあります。つまり⽇本企業はより能動的に価格戦略を⾒直し、商品価値に⾒合った値上げを進める必要があるのです。これが実現できれば、企業の賃上げ余地が⽣まれ新たな消費需要を⽣みだすという好循環が出来上がるはずです。これが「良いインフレ」です。
 加えて、良いインフレを⽣み出すための労働⽣産性改善や能⼒・成果主義型の給与制度導⼊などは東証が要請している「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ是正」の⾯でも効果を発揮すると考えます。労働⽣産性の改善と資本収益性の向上は表裏⼀体の関係にあるからです。
 PBR1倍割れの最⼤の問題は株価が企業の理論上の解散価値を下回っているということです。多くの場合、株主から預かっている資本に対して経営者が株式資本コストを上回る⼗分なリターンを⽣み出せていない、即ちROE(株主資本利益率)を代表とする資本収益性が低すぎるということを意味します。PBRはPER(株価収益率)とROEの掛け算で求められるので、上場企業である以上、経営陣がROEを⾼める努⼒をするのは責務であると考えます。
 ⽇本ではつい最近まで資本収益性の意識が希薄でした。これは⽇本株が⻑年低迷した要因でもあります。しかしここに来て、2015年頃からアベノミクス下で始まったコーポレートガバナンス改⾰をきっかけに、ようやく企業の意識変化が芽⽣えてきたように思います。具体的には、経営層レベルにおいて、利益の絶対額を増やすだけでなく資本効率性を上げることの重要性がようやく認識されるようになってきました。これは近年、企業のIR資料やアニュアルレポートなどで、ROEやROIC(投下資本利益率)などの経営指標が頻繁に登場するようになったことからもみてとれます。2023年3⽉の東証による要請以降は、⾃社の株価がPBR1倍割れであることが、経営者にとって「恥ずかしい」という雰囲気すらでてきているように感じます。
 PBR1倍割れを脱するために、企業経営者は資本収益性の概念を従業員にも浸透させなくてはなりません。組織の全員がしっかりと理解することで初めて成果がでるためです。当ファンドの企業調査でも、全社で資本収益性を重視している企業ほど、ROEが⾼く、且つ株式市場において⾼く評価されていることが分かっています。そのためにも、売上や利益⽬標だけでなく、ROICなどの指標も⼈事評価体系に連動させ、定量的成果に応じて従業員に報いていく必要があると考えます。
 当⽉末現在、当ファンドのポートフォリオにおける⽇本へのエクスポージャーは約30%となっています。保有銘柄の中には、リクルートホールディングスやソシオネクストのようなバリュエーション・プレミアムを備えた急成⻑企業もあれば、三菱商事、東京海上ホールディングス、オリックスのように、持続的な⾃社株買いや増配の実践が可能でありながら、割安なバリュエーションで取引されている成⻑企業もあります。これらの銘柄に共通するのは⾼い競争優位性とグローバルに巨⼤な市場を持っていることです。今後の市況動向にかかわらず、これらの銘柄は有利な⽴場にあると当ファンドは考えています。

「スパークス・ベスト・ピック・ファンド(日本・アジア)マーケットヘッジあり」の株式市場変動リスク低減について

 当月、「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり」は、株式市場の変動リスクの低減を図ることを目的として、投資する投資信託証券を通じて投資する株式の市場感応度(ベータ値)に応じて、投資する投資信託証券を通じて株価指数先物取引等の売建て額を調整しました。

2023年8月の運用コメント

株式市場の状況

<日本の株式市場>

 2023年8月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比0.43%の上昇となりました。
 当月の日本株式市場は、大手格付け会社フィッチ・レーティングス社(米国)による米国債の格下げを背景とした米国株安の流れを受け、下落から始まりました。月半ばは、中国の軟調な経済指標(消費者物価指数など)や、中国不動産開発大手の米国破産法の申請が嫌気され、下げ幅を広げました。月後半は、中国の追加利下げが好感されたほか、ジャクソンホール会議においてさらなる利上げへの懸念が後退したことで値を戻す展開となり、最終的に前月末を上回る水準で月を終えました。

<アジアの株式市場>

 当⽉、アジア株式市場は急落しました。⽇本を除くアジア市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、前⽉末比6.39%下落しました。米国の経済指標とインフレ率が予想を上回ったため、FRB(⽶連邦準備制度理事会)がさらなる金融引き締めに踏み切るのではないかという懸念が広がり、株式と債券がいずれも下落しました。
 また、中国の輸出と住宅セクターの低迷が続いたことで、投資家心理はさらに冷え込みました。中国の前月の輸出(米ドル建て)は前年同月比14.5%減となりましたが、これは世界経済が低迷していることや、米中対立のために市場シェアの継続的な低下が影響していると考えます。中国の不動産開発大手のCountry Garden Holdings社は手元資金が不足し債務返済が滞る可能性があると発表し、それを受けて他の不動産開発業者の株価が下落しました。中国政府は住宅ローンの融資条件を緩和する旨を発表し、不動産セクターへのてこ入れを図りましたが、信頼回復には時間がかかる模様です。
 インド市場では大型株が低調な一方、小型株は好調とパフォーマンスに差が生じました。ただし、ここ数年の政府による持続的なインフラ支出と中国からのシェア奪取による輸出増加の効果もあって、経済成長全般は依然堅調です。

ファンドの運用状況

 当⽉パフォーマンスにプラスに貢献した銘柄は、Classys(韓国/ヘルスケア)、Samsonite International(香港/⼀般消費財・サービス)、Lemon Tree Hotels(インド/⼀般消費財・サービス)などでした。一方、JYP Entertainment(韓国/コミュニケーション・サービス)、ソニーグループ(一般消費財・サービス)、E Ink Holdings(台湾/情報技術)などがマイナスに影響しました。
 当ファンドは、日本の3大損害保険会社の1つである東京海上ホールディングスに投資を行っています。そこで、投資理由を改めて説明する前に、最近マスコミを賑わせている1)企業向け火災保険(共同保険(複数の損害保険会社が共同して1つの保険契約を引き受ける方式))の価格調整疑惑と、2)㈱ビッグモーターの保険不正請求問題について当ファンドの考えを簡単に述べようと思います。
 1)については、そもそも企業向け火災保険は業界全体で赤字が続いており、近年は保険料値上げで採算改善に努めているという事実があります。談合によって共同保険の価格を吊り上げ、大きな利益を生み出していれば話は別ですが、赤字解消という経営課題を踏まえると、本件によって収益改善努力がストップすることはないと考えます。保険ビジネスは、加入者が単独では負担しきれない損害リスクを、保険事業者が不特定多数の顧客の保険料を貯めておくことで、いざというときに経済的な補償をする役割を担っています。もし会社が黒字体質へ転換できなければ、損保業界全体のリスク引き受け能力の低下につながり、保険ビジネスがもつ社会的な存在意義が損なわれてしまいます。当ファンドでは火災保険料値上げの流れは大きく崩れないと考えています。
 2)については、損保会社が㈱ビッグモーターと共謀して組織的な悪事を働いていたという可能性は低いと思われます。また、この問題が間接的に自動車保険全体の保険料を不当に吊り上げていたという疑念については、不正対象となった車両数が僅少であると考えられることから杞憂に終わるとみています。
 前述の件を受けて、損保会社の代理店に対するガバナンスや、疑惑発覚後の対応ぶり、および社内ガバナンス体制全般の不備を問う声が多いのは事実です。しかし、今後はより一層のガバナンス強化を進めるきっかけになればポジティブに捉えることができます。一時的な損保会社のイメージ低下はあるかも知れませんが、業績が大きく揺らぐことはないと考えます。

投資対象としての損保ビジネスの魅力①:銀行業、資産運用会社との比較

 当ファンドでは保険業を魅力的なビジネスとして捉えています。損保事業の本質はリスクの引き受けです。保険会社は保険料を受け取る対価として、自動車事故や火災が起きたときに修理代などの損害費用を保険契約者に代わって負担します。契約時に保険料を受け取ってから、保険金を支払うまでの間、保険会社は保険料を運用することで収益を獲得します。また損害が発生しなかった場合や、実際に支払われる保険金が受け取った保険料を下回った場合、その差額は(事業経費を控除したうえで)保険会社の利益となります。このように保険業の収益源は主に運用収益と引受収益から成っています。
 広義の金融業には保険業の以外に、銀行業、資産運用業がありますが、いずれも外部資金を活用して収益をあげるビジネスモデルです。しかし、それぞれは異なる特徴をもっています。例えば銀行は、預金を集め、それを貸し出しにまわすことで利ざやを得ています。預金元本は預金者に帰属するので、銀行からみると預金を「借りている」ことになります。預金者に支払う利息は銀行業の「資金調達コスト」です。一方、保険会社は払い出す保険金が、受け取った保険料よりも多ければ、その差額が「資金調達コスト」に相当します。保険引受事業が黒字なら、それは資金調達コストがかかっていないどころか、「お金をもらって」保険契約者から資金調達していることになります。つまり銀行業と比較すると、黒字の引受事業を持つ保険会社のほうが魅力的だと考えます。
 資産運用会社は顧客から資金を預かり、運用サービスの対価として手数料をもらうという意味では黒字の保険引受事業と似ています。しかし、資産運用会社が生み出す運用益は顧客に帰属するので、運用で獲得したリターンが保険会社のものになるのと大きく異なります。この点も、保険会社のほうが魅力的と考えます。即ち、保険引受において黒字計上をし、運用面で高いリターンを獲得できる保険会社は「いいビジネス」なのです。

投資対象としての損保ビジネスの魅力②:生保ビジネスとの比較

 損保ビジネスと生保ビジネスの違いについてはどうでしょうか。生保ビジネスの魅力としては、引受事業から生み出される利益が損保に比べて安定している点が挙げられます。この利益の源泉は、生命保険料を算出する際に使用される想定死亡率と実際の死亡率の差分から発生するもので、損保ビジネスの損害発生率に比べて変動は小さく、また一般的に生命保険は契約期間が数十年に及び、想定される保険金額は契約当初に固定されているため、インフレが進んだ場合でも保険会社の負担が増すことはありません。これに対して、損害保険はインフレによる自動車修理コストの上昇などが支払保険金を押し上げてしまいます。
 一方、生保ビジネスの難点としては長期金利が低迷している事業環境では高い資本収益性を享受しにくい点が挙げられます。この点、損害保険は保険契約期間が短期であるため、金利上昇局面では早いタイミングで運用収益の改善を見込めます。また後述するように、損保ビジネスは海外展開によって事業リスクの低減が図れるため、ひいては株式リスクプレミアムの低下が見込まれるというのも、当ファンドが生保ビジネスよりも損保ビジネスを選好する理由です。

投資対象としての損保ビジネスの魅力③:銀行、生保会社よりも海外展開するメリットが大きい

 日本では人口減少が続いていることから、銀行、損保会社、生保会社各社とも海外進出に積極的です。なかでも損保会社はビジネスの特性上、海外展開が非常に理にかなっていると考えます。
 日本の損保会社の国内引受事業は自動車保険と火災保険が大半を占めており、自然災害リスクは台風や地震に集中しています。ところが、海外は必ずしもこのような国ばかりではありません。特に世界最大市場の米国は保険分野も多岐にわたっており、自然災害向け保険だけでなく、D&O保険(役員等賠償責任保険)や、労働者災害補償保険、団体医療保険、サイバー保険などの特殊保険市場も大きく、日本の損保会社が現地進出や現地企業を買収することで引受リスクの分散が可能となります。株式投資の観点からいうと、ビジネスリスク分散・低減によって、株式リスクプレミアムの縮小が見込めるので、理論上は株価上昇要因になるのです。
 これに対して、日本のメガバンクも米国やアジアなどに注力していますが、貸出業務に大きな影響を与える金利動向はグローバルで連動する傾向があります。例えば、米国でインフレの高まりによって金利が上昇すると、ドル高をもたらします。これが他国において輸入物価の高騰を通じたインフレを引き起こすので、現地の金利にも上昇圧力がかかります。つまり海外展開をしても金利リスクの分散にはあまり寄与しないということです。
 また生保ビジネスの場合は、最初から不特定多数の個人との契約が多いので、自国市場だけで十分なリスク分散が図れます。海外進出しても、想定死亡率は日本とあまり変わらないのでリスク分散にはなりません。
 このように銀行も生保会社も、規模拡大を目的とした海外展開には意味がありますが、事業リスクの分散には損保ほどのメリットは享受できないと考えます。

投資対象としての損保ビジネスの魅力④:世界的にみても珍しい競争優位性がある

 次に、なぜ日本の損保会社がグローバルのなかで稀有なポジションにあるのかについて説明します。2022年6月の月次報告書でご説明したように、日本の損保業界がもつ競争優位性として、
 1)寡占状態にある国内市場で生み出される高い収益性と潤沢な利益
 2)未だ多額な含み益を持つ政策保有株の存在
 の2点が挙げられます。
 前者については、1990年代の金融ビッグバン以降の保険自由化によって再編が進み、今日の国内損保業界は東京海上ホールディングス、㈱MS&ADインシュアランスグループホールディングス、㈱SOMPOホールディングスの3グループにほぼ集約され、この3社の市場シェアは合計で9割ほどを占めています。世界の主要地域において、これほど寡占化が進んでいる損保業界はありません。例えば米国では2020年時点で自動車保険だけで50社以上存在し、最大手のState Farm社でも16%の市場シェアしかありません。このため競合環境も激しいと言われています。
 後者については、1960年代に企業向け保険ビジネスにおける顧客関係構築・維持を目的に購入された政策保有株は、2023年3月末時点で各社とも時価ベースでおよそ1.2~2.4兆円程あります。今日において、政策保有株は非効率な金融資産としてみなされていることから、各社において毎年数百~数千億円程度売却され資金化しており、それが戦略的に活用されています。海外損保業界ではこのような豊富な含み資産を持つ事例はみられません。

投資対象としての損保ビジネスの魅力⑤:模範的なキャピタルアロケーションを実践している

 当ファンドではメガ損保グループ3社とも、お手本となるようなキャピタルアロケーションを実践しているという意味で、経営陣は優れていると考えます。即ち、各社とも国内の潤沢な利益と政策保有株の売却資金を、株主価値の増大のため様々な方法で活用しているということです。
 その一つが海外M&Aです。例えば東京海上ホールディングスは過去20年近くにわたって、海外保険事業を拡大してきたという経緯があります。特に2008年以降、企業買収を積極化しており、2023年3月期実績では利益構成割合の42%が海外事業によってもたらされています。
 良いM&A候補が見つからない場合、株主還元を積極的に行っています。株価が割安な状況下で行われる持続的な自社株買いや増配は株主にとって重要と考えます。自社株買いでは株価が割安であるほどより多くの株を買い入れることができ、結果として株主に帰属する一株当たり利益が多くなります。とりわけ㈱MS&ADインシュアランスグループホールディングスと㈱SOMPOホールディングスの場合は、株価が純資産価値1倍を割れている、いわゆる「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ銘柄」なので、自社株買いをすればするほど一株当たり純資産額が増えていきます。つまり、株価水準が変わらなければ、割安感がどんどん強まっていくことを意味します。また別の観点からみると、経営陣は株主還元を通じて不要な株主資本の増加を抑え、ROE(株主資本利益率)を高めることができる立場にあるとも言えます。

株価のバリュエーション

 東京海上ホールディングスの2023年度通期予想は修正純利益6,700億円、修正純資産は同39,260億円となっており、目下計画通りに進捗しています。日本の損保会社が使っている修正純利益とは、異常危険準備金、価格変動準備金などを足し戻した利益数値であり、国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards、IFRS)採用の海外損保会社と比較するうえで妥当な利益概念です。これを前提とすると、現在の株価バリュエーションは今期予想PER約12倍、PBR約1.6倍、予想配当利回り約3.7%です。同社は過去10年でChubb社(スイス)、Allianz社(ドイツ)、AXA社(フランス)などを凌ぐ成長を遂げており、修正ROEは17%に近づこうとしています。利益規模と収益性でグローバルトップクラスの損害保険会社になる可能性を秘めていることを鑑みれば、魅力的といえるのではないでしょうか。

「スパークス・ベスト・ピック・ファンド(日本・アジア)マーケットヘッジあり」の株式市場変動リスク低減について

 当月、「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり」は、株式市場の変動リスクの低減を図ることを目的として、投資する投資信託証券を通じて投資する株式の市場感応度(ベータ値)に応じて、投資する投資信託証券を通じて株価指数先物取引等の売建て額を調整しました。

2023年7月の運用コメント

株式市場の状況

<日本の株式市場>

 2023年7月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比1.49%の上昇となりました。
 当月の日本株式市場は、FOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨にて年内2回以上の利上げが示唆されたことや、米国の雇用統計の結果を受け、利上げ継続への懸念が強まり下落して始まりました。一方で月半ばには、米国のCPI(消費者物価指数)が市場予想を下回り、利上げ停止が近いとの期待から堅調に推移しました。月後半は、日銀によるYCC(イールドカーブ・コントロール)の柔軟化が発表され、一時的に値動きの激しい展開となりましたが、現行の緩和姿勢を維持するとの受け止めから市場に安心感が広がり、最終的に期初を上回る水準で月を終えました。

<アジアの株式市場>

 当月、アジア株式市場は前月に引き続き堅調に推移しました。日本を除くアジア太平洋市場に使用される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(日本を除く、米ドル建て)指数は、中国、マレーシア、シンガポールなどが主にプラスに寄与し、前月末比5.82%上昇しました。中国政府は消費や、住宅セクター、資本市場向けの刺激策を発表しました。民間企業の支援を目的とする31項目ものガイドラインが発表されたことを受け、中国市場に対する投資家心理は改善しました。
 AI(人工知能)の将来性に対する楽観論が、引き続き情報技術関連銘柄の上昇要因となりました。Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)は、AI関連の需要拡大が予想されることから、同分野への設備投資を拡大すると発表しました。しかしスマートフォンやPCは在庫調整がほぼ終了した模様であるにもかかわらず、半導体の需要が引き続き低迷しており、マクロ経済に対する信頼感の低さがうかがわれます。台湾や韓国に拠点を置く他のIT企業も、直近の決算説明会で同様の見解を示しました。
 インドとインドネシアは引き続き投資家の注目を集めています。両国は製造業への投資と製造能力の向上を目的に、積極的に外資を呼び込んでいます。インフラ整備はこれまでと同様、今も経済成長の原動力であると当ファンドは考えています。両国では国内消費主導型セクターも好調なパフォーマンスを記録しています。

ファンドの運用状況

 当⽉パフォーマンスにプラスに貢献した銘柄は、Mitra Adiperkasa(インドネシア/⼀般消費財・サービス)、CNOOC(中国/エネルギー)、JYP Entertainment(韓国/コミュニケーション・サービス)などでした。一方、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報通信)、Classys(韓国/ヘルスケア)、セブン&アイ・ホールディングス(生活必需品)などがマイナスに影響しました。
 当ファンドの組入銘柄であるファーストリテイリングが当月2023年8月期第3四半期決算を発表しました。同決算によると、9か月累計の売上は前年同期比約21%増、営業利益は同約22%増と好調が続いています。
 同社は、ユニクロブランドを展開し、ベーシックアイテム中心に手ごろな価格で高品質な衣料を製造販売するだけでなく、「ヒートテック」や「エアリズム」といった機能性を前面に出した商品戦略も特徴のひとつです。前月の月次報告書ではセブン&アイ・ホールディングスの株価バリュエーションの割安さについてコメントをしましたが、ファーストリテイリングの株価は同社に比べるとPER(株価収益率)の面などでは割高です。
 セブン&アイ・ホールディングスに比べてファーストリテイリングの株価が市場で高く評価されているのは、経営陣による実行力の違いにあると思われます。両社とも日本発のグローバル小売業ですが、ファーストリテイリングのほうが売上および利益成長率やROE(株主資本利益率)などの資本収益性の面で大きく上回っているからです。
 ただ、目先のバリュエーションが高くても、長期的な成長ポテンシャルを勘案すれば投資魅力があると言えます。例えば、グローバル優良成長株への長期投資を得意とする運用会社Fundsmith社(英国)が行った分析によると、グローバル化粧品メーカーL'Oreal社(フランス)の株式に、1973年1月に当時の一株当たり利益の281倍に相当する株価で投資したとしても、2019年9月30日までの長期リターンは年率7%と同期間のMSCIワールド・インデックス指数をアウトパフォームしたことが検証されています。つまり、長期展望の明るいビジネスであれば短期的に割高にみえる株式でも魅力的な投資対象になりえると考えます。
 ファーストリテイリングの業績を着実に拡大させているのは海外ユニクロ事業です。わずか15年ほど前には国内事業の10分の1程度の規模しかありませんでしたが、2023年8月期第3四半期では9か月累計海外ユニクロ事業売上が同国内売上を50%以上上回っており、営業利益では海外が国内の2倍弱の規模に成長しています。
 同社は2027年8月期までに欧州事業で売上5,000億円、北米事業で売上3,000億円を目標値として掲げています。これまでの10年間は主に中国の売上成長が海外の牽引役でしたが、近年は同社が打ち出している「LifeWear(究極の普段着)」コンセプトが欧米において浸透していることに経営陣が手ごたえを感じているためです。全世界においてプレゼンスを築きつつある同社は衣料品ブランドのグローバル企業として評価が益々相応しいと考えます。
 同社の潜在的なグローバル売上拡大余地はどれくらいあるのでしょうか。よくあるアプローチとして、対象市場の何%シェアをとれるかという考え方があります。しかし、顧客ニーズが細分化され、嗜好も多岐にわたる業界は妥当な市場シェアを仮定するのが難しいと思われます。例えば、ハンバーガーチェーン店は外食産業に属していますが、人々が1日3食、365日ハンバーガーを食べ続けることはありえないため、業界全体が潜在市場になることはまずありえません。よって「市場シェアが僅か数%だから膨大なシェア拡大余地がある」という議論には説得力に欠けてしまいます。衣料品も同じだと考えられます。例えば、世界中の消費者が冬物衣料を1年中着ることはありませんので、衣料品市場全体に対する市場シェアの多寡を議論するのはあまり意味をなさないでしょう。
 当ファンドでは、海外で先行している同業他社の売上を参考にしており、具体的にはNIKE社(米国)やZARA(ザラ)ブランドを展開しているInditex社(スペイン)などとの比較を行っています。理由は、近年athleisure(athletic(アスレチック)+leisure(レジャー)からの造語、普段着として着る運動着、またはそのスタイルのこと)トレンドによってスポーツアパレルを普段着として着る人が増えているため、ユニクロブランドとNIKEブランドの対象市場が重なってきていること、またベーシックデザインが中心であるユニクロはファッション性を取り入れた製品にも注力しているため、ZARAブランドとターゲット層が被っていると考えられるためです。
 NIKE社、Inditex社、ファーストリテイリング各社の自国・自地域市場における売上規模と人口から当ファンドが算出した一消費者当たりの売上高は各社とも同水準になることから、自国・自地域市場における各社の浸透度合いはほぼ同程度であると考えています。
 一方、アウェイともいえる海外市場はどうでしょう。例えばNIKE社の直近の地域別売上高は、EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)は約134億米ドル、グレーターチャイナ(大中華圏)が約72億米ドル、アジア太平洋・ラテンアメリカが約64億米ドルです。Inditex社の直近の地域別売上高は南北アメリカが約71億米ドル、アジアおよびその他地域が約64億米ドルです。また規模がやや劣るAdidas社(ドイツ)の北米セグメント売上高は約70億米ドル、H&MブランドのHennes&Mauritz社(スウェーデン)の南北アメリカセグメント売上高は約47億米ドルとなっています。
 地域別売上高を比較してみると、各社とも主要欧米地域で1兆円程度、まだ購買力の低いアジアや南米などのその他地域でも5,000億円を超える売上規模を誇っていることがわかります。つまりファーストリテイリングが目指している欧州5,000億円、北米3,000億円という売上目標はさほど高いハードルではないように感じられるのです。
 ファーストリテイリングの過去5年平均ROEは約17%と、NIKE社の同約41%やInditex社の同約21%に対して見劣りしますが、日本企業の平均は大幅に上回っているという意味で優良企業であると言えます。また、過去5年平均粗利率は約50%と、NIKE社の約44%やInditex社の約56%の中間に位置しており、Adidas社やHennes&Mauritz社などと比べても同水準であることから、今後グローバル勢に対して資本収益性の面で劣らないポテンシャルは十分にあると考えます。また、同社の売上、利益規模はNIKE社やInditex社に比べてまだ半分以下であり、伸びしろは大きく、時価総額の拡大にも期待したいところです。

 当ファンドは前月、インドネシア企業の調査を目的にジャカルタを訪問し、銀行、生活必需品、鉱業、通信、自動車部品など、様々な業界の企業と面談を行いました。インドネシアの状況は、新型コロナウイルス感染症の拡大以降、大きく変化しています。中でも顕著なのは、同国が製造業の川下への移行を進めていることです。同国はかつて、天然資源の一大輸出国でした。しかし、資源の輸出によって経済は天然資源価格の変動に晒され、付加価値もあまり生まれませんでした。そこでインドネシア政府は川下製造業の発展に力を入れるようになりました。同国が川下産業への移行に成功すれば経済の回復へ寄与するだけではなく、大幅な経済成長をもたらすと当ファンドは考えております。
 当ファンドが面談した大手消費財企業の一部は、従来と同様の戦略を貫き、利益を上げながら着実に成長しています。インドネシアの消費者の志向に一貫性があり、変化が起きにくいことは、きわめて魅力的な特性です。インドネシア国内に大きな可能性がある一方で、一部のインドネシア企業は既に海外に目を向け、国外で成功を収めているものもあります。例えば、国内最大級の即席麺メーカーであるIndofood CBP Sukses Makmur(インドネシア/生活必需品)は、アフリカ地域や中東地域で好業績を上げ、ナイジェリア、エジプト、トルコなどで圧倒的な市場シェアを持っています。これらの国は人口が多く、即席麺の消費量がまだまだ低水準です。同社がこうした市場で継続的に地位を高め、アフリカ地域以外の国に進出することができれば、市場規模はインドネシアよりさらに大きくなる可能性があります。同社の海外事業は2022年に前年比約19%成長し、売上寄与度はおよそ30%近くに達しています。同社については、今後の月次報告書で詳しくご紹介する予定です。

「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり」の株式市場変動リスク低減について

 当月、「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり」は、株式市場の変動リスクの低減を図ることを目的として、投資する投資信託証券を通じて投資する株式の市場感応度(ベータ値)に応じて、投資する投資信託証券を通じて株価指数先物取引等の売建て額を調整しました。

2023年6月の運用コメント

株式市場の状況

<日本の株式市場>

 2023年6月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比7.55%の上昇となりました。
 当月の日本株式市場は、月前半は米連邦債務の上限停止による米国株高の流れを受け、大幅に上昇いたしました。月半ばには、FRB(連邦準備制度理事会)による追加利上げの示唆を受けた軟調な米国株の影響や、衆院解散への期待剥落が嫌気された一方、日銀の金融緩和の維持、米著名投資家の日本株追加投資の発表が好感され、一進一退の動きで推移しました。月後半は、株価上昇の反発と見られる下落の局面もありましたが、米景気悪化懸念の後退と円安進行が下支えをし、最終的に前月末を上回る水準で月を終えました。

<アジアの株式市場>

 当⽉、アジア株式市場は堅調に推移しました。⽇本を除くアジア市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、前月末比2.81%上昇しました。米国の経済指標が堅調だったことで、投資家心理が世界的に好転し、情報技術セクターを中心に米国の株価指数が軒並み上昇しました。AI(人工知能)の将来性に対する楽観論の広がりによって、アジアの情報技術関連銘柄が引き続き上昇し、中国が大規模な景気対策を打ち出すという観測も市場の下支え要因となりました。
 当月は米国のブリンケン国務長官が中国を訪れ、習近平国家主席と会談しました。結果次第では米中関係が改善に向かうのではないかという期待感が広がりましたが、大きな進展はありませんでした。それどころか、米国は半導体製造装置と製品の対中輸出制限を強化する計画を発表し、中国も半導体製造、EV(電気自動車)、通信機器に不可欠な2種類の金属(ガリウムとゲルマニウム)の輸出を制限してこれに応じました。
 一方、インドのモディ首相は米国を訪れ、温かい歓迎を受けました。同首相はApple社のティム・クックCEO(最高経営責任者)やTesla社のイーロン・マスクCEOら、米国を代表する企業のリーダーと会談し、今後の投資先としてインドを検討するよう促しました。インドの長期的成長見通しを肯定的に捉える見方が裏付けを得たことで、インドの主要な株価指数のNifty50指数とSENSEX指数が、当月ともに史上最高値を更新しました。

ファンドの運用状況

 当⽉パフォーマンスにプラスに貢献した銘柄は、Classys(韓国/ヘルスケア)、三菱商事(資本財・サービス)、NWS Holdings(中国/資本財・サービス)などでした。一方、Indian Energy Exchange(インド/⾦融)、i-Tail Corporation(タイ/⽣活必需品)、Mitra Adiperkasa(インドネシア/⼀般消費財・サービス)などがマイナスに影響しました。

 5月下旬に当ファンドの組入銘柄の1社において、経営陣と米国アクティビストファンドによるプロキシーファイト(委任状争奪戦)が繰り広げられました。同アクティビストファンドは経営陣と友好的な関係を築くことで有名ですが、会社側の理解が得られず株主総会で票を争うことになり、株式市場でも注目を集めました。
 標的となったのは「セブン&アイ・ホールディングス」です。アクティビストの中でも穏健派であるValueAct Capital社(米国、以下「ValueAct社」)は今回、グループ全体の収益性改善が遅々として進んでいないとして、現社長を含む取締役4名の入れ替えを求めました。ValueAct社はセブン&アイ・ホールディングスの発行済株式数2%近くを保有する大株主の1社です。
 当ファンドでは、日本人なら誰もが知るコンビニエンスストアである「セブン-イレブン」を成長させてきた同社経営陣を高く評価しています。この点において、当ファンド投資哲学のひとつである「卓越した経営陣」に合致していますが、一方で改善余地が大きいのも事実だと考えています。以下、当ファンドが考える経営陣の改善余地を挙げてみます。

1)2005年に持株会社制に移行して以降、長らくスーパーストア事業が足を引っ張っており、リストラが遅いのは周知のとおりです。百貨店事業の売却も、当初予定から遅れが生じており、先行きの不透明感が漂っています。持株会社を発足した当初に謳われていたグループのシナジー効果ははっきりと認められないまま20年近くが過ぎようとしており、より迅速な取り組みが必要だと考えられます。

2)ValueAct社が4月2日にリリースした「Shareholder Questions for Seven & I Board of Directors」のなかには、全部で9つの株主質問が記載されています。しかし、同社はいまだ具体的な説明をしていません。なかでも同社が2020年に海外の小売企業から買収提案を受けたという話は当ファンドにとっても関心の高い出来事です。本件は報道記事がインターネット上から削除されているため真相ははっきりしていませんが、もし事実であるなら、当時の株主は高い株価で同社が買収されるチャンスについて賛否を表明する機会が与えられなかったことになります。経営陣は受託者責任(Fiduciary Duty)を怠った可能性があり、真偽について説明を行う必要があると考えます。

3)経営陣はイトーヨーカ堂のノウハウがコンビニエンスストア事業のフレッシュフード開発に欠かせないと強調しています。しかし、それだけの為に果たして多額の資本を投下して低採算の店舗資産(セグメント収益約14,000億円に対して約100億円の利益しか生み出していません)を維持する必要があるのか、システム投資や仕入をグループ共同で行うスケールメリットが重要であるなら、株主が納得する定量的な説明が求められます。

4)経営陣は4月18日にリリースしたValueAct社に反論するプレゼンテーション資料のなかで、Speedway社(米国)を買収したことによって、同社株のEV/EBITDAマルチプル(簡易買収倍率、買収にかかるコストを何年で回収できるかを⽰す値)が4.3倍から7.5倍に拡大したと主張し、あたかも株式市場からの評価が上がったかのような主張をしています。EV(Enterprise Value)は企業価値と呼ばれ、株式時価総額とネット有利子負債の合計であり、EBITDAは税引前利益に特別損益、支払利息、減価償却費を加えて算出される利益を表します。当ファンドの見解では、マルチプル拡大は同社がSpeedway社の買収のために多額の借入金を調達したことで、分子であるEVが大きく増えたことに起因しています。つまり買収によってEBITDAは増えたものの、EV増加率が上回ったためにマルチプルが押し上げられたに過ぎないと考えます。むしろ同社に対する株式市場の評価を株価収益率(PER)でみると、2005~2019年度の平均20倍以上から、現在は実質13.8倍程度(のれん償却前当期利益を前提としたPER)へと切り下がっていると考えられます。

5)同社はこれまで発展途上国の経済成長に伴うコンビニ普及の恩恵を受けていません。現在、米国と日本を除くセブン-イレブンはアジアを中心に4万店舗以上ありますが、利益貢献はわずかしかないのです。これはアジアでの店舗運営の大半がマスターフランチャイズモデルではなく、ライセンス契約によって成り立っているためです。ライセンス契約では本社(フランチャイズオーナー)が店舗ブランドの利用権を付与しますが、店内レイアウトや運営面の詳細は現地エリアフランチャイジーの裁量に委ねられています。セブン&アイ・ホールディングスはフランチャイズオーナーとして限定的な関与しかしないため、わずかな収益しか得ていないのです。台湾(President Chain Store社)やタイ(CP All社)に上場しているエリアフランチャイジー企業がそれぞれ1.3兆円、2.3兆円程度の時価総額に育っていることを考えると、この機会損失は大変残念です。

6)このことを反省してか、同社は今般、米国・日本以外の地域における店舗網拡大に意欲を示しています。しかし2022年度決算説明資料では、手始めにベトナム市場でエリアフランチャイジーへの経営関与を深めることで、2028年度までに500店舗体制(2022年度実績79店舗)を築くという目標しか言及しておらず、やや迫力不足なのは否めません。元来、フランチャイズ型ビジネスモデルのメリットは、完成された店舗オペレーションと豊富な販売実績を持つ商品群、そして高い消費者認知度を武器に、少額投資で迅速に出店することを可能にするものです。米国のマクドナルド、バーガーキング、ケンタッキーフライドチキンなどはこの方式を駆使して、多数の国で同時並行してスピード感ある出店を行っています。ValueAct社のノウハウなどを活用して米国チェーン店に負けないような業容拡大を期待したいところです。

 以上のように課題・問題点はありますが、今後が期待できる部分も数多くあります。

 まず注目すべきは米国コンビニ事業です。同社開示資料によると、米国でのコンビニ総店舗数は2020年12月末時点で15万店程度ですが、Speedway社の買収によって同社は合計約1.3万店を抱える圧倒的なプレーヤー(市場シェア約10%)になりました。日本のコンビニ業界はセブン-イレブン、㈱ファミリーマート、㈱ローソンの3社で既に寡占状態にありますが、米国では上位10社でも占有率はまだ2割程度しかありません。米国コンビニ市場の潜在規模は非常に大きいと考えられるため、同社が市場シェアを引き上げることで多くの利益をもたらすことが考えられます。長期的にはEV(電気自動車)の普及に伴いコンビニに併設されているガソリンスタンド事業の先行きが懸念されますが、店舗におけるオリジナルのフレッシュフード商品やプライベートブランド商品の売上拡充により十分カバーできると考えられます。また米国における2022年のEVの新車販売割合は6.7%に留まり、ガソリン需要は当分の間なくならないでしょう。需要が構造的な減少トレンドに入ったとしても、新たなガソリン事業者の参入やガソリンスタンドの新規設置もみられないことから、同社のような業界大手は残存者メリットを享受することも見込まれます。そして、ガソリン事業が業界全体として衰退傾向になれば、ガソリンスタンド併設型コンビニエンスストア事業者の6割強を占める零細プレーヤーが立ち行かなくなり、身売りするオーナーが続出することが想定されます。同社にとってはそのような事業者を買収し、業界再編・コンビニ事業拡大を加速させる絶好のチャンスとなるでしょう。
 一方、国内コンビニ事業は成長の頭打ちが心配材料ですが、同社は絶え間ない既存店のレイアウト改善や、ネットコンビニ分野でのデリバリーサービスの拡充などに取り組んでいます。海外からの訪日客が回復すれば、同社売上にも寄与するでしょう。足元の円安は米国事業の拡大をもたらすだけでなく、訪日客増加を誘引するきっかけにもなると考えられます。さらに上述のように海外コンビニ事業拡大のアクセルを踏むことで、国内利益は相対的に小さくなっていくことが予想されるため、懸念も少しずつ和らぐと考えます。だからこそ、コンビニ事業に経営資源を集中し、今以上に海外出店ペースをあげていくことが望まれます。
 同社株価バリュエーションに話を移すと、現在の株価は割安な水準にあると考えます。例えば日本の会計基準を採用している同社では、Speedway社買収に伴うのれん償却費が年間1,000億円以上に上るため、通常EPS(1株当たり純利益)(同社2023年度予想322.68円)とのれん償却前EPS(同450.06円)の間には4割程度の開きがあります。のれん償却は現金支出を伴わない費用項目であることから当ファンドでは後者のEPSを使用すべきと考えており、実質的なPERは13.8倍程度と東証株価指数の平均を下回っています。
 EV/EBITDAでみるとどうでしょう。前述のとおり、買収による借入金が増えたことで、現在のEV/EBITDAは約8倍弱になりましたが、それでも同業他社で米国2番手プレーヤであるAlimentation Couche-Tard社(カナダ)と比較すると割安な水準にあります。なおセブン&アイ・ホールディングスは2023年2月期より在外子会社の会計基準を変更しており、オペレーティングリース債務はバランスシート上に負債計上されるようになりました。これに伴い、全額費用計上されていたオペレーティングリース料が、支払利息と減価償却にわけて損益計算書上に反映されることになり、2023年2月期実績EBITDAは新たに追加された減価償却費分の推定800億円程度が前年度に比べて「かさ上げ」されていると考えられます。しかし、このような会計要因を排除しても、同社が同業他社よりディスカウントされているのは変わらないと考えられます。
 フリーキャッシュフローでみた場合は、2022年度の営業キャッシュフローは9,284億円、投資活動に伴う支出は4,132億円、よってフリーキャッシュフローは5,152億円となり、フリーキャッシュフロー利回りは9.4%程度(フリーキャッシュフロー/時価総額)です。これは国内リスクフリーレートを大幅に上回る水準です。また仮に、営業キャッシュフローから㈱セブン銀行に関わる預金やコールマネーなどの資金流入を営業キャッシュフローから差し引いたとしても、フリーキャッシュフローは4,000億円を優に超えており、控えめにみても同社株価に割高感は認められないと考えます。なお、同社が開示している2025年度のフリーキャッシュフロー目標(除く金融)は5,000億円以上であり、十分に達成可能な水準と考えます。
 最後に、冒頭のプロキシーファイトは会社側の勝利で終わりましたが、取締役の再任議案に関しては昨年までの90%以上の賛成比率が今回は約65%~約76%まで低下しました。現経営陣は今回の件をきっかけに、株式市場から従来にも増して厳しい目で業績が評価されることになるでしょう。ValueAct社にしてみれば、プロキシーファイトで敗れはしたものの、一定の成果は残したと言えそうです。

「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり」の株式市場変動リスク低減について

 当月、「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり」は、株式市場の変動リスクの低減を図ることを目的として、投資する投資信託証券を通じて投資する株式の市場感応度(ベータ値)に応じて、投資する投資信託証券を通じて株価指数先物取引等の売建て額を調整しました。

2023年5月の運用コメント

株式市場の状況

<日本の株式市場>

 2023年5月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比3.62%の上昇となりました。
 当月の日本株式市場は、月前半に開催された米国FOMC(連邦公開市場委員会)の結果を受け、一時円高ドル安が進んだことで一進一退の動きで推移しました。月半ばには海外投資家による資金流入が続き、TOPIXと日経平均株価ともに約33年ぶりの高値を更新しました。東京証券取引所の市場改革への期待や、日銀の金融緩和継続姿勢もサポート材料となりました。一方で、月後半には中国の低調なPMI(製造業購買担当者景気指数)や、市場予想を下回る国内の4月の鉱工業生産指数の結果が懸念され、弱含みで推移しましたが、最終的に前月末を上回る水準で月を終えました。

<アジアの株式市場>

 当⽉、アジア株式市場はまちまちの値動きとなりました。日本を除くアジア市場に使用される⼀般的な指数であるMSCIアジア(日本を除く、米ドル建て)指数は、前月末比0.46%下落しました。世界経済の減速、米国の債務上限問題、中国における製造活動の鈍化などが懸念され、投資家の間に不安が広がりました。米中関係には未だに緊張緩和の兆しが見られません。中国は「ネットワークセキュリティ上の深刻なリスク」を理由に、主要インフラプロジェクトで大手半導体メーカーであるMicron Technology社(米国)の製品の使用を禁止すると発表しました。米国政府が中国向け半導体製品の輸出を規制したことから、中国当局が対抗措置に踏み切ったという見方が広がっています。
 中国では国営企業の改革が引き続き注目の的となっていますが、これは中国政府が国営企業のガバナンスと収益性の改善に向けた取り組みを強化しているためです。ある規制当局の高官は、投資家は中国国営企業の評価にあたって「中国らしい特色をもった企業価値評価システム」を模索すべきだと述べています。こうした要因から、当月は一部国営企業の株価が上昇しました。
 当月の好材料としては、テクノロジー関連銘柄の上昇があげられます。半導体設計会社であるNVIDIA社(米国)が好決算と良好な業績見通しを発表したことを受けて、アジアの半導体関連銘柄に対する投資家心理が改善しました。同社の半導体は生成型AI(人工知能)「ChatGPT」などのアプリケーションに幅広く使用されており、過去数ヵ月にわたってそうしたアプリケーションの伸びが加速しています。台湾と韓国の株式市場では、テクノロジーセクターの好調な業績が最大の上昇要因となりました。

ファンドの運用状況

 当⽉パフォーマンスにプラスに貢献した銘柄は、JYP Entertainment(韓国/コミュニケーション・サービス)、Mitra Adiperkasa(インドネシア/一般消費財・サービス)、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)などでした。一方、Samsonite International(香港/一般消費財・サービス)、Shenzhou International Group Holdings(中国/一般消費財・サービス)、Tencent Holdings(中国/コミュニケーション・サービス)などがマイナスに影響しました。
 前述の通り当月の日本の株式市場は好調に推移し、TOPIX、日経平均株価ともに約33年ぶりの高値を更新しましたが、外国人投資家の日本に対する関心はますます高まっていると思われます。東京証券取引所は2023年3月、PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回っている上場企業に対し、株主価値の改善に向けた具体的計画を打ち出すよう要請しました。日本株式市場の低迷があまりにも長期にわたっていたことから、東証が市場改革に乗り出した形です。コーポレート・ガバナンスと株主還元の改善は、日本の株式市場において今後も根深い課題であり続ける、というのが当ファンドの見方です。
 中国でも同様の事態が起こっており、このところバリュエーションの低い国営企業の株価が上昇しています。中国証券監督管理委員会(中国の証券市場監督機関)の易会満主席は2022年11月に行った講演で、「中国らしい特色をもった企業価値評価システムの模索に努めるべき」と述べました。この発言は同氏が国営企業のバリュエーションは低すぎると考えているという意味に解釈され、国営企業の改革というテーマが再び脚光を浴びることになりました。2023年1月には、国務院国有資産監督管理委員会(主要国営企業の管理監督機関)が新たに国営企業のKPI(重要業績評価指標)を発表し、ROE(株主資本利益率)と営業キャッシュフローを重視すると明らかにしました。日中両国はほぼ同時期に、自国株式のバリュエーションの押し上げに取り組んでいることになります。
 中国の国営企業改革が成功すれば国営企業は収益を拡大し、評価を上げることができますが、それは簡単なことではないと考えます。2015年に公表された政府指針によると、国営企業は、(1)国家資本の保全と成長を目的とし、市場原理に則って営利を追求する国営企業、(2)国家の使命を担う必要性から戦略的産業で営利を追求する国営企業、(3)公共の福祉に資する国営企業の3グループに分類されていて(以下グループ1、2、3と略称)、上場国営企業の大半はグループ1と2に属しています。このところ脚光を浴びているのはグループ2の国営企業で、通信、銀行、保険、貿易といった戦略的産業に属し、バリュエーションがきわめて低い状態にあります。先行き不透明な足元の環境下では、こうした企業の配当利回りの高さは好材料とみなされる可能性があります。しかし株価が低いのは、それらの企業が国家の重い使命を背負わざるを得ず、本質的に変革しにくい側面があるためだと考えます。足元では株主還元を重視していても国家の使命を優先する姿勢が変わることはないため、今後政府の意向を最優先とする状態に戻ることも起こり得ます。当ファンドのような長期投資家としては、そうした企業に大きな期待をかけることはできません。
 グループ2と3に属する国営企業は国益を担わざるを得ませんが、国営企業がすべて国家の使命を優先しているわけではありません。経営判断に国の意向がどの程度反映されるかは、当該国営企業の規模、政権中枢との組織的な緊密度、業種など、様々な要因によって異なりますが、グループ1に属する国営企業の多くはグループ2、3に属する企業と異なり、経営判断に国の意向を反映する必要がほとんどありません。そうした企業は既に市場原理に則った形で営利を追求しているのに、なぜ経営がうまくいっていないのでしょうか。当ファンドでは、その多くに事業の質の低さと経営陣の能力の欠如という制約があるためだと考えています。国営企業の多くは、素材や汎用品の製造といったオールドエコノミーの業種に属しています。また特定の業種に規制がかけられていることも、一部国営企業が柔軟性を損なう要因となっています。そうした企業が当ファンドの投資基準を満たすことはほぼないでしょう。米国の著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏の名言に、「手腕がすばらしいと評判の経営者でも、着任先が利益の出ないことで有名な企業なら、その企業の評価は変わらない」というものがあります。しかし、国営企業はMSCI中国指数組入企業の時価総額の30%超、中国の時価総額全体の50%を占める巨大な企業群です。政府の業界再編によって企業間の競争が緩和する可能性のある分野には選別的な投資機会があると考えられます。
 当ファンドの主な投資対象は、グループ1に属し、既に経営が順調で、それほど改革を必要としないと考えられる国営企業です。国営企業はすべて経営状態が芳しくない準政府機関であると考えられていますが、それは必ずしも正しくないと当ファンドでは考えています。国営企業が多額の利益を上げれば、その最大の受益者は国家です。非効率な国営企業は、非効率な従業員、さらに酷い場合は腐敗した経営者にしか利益をもたらしません。したがって、企業から経営陣への利益の移転を防ぐことは、国営企業改革の重要なポイントです。国営企業の中には、長期にわたって市場原理に則った経営を行い、厳しい競争環境の中で生き残ってきた企業もあります。1872年に設立されたChina Merchants Group社(香港)と1938年に設立されたChina Resources Group社(香港)はその好例です。両社はいずれも香港に本社を置き、日本の総合商社のような貿易会社として出発しました。China Merchant Bank社(香港)、China Resources Beer社(香港)、China Resources Land社(香港)といったいくつかの子会社は、優良企業へと発展し、過去数年で多大な株主価値を生み出しました。当ファンドはこうした企業群に属すると考えられる国営企業のうち、事業の質が高く、経営者が優秀であると判断した企業へ投資を行っています。国営企業改革による直接的な業績改善はそれほど期待できませんが、少しでも国営企業が改善されれば好材料となるためです。中国の株式市場は当月、パフォーマンスがきわめて低調でした。当月発表された各種指標の結果は芳しくなく、景気が力強く回復するという期待は打ち砕かれました。当ファンドは1月の月次報告書で、中国市場に関して慎重姿勢を強めており、中国銘柄の組入比率を控えめにしたとお伝えしました。現在もその姿勢に大きな変化はありませんが、強力な経済基盤を有し、地政学的リスクが低く、中国における消費拡大の恩恵を長期的に受ける立場にあり、組織や収益構造がシンプルな企業の組入比率を選別的に引き上げています。当ファンドの優位性は⽇本と他のアジア地域に資金を柔軟に配分できるという点にあり、ベンチマークにとらわれず、最も有望な投資先を見定めて組み入れるという手法をとっています。足元は日本の銘柄に注目が集まり、中国の銘柄は見過ごされがちですが、中国の銘柄の魅力が再び高まった時には、躊躇なく組み入れを進める予定です。

「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり」の株式市場変動リスク低減について

 当月、「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり」は、株式市場の変動リスクの低減を図ることを目的として、投資する投資信託証券を通じて投資する株式の市場感応度(ベータ値)に応じて、投資する投資信託証券を通じて株価指数先物取引等の売建て額を調整しました。

2023年4月の運用コメント

株式市場の状況

<日本の株式市場>

 2023年4月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比2.70%の上昇となりました。
 当月の日本株式市場は、月前半に軟調な米国経済指標(ADP雇用統計、ISM非製造業景況感指数)が相次ぎ、景気後退懸念が高まったことから下落して始まりました。しかし月半ばには植田日銀総裁の金融緩和維持を支持する発言や、米著名投資家の日本株追加投資を巡る思惑から上昇に転じました。月後半は米地方銀行の巨額預金流出による警戒感から下落する局面もありましたが、日銀が金融緩和維持を決定したことで株式市場に安心感が広がり、最終的に前月末を上回る水準で月を終えました。

<アジアの株式市場>

 当⽉、アジア株式市場はまちまちの値動きとなりました。日本を除くアジア市場に使用される⼀般的な指数であるMSCIアジア(日本を除く、米ドル建て)指数は、前月末比2.07%下落しました。世界経済の低迷、米国の銀行危機の波及、中国の製造活動の鈍化に対する懸念が広がり、慎重姿勢をとる投資家が増加しました。米バイデン政権が最先端技術や機器の中国への輸出規制を厳格化する意向を示したことから、米中間の緊張はますます高まりました。
 また、スマートフォンやPCの需要低迷が、引き続きテクノロジー銘柄の重石となっています。Samsung Electronics(韓国/情報技術)は、主力の半導体メモリーの需要低迷が原因で、2023年1月~3月期決算が低調でした。Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)も、半導体業界の成長が短期的に弱含むという予想を明らかにしました。ただし両社はいずれも、将来的に成長が見込める技術の研究開発と投資を続け、半導体関連製品、とりわけ自動車、AI(人工知能)、データセンター、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)の構造的な需要増加に対応していく意向を示しました。
 一方、コロナ禍後の回復が続いたことが、アジア全域のサービスセクターの追い風となりました。海外へ出かける人も多く、とりわけ復活祭期間中の旅客数が堅調でした。中国人旅行者の姿が香港に戻り、ショッピングモール等の小売売上高が好調に推移しています。
 インドネシアとインドは、外国企業の生産拠点移転先としての人気がますます高まっています。インドネシアに対するルピア建て海外直接投資(FDI)は2023年第1四半期だけで前年同期比20.2%増加し、この勢いは今後も続くと当ファンドは考えています。Apple社(米国)のティム・クック最高経営責任者(CEO)はインドを訪問し、同国への投資をさらに拡大し、同社輸出製品の生産拠点としての役割を漸次拡大していくと発表しました。

ファンドの運用状況

 当⽉パフォーマンスにプラスに貢献した銘柄は、Indian Energy Exchange(インド/金融)、JYP Entertainment Corp(韓国/コミュニケーション・サービス)、CNOOC(中国/エネルギー)などでした。一方、Taiwan Semiconductor Manufacturing(台湾/情報技術)、Tencent Holdings(中国/コミュニケーション・サービス)、i-Tail Corporation(タイ/生活必需品)などがマイナスに影響しました。
 2023年2月の月次報告書で、当ファンドがどのような観点から日本の総合商社を組み入れているのかという点ついて説明しました。当月にはウォーレン・バフェット氏が東京を訪れ、同氏率いるバークシャー・ハサウェイ社(米国)が日本の5大総合商社の組入比率を7.4%に引き上げたことを明らかにしました。同社の非保険部門担当副会長を務めるグレッグ・アベル氏はCNBC社のインタビューに応え、今後も商社が推進するプロジェクトへの共同投資を考えていると述べました。総合商社のグローバルネットワークと信用、バークシャー・ハサウェイ社が持つ資金力を組み合わせれば、好ましい取引を将来にわたって続けていくことができるというのが当ファンドの見方です。バフェット氏の訪日による投資家心理の好転も一因となって、総合商社の株価は当月、堅調に推移しました。資本循環が活発化し、株主還元が拡大していることなどから、当ファンドは引き続き総合商社をポジティブに見ています。一方、それとは別に、バークシャー・ハサウェイ社が当月、約1,600億円相当の円建て債券を発行しました。市場にはバフェット氏が日本で新たな投資先を探しているという見方が広がっています。日本経済はアジアの途上国と比べると成長が緩やかですが、世界的企業を多数擁していることから、当ファンドは引き続き投資機会を探っていく予定です。
 一方で、韓国も有望市場として見逃せないと当ファンドは考えております。韓国も日本と同様、アジアの途上国と比較すると経済成長が比較的緩やかで、高齢化も進行しています。しかし、同国にはアジアや世界で成長する力を持った世界的企業が多数存在していると当ファンドは考えております。韓国は世界のEV(電気自動車)バッテリーや半導体のサプライチェーンにおいて重要な役割を担っています。またテクノロジー関連製品以外にも、Kカルチャー人気の世界的な高まりを背景に、K-POPやドラマといったコンテンツから即席麺、菓子類、美容関連製品にいたるまで、様々な消費財を輸出しています。
 当ファンドが組み入れている韓国の銘柄の1つにCLASSYS(韓国/ヘルスケア)があります。同社はHIFU(High-Intensity Focused Ultrasound、高密度焦点式超音波)療法用機器の売上高で世界第2位のメーカーで、2020年には世界HIFU機器市場におけるシェアの約18%を占めています。HIFUは皮膚を傷つけずに行える美容治療法で、皮膚の基本構成要素であるコラーゲンの生成を促します。同社はHIFUで築いた確固たる地位を活用してRF(高周波)美顔器の製造にも参入していますが、これにも肌を引き締める効果があります。同社の追い風となっているのは、1) 従来のスキンケア製品ではもはや細かい点にこだわる消費者の需要が満たされないため、より高度な効果を求めて美容クリニックに通う消費者が増えていること、2) HIFUやRFのような皮膚を傷つけない美容治療法(非侵襲性美容治療法)は整形手術のような痛みを感じずに高い効果を得られるため、世界的に人気が高まっていることなどが考えられます。同社は非侵襲性美容治療法のトレンドに乗る上で有利な立場にあるというのが当ファンドの考えです。
 同社は、いわゆる「替え刃モデル(商品の本体を安く売って顧客を囲い込み、その後の消耗品やサービスで儲けるビジネスモデル)」を採用し、HIFU機器やRF美顔器を美容クリニックに販売し、消耗品であるカートリッジの販売を通じて経常的に収益を生成しています。同社は2017年から2022年にかけて、売上高の年平均成長率が約32%に達しました。2022年の売上高の63%は輸出によるもので、ROE(株主資本利益率)は約38%と驚異的な高水準でした。同社は世界中に製品を輸出しており、日本、タイ、ブラジルといった他の大規模美容市場にも積極的に進出する計画です。
 同社はHIFU機器市場でいかにして成功したのでしょうか。それはつまるところ、アジア製品の典型的成功例、すなわち高性能な製品を競合より低価格で販売したことによるものだと当ファンドは考えています。HIFU療法用機器に最初に参入したのは欧米企業でしたが、同社は性能が同等で価格が大幅に安い製品で市場に参入しました。コストパフォーマンスの高さが評価された上にマーケティング面での成功も加わって、同社は欧米企業を追い越し、韓国のHIFU機器市場で支配的な地位を確立しました。高性能な製品を低価格で販売するというビジネスモデルはアジアで幾度となく成功を収めてきた手法であることから、当ファンドは今後もこのテーマに沿って投資機会を発掘していく所存です。
 当ファンドは2019年にソウルを訪れて同社経営陣と面談し、その経営手法に強い感銘を受けましたが、資本配分には改善の余地があると感じました。当時は同社株の組み入れは行いませんでしたが、モニタリングは継続していました。2022年4月にBain Capital社(米国)がCLASSYS創業者から持株の約61%を取得し、取締役の顔ぶれを一新しました。当ファンドが再検証したところ、コーポレートガバナンスと資本配分が改善する可能性が高いという点が好材料として浮上しました。さらに、Bain Capital社のグローバルネットワークを活用すれば、同社は中国や米国も含めた世界各国への進出も夢ではないと考えられます。そこで当ファンドは従来の見解を変更し、2022年10月に同社に投資を開始しました。
 当ファンドの優位性は日本と他のアジア地域に資本を柔軟に配分できるという点にあり、ベンチマークにとらわれず、最も有望な投資先を見定めて組み入れるという手法をとっています。当ファンドは2022年10~12月以降、バリュエーションが割安な韓国銘柄の組入比率を大幅に引き上げました。現在、韓国の組入比率は、参考指数(MSCI AC Asia Index )を上回っています。韓国の組入銘柄の多くは2022年10月以降、市場平均を大幅にアウトパフォームしており、当ファンドのパフォーマンスにプラスに貢献しています。当月、韓国のEVバッテリー企業に対する投資家心理があまりにも強気すぎると考え、同セクターの組入比率を引き下げました。

「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり」の株式市場変動リスク低減について

 当月、「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり」は、株式市場の変動リスクの低減を図ることを目的として、投資する投資信託証券を通じて投資する株式の市場感応度(ベータ値)に応じて、投資する投資信託証券を通じて株価指数先物取引等の売建て額を調整しました。

2023年3月の運用コメント

株式市場の状況

<日本の株式市場>

 2023年3月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比1.70%の上昇となりました。
 当月の日本株式市場は、FRB(米国連邦準備制度理事会)の利上げ再加速の思惑を受けて米国株式市場が軟調に推移する中、円安が日本株を支える展開で始まりました。月半ばにかけては、米シリコンバレー銀行の破綻に端を発した欧米金融不安の急拡大を受け、リスク回避姿勢が強まったことから大幅な下落に転じました。しかし月後半になると、スイスの金融大手UBSによるクレディ・スイス・グループ買収や米当局による預金保護などの対応で金融システムへの不安が和らぎ、最終的に前月末を上回る水準で月を終えました。

<アジアの株式市場>

 3月は何かと出来事の多い月でした。中国では年に1度の全国人民代表大会が開催され、首相や中国人民銀行総裁といった今後5年間の主要人事が正式決定されました。さらに2023年の中国経済や政策課題の方向性も示され、実質GDP成長率目標は5%、財政赤字目標(GDP比)は2022年の2.8%から3%へとわずかに引き上げられた数字が設定されました。これにより、大規模な景気刺激策に対する期待は打ち砕かれ、株式市場の重しとなりました。
 その一方で、様々な分野における「自立自強」推進の必要性が訴えかけられ、その一環として科学技術部の再編が発表されました。この再編に関して注目すべき点は、習近平国家主席に直属する形で中央科学技術委員会が設立されることです。同委員会設置の狙いは、全国的なイノベーションシステムの構築、中国の科学技術発展に向けた大型計画や政策の推進、テクノロジーセクターにおける主要な問題の解決に向けた協調などを通じ、科学技術に関する一元的指導力を強化することにあります。このことから、国家戦略の中で科学技術の占める位置が向上しつつあり、その過程で魅力的な投資機会が訪れることになると当ファンドでは考えております。
 世界の銀行業界では危機が発生しました。米シリコンバレー銀行が破産を申請し、その余波に対する懸念から地方銀行の株価が全般的に下落しました。幸いなことに、FRB(⽶国連邦準備制度理事会)が迅速に介入したため、足元では危機は収束しています。英国では金融大手のHSBCが米シリコンバレー銀行の英国事業を買収しました。利上げペースの鈍化を予測する声が出てきたことから、ドルと米国債の利回りは下落しました。欧州では、長期にわたって低迷状態にあったクレディ・スイス・グループがスイスの⾦融⼤⼿UBSに買収されたことを発端に、英国のHSBCやStandard Chartered Bank、米国のPrudential Financialなどの国際的大手銀行や保険会社の株価が下落しました。なお、当ファンドは金融セクターの組入比率が比較的低く、またインドをはじめとするアジア新興国の金融銘柄を主力銘柄として組み入れているため、世界の銀行業界で起きた事態の影響はそれほど受けませんでした。

ファンドの運用状況

 当月パフォーマンスにプラスに貢献した銘柄はTencent Holdings(中国/コミュニケーション・サービス)、日立製作所(資本財・サービス)、ソニーグループ(一般消費財・サービス)などでした。一方で、i-Tail Corporation(タイ/生活必需品)やIndian Energy Exchange(インド/金融)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(金融)などがマイナスに影響しました。
 世界経済の先行きに不透明感が漂う中、当ファンドでは需要が底堅い企業に注目しています。当ファンドの理念は、強固な財務体質と優れた収益性を併せ持ち、どのような局面でも外部要因の影響を受けにくい企業を発掘することにあります。こうした企業は多くの場合、業界の低迷に乗じて市場シェアを伸ばすと考えます。

Samsonite International(香港/一般消費財・サービス)

 同社は世界最大のスーツケースメーカーで、2022年決算が好調でした。コロナ禍前の2019年と業績を比較しても、2022年の為替変動の影響を除いた売上高は約10%の減少、調整後EBITDA(償却前営業利益)も4%程度の減少にとどまっており、同社によると今後の見通しも上向きとのことです。経済再開後に世界から出遅れていたアジアの売上貢献度が高まったこと、TUMI(Samsoniteの高級ブランド)の売上増、運賃と原材料費の下落も利益拡大の追い風になると当ファンドは考えています。スーツケース市場はきわめて細分化されており、2020年の同社の市場シェアは約10%、その他事業者はそれぞれ同1桁台に過ぎません。コロナ禍によって小規模事業者が生き残りに悪戦苦闘しましたが、事態が収束したことで競争環境は改善すると当ファンドは考えています。世界が景気後退に直面するという懸念もありますが、3年間満たされなかった繰延需要があるため、旅行需要は底堅く推移すると当ファンドは考えています。

JYP Entertainment(韓国/コミュニケーション・サービス)

 同社は2022年に売上高、営業利益が共に増加しました。K-POPの世界的影響力は拡大の一途を辿っていると当ファンドは考えています。TWICE(同社所属の多国籍ガールズグループ)が2023年3月に発表した新曲「Ready To Be」は、第一週の売上高がTWICEの自己最高を記録しました。また、経済再開後にコンサートが再び開催できるようになり、同社の貴重な収益源となっています。2023年の予定を見ると、主要アーティストは引き続き世界中で大規模なコンサートを開催する模様です。旅行と同様、コンサートもコロナ禍による3年分の繰延需要があることから、引き続き堅調な需要が期待されます。アルバムの売上は同社のもう一つの収益源です。アルバムは比較的低価格帯の商品で、熱心なファンほどアルバムを購入するという特徴があります。経済の先行きが不透明でも、熱心なファンはアルバムや他商品の購入を続けると当ファンドは考えています。同社はアセットライトなビジネスモデルで価格決定力も強いため、低成長のインフレ環境にあっても成功を収められるというのが当ファンドの考えです。

WuXi AppTec(中国/ヘルスケア)

 同社は世界を代表する小分子薬の医薬品受託製造企業(CDMO)です。2022年にはPfizer社(米国)から新型コロナウィルス用の抗ウイルス薬製造を大量に受注したため業績は好調で、売上高が前年比48.4%増加しました。会社計画では利益率も拡大し、増益率は10%台半ばから後半になる見通しであると当ファンドは考えています。
 医薬品の需要と経済環境との間に高い連動性はありません。したがって、同社は製造事業で堅調かつ安定した業績を維持すると当ファンドは考えています。一方、外部委託される研究開発サービスの受注量はバイオテック企業の資金調達環境次第で変わってきます。金融緩和の時期と比べれば低調になる可能性もありますが、同社の立ち位置には2つの側面で有利であると考えます。まず、同社は業界リーダー的存在のため、顧客の質も高い傾向にあること、次に大手製薬会社は有望な新薬候補を有する小規模バイオテック企業を買収する可能性はあるものの、買収後も引き続き研究開発を同社に発注する傾向があることです。
 同社は既にキャッシュフローが黒字に転じているため、外部から資金調達する必要はないと当ファンドは考えています。同社は2000年に設立され、2009年には世界金融危機の厳しい環境下にあっても売上を増加させました。現在では開発および製造事業の売上構成比が大幅に上昇し、外部環境の影響に対する耐久力がますます高まっていると当ファンドは考えています。

「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり」の株式市場変動リスク低減について

 当月、「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり」は、株式市場の変動リスクの低減を図ることを目的として、投資する投資信託証券を通じて投資する株式の市場感応度(ベータ値)に応じて、投資する投資信託証券を通じて株価指数先物取引等の売建て額を調整しました。

2023年2月の運用コメント

株式市場の状況

<日本の株式市場>

 2023年2月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比0.95%の上昇となりました。
 当月の日本株式市場は、米長期金利上昇などを受け米国株式市場が軟調となる中、円安が日本株を支える展開で始まりました。月半ばにかけては、市場予想を上回る米国のCPI(消費者物価指数)やPMI(総合購買担当者景気指数)を受けて利上げの長期化懸念が再燃し、日本株も下落に転じましたが、月後半にかけては、植田次期日銀総裁候補が所信聴取で金融緩和継続を明言したことや円安の進行が日本株相場を下支えし、最終的に前月末を上回る水準で月を終えました。

<アジアの株式市場>

 アジア株式市場の大半は、1月に堅調に推移した後、当月は下落しました。⽇本を除くアジア市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、6.81%下落して⽉を終えました。
 これは主に、MSCI中国(米ドル建て)指数の同10.37%下落が影響しました。中国の経済活動再開を受けた消費回復に関する好調なデータにもかかわらず、米国領空内の中国の偵察気球疑惑を巡って米中間の緊張が再燃し、人民軍と関係する中国企業に対する制裁が強化されたことで、投資家心理は冷え込みました。また11月以降に大きく上昇していた中国のインターネット関連銘柄も、高まる規制懸念やJD.com社(中国)による積極的な補助金キャンペーンを契機とした価格競争の可能性を受けて、下落に転じました。
 米国の力強いインフレおよび労働市場データも、米国利上げのペース加速と長期化に対する懸念を引き起こし、新興市場の株価に下押し圧力を加えました。インドの指数は当月もAdani危機が重石となり、Adani group社(インド)関連銘柄は大幅にアンダーパフォームしました。台湾のテクノロジー企業は、2022年第4四半期決算説明会で2023年第1四半期の低調な収益見通しを発表しましたが、一部の投資家はそれをサイクルの「底」と解釈し、一部企業の株価の下支え要因となりました。また、最近のChatGPT(AIチャットプログラム)の急速な普及が、半導体やメモリの需要増につながる可能性を指摘する声もあります。

ファンドの運用状況

 当月パフォーマンスにプラスに貢献した銘柄はMitra Adiperkasa(インドネシア/一般消費財・サービス)、JYP Entertainment(韓国/コミュニケーション・サービス)、三菱商事(資本財・サービス)など、アジアの各地域に分散していました。一方で、Meituan(中国/一般消費財・サービス)やAlibaba Group Holding(中国/一般消費財・サービス)、リクルートホールディングス(資本財・サービス)などがマイナスに影響しました。リクルートホールディングスの2023年3月期第3四半期業績が期待外れに終わったことから、当ファンドは同社株を売却しました。米国の求人市場の低迷が長期化し、同社の主力事業であるHRテクノロジー事業の足枷になり続けるとみられるためです。
 三菱商事は、2023年3月期通期の純利益予想を1兆300億円から1兆1,500億円に、一株あたり配当(DPS)を155円から180円にそれぞれ引き上げました。また、1,700億円の自社株買いを加えることで、総還元額は純利益の約38%に相当する4,320億円になると予想しています。同社は累進配当を採用しているため、2024年3月期のDPSは、少なくとも180円(2月末時点の配当利回り4%で算出)になると予想されます。
 丸紅は、新たな株主還元方針を発表しました。同社は2022年度純利益を、過去最高の5,300億円と予想しています。また、DPSは78円を基点とし、中長期的な利益成長に合わせて増配するという累進配当方針も発表しました。さらに、総還元性向30~35%を目標とした、機動的な自社株買い方針を発表しました。
 このような両社の株主還元拡大を、株式市場は好調な増益トレンドとともに好感しています。
 日本の総合商社は多くの産業に関与しています。日本は天然資源に乏しい国であり、これらの総合商社は戦後の経済成長期に日本の産業界の輸出入を支える重要な役割を果たしました。1980年代には、貿易を通じて製造業の海外進出を支援しました。総合商社は仲介業者として、商品の輸出入から手数料収入を得ていました。
 しかし、過去20年の間にグローバルなサプライチェーンが構築される中で、仲介業者や貿易会社としての役割は大きく低下しました。そのため、総合商社は強力な資本力や幅広い専門知識を活用して、より投資を中心としたビジネスモデルへと進化しています。開発途上国での長年の事業経験を持つことから、総合商社は現地政府へのアクセスを獲得しており、また現地の需要を見極め、さまざまなインフラプロジェクトを調整する能力を有しています。今日の商社は、上流のコモディティから下流の小売事業まで広範な業界を網羅する、事実上のコングロマリットです。例えば、三菱商事は㈱ローソンおよび日本KFCホールディングス㈱の主要株主です。伊藤忠商事㈱は㈱ファミリーマートのオーナー企業であり、㈱デサントの主要株主です。三井物産㈱は、IHH Healthcare社(マレーシア、東南アジア最大級の病院グループの1つ)の主要株主です。
 アジアの他の地域では、コングロマリットが現地経済に深く関与しているのが一般的です。

  • 貿易会社がコングロマリットになった例:Swire Pacific Offshore Holdings社(シンガポール)、Jardine Matheson Holdings社(香港)
  • アジアの富豪が経営する多角化したコングロマリット:香港のCK Assets Holdings社、CK Hutchison Holdings社、インドのReliance Industries社
  • 韓国財閥:Samsung Group社、LG社、Hyundai Group社など。Samsung Electronics(韓国/情報技術、当ファンド保有銘柄)、SK Hynix社、LG Energy Solution社など、これらの財閥に属する最も価値の高い子会社はいずれも上場しています。そのため、持株会社は株式市場で特に注目されていません。

 総合商社は日本固有のもので、海外の同業他社との対等な比較はできません。しかし投資については、他のコングロマリットと比較することが可能です。過去10年間、日本の総合商社の株価リターンは、アジアの主要上場コングロマリットの大半を大きく上回ってきました。CK Hutchison Holdings社、Swire Pacific社(香港)、Jardine Matheson Holdings社の過去10年間のトータルリターンはマイナスからゼロ近辺でしたが、日本の5大総合商社(三菱商事、丸紅、伊藤忠商事㈱、三井物産㈱、住友商事㈱)は米ドルベースで約116%~267%上昇しました。その結果や以下の理由などから、世界のコングロマリットよりも日本のコングロマリットである総合商社が引き続き注目を集めています。

  • コングロマリットは、幅広い業界に資本を配分する事業です。総合商社の実質的な価値は、さまざまな業界に跨がる、世界中の専門家で構成される広範なネットワークにあります。商社はこれにより、多様な機会を獲得することができます。アジアのコングロマリットは一般的に、より少数のセクターに集中する傾向があります。例えば、Swire Pacific社は、香港の不動産、飲料、航空事業に注力し、CK Hutchison Holdings社は港湾と通信事業を中心に、欧州に大きな強みを持っています。総合商社は、セクターと地理の面ではるかに多様化しているだけでなく、貿易会社としての経歴を生かし、上流業界と下流業界とのシナジーも創出します。
  • 総合商社は、天然ガス、銅、農産品などのコモディティ事業から利益を創出します。供給成長の鈍化、エネルギー転換、世界的な地政学的リスクの高まりを背景に、コモディティ価格が長期的に上昇するリスクが存在しますが、総合商社はこのリスクを低減する幅広い事業を展開しています。
  • 多くのアジアのコングロマリットは家族経営で、トップダウン型の意思決定プロセスを採用しているため、経営者の利益が株主の利益と整合するとは限りません。総合商社はプロの経営陣によって運営されています。かつての総合商社は株主還元をほとんど重視してきませんでしたが、丸紅や三菱商事の新たな株主還元方針に見られるように、状況は変化しています。新しい成長分野への資本配分拡大に向けた総合商社の取り組みは改善しており、株主還元も改善しています。

 当ファンドは、総合商社のバリュエーションは魅力的だと考えています。当ファンドは、三菱商事と丸紅の2銘柄に投資しています。三菱商事のPBR(株価純資産倍率)は0.9倍を下回っており、2022年度の総還元額は4,320億円になると予想されています。足元の株主総利回りは約6%です。丸紅のPBRは1.2倍を下回っており、78円の予想DPSと、300億円程度の自社株買いを行うと当ファンドでは予想しています。現在の株主総利回りは約5%です。当ファンドはまた、両銘柄が自己資本を1桁台後半ペースで拡大するとみています。
 当ファンドは、1)割安なバリュエーション、2)インフレヘッジ、3)将来の成長を牽引する資本配分改善の可能性を備えた銘柄に投資しています。この組み合わせはアジア全域を見渡しても稀だと思われます。当ファンドの戦略の強みは、日本とアジアから最良銘柄の選択が可能でることです。
 当月は、当ファンドの組入銘柄にいくつかの変更を加えました。全体としては中国株の保有比率を引き下げ、東南アジアなどの他地域の保有比率を拡大しました。株式市場の注目は米国のインフレと、今後の⽶国連邦準備制度理事会(FRB)の政策決定に再び集まっています。当ファンドは引き続き、収益フローとキャッシュフロー創出が底堅い銘柄を選好し、収益の裏付けが少ない高成長銘柄を回避していく方針です。

「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり」の株式市場変動リスク低減について

 当月、「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり」は、株式市場の変動リスクの低減を図ることを目的として、投資する投資信託証券を通じて投資する株式の市場感応度(ベータ値)に応じて、投資する投資信託証券を通じて株価指数先物取引等の売建て額を調整しました。

2023年1月の運用コメント

株式市場の状況

<日本の株式市場>

 2023年1月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比4.42%の上昇となりました。
 当月の日本株式市場は下落から始まりました。月前半に米サプライマネジメント協会(ISM)が発表した2022年12月の米製造業景況感指数が2年7カ月ぶりの低水準だったことや、中国製造業購買担当者景気指数(PMI)も低迷が続いたことから、景気後退への懸念が高まったのが主な要因と見られます。月半ばには、日銀が金融政策決定会合で大規模な金融緩和を維持すると発表したことを受け、株式市場は上昇に転じました。月後半には、米国連邦準備制度理事会(FRB)の理事が利上げ幅緩和の支持を表明したことや、米有力紙による早期利上げ停止の観測報道を受け、日本でも成長株を中心に株価が堅調に推移した結果、最終的に前月末を上回る水準で月を終えました。

<アジアの株式市場>

 2023年はアジア株式市場の大半が好調な滑り出しを見せました。⽇本を除くアジア市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、8.22%上昇して⽉を終えました。台湾、韓国、中国、香港が好調だった一方、インド、インドネシアがマイナスとなりました。
 中国では経済再開の動きが継続しました。春節(旧正月)期間中の旅行や支出額に関する統計指標は堅調で、新型コロナウイルスの感染者数にも増加の兆しが見られないため、今後も経済再開の動きは継続するものと思われます。これを受けて中国のインターネット関連銘柄、EV(電気自動車)関連銘柄がアウトパフォームしました。
 台湾と韓国の堅調なパフォーマンスを牽引したのはテクノロジー関連セクターでした。半導体セクターについては、2023年上半期業績に関する不安感は拭えていないものの、投資家が短期的な株価動向以外にも目を向け、データサーバやAIアプリケーション、自動車、IoT(モノのインターネット)などによってセクター全体が再び構造的成長軌道に乗ることへの期待が高まったため、株価が反発しました。一方、インド株式市場では資金の流出が続きました。その一因は投資家が再び資金を中国、台湾、韓国に配分していることにあります。加えてAdani Group社(インド)の危機で時価総額が約1,080億米ドル(約13兆9,000億円)消失したことによって、国有銀行のコーポレートガバナンスや潜在的損失に関する懸念が生じ、投資家心理が悪化したことも要因の一つです。

ファンドの運用状況

 当月中国市場では、経済再開と経済の早期回復に対する期待感から株価が大幅に上昇しました。前年好調だったインドとインドネシアは、中国への資金回帰の影響もあり、いずれも低調なパフォーマンスとなりました。
 当月は、Tencent Holdings(中国/コミュニケーション・サービス)、Alibaba Group Holding(中国/一般消費財・サービス)、Shenzhou International Group Holdings(中国/⼀般消費財・サービス)などがプラスに貢献しました。前月述べたように、当ファンドはこのところ半導体関連銘柄を積極的に組み入れており、上記以外にTaiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、Samsung Electronics(韓国/情報技術)などの銘柄もパフォーマンスに貢献しました。一方、ICICI Lombard General Insurance(インド/金融)などがマイナスに影響しました。
 中国では3年ぶりにコロナ関連の行動規制がない春節が終わったところで、今後の経済回復ペースが注目されます。速報データの内容は以下の通り良好ですが、経済回復の強さが持続的なものになるのか否かを判断するには時期尚早だと考えます。

  • 1月7日から1月28日までの公共交通機関による推計旅行者数は前年比約56%増となったが、いまだに2019年と比較すると約53%に留まっている
  • 同期間の航空旅客数は2019年と比較すると約70%まで回復した
  • 春節期間中の総旅行者数は前年比約23%増の3億800万人に到達、2019年と比較すると約89%にまで回復し、旅行代理店と関連サービスの売上高は約3,750億元(約7兆2,260億円)となり、2019年との比較でも73%に達した
  • 春節期間中の劇場興行収入は67億6,000万元(約1,300億円、前年比約12%増)、総入場者数も1億2,900万人(前年比約13%増)となった
  • 中国国家統計局が発表した1月のPMIは54.4と大幅に上昇し、7ヵ月ぶりの高水準となった

 注目すべきは、中国では春節期間中に国民の大移動が復活したにもかかわらず、新型コロナウイルス感染拡大のピークが過ぎて中国社会の不安感が薄れ、国民の間で生活の正常化に対する期待感が高まっていることです。
 春節についてもう一つ例年と異なるのは、中国の国営テレビ、中央電視台(CCTV)が放送する毎年恒例の旧正月年越し歌番組「春節連歓晚会」(春晩)で、紅包(お年玉)のスポンサーにインターネットプラットフォーム企業の名前がなかったことです。インターネットプラットフォーム企業にとって、春晩の紅包配布は貴重な知名度獲得の手段でした。Tencent Holdingsが提供するWeChatが、2015年に春晩の中でWeChat Payを通じて紅包を配布したのが始まりで、翌年以降も続けられて慣例となったものです。WeChat Payはこのイベントによって一夜にして莫大な数のユーザーを獲得し、2日後には2億枚の銀行カードがWeChat Payに紐づけられました。この出来事によって電子決済が急速に普及したことが、その後数年間で他のモバイルインターネットサービスが大きく発展するきっかけとなり、インターネット業界の黄金期が始まりました。それから毎年、インターネットプラットフォーム企業はユーザー獲得手段として紅包のスポンサーを務めてきましたが、今回スポンサー企業が現れなかったことは、インターネット業界が成熟段階に入ったことを示していると考えられます。インターネットプラットフォーム企業はユーザー獲得からコスト管理に注力し始めており、こうした転換はインターネット業界の持続性を高め、健全な成長を促すため、株主にとっても有益であると当ファンドは考えています。
 半導体セクターに目を向けると、1) 中国の経済再開によって需要が刺激されて需要の回復が早まる可能性があり、特にスマートフォンでその傾向が強いこと、2) FRBの利上げペースが今後は鈍るという楽観的な見方があること、3) 一部セグメントで在庫のピーク到達が視野に入っていることなどが、株価の下支え要因となりました。当ファンドの組入銘柄では、Samsung Electronicsが半導体メモリ関連の設備投資削減に関する市場の期待を裏切りました。半導体メモリは現在下降サイクルにあり、主要企業が設備投資と生産量を削減することで需給バランスの回復が早まることが期待されるため、同社の動向に注目が集まっていました。同社は2022年第4四半期の決算発表で、2023年のメモリ関連設備投資は2022年並みになる(設備投資を削減しない)と述べました。これを受けて半導体メモリの下降サイクルが長期化する懸念が高まりましたが、同社は設備投資の中でも新規製造設備、研究開発、極端紫外線(EUV)のインフラの割合を増やすとも述べています。これは生産関連の設備投資が減少する可能性があることを意味しており、技術面の競争力を長期的に高めるため、製造設備の最適化や生産ラインのアップグレードもより活発に行われるものと思われます。同社は減産について明言しませんでしたが、こうした製造設備を一時的に最適化すると、その過程が大幅な減産に繋がることがあります。したがって全体でみると、同社の今年の生産量はほとんど伸びないというのが当ファンドの見方です。ここで重要なのは、この厳しい下降サイクルの中で同社の競争力がますます強まっていくと考えられることです。主な競合先であるSK hynix社(韓国)は2022年第4四半期に多額の営業損失を計上し、2023年の設備投資を前年比50%以上減額すると発表しました。半導体業界を取り巻く環境悪化の影響で、競合先の投資余力は低下していますが、Samsung Electronicsは収益源の分散と健全な財務体質に支えられて投資余力を残しており、競合先との差がますます拡大しています。今回の下降サイクルを抜ければ、同社の体力はさらに強くなっていると当ファンドは考えています。
 当月は、当ファンドの組入銘柄に大きな変更はありませんでした。中国経済の再開は好材料ですが、経済回復が市場の予想ほど堅調に進むかという点が主要なリスクになると考えます。加えておよそ3年にわたるコロナ禍と不動産市場の低迷によって、中国の消費者心理が冷え込む可能性もあります。当ファンドでは、中国に関して慎重姿勢を強めており、生活必需品のような安定的な収益源を持ち、生活に欠かせないサービスや製品を提供する企業の組入比率を徐々に引き上げています。したがって、中国の回復が期待外れに終わっても、当ファンドは比較的安定したパフォーマンスを維持できると考えています。

「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり」の株式市場変動リスク低減について

 当月、「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり」は、株式市場の変動リスクの低減を図ることを目的として、投資する投資信託証券を通じて投資する株式の市場感応度(ベータ値)に応じて、投資する投資信託証券を通じて株価指数先物取引等の売建て額を調整しました。

2022年12月の運用コメント

株式市場の状況

<日本の株式市場>

 2022年12月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比4.57%の下落となりました。
 当月の日本株式市場は、11月30日にFRB(米国連邦準備制度理事会)のパウエル議長が12月のFOMC(連邦公開市場委員会)における利上げ減速を示唆したことを受け、上昇して始まりましたが、その後は米国景気悪化懸念の高まりなどから下落基調をたどりました。月半ばには、欧米中銀の金融引き締め継続による景気悪化懸念や、日銀が長期金利の許容変動幅を修正したことなどを受け、金融政策の転換懸念から株式市場は大幅に下落しました。月後半にかけては、中国が事実上「ゼロコロナ政策」を終了したことでインバウンドや中国経済再開期待が生じる一方、米国の半導体株安や円高の進行を受けて、一進一退で推移しました。

<アジアの株式市場>

 アジア株式市場は11月には堅調なパフォーマンスを記録しましたが、当月はまちまちの値動きとなりました。香港市場などは堅調でしたが、韓国、台湾、インドなどのパフォーマンスが振るいませんでした。⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、前月末比0.44%下落して⽉を終えました。中国のゼロコロナ政策が予想以上に早期に緩和されたことで、中国と香港の株式市場の地合いが改善しました。新型コロナウイルスの感染者数は今後数週間でいったん急増するものの、その後は中国のビジネスと経済は他国同様に正常化するというのが投資家の見方である模様で、航空、旅行、レストランをはじめとする経済再開の恩恵を受けると期待される銘柄が堅調に推移しました。また、中国政府が不動産セクターなどに対する規制を緩和したことも好材料と見なされたようです。
 中国と香港以外では、FRBがさらなる利上げを行ったこと、2023年に世界経済の成長が鈍化するという懸念が広まったことなどから、投資意欲が低調気味でした。韓国と台湾は世界経済への依存度が高いことから、パフォーマンスが振るいませんでした。半導体関連銘柄は、2023年の短期需要見通しが下方修正されたため、株価が下落基調となりました。インドとインドネシアは2022年のパフォーマンスが他市場を上回ったために好材料に乏しく、投資家の関心は中国と香港株式の買い増しに向かいました。また、日銀が長期金利の誘導目標を修正したことも、円高の要因となりました。

ファンドの運用状況

 当ファンドにとっては2022年も試練の年となりました。スタグフレーション(景気が低迷する中で物価が上がり続ける状態のこと)に対する懸念から、多くの当ファンド組入銘柄の株価が下落しました。一方、FRBは大規模な金融引き締めによってインフレの抑制に努めました。バリュエーション算出時のリスクフリーレート(リスクがほとんどない商品から得られる利回りのこと)として一般に使用される米国10年債利回りは、2021年末の約1.5%から2022年末には約3.8%まで上昇しました。これは株式、特に当ファンドが選好する成長株のバリュエーションにとって大きな重しとなりました。
 その一方で、FRBの金融引き締めで景気後退が発生するのではないかという懸念が生まれ、多数のセクターで成長見通しが下方修正されました。当ファンドが高い比率で組み入れているグローバル成長株は、世界的な景気循環の影響を受けやすい銘柄です。例えばキーエンス、リクルートホールディングス、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)などがこれにあたります。さらに、コロナ禍中に巣ごもり消費の恩恵を受けた銘柄は、反対に経済再開が逆風となりました。例えばソニーグループ、メルカリなどがこうした銘柄にあたります。魅力的な価値と利便性を提供するオンラインサービスが引き続き成長するという当ファンドの見方に変わりはありませんが、コロナ禍によって世界中でライフスタイルの見直しが起こったことは、短期的に見ると前述の銘柄群にとって不利に働く可能性があると考えます。
 中国では2022年に多くの変化がありました。政府が複数回にわたってロックダウン(都市封鎖)を行ったことで、Tencent Holdings(中国/コミュニケーション・サービス)やLi Ning Company(中国/一般消費財・サービス)といった当ファンドの組入銘柄は大打撃を被りました。中国国内では年初から新型コロナウイルス感染者数が増加したことで、深センや上海といった主要都市が大規模なロックダウンを実施し、市場関係者に衝撃を与えました。2月にはロシア軍がウクライナに侵攻しました。この不幸な出来事によって、世界の地政学的情勢は大きく変化し、米中関係はこの数年間で最悪の状態にまで悪化し、中国の台湾侵攻に対する懸念が高まりました。10月には中国全国人民代表大会で習近平氏の3期目の主席就任が承認され、権力の集中がさらに進んだことで、市場にまたもや混乱が生じました。中国政府による不動産市場の取り締まりとゼロコロナ政策も経済成長の足かせとなりました。従業員の多くが高所得者層である大手インターネット企業では大規模な人員削減を開始し、消費の低迷に追い打ちをかける形となりました。MSCI中国指数(米ドル建て)は10月に2016年以来の安値まで下落しました。しかし、12月に入るとゼロコロナ政策に対する一連の抗議活動を受けて、中国政府がゼロコロナ政策を緩和し始めました。さらに2023年の1月8日から新型コロナウイルス関連規制の大幅緩和が発表されると、MSCI中国指数(米ドル建て)は経済再開に対する期待を受けて10月の底値から約36%の大幅上昇をみせました。同指数は第4四半期(10月~12月)には約13%の上昇、2022年通年でみると約22%の下落でした。
 ゼロコロナ政策の突然の転換は大きなサプライズとなり、中国における政策予測の困難さが浮き彫りになりました。中国共産党上層部の動きを予測することは不可能であると考えます。目に見える動きから今後の動向を予測することしかできず、その変化が大きい場合は迅速な対応が求められます。新型コロナウイルス関連の政策における変化は大きな転換点であり、波乱含みとなる可能性はあるものの、この政策転換によって世界の投資家の関心が再び中国市場に向く可能性があると、当ファンドでは考えています。
 2023年に入っても先行きの見通せない状況が続いております。インフレ率はピークを付けたという見方もありますが、FRBによる2%のインフレ目標が早期で達成されることは考えにくく、金利は当面高止まりすると思われます。ただし、市場の関心は金利から世界の経済成長見通しの減速に移る可能性があります。中国は世界の経済成長の原動力となる可能性があるため、2023年の世界経済にとって中国の経済再開は重要なポイントであると考えます。中国の動向はアジア各国に大きな影響を与えるため、その経済回復が他のアジア諸国にとっては好機であると考えます。一方、世界第2位の経済大国である中国の経済が再開すれば、商品価格やインフレ率の押し上げ要因となる可能性もあります。中国がこの初期段階をうまく乗り切れば、他国と同様に経済は回復軌道に乗ると思われます。新型コロナウイルスの感染者数がピークを越えたと思われる北京などの都市では、移動や外食などに関わる経済活動が活発になりつつあります。さらに、インターネットなど一部セクターでは規制による逆風が和らいでいます。中国は12月に新規ゲームの承認を再開しました。注目すべきは今回44本もの輸入ゲームが承認されたことです。輸入ゲームが承認されたのは2021年の取り締まり開始以降で初めてで、これは中国政府が健全なゲーム業界を育てたいと考えていることを端的に示しており、規制リスクに関しては最悪の時期を脱したというのが当ファンドの見方です。
 当ファンドは2022年に、日本電産など成長見通しが不確実でバリュエーションが割高な組入銘柄を売却しました。2022年末時点では、中国の消費関連銘柄やインターネット関連銘柄、半導体関連銘柄の組入比率が大幅に増加しています。当ファンドは中国に投資するリスクを認識しているため、外食産業、スポーツウェアなどの規制リスクが低い企業やインターネット関連など規制面の逆風が弱まっているセクターを慎重に選別しています。スポーツウェア、フードデリバリープラットフォーム、外食産業などの組入銘柄の一部は経済再開の恩恵を受けることが期待されます。また、繊維製品や医療機器などの製造業や化学関連銘柄がサプライチェーンの混乱緩和や需要回復の恩恵を受けることも期待されます。半導体の一部セグメントも底打ちが近く、バリュエーションにはすでに悪材料が織り込まれていると考えられます。中国経済の回復が世界経済の底上げに寄与できれば、半導体の需要サイクルの底打ちはさらに早まる可能性もあります。当ファンドではこれまで半導体関連銘柄の組み入れにあまり積極的ではありませんでしたが、組み入れを拡大する好機であると考えています。

「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり」の株式市場変動リスク低減について

 当月、「スパークス・ベスト・ピック・ファンドⅡ(日本・アジア)マーケットヘッジあり」は、株式市場の変動リスクの低減を図ることを目的として、投資する投資信託証券を通じて投資する株式の市場感応度(ベータ値)に応じて、投資する投資信託証券を通じて株価指数先物取引等の売建て額を調整しました。

取扱い販売会社

五十音順

主な投資リスク、費用等

  • 本サイトに掲載されている情報は、スパークス・アセット・マネジメント株式会社のご案内のほか、投資信託および投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、特定の商品あるいは有価証券の投資勧誘を目的としたものではありません。提供している情報の正確性や完全性をスパークス・アセット・マネジメント株式会社が保証するものではありません。サイト内に記載されている情報の著作権は、スパークス・アセット・マネジメント株式会社に帰属し、スパークス・アセット・マネジメント株式会社の許可無しに転用・複製・転載等をすることはできません。