スパークス・少数精鋭・日本株ファンド | 投資信託 | スパークス・アセット・マネジメント

スパークス・少数精鋭・日本株ファンド

日経新聞掲載名
少数精鋭
分類
追加型投信/国内/株式
設定日
決算日
毎年8月25日

基準日:2025.01.15

基準価額
32,878
前日比
+122
+0.37%
純資産総額
4.9億円
分配金情報(税引前)
0

基準価額推移

分配金実績

決算頻度:1回/年

設定来合計
750
直近12期計
750

分配金実績一覧

2024年08月26日
0
2023年08月25日
0
2022年08月25日
0
2021年08月25日
0
2020年08月25日
0
2019年08月26日
0
2018年08月27日
250
2017年08月25日
250
2016年08月25日
0
2015年08月25日
250
2014年08月25日
0

月次報告書

2024年

2023年

2022年

2021年

2020年

2019年

2018年

2017年

2016年

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2024年12月の運用コメント

株式市場の状況

 2024年12月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比4.02%の上昇、日経平均株価は同4.41%の上昇となりました。年間では両指数とも2年連続で上昇し、年末終値としては日経平均株価が最高値を更新しました。
 月前半には、厚生労働省が年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を通じて運用する資産の利回り目標を引き上げる方針を明らかにしたことで、日本株式の資産配分比率が高まるとの思惑が高まったことや、好調なハイテク株に支えられた堅調な米国株式市場、さらには米国の利下げ鈍化懸念からの円安進行等が日本株式市場の上昇につながりました。
 月後半には、18日に米連邦準備制度理事会(FRB)は米連邦公開市場委員会(FOMC)において予想通り政策金利の引き下げを決定し、2025年については2回の利下げに留まることを示唆しました。これを受けて米国長期債利回りは上昇し、米国株式市場は調整に転じ、その影響で日本株式市場も軟調に推移しました。しかしながら19日には日銀は金融政策決定会合にて金利を据え置くことを決定し、その後の記者会見で植田日銀総裁がハト派的な発言を行ったことで為替市場では円安ドル高が進みました。その後は好調な米国の半導体株及びさらなる円安に支えられ、日本株式市場は再び上昇に転じ、27日には日経平均株価は4万円の大台を回復しました。

ファンドの運⽤状況

 当月、当ファンドのパフォーマンスは、前⽉末⽐2.22%の上昇となり、参考指数であるTOPIX(配当込み)の同4.02%の上昇を1.80%下回りました。
 当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した銘柄は、MARUWA、イー・ギャランティ、山洋電気などでした。⼀⽅、マイナスに影響した銘柄は、ライフドリンク カンパニー、神島化学工業、京成電鉄などでした。

 当⽉は、当ファンドでの組⼊上位銘柄である「上村工業」について、投資の魅⼒をコメントします。
 上村工業は1848年の和漢薬販売事業の開始を源流としています。転機となったのは、1957年に「めっき薬」の独自製品の開発に成功したことです。以降、各種めっき薬とめっき装置を開発し、事業を拡大させています。現在の収益の柱は、同社投資家向け資料で示されているWafer&PKG関連(以降、「ウェハー&パッケージ関連」)向けめっき薬です。
 めっきとは、対象となる素材の表面に金属の薄い膜を形成し、様々な機能や装飾性を与える技術です。めっきには様々な種類・方法が存在していますが、同社は無電解めっきを得意としています。無電解めっきとは、化学反応によって素材にめっきを施す方法を指します。同社は、無電解めっきの中でも銅やニッケルなどの、無電解金属めっきに強みを持っています。当ファンドでは、ウェハー&パッケージ関連分野での、同社の世界シェアは1位で30%程度、かつ一部の特殊分野では更に高い世界シェアを持っていると推測しています。
 当ファンドでは、同社の成長は今後加速していくと期待しています。その成長を牽引するのは半導体パッケージ向けめっき薬です。AI(人工知能)の拡大に伴い、半導体パッケージ基板は⼤型化と⾼密度化が進んでいます。半導体が計算するデータ量が増え、電子回路が複雑化・⾼密度化したため、基板1枚ではスペースが不足し、多層化が進んでいます。またAIサーバーでは計算スピードを加速するため、頭脳となるロジック半導体とデータを収納するメモリー半導体を同じ基板上に搭載することからパッケージ基板が大きくなっています。基盤の層が増え面積が拡大すれば、それに応じて、同社めっき薬の販売が増加すると当ファンドは考えています。
 また、新規分野の拡大にも期待が持てます。当ファンドではパワーデバイス向けめっき薬の拡大に注目しています。かつてはパワーデバイスでは、めっき処理を行っていませんでした。しかし電気自動車など高電圧を扱う場合、発熱問題が発生します。この問題を解消するため、パワーデバイスと放熱基板との密着性能を向上させる同社のめっき薬が必要となっています。
 このように追い風が吹く事業環境において、当ファンドでは同社は高いシェア、高い収益性を維持できると考えています。めっき薬は複数の化学成分が配合されており、配合比率や成分同士の相互作用から製造プロセスを含め、競合他社が模倣することが非常に難しいと考えられます。また、顧客の仕様に合わせた調整能力や、顧客からの信頼性の確立にも時間が必要と思われます。
 同社は東証スタンダード市場上場ということもあり、株式市場からの注目を集めきれておりません。今後、同社の利益成長が続けば、株価のディスカウントは修正されると当ファンドでは判断しています。

今後の運⽤⽅針

 日本には優れた製品やサービス、事業モデルを軸に、市場シェアトップ企業に成り得るにも関わらず、株式市場から注目されていない企業が多数存在しています。これらの企業は、長期にわたって成長し、同時に高い利益率を維持する可能性が高いにも関わらず、株価は将来を織り込めていないため割安となっています。長期に成長する企業を割安な株価で投資するには、株式市場から注目されていない企業、つまり株式市場のコンセンサスとは異なる視点が必要です。これを「逆張り的発想」と当ファンドでは呼んでいます。ボトムアップ・リサーチと逆張り的発想とによって、株式市場に注目されていない企業の中から、長期に成長できる企業を発掘し、割安な株価で投資していきたいと思います。

2024年11月の運用コメント

株式市場の状況

 2024年11月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比0.51%の下落、日経平均株価は同2.23%の下落となりました。
 月前半は一進一退の展開となりました。5日に実施された米大統領選挙で共和党のトランプ前大統領が優勢と伝わったことから日経平均株価は大幅に上昇し、7日には40,000円に迫る場面もありました。しかしその後、トランプ次期米大統領が政権人事で対中強硬派の人物を起用する方針が報じられ、次期政権が掲げる関税強化策への警戒感が強まったことで半導体関連株に売り圧力がかかり、株式市場は下落に転じました。一方、14日には米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が「利下げを急ぐ必要はない」旨の発言をしたことで円安が進行し輸出関連株が買われ、半導体関連株の反発もあって株式市場の連日の下落が一服しました。
 月後半は狭いレンジで推移し、米国の金融政策の先行き不透明感や米国半導体株の動向に一喜一憂する動きが続きました。また、トランプ次期米大統領が中国、メキシコ、カナダに対する関税措置を発表したことを受け、相場は軟調な動きが続き、前月末比で下落して当月の取引を終えました。

ファンドの運⽤状況

 当月、当ファンドのパフォーマンスは、前⽉末⽐0.78%の上昇となり、参考指数であるTOPIX(配当込み)の同0.51%の下落を1.29%上回りました。
 当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した銘柄は、ライフドリンク カンパニー、SBIホールディングス、京成電鉄などでした。⼀⽅、マイナスに影響した銘柄は、東洋炭素、ニチハ、山洋電気などでした。

 当⽉は、当ファンドでの組⼊上位銘柄である「SBIホールディングス」について、投資の魅⼒をコメントします。
 SBIホールディングスは、1999年に当時のソフトバンク(現在のソフトバンクグループ㈱)が、インターネットによる金融分野への参入を目的に設立した企業を源流としています。設立当初はベンチャーキャピタルを軸に事業展開していましたが、2003年にネット証券を買収したことを契機に、戦略を大きく転換します。そして2006年には、親会社の経営方針との方向性の違いから資本関係を分離し、独立した金融企業として再出発を果たします。
 以降、SBIホールディングスは、傘下に証券、銀行、保険、ノンバンク、資産運用、プライベートエクイティ投資、暗号資産など、多数の事業会社を抱える金融コングロマリットとして拡大を続けています。現在、同社利益の中心は、大手ネット証券の㈱SBI証券と、㈱SBI新生銀行(旧:新生銀行)です。また次世代事業以外の事業も、一過性のマイナス影響を除けば利益を出しています。
 当ファンドでは、同社の長期的な利益成長に期待し投資しています。金融業界の基本的な収益構造において、収益に大きく影響するのは預かり資産残高とフィー(手数料)料率です。この2つのポイントを軸に、同社の成長を考えてみます。
 まず、同社の預かり資産残高は、個人金融資産を中心に拡大基調にあります。国の「資産運用立国実現プラン」(個人の貯蓄を証券投資に回し、リスクマネーの供給を増やすことで、日本経済の成長力を強化。同時に個人の資産所得を増加させ、成長と資産所得の好循環を目指すというプラン)を受け、株式投資を通じた資産形成の機運が高まっています。新NISAが着実に浸透して口座数も増えており、㈱SBI証券や資産運用子会社であるSBIグローバルアセットマネジメント㈱、SBIレオスひふみ㈱ともに資産残高を拡大しています。
 フィー料率に関しては注意が必要です。㈱SBI証券は日本株式売買手数料を無料化しています。またSBIグローバルアセットマネジメント㈱も信託報酬の低いインデックスファンドを拡大しています。つまり、SBIホールディングスは預かり資産残高を拡大していますが、その多くは収益を生みにくい、低いフィー料率の商品が多く、結果としてSBIホールディングスの利益は成長しにくいと株式市場は考えているようです。
 一方、当ファンドは長期的に見れば、同社はフィー料率を改善できると判断しています。例えば、日本株式売買手数料を無料化して集めた顧客のうち、一定数は信用取引も併用することが想定されます。個人投資家も、投資の経験を積み重ねると、FX(外国為替証拠金取引)や暗号資産など、より幅広い商品に投資対象を広げると考えられます。このように手数料無料化を通じて顧客を獲得し、信用取引の金利や貸株料、FXのスプレッドなどフィー料率の高いサービスも利用してもらうことで、同社全体のフィー料率は改善します。
 同社の戦略は低いフィー料率の商品や、㈱SBI新生銀行での高い預金金利を軸に預かり資産を拡大し、その一定量が相対的に高いフィー料率の商品にシフトすることで収益を拡大させることができると思われます。同社は、増大する個人金融資産の獲得において圧倒的な知名度を背景に、中⻑期で成長が持続すると当ファンドは考えています。

今後の運⽤⽅針

 日本には優れた製品やサービス、事業モデルを軸に、市場シェアトップ企業に成り得るにも関わらず、株式市場から注目されていない企業が多数存在しています。これらの企業は、長期にわたって成長し、同時に高い利益率を維持する可能性が高いにも関わらず、株価は将来を織り込めていないため割安となっています。長期に成長する企業を割安な株価で投資するには、株式市場から注目されていない企業、つまり株式市場のコンセンサスとは異なる視点が必要です。これを「逆張り的発想」と当ファンドでは呼んでいます。ボトムアップ・リサーチと逆張り的発想とによって、株式市場に注目されていない企業の中から、長期に成長できる企業を発掘し、割安な株価で投資していきたいと思います。

2024年10月の運用コメント

株式市場の状況

 2024年10月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比1.88%の上昇、日経平均株価は同3.06%の上昇となりました。
 月前半は、全米企業エコノミスト協会の年次総会に登壇したパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が今後の利下げについて「急ぐ必要はない」と強調したことや、米国雇用統計が市場予想を大幅に上回ったこと等から利下げ観測が後退したこと、石破茂首相から日銀の早期の追加利上げに否定的な見解が示されたこと等からドル高円安が進行しました。また、中東情勢の悪化により株価が一時的に下落する局面もありましたが、前述のように円安の進行や米国経済の底堅さ、石破政権が岸田前政権の経済政策を継承するとの方針が確認されたこと等から株式市場は上昇いたしました。
 月半ばから後半にかけては、オランダの半導体製造装置大手ASML Holding社の決算発表で202512月期の業績見通しが引き下げられたことで半導体関連株に売りが広がったことや、日米長期金利の上昇基調の継続が意識されたこと、27日投開票の衆議院選挙で与党自民・公明両党が過半数議席の確保が微妙な状況と報じられたこと等から株式市場は軟調な推移となりました。
 衆議院選挙では連立与党が2009年以来15年ぶりに過半数を割り込む結果となり、今後の政権の枠組みは少数与党が政策や法案ごとに野党に協力を求める「パーシャル(部分)連合」になるのではないかという見方が強まりました。財政拡張的な政策を掲げる野党との協力により景気刺激的な政策が実行される可能性が意識されたことや、リスクイベント通過に伴う先物の買戻し等から株式市場は衆議院選挙を境に一転し、前月末比で上昇して当月の取引を終えました。

ファンドの運⽤状況

 当月、当ファンドのパフォーマンスは、前⽉末⽐1.86%の下落となり、参考指数であるTOPIX(配当込み)の同1.88%の上昇を3.74%下回りました。
 当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した銘柄は、トーセイ、MARUWA、フューチャーなどでした。⼀⽅、マイナスに影響した銘柄は、ライフドリンク カンパニー、東洋炭素、山洋電気などでした。

 当⽉は、組⼊上位銘柄である「メック」について、投資の魅⼒をコメントします。
 メックは、1969年に創業された電⼦基板向け特殊薬品の専業メーカーです。社名のメック(MEC)は「Machinery(機械)」「Electronics(電⼦)」「Chemistry(化学)」の頭⽂字を由来としています。創業当時の日本は、電⼦基板向け薬品の技術がなく、輸⼊品に頼らざるを得ない状況でした。そこで同社は1970年頃から研究に着⼿し、国産化に成功します。同社の転機となったのは1995年頃からのパソコン用半導体向けパッケージ基板での技術変化でした。半導体パッケージ基板の素材がセラミックから樹脂に変化したことが同社の大きな飛躍に繋がったのです。
 半導体パッケージ基板は、電気の回路となる「銅」と、電気を通さない「樹脂」が何層にも重なっています。半導体は発熱しますが、その際に銅と樹脂で熱膨張率が異なることが問題となります。つまり、半導体が発熱し、銅と樹脂の熱膨張率の違いによって2つの素材が分離し、半導体が壊れるリスクが高まったのです。同社の薬剤は、銅の表⾯を溶かし、凹凸にすることで銅と樹脂の密着⼒を向上させ、熱膨張による剥離を防ぐ役割を果たしています。
 現在、同社利益の中心は、上記の特性を持つ薬剤です。そして半導体パッケージ向け薬剤での世界シェアは100%に近いと当ファンドでは推測しています。この⾼シェア・⾼利益率の背景は、同社の研究開発⼒であると考えています。
 当ファンドでは、上記薬剤の長期的な成長に期待しています。特に、サーバー向けが成長を牽引し、加えてパソコン・スマートフォン向けでも半導体基板の成長が持続すると考えています。
 半導体が高度化するに従い電子回路が増え、パッケージ基板の⾼密度化、多層化につながっています。層が増えれば同社薬剤の使⽤量は増加します。更にサーバー向け半導体パッケージ基板では⼤型化が期待できます。具体的には、現在のAI(⼈⼯知能)のように⾼速演算を必要とする場合、計算を司る頭脳となるロジック半導体と、データを格納するメモリー半導体を同じ基板上に搭載し、演算スピードを加速する流れになっています。結果、パッケージ基板の⾯積が⼤きくなり、同社薬剤の使⽤量も増加していきます。同社は成長する産業において、圧倒的な差別化を背景に、中⻑期で成長できると当ファンドは考えています。

今後の運⽤⽅針

 日本には優れた製品やサービス、事業モデルを軸に、市場シェアトップ企業に成り得るにも関わらず、株式市場から注目されていない企業が多数存在しています。これらの企業は、長期にわたって成長し、同時に高い利益率を維持する可能性が高いにも関わらず、株価は将来を織り込めていないため割安となっています。長期に成長する企業を割安な株価で投資するには、株式市場から注目されていない企業、つまり株式市場のコンセンサスとは異なる視点が必要です。これを「逆張り的発想」と当ファンドでは呼んでいます。ボトムアップ・リサーチと逆張り的発想とによって、株式市場に注目されていない企業の中から、長期に成長できる企業を発掘し、割安な株価で投資していきたいと思います。

2024年9月の運用コメント

株式市場の状況

 2024年9月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比1.53%の下落、日経平均株価は同1.88%の下落となりました。
 月前半は米国のISM製造業景況感指数や雇用統計が予想を下回ったことで、米国経済の減速懸念が高まり市場心理に影響を与えました。さらに米連邦公開市場委員会(FOMC)による利下げ期待と日銀の利上げ期待の高まりにより、月半ばにかけて円高が進行しました。このような状況の中、株式市場は一時的に下落した後、反発が見られたものの上値は重く、投資家は慎重な姿勢を維持しました。
 月後半はFOMC0.5%の利下げを決定した後、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が緩和を急がない姿勢を示したことや、日銀が金融政策を現状維持したことから円高が一服し、輸出関連株や半導体関連株の買い戻しが進みました。また、自民党総裁選挙で高市早苗氏が当選し、金融緩和が再開されるとの見通しが高まったことで日経平均株価は26日から27日にかけて大きく上昇しました。しかし、最終的には石破茂氏が勝利し、経済政策への警戒感が高まったことなどから30日の日本株式市場は全面安の展開となり、前月末比で下落して当月の取引を終えました。

ファンドの運⽤状況

 当月、当ファンドのパフォーマンスは、前⽉末⽐1.89%の上昇となり、参考指数であるTOPIX(配当込み)の同1.53%の下落を3.42%上回りました。
 当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した銘柄は、MARUWA、ライフドリンク カンパニー、サイゼリヤなどでした。⼀⽅、マイナスに影響した銘柄は、京成電鉄、メック、SBIホールディングスなどでした。

 当⽉は、組⼊上位銘柄である「⼭洋電気」について、投資の魅⼒をコメントします。
 ⼭洋電気は1927年の創業当初は電気部品の輸入販売業者でしたが、1932年には通信器用電源の自社生産を開始しました。現在は主に3つの事業セグメントで構成されており、冷却⽤ファンを中⼼としたクーリングシステム事業、⼯作機械向けのサーボアンプを中⼼としたサーボシステム事業、無停止電源装置など中⼼としたパワーシステム事業を柱としています。
 同社の認知度は決して高くありません。同社はカスタム品(メーカーや販売会社が製造・販売可能な寸法や公差範囲等内容を設定して、それぞれの国・地域の工業標準化法に基づいて一から顧客の要望に合わせて製造する製品のこと)を中⼼に事業展開しているため、汎⽤・標準品を軸に事業展開しているライバル企業と比べて規模が⼩さいためであると当ファンドでは考えています。カスタム品を軸にすることのメリットは、顧客ニーズに合わせた製品を製造することから顧客満⾜度が⾼く、顧客と長期の関係を築くことができる点です。反対にデメリットは、製品開発が常に必要となり、コストが重く収益性が低くなりがちな点です。つまりカスタム品製造は多品種少量⽣産、汎⽤・標準品は少品種⼤量⽣産とも⾔えます。
 当ファンドでは、同社の冷却⽤ファン、サーボシステム(人の定める指示(位置、速度、回転力など)に対し正確に動作できるシステム)の成⻑に期待しています。冷却⽤ファンはデータセンターが需要を牽引すると考えます。近年のデータセンターは演算量の増大とともに発熱量が増しています。またデータセンターは、365日・24時間の無停止稼働が前提となっていることから、耐久性のある高品質な冷却⽤ファンが使われます。サーボシステムは製造ライン向けが成⻑を牽引すると考えます。特に半導体製造装置向け、ロボット向けの拡大が期待できます。同社は、海外でテクニカルセンター(技術相談窓口のような拠点)を開設し、⾃動化・省人化を進めたい企業に対してサポートを強化しています。
 また、同社は収益性改善に対する施策も進めています。カスタム品製造、つまり多品種少量⽣産は規模の経済が働きにくいのですが、同社は製造ラインの自動化、不採算製品からの撤退などを進めており、まだ業績上の変化は見えていませんが、中長期での成果の発現に当ファンドでは期待しています。
 同社の株価は長らくPBR(株価純資産倍率)1倍割れの水準で推移してきました。その理由は財務(バランスシート)に課題があると当ファンドでは考えています。同社は自己資本比率が高く、手元流動性(現金)と在庫が多く、かつ配当性向が低いため、資本効率が改善しにくい状況です。しかしながら、現在の東証による資本効率改善への動きや、アクティビスト(物言う株主)の動向を踏まえると、今後同社の資本効率の改善にも期待できると当ファンドは考えています。

今後の運⽤⽅針

 日本には優れた製品やサービス、事業モデルを軸に、市場シェアトップ企業に成り得るにも関わらず、株式市場から注目されていない企業が多数存在しています。これらの企業は、長期にわたって成長し、同時に高い利益率を維持する可能性が高いにも関わらず、株価は将来を織り込めていないため割安となっています。長期に成長する企業を割安な株価で投資するには、株式市場から注目されていない企業、つまり株式市場のコンセンサスとは異なる視点が必要です。これを「逆張り的発想」と当ファンドでは呼んでいます。ボトムアップ・リサーチと逆張り的発想とによって、株式市場に注目されていない企業の中から、長期に成長できる企業を発掘し、割安な株価で投資していきたいと思います。

2024年8月の運用コメント

株式市場の状況

 2024年8月、日本株式市場の代表指標であるTOPIX(配当込み)は前月末比2.90%下落し、日経平均株価は前月末比1.16%下落しました。
 当月の日本株式市場は歴史的な乱高下を演じ、日経平均株価の月間値幅(高値と安値の差、終値ベース)がバブル経済崩壊時期を超えて過去最大となりました。
 7月31日の日銀金融政策決定会合での追加利上げが円高を呼び、さらに市場予想を下回った7月の米ISM製造業景気指数で米国景気減速懸念が台頭し円高が一層進行したことで、月前半の日本株式市場はリスク回避の流れが強まり暴落しました。5日には米国経済や雇用の減速への警戒などから円高が大幅に進み、午後には日経平均先物でサーキットブレーカーが13年ぶりに1日に2回発動され、日経平均株価は前日比4,451円の下落と過去最大の値下がりを記録しました。しかしながら翌6日には為替市場がいったん落ち着いたことで日本株式市場も落ち着きを取り戻し、TOPIXおよび日経平均株価は史上最大の上げ幅となりました。加えて、翌7日の内田日銀副総裁のハト派発言も投資家の安心感につながり、月半ばにかけて日本株式市場は急反発しました。
 月後半は米国経済への先行きに対する警戒感がひとまず和らぎ、日本株式市場は緩やかなペースで回復し、月前半の急落分の大半を取り戻して当月の取引を終えました。

ファンドの運⽤状況

 当月、当ファンドのパフォーマンスは、前⽉末⽐1.09%の下落となり、参考指数であるTOPIX(配当込み)の同2.90%の下落を1.81%上回りました。
 当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した銘柄は、山洋電気、JMDC、ライフドリンク カンパニーなどでした。⼀⽅、マイナスに影響した銘柄は、共立メンテナンス、マックス、トーセイなどでした。

 当月は、組入上位銘柄である「トーセイ」について、投資の魅力をコメントします。
 トーセイは、1950年創業の不動産企業です。現社長である山口誠一郎氏の父が創業者ですが、山口社長が就任してから本格的に業容拡大しております。事業内容は、マンション・戸建・オフィス・物流施設・ホテルの開発、中古物件の転売、不動産賃貸、ホテル運営、不動産ファンド運営など、中堅規模の不動産会社でありながら、扱う物件のタイプ・事業が非常に幅広く、総合的に事業展開しています。
 当ファンドではトーセイの先行きに対し強気の姿勢を維持しています。中でも不動産ファンド運営が中期的に成長を牽引していくと思われます。また短期的にはホテル事業の拡大も期待出来ると考えています。
 同社の不動産ファンドの残高は外国人投資家を中心に近年拡大が続き、20245月時点で23,778億円となっています。主要国の金利が上昇した一方、相対的に日本は緩和的な金融環境が続いています。日本の不動産のイールドギャップ(投資利回りと長期金利との差)は低下しているとはいえ、主要国の中では高位を維持しており、外国人投資家にとって日本の不動産は魅力的な投資対象と映るようです。円安も外国人投資家にとって日本の不動産を割安に感じさせる要因となっており、欧米系機関投資家に加えアジア系の資金も流入しているようです。
 ホテル事業は2016年から参入し、自社で物件開発、運営を手掛けています。新型コロナウイルス感染拡大の際は、一部の物件の評価損計上を余儀なくされましたが、2023年以降は訪日客の回復もあり室料単価、稼働率ともに上昇傾向にあります。
 同社の収益構造は、従来の不動産売買によるフロー収益からファンドの残高に応じたストック型収益にシフトしています。同社自身の分析では、事業運営に必要な固定費をストック型収益で賄えており、これは同社の収益は安定性が増していることを意味します。一方、同社の株価は不動産売買を主体とした、収益の安定性が低い企業として評価されていると当ファンドでは考えています。今後の利益成長・持続性に対し、株価は割安であると当ファンドでは判断しています。

今後の運⽤⽅針

 日本には優れた製品やサービス、事業モデルを軸に、市場シェアトップ企業に成り得るにも関わらず、株式市場から注目されていない企業が多数存在しています。これらの企業は、長期にわたって成長し、同時に高い利益率を維持する可能性が高いにも関わらず、株価は将来を織り込めていないため割安となっています。長期に成長する企業を割安な株価で投資するには、株式市場から注目されていない企業、つまり株式市場のコンセンサスとは異なる視点が必要です。これを「逆張り的発想」と当ファンドでは呼んでいます。ボトムアップ・リサーチと逆張り的発想とによって、株式市場に注目されていない企業の中から、長期に成長できる企業を発掘し、割安な株価で投資していきたいと思います。

2024年7月の運用コメント

株式市場の状況

 2024年7月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比0.54%下落し、日経平均株価は前月末比1.22%下落しました。
 当月の日本株式市場はボラティリティの大きい相場展開となりました。月前半は、前月からの好調な流れを引き継ぎ堅調に推移しました。米国の雇用統計で労働需給の逼迫が緩和される兆しが見られ、FRB(米連邦準備制度理事会)の年内利下げ観測が高まったことで、長期金利が低下し、米国のハイテク株が上昇しました。日本でも半導体関連銘柄が相場を支え、日経平均株価は連日で史上最高値を更新し、11日には42,000円台に到達しました。しかしながら米国消費者物価指数が想定以上に軟化し、米国ハイテク株に利益確定売りが入ったことやドル円が円高方向に振れたことなどから、日本株式市場は下落に転じました。そして月後半に入ると下げが一層加速しました。トランプ氏が大統領選で優勢と伝わると、米中対立の深刻化やドル高是正などの自国優位政策が懸念され、半導体関連株に売りが膨らみ、日本株にも影響が及びました。さらに日銀の追加利上げやFRBの利下げ観測から「円キャリー取引」の巻き戻しが発生し、ドル円は一時151円台を付け、日本株式市場も幅広く売りが広がり、日経平均株価は38,000円を割り込む水準まで大幅に下落しました。
 31日に日銀は金融政策決定会合で政策金利を0.25%程度に引き上げることを決定し、国債買い入れの減額計画も明らかにしました。また、米国政府が対中国の半導体輸出規制で日本などを除外すると報じられると、半導体関連株が反発し日本株式市場は下げ幅を縮小して当月の取引を終えました。

ファンドの運⽤状況

 当月、当ファンドのパフォーマンスは、前⽉末⽐0.84%の上昇となり、参考指数であるTOPIX(配当込み)の同0.54%の下落を1.38%上回りました。
 当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した銘柄は、ベイカレント・コンサルティング、MARUWA、ライフドリンク カンパニーなどでした。⼀⽅、マイナスに影響した銘柄は、メック、京成電鉄、東洋炭素などでした。

 当月は、組入上位銘柄である「ニチハ」について、投資の魅力をコメントします。
 ニチハは、窯業系サイディング(住宅用の外壁)国内最大手企業です。窯業系サイディングとは、粘土や石灰岩などを混練・成型し、加熱・硬化させて作る外壁材です。日本の住宅の外壁は、主に3つの方法で作られます。窯業系サイディング、モルタル(セメント)、ALC(軽量気泡コンクリート)です。1980年代前半まではモルタルが主流だったのですが、施工職人を必要とするため建設現場で嫌がられ、ひび割れなど耐久性でも課題があったことから、施工が簡単でデザイン性に優れる窯業系サイディングにシフトしていきました。当ファンドでは、昨今の住宅外壁の約80%が窯業系サイディングになったと言われています。この窯業系サイディング市場での同社シェアは約60%1位、かつシェアが上昇しています。また、同社は米国での窯業系サイディングの拡大に注力しています。米国の中低層建築物の外壁は樹脂や木製が主流のため、今後米国でも耐久性・デザイン性に優れる窯業系サイディングの採用拡大が期待できると考えます。
 当ファンドでは、同社の国内および米国での成長に期待しています。国内事業は輸送コストの差がシェアに影響していくと考えられることから、同社のシェア拡大が成長ドライバーとなります。デフレ期にはトラック運賃は低下するのが当たり前だったため、消費地から離れた遠方の工場は、比較的安い人件費と低下するトラック運賃を背景に、コスト競争力が高い状況でした。しかしインフレ期では現在のようにトラック運賃が高騰してしまうと、消費地から遠方にある工場はコスト競争力を維持することが困難となります。同社の競合企業は非上場のため、入手できる情報は限定的ですが、競合企業の工場はまさに輸送コストの上昇に苦しんでいると当ファンドでは推測しています。一方、ニチハは過半を超えるシェアを獲得し、規模の優位性を出すことで、更なるシェアアップに繋げることができると思われます。
 米国では、商業用物件においてデザイン性に優れる同社製品が普及することを期待しています。また、米国第2工場の立ち上げには苦戦していますが、概ね問題解決に目処が付いたと思われます。この米国第2工場により、日本から輸出する必要性が低下するため、米国事業は日本からの輸出コストの低減や現地工場の稼働の改善によって、中長期で利益成長出来ると当ファンドでは判断しています。

今後の運⽤⽅針

 日本には優れた製品やサービス、事業モデルを軸に、市場シェアトップ企業に成り得るにも関わらず、株式市場から注目されていない企業が多数存在しています。これらの企業は、長期にわたって成長し、同時に高い利益率を維持する可能性が高いにも関わらず、株価は将来を織り込めていないため割安となっています。長期に成長する企業を割安な株価で投資するには、株式市場から注目されていない企業、つまり株式市場のコンセンサスとは異なる視点が必要です。これを「逆張り的発想」と当ファンドでは呼んでいます。ボトムアップ・リサーチと逆張り的発想とによって、株式市場に注目されていない企業の中から、長期に成長できる企業を発掘し、割安な株価で投資していきたいと思います。

2024年6月の運用コメント

株式市場の状況

 2024年6月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比1.45%上昇し、日経平均株価も前月末比2.85%上昇しました。
 当月の日本株式市場は、日米の金融政策の動向に注目が集まるなかレンジ内でもみ合いの推移となった後、円安の進行とともに月末にかけて上昇しました。月前半は、米国金融政策の動向を巡り米国マクロ経済指標に注目が集まるなか、雇用・物価関連指標等の結果を受けインフレ鈍化の見方が支持され、目先のFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ観測の高まりから米国長期金利が大幅に低下し、米国株式市場は半導体・ハイテク株中心に上昇しました。この流れを受けて、日本株式市場も上昇しました。月半ばには、日銀金融政策決定会合で、日銀が国債買い入れ減額の方針を固めたものの、具体策については公表が見送られ、円安の進行とともに日本株式市場は上昇しました。その後は、会合後の記者会見にて日銀総裁より買い入れ減額規模について「相応の規模になる」との発言があったことや、7月の会合で利上げを行う可能性も否定しない主旨の発言があったこと、また、フランス政治不安が改めて意識され下落した欧州市場の影響などいくつかの材料が出るなか、日本株式市場は下落する場面がありましたが、月後半にかけて株価は持ち直しました。月後半は、ドル円レートが一時161円台まで下落し、198612月以来およそ37年ぶりの安値を更新しました。円安が支えとなったほか、日本長期金利の上昇を受けた銀行株などの上昇も相場をけん引し、月末にかけては配当金の再投資の観測もあるなかで日本株式市場は前月末対比で上昇し、当月の取引を終えました。

ファンドの運⽤状況

 当月、当ファンドのパフォーマンスは、前⽉末⽐5.42%の上昇となり、参考指数であるTOPIX(配当込み)の同1.45%の上昇を3.97%上回りました。
 当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した銘柄は、ライフドリンク カンパニー、MARUWA、テレビ東京ホールディングスなどでした。⼀⽅、マイナスに影響した銘柄は、京成電鉄、横浜ゴム、ニチハなどでした。

 当月は、組入銘柄である「ライフドリンク カンパニー」について、投資の魅力をコメントします。
 ライフドリンク カンパニーはペットボトル飲料の大手メーカーです。1950年にお茶の卸業として創業して以降、清涼飲料、乾麺などの食品、ソースなどの調味料、太陽光発電事業などへ多角化しながら事業を拡大させてきました。しかし当時の創業者は多角化した企業では成長に限界があるとの思いから、2015年にPE(プライベートエクイティ)ファンドと資本業務提携を行いました。その後はPEファンドからの経営陣を軸にドリンク事業への集中を進め、2021年に上場を果たします。現在、ミネラルウォーター、無糖炭酸水、緑茶、ウーロン茶が同社の主力製品です。
 同社は、ミネラルウォーター市場では、販売箱数で市場2位の規模まで拡大していると当ファンドでは推測しています。規模で言えば大手飲料メーカーですが、同社の認知度は高くありません。その理由は、小売店向けのPB(プライベートブランド)飲料製造が売上の60%程度を占め、同社ブランドを目にする機会が少ないためだと思われます。
 株式市場は、PB飲料製造に注力した同社の戦略を評価していないように思われます。一般的にPB製造は利益が出にくい事業といえます。まず、PB商品を欲しがる小売業は大手企業が多く、小売側が優位であることが多いからです。次に、PBメーカーの多くが自社ブランド品を展開しながらPB生産をしていますが、あくまでもPB品は生産ラインの空き時間を埋めることが狙いであり、PB自体に高い付加価値を付けることは少ないためです。
 一方、当ファンドでは同社のPB飲料製造に注力した戦略を高く評価しています。同社は差別化が難しい無糖飲料市場において、コストリーダーシップ(低コスト製造)戦略を追求しています。同社がコストリーダーシップを取れるのは、生産を極限までシンプルにしているためです。無糖飲料(ミネラルウォーター、無糖炭酸水、緑茶、ウーロン茶)の製造に絞り、容器は500ml2L2サイズのみ、かつPETボトルの形状を統一することで、異なる小売店向けでも、ラベル以外は同じ飲料製品を製造し続けることができます。このように、工場の生産性を最大化することで、低価格を実現しています。ライバル企業よりも低コストで製造できれば、差別化できない分野であっても同社の競争力・交渉力は高くなりますし、大手小売は同社から切り替えができないとも言えます。更に同社はライバル企業の工場を買収し、低コスト戦略を移植することで、生産性を改善させ、規模拡大に繋げています。
 日本は人口減少に突入しておりますが、多くの人が水道水からミネラルウォーターにシフトしており、同社が注力している分野の市場規模は拡大しています。特に若年層ほど、水道水を飲むことに抵抗を感じるようです。また、健康志向から加糖飲料は伸び悩んでいることも追い風です。加えて足元のインフレ環境で消費者は価格に敏感になっており、割安なPB商品が選好されている模様です。
 足元の同社の業績は順調に拡大しています。インフレによって生活防衛意識を強めた消費者には、同社商品の価格が魅力的に映っているようです。課題であった生産能力も御殿場新工場が順調に立ち上がっており、生産能力が大幅に増強されました。引き続き同社の成長に期待しています。

今後の運⽤⽅針

 日本には優れた製品やサービス、事業モデルを軸に、市場シェアトップ企業に成り得るにも関わらず、株式市場から注目されていない企業が多数存在しています。これらの企業は、長期にわたって成長し、同時に高い利益率を維持する可能性が高いにも関わらず、株価は将来を織り込めていないため割安となっています。長期に成長する企業を割安な株価で投資するには、株式市場から注目されていない企業、つまり株式市場のコンセンサスとは異なる視点が必要です。これを「逆張り的発想」と当ファンドでは呼んでいます。ボトムアップ・リサーチと逆張り的発想とによって、株式市場に注目されていない企業の中から、長期に成長できる企業を発掘し、割安な株価で投資していきたいと思います。

2024年5月の運用コメント

株式市場の状況

 2024年5月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比1.16%上昇し、日経平均株価も前月末比で0.21%上昇しました。
 当月の日本株式市場は、月前半は4月の米国雇用者数が市場予想を下回り、米利下げ観測が強まったことから日米株式市場ともに上昇しましたが、日銀の金融政策正常化観測などから上値が抑えられました。月半ばには米消費者物価指数や米小売売上高など予想を下回る指標が発表され、金融引き締めの長期化への懸念が後退しました。その結果、米国の主要3株価指数が史上最高値を更新し、日経平均株価も一時39,000円を回復しました。さらに、NVIDIA社(米国)が市場予想を上回る好決算を発表し、半導体株が軒並み上昇して相場を支えました。月後半は、米景気の底堅さを背景とする利下げ動向への懸念や、日銀総裁の追加金融引き締めを示唆する講演が再び注目されて日米長期金利の上昇により株価が下落しましたが、最終的には金利上昇がひとまず一服したとの見方が買い戻しにつながり、前月末を上回る水準で月を終えました。

ファンドの運⽤状況

 当月、当ファンドのパフォーマンスは、前⽉末⽐1.87%の下落となり、参考指数であるTOPIX(配当込み)の同1.16%の上昇を3.03%下回りました。
 当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した銘柄は、ライフドリンク カンパニー、MARUWA、マックスなどでした。⼀⽅、マイナスに影響した銘柄は、東洋炭素、トーセイ、イー・ギャランティなどでした。

 当月は、組入上位銘柄である「MARUWA」について、投資の魅力をコメントしたいと思います。
 MARUWAは放熱用セラミック部品の世界的大手企業です。セラミックとは、窯で無機物を焼結させた物を指します。品質を問わなければ比較的簡単にセラミックを作ることが出来ますが、MARUWAが得意としている「ファインセラミック」の分野では高度な製造ノウハウを必要とします。ファインセラミックを製造するには、焼き上げる粉体を均質に混ぜる技術、粉体を均一な状況に保つ最適なバインダー(接着剤)、何℃で何時間焼成する、といった焼成プロセスの管理など、製造工程の全てにおいて高度な管理が必要となります。この製造工程の管理が高い参入障壁となっており、MARUWAは世界で高いシェアを持っていると当ファンドでは推測しています。
 MARUWAは多種多様なファインセラミック製品を製造・販売していますが、主な用途は放熱用です。放熱を担う主要素材には、プラスチック、金属、セラミックの3つが存在します。プラスチックが最も安価で、セラミックが最も高価です。一方、耐熱性・耐久性はセラミックが最も強く、プラスチックは最も弱いという特徴があります。金属は、プラスチックとセラミックの中間に位置します。セラミックによる放熱はコストが高いため、かつては鉄道や工作機械など、限定された用途向けでした。しかし近年では、新たな発熱問題により用途が増加しています。主なものでは、LED化された自動車のヘッドランプのLEDチップ、ハイブリッド車や電気自動車(EV)のインバーター、そして現在ではAI(人工知能)サーバなどです。このように様々な機器の発熱が世界的な課題となっていますが、この課題は今後増大し続けるだろうと当ファンドでは考えています。このような背景から、同社は放熱用セラミックを提供する企業として成長でき、また同時に高い参入障壁によって、高い収益性を維持できると当ファンドでは判断しています。
 同社の株価は業績拡大と共に上昇し、株式市場からの注目度も高くなってきました。かつての同社はIR活動に消極的で、情報開示に大きな課題がありました。現在も資本コストに対する同社の方針など、株式市場との対話においては課題が残っておりますが、改善が続いていくと当ファンドでは考えます。引き続き同社の業績動向をフォローし、適切に投資行動に繋げていく所存です。

今後の運⽤⽅針

 日本には優れた製品やサービス、事業モデルを軸に、市場シェアトップ企業に成り得るにも関わらず、株式市場から注目されていない企業が多数存在しています。これらの企業は、長期にわたって成長し、同時に高い利益率を維持する可能性が高いにも関わらず、株価は将来を織り込めていないため割安となっています。長期に成長する企業を割安な株価で投資するには、株式市場から注目されていない企業、つまり株式市場のコンセンサスとは異なる視点が必要です。これを「逆張り的発想」と当ファンドでは呼んでいます。ボトムアップ・リサーチと逆張り的発想とによって、株式市場に注目されていない企業の中から、長期に成長できる企業を発掘し、割安な株価で投資していきたいと思います。

2024年4月の運用コメント

株式市場の状況

 2024年4月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比0.91%下落し、日経平均株価は前月末比4.86%の大幅下落となりました。
 月前半は利益確定売りや、⽶連邦準備制度理事会(FRB)高官の年内利下げ先送り示唆に伴い米長期金利上昇が懸念され、米国株式市場の下落を招き、日本株式市場は上値を抑えられました。月半ばには米CPI(消費者物価指数)の市場予想を超える上昇や半導体関連企業の大幅下落、また中東情勢の悪化などから日経平均株価は一時37,000円を割り込みました。月後半には中東情勢の落ち着きから買い戻しの動きが見られ、日経平均株価は38,000円台を回復しました。26日まで開かれた日銀金融政策決定会合では緩和的な金融政策の維持が決定され、日本が祝日だった29日にドル円相場は一時160円台へ急伸し約34年ぶりの高値を更新しました。しかしながら、その後一転して154円台まで大きく円高に振れ、市場では政府による為替介入が行われたとの観測が広がりました。

ファンドの運⽤状況

 当月、当ファンドのパフォーマンスは、前⽉末⽐0.04%の下落となり、参考指数であるTOPIX(配当込み)の同0.91%の下落を0.87%上回りました。
 当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した銘柄は、マックス、MARUWA、ベイカレント・コンサルティングなどでした。⼀⽅、マイナスに影響した銘柄は、東洋炭素、ダイセキ、ダイフクなどでした。

 当月は、組⼊上位銘柄である「ダイフク」について、投資の魅力をコメントしたいと思います。
 ダイフクはマテハン大手企業です。マテハンとは「マテリアルハンドリング」の略であり、物流現場での荷物の仕分けや、製造現場での材料・製品などの移動・運搬を担うシステムを意味します。同社は1937年に航空・船舶向けの鍛圧機械メーカーとして創業しましたが、戦後にマテハン機製造にシフトします。1950年代には自動車製造ライン向けのコンベヤシステム、1960年代には家電メーカー向けの日本初の自動倉庫、1980年代にはファクトリーオートメーション(FA)メーカー向け無人搬送車や、半導体業界向けにシリコンウエハーの搬送装置を開発するなど、様々な領域でのマテハンを提供してきました。このようにマテハン機器を必要としている業界、顧客は幅広く存在しています。ダイフクは多様な顧客ニーズに応じてカスタマイズしたソリューションを提供し、また、設計・製造・アフターサービスまで一貫して対応してきたことで、顧客から高い評価を獲得し、グローバルに業容を拡大してきました。
 ダイフクには複数の事業セグメントが存在しております。流通業向けのイントラロジスティクス事業、半導体業界向けのクリーンルーム事業、自動車業界向けのオートモーティブ事業、空港施設向けのエアポート事業が主な顧客セグメントです。
 当ファンドでは、流通業者向けや半導体産業向けでの成長に注目し、投資しています。流通業者向けは、特にEC(電子商取引)市場が成長を続けていることに加えて、世界各国での省人化ニーズが高まることで、同社の強みが発揮できると思われます。半導体産業は、引き続きAI(人工知能)関連を中心に拡大が期待できます。加えて、当ファンドでは同社の利益率改善にも期待しています。同社は顧客ニーズに対応できることが強みである一方で、顧客ごとに設計が必要となり規模の経済が働きにくい状況になっているとも言えます。同社は共通できる分野は共通化させることにより利益率の改善を狙っています。
 株式市場では、米国での動向や競合企業との関係により、同社の成長性・収益性に懸念が残っていると思われます。例えば、EC市場における世界最大の米国企業はマテハンの大部分を自社で設計しているようです。世界最大の規模があれば、ダイフクのような外部企業を使うよりも、自社で設計する経済合理性が生まれます。また半導体業界向けでも競合企業が存在しています。しかし、当ファンドは世界最大のEC企業のように自社設計を行うケースは稀であると判断しています。今後、アジア各国で現地EC企業が成長するに従い、ダイフクも成長が続くと思われます。また半導体産業向けでの競合は過去も常に起きている事象であると同時に、同社は過去の実績が高く評価されているため、先端半導体工場向けでのシェアを高められていると当ファンドでは推測しています。引き続き同社の成長に期待していきたいと思います。

今後の運⽤⽅針

 日本には優れた製品やサービス、事業モデルを軸に、市場シェアトップ企業に成り得るにも関わらず、株式市場から注目されていない企業が多数存在しています。これらの企業は、長期にわたって成長し、同時に高い利益率を維持する可能性が高いにも関わらず、株価は将来を織り込めていないため割安となっています。長期に成長する企業を割安な株価で投資するには、株式市場から注目されていない企業、つまり株式市場のコンセンサスとは異なる視点が必要です。これを「逆張り的発想」と当ファンドでは呼んでいます。ボトムアップ・リサーチと逆張り的発想とによって、株式市場に注目されていない企業の中から、長期に成長できる企業を発掘し、割安な株価で投資していきたいと思います。

2024年3月の運用コメント

株式市場の状況

 2024年3月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比4.44%上昇し、日経平均株価は前月末比3.07%の上昇となりました。
 当月の日本株式市場は、月前半は前月から引き続き半導体関連銘柄の上昇などが相場をけん引し、日経平均は史上初となる4万円台に到達するなど堅調な推移となりましたが、月半ばにかけては米国半導体関連銘柄が下落した影響や、日銀のマイナス金利政策解除を示唆する報道、春季労使交渉(春闘)での高い賃上げ実現への期待の高まりなどから日銀の金融政策正常化への思惑が広がって円高が進行したことなどが重しとなり、下落しました。月後半にかけては、日銀が金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除や長短金利操作の撤廃、上場投資信託(ETF)の買い入れ終了などを決定したものの、当面は緩和的な金融環境が継続するとの見通しが示されたことなどを受けて円安進行とともに上昇し、最終的に前月末を上回る水準で取引を終えました。

ファンドの運⽤状況

 当月、当ファンドのパフォーマンスは、前⽉末⽐2.30%の上昇となり、参考指数であるTOPIX(配当込み)の同4.44%の上昇を2.14%下回りました。
 当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した銘柄は、東洋炭素、トーセイ、ライフドリンク カンパニーなどでした。⼀⽅、マイナスに影響した銘柄は、京成電鉄、MARUWA、メックなどでした。

 当⽉は組⼊上位銘柄である「東洋炭素」について、投資魅⼒をコメントしたいと思います。
 東洋炭素は1947年に創業した特殊黒鉛製品の世界的大手メーカーです。世界で初めて大型の等方性黒鉛製品の量産に成功し、現在も世界トップクラスのシェアを維持しています。当ファンドでは、同社の特殊黒鉛製品が半導体製造装置向け、パワーデバイス製造装置向けで成長することを期待し投資しています。
 同社は2006年に上場しましたが、2008年には業績の変調が始まり、2013年以降は業績の低迷期を迎えます。2000年代初めに、中国を中心に世界的に太陽光パネル製造がブームとなり、同社の黒鉛製品への需要が拡大しました。しかし2010年以降になると太陽光パネルの増産ブームが終焉し、加えて競争も激化しました。太陽光パネル製造で求められる黒鉛製品のスペックは高度なものではなく、中国メーカー製の低品質・低価格の黒鉛製品が市場シェアを上げたことが背景です。結果、同社の売上、利益ともに低迷し、株式市場からの注目を集めきれずにおりました。
 当ファンドでは、同社は事業ポートフォリオの入れ替えを終え、現在は差別化できる分野、具体的には半導体製造工程、パワーデバイス製造工程で使われる黒鉛製品で利益成長できると考えています。半導体、パワーデバイス分野では、黒鉛製品に求められる品質基準が格段に上がります。当ファンドの推定では、当該分野で黒鉛製品を提供できるのは、東洋炭素を含め世界で3社のみであり、技術的な難しさから上位メーカーの優位性が続くと考えております。
 需要動向では半導体市場の底打ちに期待しています。2023年まで半導体業界全体が生産調整の局面にありましたが、2024年からは半導体業界全体の生産拡大が期待されます。加えて、同社の黒鉛製品は定期的に置き換えが必要な製品であることから、底堅い需要が期待できます。パワーデバイスは主に電気自動車(EV)で使用されますが、株式市場では2024年以降のEV市場の成長鈍化が懸念されています。当ファンドでもEV市場の鈍化に対しては注意していますが、目先は次世代パワーデバイスであるSiC(シリコンカーバイド)パワーデバイスの増産が続くため、同社はその恩恵を受けると思われます。
 当ファンドが投資を開始して以降、株価は堅調に推移しております。EV市場は慎重に見る必要があると思われますが、中長期ではEVは成長市場であると当ファンドでは考えており、引き続き同社の業績をしっかりフォローしてまいります。

今後の運⽤⽅針

 日本には優れた製品やサービス、事業モデルを軸に、市場シェアトップ企業に成り得るにも関わらず、株式市場から注目されていない企業が多数存在しています。これらの企業は、長期にわたって成長し、同時に高い利益率を維持する可能性が高いにも関わらず、株価は将来を織り込めていないため割安となっています。長期に成長する企業を割安な株価で投資するには、株式市場から注目されていない企業、つまり株式市場のコンセンサスとは異なる視点が必要です。これを「逆張り的発想」と当ファンドでは呼んでいます。ボトムアップ・リサーチと逆張り的発想とによって、株式市場に注目されていない企業の中から、長期に成長できる企業を発掘し、割安な株価で投資していきたいと思います。

2024年2月の運用コメント

株式市場の状況

 2024年2月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比4.93%上昇し、日経平均株価は前月末比7.94%の大幅上昇となりました。
 当月の日本株式市場は、月前半はFOMC(⽶連邦公開市場委員会)の内容を受け早期の米利下げ期待が後退し一進一退の動きで推移しましたが、月半ばから後半にかけては内田日銀副総裁がマイナス金利解除後も日銀は緩和的な金融環境を維持するとの認識を示したことや、生成AI(人工知能)向け半導体需要の増加が期待される米国で半導体関連企業の株価上昇が続き、日本の半導体関連企業にも資金が集中したことから、続伸しました。22日には日経平均株価は39,098.68円で終え、約34年ぶりに最高値を更新しました。その後の日本株式市場の推移は緩やかだったものの、月末まで日経平均株価は39,000円台を維持したまま当月の取引を終えました。

ファンドの運⽤状況

 当月、当ファンドのパフォーマンスは、前⽉末⽐2.07%の上昇となり、参考指数であるTOPIX(配当込み)の同4.93%の上昇を2.86%下回りました。
 当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した銘柄は、東洋炭素、MARUWA、ダイフクなどでした。⼀⽅、マイナスに影響した銘柄は、ライフドリンク カンパニー、メルカリ、トーセイなどでした。

 当月は組入銘柄であった「竹内製作所」について、投資の背景・魅力をコメントしたいと思います。
 竹内製作所は日本での知名度は高くありませんが、ミニショベル(重量6トン未満)の世界的大手です。同社の売上の90%以上が欧米市場向けであり、日本での売上がほとんどないことが特徴として挙げられます。
 同社は1963年に長野県で自動車部品の下請けメーカーとして創業しました。その後、建設現場の作業員が、重い資材の運搬や、過酷な工事に苦しむ姿を見て、身体的負担軽減のために世界初のミニショベルの開発に成功します。当初は他社への製品供給を軸としていましたが、1990年以降は自社ブランドでの展開を決断しました。この時、同社は国内市場ではなく、欧米市場に注力しました。欧米市場を狙った理由は、1)ブランド認知度に関係なく、建機の性能が評価される市場であること、2)欧米市場は老朽化したインフラ補修が多く、街中でも使えるミニ建機の需要が多く存在するためです。欧米市場で求められる品質・機能を追求した結果、「TAKEUCHI」はプレミアムブランドとして認知されていると当ファンドでは考えています。
 株式市場では、2022年以降の欧米の金融引き締めによる同社へのマイナスの影響を懸念していたようですが、当ファンドは、先進国のインフラ補修の需要を考えれば、同社は長期的に成長できると判断し投資してきました。事実、金利引き締め局面でも、欧米市場では光ファイバー設営など、インフラ投資需要が底堅く続いている状況です。一方、当ファンドが考える目標株価に到達したことを受け、保有株式を売却いたしました。当ファンドが同社へ投資して以降、業績は大きく拡大しました。欧米での販売台数の拡大、インフレに伴う単価アップ、日本生産・輸出による円安メリットなどが、業績にプラスに寄与してきましたが、今後を考えると、欧州の景気変調による販売台数の減速、値上げ・円安効果の一巡が想定され、目先の業績拡大スピードは減速することが予想されるためです。
 保有株式は売却しましたが、当ファンドでは、同社の強みは長期に維持できると考えています。同社の強みとは、顧客ニーズを製品化する力です。ミニショベルをトラックに積んで現場に運ぶ場合、トラック荷台の積載制限に合わせた重量設計や、運転席の振動低減・静寂性によるオペレーターの負担軽減など、顧客が欲しい商品をいち早く開発・販売してきた実績に、同社の強みが表れています。
 当ファンドでは、竹内製作所のような、株式市場の注目を集めきれていない企業をボトムアップ・アプローチで見つけ出していきたいと思っています。今後も同社業績をフォローし、投資チャンスを繋げて行きたいと思います。

今後の運⽤⽅針

 日本には優れた製品やサービス、事業モデルを軸に、市場シェアトップ企業に成り得るにも関わらず、株式市場から注目されていない企業が多数存在しています。これらの企業は、長期にわたって成長し、同時に高い利益率を維持する可能性が高いにも関わらず、株価は将来を織り込めていないため割安となっています。長期に成長する企業を割安な株価で投資するには、株式市場から注目されていない企業、つまり株式市場のコンセンサスとは異なる視点が必要です。これを「逆張り的発想」と当ファンドでは呼んでいます。ボトムアップ・リサーチと逆張り的発想とによって、株式市場に注目されていない企業の中から、長期に成長できる企業を発掘し、割安な株価で投資していきたいと思います。

2024年1月の運用コメント

株式市場の状況

 当⽉の⽇本株式市場は、能登半島地震の影響精査のため⽇銀が利上げを⾒送るとの⾒⽅が⾼まったことや、⽶連邦準備制度理事会(FRB)⾼官のタカ派な発⾔を受けた⽶⻑期⾦利の上昇を背景に円安が進み、⽉前半は⼤きく上昇しました。また、新NISA制度の開始による個⼈投資家の買い需要や、東京証券取引所の市場改⾰への期待感から海外投資家の資⾦も多く流⼊しました。⽉半ばから後半にかけては、利益確定の売り圧⼒や、⽶国半導体⼤⼿の業績⾒通しが市場予想を下回ったことから半導体関連銘柄を中⼼に⼀時下落基調に転じる場⾯もあったものの、最終的に前⽉末を上回る⽔準で⽉を終えました。

ファンドの運⽤状況

 2024年1⽉、当ファンドのパフォーマンスは前⽉末⽐2.00%の上昇となりました。参考指数のTOPIX(配当込み)は同7.81%の上昇となりました。
 当⽉、ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した企業はライフドリンクカンパニー、⽵内製作所などでした。ライフドリンクカンパニーは会社からのニュースはありませんでしたが、⽶系⼤⼿資産運⽤会社が⼤量保有報告書を出したことを好感したと思われます。⽵内製作所は2024年2⽉期第3四半期決算を発表しました。9か⽉累計の営業利益は対前年同期⽐で83.6%増益と好調な内容でした。⼀⽅、マイナスに影響した主な企業はベイカレント・コンサルティングでした。ベイカレント・コンサルティングも2024年2⽉期第3四半期決算を発表しました。9か⽉累計の営業利益は対前年同期⽐で15.8%の増益でしたが、第3四半期(3か⽉)での営業利益は対前年同期⽐で4.8%の増益に留まったことが株式市場に嫌気されました。⾜元の減速は、未経験者の採⽤が順調に進んだことによるコンサルタントの稼働率低下と、1⼈当たりの平均単価の伸び悩みが背景です。当ファンドでは、採⽤した⼈材が来期以降戦⼒化することで、稼働率・単価ともに底打ちすることを期待しています。
 当⽉は組⼊上位銘柄である「全国保証」について、投資魅⼒をコメントしたいと思います。全国保証は独⽴系住宅ローン保証の⼤⼿企業です。住宅ローン保証事業とは、住宅ローンの借⼊⼈から保証料をもらい、同社が連帯保証⼈となる事業を⾔います。借⼊⼈が住宅ローン返済を出来ない場合、保証会社である同社が⾦融機関に住宅ローンを弁済し、住宅ローンの担保物件(住宅・⼟地など)を売却して弁済資⾦を回収する事業モデルです。
 同社は1997年から⺠間⾦融機関向けの住宅ローン保証に参⼊しました。当時、住宅ローン保証は⾦融機関の⼦会社が⾏うことが⼀般的だったため、⼤⼿⾦融機関からの保証業務は獲得できませんでした。そのため同社は、信⾦・信組など、中堅・中⼩⾦融機関への保証業務に注⼒しました。中堅・中⼩⾦融機関へのサービスを通じて、同社は与信能⼒や審査時間の短縮化など、サービス品質を磨き上げてきました。その後、サービス品質が評価され、メガバンクを含む多数の⾦融機関に住宅ローン保証を提供できるようになり、2023年3⽉時点では、⺠間住宅ローン残⾼に占める同社シェアは8.3%まで上昇してきました。
 当ファンドでは、同社の事業モデルの強固さと、業績拡⼤の可能性を評価し、同社に投資しています。
 同社の事業モデルは、単純に⾔えばリスクの鞘抜きです。様々な個⼈の集合体によるリスク総量は、リスクの分散効果によって個々のリスクの合計よりリスク総量が低減します。つまり同社の保証事業は、リーマンショックなどの経済危機が発⽣しない限り、収益を⽣み続けるビジネスと考えられ、事実同社の業績は⾮常に安定しています。⼀⽅、事業モデルのマイナス側⾯は、経済危機に備える必要があることです。同社は、潤沢な利益を内部留保し財務体質を強化してきましたが、結果として同社のバランスシートには⾦融資産が多く積み上がり、ROE(株主資本利益率)を低下させる要因となっています。当ファンドでは、同社の財務戦略は転換点にあると考えており、事業モデルのマイナス側⾯が縮⼩すると判断しています。同社も、経済危機への備えは⼗分であり、今後は資⾦活⽤局⾯にあるとのコメントを発信しています。
 同社の利益成⻑に関しては、⽇本では激しい住宅ローンの貸出競争が続いていることから、銀⾏が⼦会社を通じて住宅ローン保証を提供し続けるにはコスト競争の点から合理性が少なくなっているため、銀⾏⼦会社によるローン保証から独⽴系の同社へのシフトが続くと当ファンドでは考えています。加えて、銀⾏の保証⼦会社の買収、他社のローン保証債務の引き受けなどを通じ、同社は残⾼を拡⼤していくと考えられます。
 こうした環境のなか、株式市場は同社の成⻑余地を反映できていないと当ファンドは考えています。⽇本でも消費者物価指数が上昇しており、⾸都圏の住宅価格などが上昇する⼀⽅、賃⾦上昇はまだ緩やかなままです。結果として実質所得の減少に繋がっており、住宅購買意欲の低減や、既存の住宅ローン返済⼒の低下に繋がる可能性を嫌気されているようです。当ファンドでも、短期的な住宅市場の変調や貸し倒れの増加は否定できないと考えていますが、同社には厳しい環境に耐えられる財務⼒と株主還元余⼒があり、中⻑期的に市場シェア拡⼤による成⻑余地があると判断し、投資を⾏っています。

今後の運⽤⽅針

 ⽇本には、優れた製品やサービス、事業モデルを軸に、市場シェアトップ企業に成り得るにも関わらず、株式市場から注⽬されていない企業が多数存在しています。これらの企業は、⻑期にわたって成⻑し、同時に⾼い収益⼒を発揮する可能性が⾼いにも関わらず、株価は将来を織り込めていないため割安となっています。⻑期に成⻑する企業を割安な株価で投資するには、株式市場から注⽬されていない企業、つまり株式市場のコンセンサスとは異なる視点が必要です。これを「逆張り的発想」と当ファンドでは⾔っています。当ファンドでは、ボトアップ・リサーチと逆張り的発想によって、株式市場に注⽬されていない企業の中から、⻑期的な成⻑が期待できる企業を発掘し、割安な株価で投資していきたいと思います。

2023年12月の運用コメント

株式市場の状況

 当⽉の⽇本株式市場は、⽉前半は⽇銀の植⽥総裁と氷⾒野副総裁両名の発⾔を受けて⾦融政策修正の思惑が⾼まったことや、FOMC(⽶連邦公開市場委員会)のハト派の内容を受けて⽶⻑期⾦利が低下したことで、円⾼が進み下落しました。⽉後半は、⽇銀⾦融政策決定会合における⾦融緩和維持の決定が好感される場⾯もありましたが、年末の閑散相場もあって円⾼基調が継続する展開が重しとなり、最終的に前⽉末を下回る⽔準で⽉を終えました。

ファンドの運用状況

 2023年12⽉、当ファンドのパフォーマンスは前⽉末⽐2.90%の上昇となりました。参考指数のTOPIX(配当込み)は同0.23%の下落となりました。
 当⽉、ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した企業はマックス、ライフドリンクカンパニーなどでした。マックスは、発⾏済株式数の1.1%相当の⾃社株買いを発表し、株式市場に好感されたと思われます。ライフドリンクカンパニーは、会社からのニュースはありませんでしたが、⽇系⼤⼿資産運⽤会社が⼤量保有報告書を提出したことを好感した動きと思われます。
 ⼀⽅、マイナスに影響した企業はクミアイ化学⼯業などでした。同社は2023年10⽉期通期決算を発表しました。実績は11.2%の営業増益であり会社予想通りでした。⼀⽅、当期の業績予想は14.8%の営業減益が⽰されると同時に、予想配当も引き下げられ、株式市場にネガティブに捉えられました。これらは、オーストラリア、アルゼンチンでの販売価格の⾒直しが背景となっておりますが、当ファンドでは同社の業績ガイダンスは保守的だと考えており、慎重に投資判断して⾏きたいと思います。
 当⽉は、組⼊銘柄である「ベイカレント・コンサルティング」について、投資の魅⼒についてコメントしたいと思います。当ファンドは、ベイカレント・コンサルティングに2018年10⽉より投資し、株価上昇に伴い2021年9⽉に投資ウェートを⼤きく引き下げています。投資ウェート引き下げ後も保有を継続し、株価下落に応じて投資⽐率を引き上げ、現在に⾄ります。
 同社は、1998年にITシステム受託開発企業として創業しました。以降、業態を戦略コンサルティング事業に広げ、今ではIT系に強みを持つ総合コンサルティングファームの⽇系⼤⼿企業となっています。当ファンドでは、同社を取り巻く事業環境は、旺盛な需要を背景に良好と考えています。まず、安倍前政権下での働き⽅改⾰や⽣産性改善に対する動きが継続しています。加えてコロナ禍を経て、社会的にデジタル化ニーズが⾼まりました。更に、ESG問題を背景に事業の環境対応、いわゆるグリーントランスフォーメーション(GX)の必要性や、コロナ禍後の経済再開(リオープン)に伴う⼈⼿不⾜感の⾼まりもあり、企業のIT投資は活況のままです。
 ⼀⽅、同社の株価は好調な事業環境にも関わらず、横ばいで推移しております。⼀部の市場参加者は、同社の成⻑の限界を感じているようです。その背景には、同社のコンサルタント⼀⼈当たりの単価の伸び悩みが挙げられます。コンサルティング業界の収益構造は、コンサルタント数、コンサルタントの⼀⼈当たりの単価(時間あたりの請求額)、コンサルタントの稼働率、そして本社コストの4つで決まります。株式市場では、コンサルタント⼀⼈当たりの単価が上がらないのは顧客からの需要は強くないからだ、と懸念している模様です。また⽶国のコンサルティング業界で⼈員削減が⾏われているというニュースも、同社株価にマイナスに影響していると当ファンドでは考えております。
 当ファンドでは、以下の理由から同社の先⾏きを強気にみています。まずコンサルタント単価に関しては、新⼈コンサルタントの現場配属が影響していると考えております。新⼈コンサルタントの単価は低いため、現場に配属されればコンサルタントの平均単価の押し下げ要因となります。短期的には平均単価が下落するように⾒えますが、新⼈コンサルタントは経験を積むことでスキルが上昇し将来的に単価も上がります。つまり、現在の事象は中期的には同社にプラスとなると考えています。また、⽶国のコンサルティング業界と⽇本のコンサルティング業界の状況は異なると考えております。⽶国では⾦融政策によって景気を抑える動きとなっており、それが⼈員削減に繋がっていると思われます。⼀⽅、⽇本では景気拡⼤を持続させる政策となっています。加えて⽇本企業のデジタル化はグローバルでも遅れているため、景況感に左右されずに需要が継続すると当ファンドでは考えております。
 当ファンドが考える同社のリスクは、質を伴わない急拡⼤と顧客満⾜度の低下ですが、現状は同社の経営陣はスピードと品質を上⼿くコントロールできていると考えています。今後も良好な事業環境が継続し、同社は中⻑期にわたって成⻑が続くと期待しています。

今後の運用方針

 ⽇本には、優れた製品やサービスや事業モデルを軸に、市場シェアトップ企業に成り得るにも関わらず、株式市場から注⽬されていない企業が多数存在しています。これらの企業は、⻑期に亘って成⻑し、同時に⾼い収益⼒を発揮する可能性が⾼いにも関わらず、株価は将来を織り込めていないため割安となっています。⻑期に成⻑する企業を割安な株価で投資するには、株式市場から注⽬されていない企業、つまり株式市場のコンセンサスとは異なる視点が必要です。これを「逆張り的発想」と当ファンドでは⾔っています。当ファンドでは、ボトムアップ・リサーチと逆張り的発想によって、株式市場に注⽬されていない企業の中から、⻑期的な成⻑が期待できる企業を発掘し、割安な株価で投資していきたいと思います。

2023年11月の運用コメント

株式市場の状況

 当⽉の⽇本株式市場は、⽉前半はFOMC(⽶連邦公開市場委員会)での政策⾦利の据え置きや、市場予想を下回る⽶雇⽤統計を受けての⽶⻑期⾦利の低下を背景に上昇しました。⽉半ばは、⽇本企業の良好な決算や、市場予想を下回る⽶国のCPI(消費者物価指数)を受けた⽶追加利上げ観測の後退などから、⽉中⾼値をつけました。⽉後半に⼊ると、中東情勢の地政学リスクの後退や⽶⻑期⾦利低下等を好材料に上昇した後、⼀時1ドル=146円台後半まで進⾏した円⾼が重しとなって下落基調に転じましたが、最終的に前⽉末を上回る⽔準で⽉を終えました。

ファンドの運用状況

 2023年11⽉、当ファンドのパフォーマンスは前⽉末⽐3.34%の上昇となりました。参考指数のTOPIX(配当込み)は同5.42%の上昇となりました。
 当⽉、ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した企業はMARUWA、ベイカレント・コンサルティングなどでした。MARUWAは会社からのニュースはありませんでしたが、下期以降の業績回復を期待した動きが継続していると思われます。ベイカレント・コンサルティングも会社からのニュースはありませんでした。前⽉に⼤きく下落した株価の反動であると思われます。
 ⼀⽅、マイナスに影響した企業は東洋炭素などでした。東洋炭素は11⽉初旬に2023年12⽉期第3四半期決算を発表しました。9ヶ⽉累計の営業利益は前年同期⽐34.7%の営業増益と好調な内容でした。⼀⽅株価が下落した理由として、通期業績予想が据え置かれたこと、⾜元の受注動向に減速感が⾒えていることが上げられますが、当ファンドではパワーデバイスを軸に同社の成⻑が持続すると判断しております。
 当⽉は、組⼊銘柄である「マックス」について、投資の魅⼒をコメントしたいと思います。
 マックスは、オートステープラー(コピー機に付随している⾃動ホッチキス機能)を中⼼としたオフィス機器と、鉄筋結束機などの建設⼯具を中⼼としたインダストリアル機器を事業の柱とする企業です。オートステープラーでは世界シェア80%と、極めて⾼い市場占有率を誇る会社です。当ファンドでは、同社の鉄筋結束機の世界的な成⻑を期待し投資しています。
 株式市場では、マックスはオートステープラーの企業としてのイメージが強く残っていると思われます。なぜなら1985年に発売されたオートステープラーが、同社を規模、質ともに⼤きく⾶躍させたためです。コピー機が世界的に普及するに従い、オートステープラーの規模が拡⼤したことに加え、ホッチキスの針が消耗品として売れ続け、同社は安定して稼ぐ事業モデルを確⽴しました。
 ⼀⽅、当ファンドが注⽬している鉄筋結束機は、まだ株式市場の注⽬を集めきれずにいると考えます。その理由は、鉄筋結束機が含まれるインダストリアル機器部⾨が、⻑らく同業他社に劣後してきたためであると思われます。⼯具がバッテリー⽅式のコードレスとなり、バッテリーが鉛バッテリーからリチウムイオンバッテリーに変化する際、同業他社に⽐べ、製品投⼊のタイミングやラインナップなどで⾒劣りするマックスのインダストリアル機器部⾨は低収益に苦しみ続けてきました。
 当ファンドでは、マックスが2017年から販売している2代⽬の鉄筋結束機が成⻑を牽引しうると考えています。鉄筋結束機とは建設現場で鉄筋を結束する機械です。建設現場で鉄筋⼯が鉄筋を⼿で結束することに⽐べ、同社の鉄筋結束機を使うと、結束スピードが⾶躍的に改善し、建設現場の⽣産性が改善します。同社の鉄筋結束機は、先進国を中⼼に拡⼤しています。さらに、フルモデルチェンジした新製品が2023年12⽉から各国で順次発売される予定です。新製品は結束スピードが1.4倍となり、建設現場の⽣産性改善に⼀層貢献できると思われます。またオートステープラーと同様に、結束ワイヤーが消耗品として出荷されているため、同社のインダストリアル機器部⾨は規模拡⼤に加え、営業利益率の向上も続いています。今期の会社計画では当セグメントの営業利益率は20%を超える⽔準となる模様です。
 投資開始以降、マックスの業績は当ファンドの想定通りに動いています。すでにインダストリアル機器部⾨の営業利益率はオフィス機器を⼤きく上回る状況となっています。当ファンドでもペーパーレス化によって、オートステープラーは縮⼩する可能性を認識しておりますが、減少スピードはゆったりとしたものであり、鉄筋結束機の成⻑で相殺できると考えております。引き続き同社の利益成⻑に注⽬しています。

今後の運用方針

 ⽇本には、優れた製品や事業モデルを軸に、トップシェアと成り得るにも関わらず、株式市場に認識されていない企業が多数存在しています。これらの企業は、⻑期に渡って⾼い成⻑性・収益性を実現してくれる可能性が⾼いにも関わらず、株価は潜在⼒を織り込めていないため割安な⽔準となっています。成⻑企業を割安な株価で投資するには、株式市場の中⼼的な考え⽅(コンセンサス)とは異なる⾏動が必要です。当ファンドでは、これを「逆張り的発想」と⾔っています。ボトムアップ・リサーチと逆張り的発想によって、株式市場に注⽬されていない企業の中から、⻑期的な成⻑が期待できる企業を発掘し、割安な株価で投資する機会の提供に注⼒していきたいと思います。

2023年10月の運用コメント

株式市場の状況

 当⽉の⽇本株式市場は、⽉前半は堅調な⽶雇⽤統計を受けての⽶⻑期⾦利の変動や、中東情勢の緊迫化などを受け乱⾼下の展開となりました。⽉後半に⼊ると、中国の景気刺激策が好感される場⾯があったものの、⽇銀の政策再修正への思惑や⽶テクノロジー企業の低調な決算への失望が株式市場の重しとなり、最終的に前⽉末を下回る⽔準で⽉を終えました。

ファンドの運用状況

 2023年10⽉、当ファンドのパフォーマンスは前⽉末⽐2.21%の下落となりました。参考指数のTOPIX(配当込み)は同2.99%の下落となりました。
 当⽉、ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した企業はサイゼリヤ、MARUWAなどでした。サイゼリヤは2023年8⽉期決算を発表し、会社計画を上回って着地しました。同時に発表された2024年8⽉期業績予想は前年⽐81.4%の営業増益が⽰唆され市場に好感されました。MARUWAは2024年2⽉期第2四半期決算を発表しました。前年同期⽐18.5%の営業減益でしたが概ね株式市場の期待通りでありサプライズはありませんでした。決算説明会において下期以降の業績回復を⽰唆し、市場に好感されたものと思われます。
 ⼀⽅、マイナスに影響した企業はベイカレント・コンサルティングなどでした。ベイカレント・コンサルティングは2024年2⽉期第2四半期決算を発表しました。前年同期⽐で23.0%の営業増益であり、概ね会社計画どおりの着地でしたが、コンサルタント⼀⼈当たりの単価が伸び悩んでおり、株式市場に嫌気されたものと思われます。当ファンドでは新⼈コンサルタントの構成が増えた結果であり、同社の⻑期的な競争⼒は改善し続けていると考えております。
 当⽉は、組⼊銘柄である「サイゼリヤ」について、投資の魅⼒をコメントしたいと思います。
 サイゼリヤはイタリアンレストランの国内最⼤⼿チェーンです。価格の安さが特徴ですが、オペレーションを磨き上げることで低価格を実現しています。具体的には、使⽤するトマトやレタスなどを⾃社農場で⽣育する、イタリア⾷材の輸⼊は商社を使わず直接仕⼊れする、店舗での調理を極⼒まで削減するためセントラルキッチンを徹底的に使⽤する、などが挙げられます。近年ではアジアでも店舗展開しており、特に中国事業は同社の成⻑を牽引しています。
 国内における⾷材価格や⼈件費の上昇を受け、外⾷各社が値上げを続ける中、低価格を強みとする同社は、国内価格の据え置きを表明しています。⼀⽅、中国事業は、各種コストの上昇をメニュー価格に転嫁していますが、それでも他のイタリアンレストランと⽐べるとサイゼリヤの価格は割安と⾔われています。⽇本と中国での価格戦略の差は、消費者の所得環境の違いによるものです。中国の所得は増加傾向にあることから、価格上昇が受け⼊れられる⼀⽅、国内の所得は引き続き厳しい状況であり、価格引き上げのタイミングにない、という判断からです。
 当ファンドでは、国内事業の収益改善、中国事業の拡⼤を評価し、同社に投資しております。⼀部の株式市場参加者は、国内のメニュー価格据え置きを強く懸念しています。外部環境を考えると、価格据え置きの経済合理性はない、というものです。しかし当ファンドでは、同社の狙いはコスト上昇をチャンスに変えて、店舗オペレーションの改善を強化することにあると考えています。安易な値上げは現場の改善意欲を減退させ、結果としてサイゼリヤの強みを低下させると思われます。コストアップは⾃社の改善でカバーするという経営姿勢は、中⻑期的に同社の外⾷産業におけるポジショニングを引き上げると当ファンドは考えています。
 投資以降、サイゼリヤはファンドのパフォーマンスにプラスに貢献しています。中国事業を軸に、営業利益の拡⼤が続いております。同時に、低価格を訴求していることで、国内も来店客数の拡⼤が続いています。今後は国内事業が⾚字から⿊字へ転換できると当ファンドは期待しています。国内のインフレによって可処分所得が低下している世帯や、⾷品値上げのニュースを受けて⽣活防衛の意識が⾼まっている消費者などは、消費⾏動を変化させています。国内外ともに低価格のサイゼリヤを⽀持する消費者が増えていくと当ファンドは予想しています。

今後の運用方針

 引き続き⽇銀の⾦融政策の⽅向性に注⽬が集まっています。⽇本でもインフレを受けて⾦利が上昇する結果、銀⾏セクターの収益環境が⼤きく改善するという期待があります。しかし当ファンドは、例えばインフレという投資環境下であれば、消費者⾏動の変化に着⽬しています。優れたオペレーションを持った企業を選別し、消費者の⾏動変化を企業成⻑に結び付けられる企業に割安なタイミングで投資することを⽬指しています。前⽉の当レポートで取り上げたライフドリンクカンパニー、当⽉のサイゼリヤのようにデフレからインフレに変化する⽇本において、中⻑期な成⻑が期待できる、投資魅⼒のある企業を発掘していきたいと思います。

2023年9月の運用コメント

株式市場の状況

 当⽉の⽇本株式市場は、⽉前半は中国製造業購買担当者景気指数(PMI)の改善により中国の景気後退不安が⼀時的に後退したほか、国内では早期衆院解散・総選挙への期待感が⾼まったことを受け、上昇基調となりました。⼀⽅⽉後半は、FOMC(⽶連邦公開市場委員会)で⾦融引き締めの⻑期化が⽰唆されたことや、⽶議会の予算協議が難航し政府機関閉鎖への警戒感が⾼まったことから、市場⼼理が悪化し値を戻す展開となり、最終的に前⽉末を若⼲上回る⽔準で⽉を終えました。

ファンドの運用状況

 2023年9⽉、当ファンドのパフォーマンスは前⽉末⽐3.25%の下落となりました。参考指数のTOPIX(配当込み)は同0.51%の上昇となりました。
 当⽉、ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した企業はトーセイ、パイロットコーポレーションなどでした。⼀⽅、マイナスに影響した企業はMARUWAなどでした。
 トーセイ、パイロットコーポレーションは会社からのニュースはありませんでしたが、当⽉は世界的に株価指標の安い、いわゆるバリュー株が選好された動きであると思われます。MARUWAも会社から株価に影響を与え得るニュースはありませんでしたが、⽶国の⻑期⾦利が上昇傾向となり、いわゆるグロース株が世界的に軟調となったことの流れと思われます。
 当⽉は、新規投資を開始した「ライフドリンクカンパニー」について、投資の魅⼒をコメントしたいと思います。
 ライフドリンクカンパニーは1950年に創業した茶卸業を祖業とするペットボトル飲料の⼤⼿メーカーです。1972年に法⼈化され、以降、清涼飲料、乾麺やチョコレート製品などの⾷品、ソースなどの調味料、太陽光発電事業などに事業を拡⼤してきました。2015年、事業承継のためにPE(プライベートエクイティ)ファンドに買収され、その後はドリンク事業への集中を進め、2021年に上場を果たします。
 ⼤⼿飲料メーカーであるにも関わらず同社の認知度が低いのは、⼩売店向けのPB(プライベートブランド)飲料製造が売上の60%程度を占め、同社ブランドを⽬にする機会が少ないためと思われます。知名度が低い⼀⽅、ミネラルウォーター市場における同社シェアは販売箱数で第2位の規模まで拡⼤していると当ファンドでは推測しています。
 ⽇本は⼈⼝減少過程に突⼊しておりますが、当ファンドでは同社が注⼒している分野の⻑期的な成⻑期待を評価し投資しています。まず、⽇本では⽔道⽔からミネラルウォーターにシフトが進んでおり、特に若年層ほど、⽔道⽔を飲むことに抵抗感を⽰しているようです。また、飲料市場の中では健康志向から無糖飲料が成⻑し、加糖飲料は伸び悩んでいます。加えて、インフレ環境で可処分所得が増えにくい状況下では、消費者は価格に敏感になっており、割安なPB商品が選好されている模様です。
 こうした事業環境において、同社はコストリーダーシップ(低コスト)戦略によって、今後も規模拡⼤が続くと考えています。同社がコストリーダーシップを取れるのは、⽣産を極限までシンプルにしているためです。具体的には、同社はスポーツ飲料などを製造せず無糖系の4飲料(ミネラルウォーター、無糖炭酸⽔、緑茶、烏⿓茶)のみに製品を絞り、容器は500mlと2Lの2サイズのみ、かつペットボトルの形状を統⼀し、異なる⼩売店向けであってもラベル以外は同じ飲料を提供することで、⼯場の⽣産性を最⼤化し、かつ広告宣伝のコストを使っていません。同社は他社の⼯場を買収し、この戦略を徹底することで、⽣産性を改善させ、規模拡⼤に繋げています。
 ⾜元の同社の業績は順調に拡⼤しています。インフレによって⽣活防衛意識を強めた消費者には、同社の低価格が魅⼒的に映っているようです。同社の課題は不⾜気味の⽣産能⼒ですが、来期には⼤型の新⼯場が⽴ち上がり、⽣産能⼒が⼤幅に増強される予定であることから、引き続き同社の成⻑に期待しています。

今後の運用方針

 ⽇本でもインフレ定着が意識され、株式市場では⽇銀の⾦融政策の⽅向性に注⽬が集まっています。結果、いわゆるバリュー株が選好されており、その中でも銀⾏セクターは⼤きく動いています。しかし当ファンドでは、PBR(株価純資産倍率)などの株価指標を基準に分類されるバリューやグロースという分類や、⾦利が上がるからバリュー、⾦利が下がるからグロース、という視点で投資先企業を選択しておりません。当ファンドにとって重要なのは、株価の裏付となる企業収益です。当ファンドは、例えばインフレというテーマであれば、消費者⾏動の変化に着⽬し、その変化を企業収益に結び付ける戦略を持った企業を選別して、割安なタイミングで投資することを⽬指しています。前述のライフドリンクカンパニーのように、デフレからインフレに変化する⽇本において、中⻑期な成⻑が期待できる、投資魅⼒のある企業を発掘していきたいと思います。

2023年8月の運用コメント

株式市場の状況

 2023年8⽉、⽇本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前⽉末⽐0.43%の上昇となりました。
 当⽉の⽇本株式市場は、⼤⼿格付け会社フィッチ・レーティングス社(⽶国)による⽶国債の格下げを背景とした⽶国株安の流れを受け、下落から始まりました。⽉半ばは、中国の軟調な経済指標(消費者物価指数など)や、中国不動産開発⼤⼿の⽶国破産法の申請が嫌気され、下げ幅を広げました。⽉後半は、中国の追加利下げが好感されたほか、ジャクソンホール会議においてさらなる利上げへの懸念が後退したことで値を戻す展開となり、最終的に前⽉末を上回る⽔準で⽉を終えました。

ファンドの運用状況

 2023年8⽉、当ファンドのパフォーマンスは前⽉末⽐0.32%の上昇となりました。参考指数のTOPIX(配当込み)は同0.43%の上昇となりました。
 当⽉、ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した企業はMARUWA、ライフドリンク カンパニーなどでした。⼀⽅、マイナスに影響した企業はブシロードなどでした。
 MARUWAは会社からのニュースは特にありませんでしたが、同社は前⽉後半に2024年3⽉期第1四半期決算を発表しています。前年同期⽐25.7%の営業減益でしたが会社計画通りでした。⼀⽅、同社は決算説明会において、データセンター向けの売上が下期以降に底打ちすることを⽰唆し、株式市場に好感されました。その流れが当⽉も続いたと思われます。ライフドリンク カンパニーは当⽉前半に2024年3⽉期第1四半期決算を発表しました。同社は今期より連結決算となっているため前年⽐はありませんが、通期会社予想に対する決算の進捗が良かったことが株式市場に好感されました。
 ブシロードは、当⽉半ばに2023年6⽉期決算を発表しました。2023年6⽉期実績は、ほぼ会社計画通りでサプライズはありませんでした。同時に発表された2024年6⽉期業績予想では、営業利益が前年⽐40.9%の減益となることが⽰され、株式市場に嫌気されました。減益予想の背景は、市場が拡⼤しているトレーディングカードゲーム向けの各種イベントなどの販促コストの増加、および家庭⽤ゲーム機向けソフトの開発費が増加しているためと考えられます。当ファンドでは、今期の減益は将来に向けた先⾏投資であると判断しており、今後も同社はトレーディングカードゲームを軸に拡⼤が続くと判断しています。

 当⽉は、当ファンドの組み⼊れ上位である「ニチハ」について、投資の魅⼒をコメントしたいと思います。
 ニチハは、窯業系サイディングで国内シェア50%以上を持つ最⼤⼿企業です。窯業系サイディングとは、粘⼟や⽯灰岩などを加熱し、硬化させて作る板状の外壁材です。⽇本の⼾建住宅における外壁材素材別シェアは、窯業系サイディングが約80%、残りはモルタル(セメント)やALC(軽量気泡コンクリート)などです。かつてはモルタルが主流だったのですが、施⼯職⼈を必要とすることが建設現場で嫌がられ、施⼯の簡単な窯業系サイディングが広がりました。また、ニチハが注⼒している⽶国では、中低層建築物は樹脂や⽊製外壁が主流ですが、今後、⽇本のように窯業系サイディングのシェアが拡⼤することが期待できると考えています。
 当ファンドでは、同社の国内外での中⻑期的な成⻑を評価し投資しています。国内は、⼈⼝動態を考えると頭打ちになる可能性が⾼い状況ではあるものの、同社はシェア拡⼤による成⻑が期待できます。かつて窯業系サイディング業界には複数社が存在し、激しい競争を繰り返していました。しかし、バブル崩壊後の⽇本経済の低迷や、リーマンショック後の急激な住宅市場の落ち込みを経て、撤退・再編を繰り返し、現在は主要数社まで減少しています。その中で、ニチハは過半を超えるシェアを獲得するまでに⾄りました。⾜元の同社の国内シェアは約54%となり、競合他社に対し、規模の経済による優位性を増していくと思われます。また当ファンドでは、同社の⼯場⽴地も優位性に繋がっていると推測しています。ライバル企業各社が⾮上場企業なので⼊⼿できる情報は限定的ですが、ライバルの⼯場⽴地は地⽅に偏在していると思われます。現在のように物流コストが⾼騰してしまうと、遠⽅⼯場はコスト競争⼒を維持することが困難です。同社は、物流コスト⾯で競争⼒を付け、規模を拡⼤し、更なる競争⼒につなげることで成熟した市場の中で残存メリットを受けると思われます。
 ⽶国でも同社は成⻑すると考えています。まず、中層階の⾮住宅建築物、特に商業⽤物件で、デザイン性に優れる同社製品が普及すると当ファンドでは期待しています。また⽶国の⼯場が⽴ち上がり、⽇本から輸出する必要性が低下しています。これにより、物流コストの低減や、⼯場稼働の最適化に向かっていると考えます。以上のことから、同社は、中⻑期で利益成⻑出来ると当ファンドでは判断しています。

今後の運用方針

 ⽶国の⾦融政策の⽅向性によって、世界的にバリュー株が良いか、グロース株が良いかという議論が再び起きています。しかし当ファンドでは、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった株価指標を基準に分類される、バリューやグロースという分類は、投資の本質を⽰していないと考えています。より重要なのは株価指標の裏付けとなる企業収益です。投資において、株価の割安性は、企業収益の成⻑性とセットで考えられるべきだと考えます。当ファンドは、中⻑期的な企業業績を軸に、投資魅⼒のある企業を発掘していきたいと思います。

2023年7月の運用コメント

株式市場の状況

 2023年7月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比1.49%の上昇となりました。
 当月の日本株式市場は、FOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨にて年内2回以上の利上げが示唆されたことや、米国の雇用統計の結果を受け、利上げ継続への懸念が強まり下落して始まりました。一方で月半ばには、米国のCPI(消費者物価指数)が市場予想を下回り、利上げ停止が近いとの期待から堅調に推移しました。月後半は、日銀によるYCC(イールドカーブ・コントロール)の柔軟化が発表され、一時的に値動きの激しい展開となりましたが、現行の緩和姿勢を維持するとの受け止めから市場に安心感が広がり、最終的に期初を上回る水準で月を終えました。

ファンドの運用状況

 2023年7月、当ファンドのパフォーマンスは前月末比1.08%の上昇となりました。参考指数のTOPIX(配当込み)は同1.49%の上昇となりました。
 当月、ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した企業は東洋炭素、サイゼリヤなどでした。一方、マイナスに影響した企業はベイカレント・コンサルティングなどでした。
 東洋炭素は会社からのニュースは特にありませんでしたが、日系証券会社の一部が目標株価を引き上げたことが背景であると思われます。サイゼリヤは2023年8月期第3四半期決算を発表しました。9ヶ月累計の対前年同期比で、営業利益が約3.4倍となり、市場に好感されました。国内の収益性改善、海外事業の成長持続が好決算の背景です。
 ベイカレント・コンサルティングは、2024年2月期第1四半期決算を発表しました。前年同期比22.7%の営業増益でしたが、株式市場の期待を下回ったことが嫌気されました。コンサルタントの増強が順調に進み、コストアップしたことが背景であると思われます。当ファンドでは、コンサルタントの増強はネガティブ要因ではなく、中長期で同社の業績にプラスに貢献すると考えています。
 当月は、当ファンドの組み入れ上位である「京成電鉄」について、投資の魅力をコメントしたいと思います。
 京成電鉄は千葉県北西部を中心に営業路線を有する鉄道会社です。中でも京成上野駅と成田空港を結ぶ京成本線、スカイアクセス線が収益の柱となっています。同時に、路線周辺の不動産開発、バス・タクシーの運営、スーパー等の小売業なども展開しています。また東京ディズニーランドの運営会社であるオリエンタルランド㈱の創業時からの株主であり、2023年3月末時点でもオリエンタルランドの22.15%を保有する筆頭株主でもあります。
 当ファンドでは、日本人の海外渡航の回復、及び訪日外国人の増加による空港輸送需要の拡大を期待して同社に投資しております。加えて、同社の株主還元強化の可能性にも注目しています。
 短期的には足元の円安が同社への追い風になっていると考えます。ドルやユーロに対する円安によって一部の国・エリアからの旅行者にとっては、訪日旅行は経済的に極めて割安・魅力的になっています。またコロナ禍以前は、訪日旅行者は、中国人旅行者が最大でしたが、2023年6月時点では中国からの旅行者の戻りは遅れています。逆に言えば、今後の中国人旅行者の増加が期待できる状況です。
 中長期的にも、同社への追い風が続くと思われます。日本政府は2030年に年間6,000万人の訪日旅行者を獲得する目標を堅持しています。この目標には、受け入れ口となる国際空港のキャパシティが課題になると当ファンドでは考えます。その点において、成田空港では3本目のC滑走路を新設するとともにB滑走路を延伸する計画が進んでおり、将来、成田空港の利用客は大幅に増加することが考えられます。京成電鉄は成田空港の機能強化、利用客増加を見越し、輸送力増加へのプロジェクトを推進している模様です。長期にわたって同社収益は拡大が続くと当ファンドでは期待しています。
 現在の中期経営計画において、株主還元の強化が打ち出されていますが、引き続き連結配当性向は「10%以上を目標とする」となっており、当ファンドの期待する水準には達しておりません。しかし同社は過去に買収防衛策の廃止を決定するなど、ゆっくりですが株式市場との対話が改善しています。当ファンドは、更なる経営の変化に期待しています。

今後の運用方針

 当ファンドでは、前述の京成電鉄が示すように、長期的に安定成長が期待できるにも関わらず、成長しないと思われている鉄道業界に属しているが故に、株式市場から注目を集めきれていない企業への投資を狙っています。株式市場が鉄道業界の低成長性に注目し、同社の固有の強みを認識していない場合、リスクに対しリターンは高い状況であると言えます。個別企業を丹念に調査することで、株式市場が見落としている投資価値を発見できることがボトムアップ・リサーチの醍醐味です。引き続き投資魅力のある企業の発掘を徹底していきます。

2023年6月の運用コメント

株式市場の状況

 2023年6月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比7.55%の上昇となりました。
 当月の日本株式市場は、月前半は米連邦債務の上限停止による米国株高の流れを受け、大幅に上昇いたしました。月半ばには、FRB(連邦準備制度理事会)による追加利上げの示唆を受けた軟調な米国株の影響や、衆院解散への期待剥落が嫌気された一方、日銀の金融緩和の維持、米著名投資家の日本株追加投資の発表が好感され、一進一退の動きで推移しました。月後半は、株価上昇の反発と見られる下落の局面もありましたが、米景気悪化懸念の後退と円安進行が下支えをし、最終的に前月末を上回る水準で月を終えました。

ファンドの運用状況

 2023年6月、当ファンドのパフォーマンスは前月末比8.20%の上昇となりました。参考指数のTOPIX(配当込み)は同7.55%の上昇となりました。
 当月、ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した企業はMARUWA、マックスなどでした。一方、マイナスに影響した企業はダイレクトマーケティングミックスなどでした。MARUWAは会社からのニュースはありませんでしたが、世界的に半導体、ハイテク関連企業の株価が上昇していることの一環であると思われます。マックスも会社からのニュースはありませんでしたが、米国景気の先行き懸念の後退を好感した動きであると思われます。ダイレクトマーケティングミックスは、米系大手機関投資家の保有割合の減少が発表され、需給に対する懸念が広がったものと思われます。当ファンドでも同社の株主構成には注意しており、同社の業績動向と合わせ、密にフォローしていく所存です。

 当月は、当ファンドでの組み入れ上位である「メック」について、投資の魅力をコメントしたいと思います。
 メックは、1969年に創業された電子基板向け特殊薬品の専業メーカーです。メックという社名は「Machinery(機械)」「Electronics(電子)」「Chemistry(化学)」の頭文字が由来で、現社長である前田和夫氏のお父様が創業者です。創業当時、電子基板向けの薬品は輸入品に頼っていました。そこで創業翌年の1970年から国産化の研究に着手し成功を収めます。同社を発展させる転機となったのは1995年頃からのパソコン向け半導体パッケージ基板です。それまでのパッケージ基板の素材が、セラミックから樹脂に変わり、同社の薬品の特徴である、金属を溶かす特性が大きく活躍しました。パッケージ基板は、電気の通り道である銅と、電気を通さない樹脂が何層にも重なっています。電気が通ると基板全体が発熱しますが、銅と樹脂では膨張率が異なるため、銅と樹脂の密着力が低いと、2つの素材が分離し基板が壊れます。同社の薬剤は銅の表面を溶かし、摩擦力を増大させることで銅と樹脂の密着力を上げ、電子機器の性能を向上させています。現在、同社は複数の薬剤を製造しておりますが、収益の柱は、上記の特性を持つ薬剤です。この薬品には2つの用途があります。半導体向けパッケージ基板と、各種電子部品を搭載する電子基板(マザーボード)です。結果、同社の薬剤は多くの電子機器で使われています。そして半導体パッケージ向けでは世界シェアはほぼ100%であると当ファンドでは推測しています。このような高いシェア、高い利益率を可能にしているのは、同社の研究開発力であり、社員の約35%が研究開発部門に属しているようです。
 2022年以降、同社の株価は大きく調整しました。株価調整要因の1つはパソコン、スマートフォンといったハイテク機器の売れ行き鈍化に対する懸念です。新型コロナウイルス感染拡大の際に普及した在宅勤務によって世界的にデジタル機器の販売が拡大しましたが、その恩恵も一巡しました。また2022年以降、主要先進国でのインフレ高騰による金利引き上げにより、成長株と言われる企業の株価が調整したことも影響したと考えられます。一方、当ファンドでは2022年7月から同社に投資を開始しました。
 当ファンドが同社に強気になっている背景は、パソコンやスマートフォン市場の拡大がなくとも、同社の薬剤の使用量が増える可能性が高いと考えているためです。その背景は、電子基板の高密度化と大型化です。電子基板に載せられる電子部品が増えるに従い、電子基板は高密度化が進んでいます。高密度化は同時に電子基板の多層化につながり、層が多くなれば同社薬剤の使用量は増加します。そして半導体パッケージ基板は大型化が期待できます。具体的には、現在のAI(人工知能)のように高速演算を必要とする場合、計算を司る頭脳となるロジック半導体と、データを格納するメモリー半導体を1つのパッケージ基板に搭載させ、演算のスピードを維持する流れになっています。結果、パッケージ基板の面積が大きくなり、同社薬剤の使用量も増加していきます。
 同社の株価は2023年に入ると堅調に推移しておりますが、5月に発表された2023年12月期第1四半期業績は、足元の電子機器の販売低調を受け厳しい内容でした。当ファンドは、中長期での同社の業績拡大を期待し投資を継続する予定です。

今後の運用方針

 当ファンドでは、前述のメックが示すように、業界全体では厳しい事業環境と思われている中でも、独自の成長要因がある企業への投資を狙っています。同社の収益構造がプラスに変化しているにも関わらず、株式市場がハイテク業界の事業環境の厳しさに注目し過ぎている場合、同社への投資を通じて取るリスクに対し、リターンは高い状況であると言えます。個別企業を丹念に調査することで、株式市場が見落としている投資価値を発見できることがボトムアップ・リサーチの醍醐味です。引き続き投資魅力のある企業の発掘を徹底していきます。

2023年5月の運用コメント

株式市場の状況

 2023年5月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比3.62%の上昇となりました。
 当月の日本株式市場は、月前半に開催された米国FOMC(連邦公開市場委員会)の結果を受け、一時円高ドル安が進んだことで一進一退の動きで推移しました。月半ばには海外投資家による資金流入が続き、TOPIXと日経平均株価ともに約33年ぶりの高値を更新しました。東京証券取引所の市場改革への期待や、日銀の金融緩和継続姿勢もサポート材料となりました。一方で、月後半には中国の低調なPMI(製造業購買担当者景気指数)や、市場予想を下回る国内の4月の鉱工業生産指数の結果が懸念され、弱含みで推移しましたが、最終的に前月末を上回る水準で月を終えました。

ファンドの運用状況

 2023年5月、当ファンドのパフォーマンスは前月末比5.07%の上昇となりました。参考指数のTOPIX(配当込み)は同3.62%の上昇となりました。
 当月、当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した企業は東洋炭素、フジミインコーポレーテッドなどでした。一方、マイナスに影響した企業はエフピコ、ダイレクトマーケティングミックスなどでした。
 東洋炭素は5月に2023年12月期第1四半期決算を発表し、前年同期比42.3%の営業増益と好調でした。パワーデバイス向けが好調を維持しています。また日系大手証券会社が「買い」でレーティングを開始したことも株式市場に好感されました。フジミインコーポレーテッドは5月に2023年3月期決算を発表しました。2022年度実績は半導体業界の減速を受け、会社の業績予想を下振れて着地しました。2023年度の通期連結業績予想は、前年比5.6%の営業減益となっており、引き続き半導体業界の調整を受けておりますが、株式市場が懸念したほど悪い数値ではなかったと当ファンドは考えています。加えて、同社が1株を3株にする株式分割を発表したことも好感されました。エフピコは、前月末に2023年3月期決算を発表しました。2022年度実績にサプライズはありませんでした。2023年度の通期連結業績予想は、前年比3.9%の営業増益に留まり、値上げ効果が発現すると期待していた株式市場に嫌気されたと思われます。ただ、当ファンドは、エフピコの生産・物流ネットワークの強みは変わっていないと判断しております。
 当月は、当ファンドでの組み入れ上位である「トーセイ」について、投資の魅力をコメントしたいと思います。
 トーセイは、1950年創業の不動産企業です。現社長である山口社長の父が創業者ですが、山口社長が就任してから本格的に業容拡大しておりますので、山口社長が実質的創業者と言っても過言ではありません。事業内容は、マンション・戸建・オフィス・物流施設の開発、中古物件の転売、不動産賃貸、ホテル運営、不動産ファンド運営など、中堅規模の不動産会社でありながら、扱う物件のタイプ・事業が非常に幅広く、総合的に事業展開しています。
 足元の日本株式市場において、不動産セクター全体は新型コロナウイルス感染拡大を経て普及した在宅勤務・リモートワークによるオフィス需要に対する懸念や、加えて米国の一部の金融機関の経営不安を契機に商業用不動産向け融資の縮小なども懸念されているため、嫌気されていると当ファンドは考えております。
 一方、当ファンドではトーセイの先行きに対し強気の姿勢を維持しています。同社は各事業ともに成長を維持できると思いますが、中でも不動産ファンド運営が中期的に成長を牽引していくと思われます。また短期的にはホテル事業の拡大も期待出来ます。
 同社の不動産ファンドの残高は2023年2月時点で約2兆2,556億円まで拡大しています。残高増加の多くは外国人投資家によるものです。世界で金融引き締めが行われている中、日本は金融緩和の姿勢が続いており、結果、日本の不動産のイールドギャップは主要国の中では高位を維持しており、引き続き投資妙味が高いと言えます。また円安も海外投資家にとって、日本の不動産を割安に感じさせる要因となっており、同社の不動産ファンドの投資家は欧米系に加えアジア系にも広がりつつあるようです。
 ホテル事業は2016年から参入し、自社でホテル物件の開発、および運営を手掛けています。新型コロナウイルス感染拡大を受け、同社のホテル事業も苦戦し、2020年11月期には一部の物件の評価損計上を余儀なくされましたが、2023年以降は訪日客の回復もあり客数、室料ともに上昇傾向にあります。
 同社の収益構造は、従来の不動産の売買によるフロー利益から、ファンドの残高に応じたストック型利益、また訪日客増加の恩恵を受けることができる利益も加わり、過去とは大きく変化しています。
 同社の株価は堅調に推移していますが、株価指標はフローを中心とした収益構造をベースとした評価に留まっており、今後の利益成長の持続性に対し、割安であると当ファンドでは考えています。

今後の運用方針

 当ファンドでは、前述のトーセイのように、中長期的に事業拡大が想定されながらも、短期的には事業環境が厳しいと思われている企業が投資のターゲットの一例となります。特に、企業の収益構造が変化しているにも関わらず、株式市場が過去の収益構造をベースに株価評価をしている場合、投資を通じて取るリスクに対し、高いリターンが狙える状況であると言えます。個別企業を丹念に調査することで、株式市場が見落としている価値を発見できることがボトムアップ・リサーチの醍醐味です。引き続き投資魅力のある企業の発掘を徹底していきます。

2023年4月の運用コメント

株式市場の状況

 2023年4月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比2.70%の上昇となりました。
 当月の日本株式市場は、月前半に軟調な米国経済指標(ADP雇用統計、ISM非製造業景況感指数)が相次ぎ、景気後退懸念が高まったことから下落して始まりました。しかし月半ばには植田日銀総裁の金融緩和維持を支持する発言や、米著名投資家の日本株追加投資を巡る思惑から上昇に転じました。月後半は米地方銀行の巨額預金流出による警戒感から下落する局面もありましたが、日銀が金融緩和維持を決定したことで株式市場に安心感が広がり、最終的に前月末を上回る水準で月を終えました。

ファンドの運用状況

 2023年4月、当ファンドのパフォーマンスは前月末比1.69%の上昇となりました。参考指数のTOPIX(配当込み)は同2.70%の上昇となりました。
 当月、当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した企業は京成電鉄、竹内製作所などでした。一方、マイナスに影響した企業はMARUWAなどでした。
 京成電鉄は、月次で発表されている運輸収入が堅調に推移していることが好感されたものと思われます。加えて日本政府による新型コロナウイルス対策の緩和方針を受け、訪日客の拡大を期待した値動きと当ファンドでは考えております。竹内製作所は、当月中旬に2023年2月期本決算を発表しました。通期実績は対前年比19.5%の営業増益と好調な結果でした。同時に、当期比13.1%の営業増益となる新年度の会社業績予想が発表され、株式市場から好感されました。MARUWAは、当月下旬に2023年3月期本決算を発表しました。実績は対前年比10.6%の営業増益であり、サプライズはありませんでした。新年度の会社業績予想は当期比4.3%の営業増益が続くことが示されました。株価が軟調で推移した背景には、新年度の業績予想に対する警戒感があったと思われます。当ファンドでは、今後の業績とともに株価の戻りを期待しています。
 当月はファンドのパフォーマンスにプラスに貢献した「竹内製作所」について、投資の理由・魅力をコメントしたいと思います。
 竹内製作所はミニショベル(重量6トン未満)の世界的大手です。日本では同社の知名度は高くありません。同社は欧米での売上が全体の90%以上を占め、日本での売上がほとんどないことが理由として挙げられます。同社は1963年に長野県で自動車部品の下請けメーカーとして創業しています。1971年に建設現場の作業員の身体的負担の軽減を狙い、世界初のミニショベルを開発します。当時は、他社への製品供給で事業展開していましたが、1990年以降は自社ブランドの展開を決断します。この際、同社は国内市場ではなく、欧米市場に注力します。欧米市場を狙った理由は、ミニショベル市場の特徴にあります。先進国は整備されたインフラ補修が多く、街中でも使える小型建機の需要が多く存在するためです。同社は、欧米で求められる耐久性を満たすため、品質向上に努め、現在はプレミアムブランドとして同社は認知されていると当ファンドでは考えています。
 当ファンドでは、先進国のインフラ更新を考えれば、同社は長期的に成長できると判断し投資していますが、一部の市場参加者は、足元の事業環境、長期的な同社の競争力に懸念を持っているようです。
 足元の事業環境では、欧米の金融引き締め、景気減速が懸念されています。当ファンドでは、このような懸念は株価に織り込まれていると考えていると同時に、同社との対話を通じ、光ファイバーの設営などのインフラ投資需要が底堅く続いている状況を確認しています。長期的視点では、同社のミニショベル市場での市場シェア縮小が懸念されているようです。同社のライバルは巨大資本の企業が多く、ミニショベルに加え、大型建機や農機など幅広い製品ラインナップを持ち、顧客との接点が多いように見えるためです。当ファンドは、同社は高い競争力を維持すると考えています。それは同社の強みは顧客ニーズを汲み取り、製品化する力だと考えているからです。この力は、ミニショベルをトラックに積んで現場に運ぶ場合のトラック荷台の積載制限に合わせた重量設計や、運転席の振動低減・静寂性によるオペレーターの負担軽減など、顧客が欲しい商品をいち早く開発・販売してきた実績に現れています。ミニショベルのパイオニアである同社は、顧客の細かいニーズに答え続けた結果、コロナ禍でも最高益を更新できていると言えます。
 同社の株価は堅調に推移しています。当ファンドでは、同社の最大のリスクは為替レートと考えています。しかし、同社のブランド力を考えれば、値上げを含め、経営の対処方法は多いと判断していますし、米国でのノックダウン生産(製品の部品を輸出し、輸出先で製品を組立てる生産方法)も開始されています。今後も、同社の成長に期待しています。

今後の運用方針

 当ファンドでは、前述の竹内製作所のように、長期的には事業拡大することが想定されながらも、短期的には事業環境が厳しいと思われている企業(竹内製作所の場合、欧米の老朽化したインフラの更新需要の拡大に対し、目先の景気減速の懸念)が、投資ターゲットの一例となります。株式市場が短期的な業績懸念を持っている場合、長期的な収益拡大を株価に織り込めていない可能性が高く、そういった企業への投資は、リスクに対して高いリターンが狙えると言えます。引き続きボトムアップ・リサーチを通じて、投資魅力ある企業の発掘を徹底していきます。

2023年3月の運用コメント

株式市場の状況

 2023年3月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比1.70%の上昇となりました。
 当月の日本株式市場は、FRB(米国連邦準備制度理事会)の利上げ再加速の思惑を受けて米国株式市場が軟調に推移する中、円安が日本株を支える展開で始まりました。月半ばにかけては、米シリコンバレー銀行の破綻に端を発した欧米金融不安の急拡大を受け、リスク回避姿勢が強まったことから大幅な下落に転じました。しかし月後半になると、スイスの金融大手UBSによるクレディ・スイス・グループ買収や米当局による預金保護などの対応で金融システムへの不安が和らぎ、最終的に前月末を上回る水準で月を終えました。

ファンドの運用状況

 2023年3月、当ファンドのパフォーマンスは前月末比0.77%の上昇となりました。参考指数のTOPIX(配当込み)は同1.70%の上昇となりました。
 当月、当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した企業はフジミインコーポレーテッド、MARUWAなどでした。一方、マイナスに影響した企業は東洋炭素、ダイレクトマーケティングミックスなどでした。
 フジミインコーポレーテッド、MARUWAともに会社からのニュースはありませんでした。米国の一部金融機関の経営破綻や、欧州の大手投資銀行の経営苦戦が報道されたことで、世界的に長期金利の先高感が低下したことから長期金利の上昇を嫌気されてきたハイテク関連銘柄の買い戻しが起きており、両社の株価上昇もその流れの一環であると当ファンドは考えております。東洋炭素も会社からのニュースはありませんでした。3月に電気自動車大手のTesla社(米国)が「先端パワー半導体であるSiC(シリコンカーバイド)を減らす」旨のコメントをしたことで、一時的に世界のSiC関連企業の株価が下落しました。同社のコメントが、SiCの使用量・個数を減少させるのか、今後想定されるSiCの価格下落を見込んだ発言なのか、現時点では明らかではありませんが、今後も同社の情報発信に注意したいと思います。当ファンドでは、電気自動車のみならず、多くの電子部品が発熱問題を抱えており、その解決にはパワー半導体が必要であると判断しています。
 当月は当ファンド組入上位企業の「シップヘルスケアホールディングス」について、投資の理由・魅力についてコメントしたいと思います。
 同社は、1992年にグリーンホスピタルサプライ株式会社として設立され、2009年に持ち株会社体制へ変更する際、シップヘルスケアホールディングスと社名変更しています。社名のシップ(SHIP)とは、企業理念「Sincere(誠実な心)、Humanity(「情」の心)、Innovation(革新者の気概)、Partnership(パートナーシップ精神)」の頭文字、そして信頼できる仲間たちと航海を続ける船(SHIP)に由来しています。同社は複数の事業を展開しています。各事業の詳細は割愛しますが、「トータルパックプロデュース事業」が最も利益貢献しており、同事業が今後も同社の成長を牽引すると考えています。この事業は大病院を中心とした病院建て替えのコンサルティングサービスです。日本には1970年代に建てられた、老朽化した病院が多く、今後も建て替えは増加する見込みです。病院を建て替える際は、病棟設計、各医科の配置と動線、機材調達、IT導入など、検討課題が多岐にわたるため、同社のようなコンサルティングが必要とされます。
 同社のユニークな点は、上記のコンサルティング案件を受注するために、一見すると低収益に見える「メディカルサプライ事業」を展開していることです。この事業は、注射器、ガーゼなどの医療用消耗品を病院に販売する事業です。病院の消耗品は膨大な種類が存在し、在庫管理の負担が重いため、消耗品の管理を支援してくれる企業が必要とされています。一方、この事業の本質は、卸(商社)と同じです。売上規模は大きいのですが、利益率が低い事業となっています。会計上の利益だけを分析をすれば、トータルパックプロデュース事業に特化し、メディカルサプライ事業は売却・撤退する方が効率的に見えます。しかし、メディカルサプライ事業によって、消耗品を管理するために病院に頻繁に出入りすることができます。結果、病院運営側との信頼が構築され、コンサルティングの案件獲得につながっているのです。非常に遠回りに見えるようで、合理的な事業展開となっています。
 当ファンドでは、今後の同社を取り巻く環境は良好に推移すると考えています。新型コロナウイルス感染拡大は、多くの医療機関の経営を圧迫し、結果として同社の2022年3月期の業績は厳しい結果となりました。しかし同時に、新型コロナウイルス感染拡大は大病院の機能強化の必要性を顕在化させました。医者の数が不足しているだけではなく、感染症対策など高度な治療を行える医療機関の数が不足しているのです。将来、大病院は更なる高度化が求められると予想されます。加えて、新型コロナウイルス感染拡大でマイナスの影響を受けていた病院経営も回復が期待できます。大型の建て替えプロジェクトの増加が期待できる環境が整いつつあると、当ファンドでは考えております。

今後の運用方針

 当ファンドでは、前述のシップヘルスケアホールディングスのように、社会経済構造の変化の恩恵を受ける(この場合では、多くの医療を必要とする75歳以上の人口が増える局面にあること。日本の医療行政によって、地域医療においては大規模病院と小規模クリニックで機能分担を進めていく方針により大規模病院は機能を高める必要が増し、設備の拡充が求められていること)にもかかわらず、株式市場に認識されていないと考えられる企業を投資ターゲットにしています。収益構造が変化する可能性が株価に織り込まれていない企業は、リスクに対して高いリターンが狙える企業と言えます。引き続きボトムアップ・リサーチを通じて、投資魅力ある企業の発掘を徹底していきます。

2023年2月の運用コメント

株式市場の状況

 2023年2月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比0.95%の上昇となりました。
 当月の日本株式市場は、米長期金利上昇などを受け米国株式市場が軟調となる中、円安が日本株を支える展開で始まりました。月半ばにかけては、市場予想を上回る米国のCPI(消費者物価指数)やPMI(総合購買担当者景気指数)を受けて利上げの長期化懸念が再燃し、日本株も下落に転じましたが、月後半にかけては、植田次期日銀総裁候補が所信聴取で金融緩和継続を明言したことや円安の進行が日本株相場を下支えし、最終的に前月末を上回る水準で月を終えました。

ファンドの運用状況

 2023年2月、当ファンドのパフォーマンスは前月末比0.64%の下落となりました。参考指数のTOPIX(配当込み)は同0.95%の上昇となりました。
 当月、ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した企業はMARUWA、東洋炭素などでした。一方、マイナスに影響した企業はダイレクトマーケティングミックスなどでした。MARUWAは前月末に2023年3月期第3四半期決算を発表しました。9ヶ月累計の営業利益は、前年同期比20.0%増益と好調でした。同時に会社による通期業績予想の上方修正も発表され、株式市場に好感されました。東洋炭素は当月中旬に2022年12月期通期決算を発表しました。営業利益の実績は、前年比17.7%の増益でした。今期の会社業績予想も20.0%の増益であり、好調持続が示されました。ダイレクトマーケティングミックスは当月中旬に2022年12月期通期業績を発表しました。営業利益の実績は前年比20.7%増益と好調でした。今期の会社業績予想は、営業利益が0.5%増益となっておりますが、前年に新型コロナウイルス関連の特需があった反動であり、サプライズはありませんでした。決算と同時に発表された自社株買いで大株主の売却が明らかとなり、今後の需給に懸念が広がりました。当ファンドでも需給に対する懸念はありますが、同社の成長に変化はないと考えております。
 当月は当ファンド組入上位企業の「山洋電気」について、投資の理由・魅力をコメントしたいと思います。
 山洋電気は1927年に創業した、冷却用ファンを中心としたクーリングシステム事業、工作機械向けのサーボアンプを中心としたサーボシステム事業、無停電電源装置など中心としたパワーシステム事業を柱としている会社です。株式市場での認知が低いのは、同社はカスタム品を中心に事業を展開していることから、汎用・標準品を軸に事業展開しているライバル企業と較べて規模が小さいためであると当ファンドでは考えております。カスタム品を軸に事業展開することのメリットは、顧客のニーズに合わせた製品を製造することから顧客満足度が高く、長期にわたって顧客との関係を築くことができる点です。一方、カスタム品を製造するデメリットは、開発コストが負担となり、収益性を上げにくいことです。つまり、同社は多品種少量生産であり、汎用・標準品のメーカーは少品種大量生産とも言えます。
 当ファンドでは、冷却用ファン、サーボシステムでの成長を期待して同社に投資しております。まず冷却用ファンはデータセンター向けが成長を牽引します。データセンターは24時間、365日の稼働が前提となっていることから、冷却用ファンが使われます。サーボシステムは製造現場の生産性向上のために使われる工作機械や、ロボット向けが成長を牽引します。特にサーボシステムは中国での拡大に注力しており、現地でテクニカルセンターを開設し、自動化を進めたい中国企業に対してサポートを強化しています。
 同社にとってプラスなのは、案件の規模が大きくなっていることです。かつては、小規模の案件が多かったことから、カスタム品の製造販売は、まさに多品種少量生産となっていました。現在は、データセンター向けのように大量に購買してくれる顧客や、そもそも生産規模が大きい中国企業向けなどが増えています。同社の収益体質は、多品種少量生産から多品種大量生産になりつつある、と当ファンドでは考えております。結果、同社の営業利益率は、2021年度に10%を超える水準となり、2000年以降で最高の収益性となっています。
 同社の株価は、PBR(株価純資産倍率)0.79倍と低位で推移しております。目先のデータセンター投資が減速する可能性、中国経済の先行きに対する不安が背景であると当ファンドでは考えておりますが、中長期で見れば、同社業績は規模の拡大と収益性の改善が同時に期待できると思っております。また同社は財務体質が強固であるにも関わらず、配当性向が低いことも株式市場からの評価を押し下げていると思われます。当ファンドでは、資本効率の改善にも期待しています。

今後の運用方針

 当ファンドでは、上記の山洋電気のように、世界の大きな潮流(この場合では、大規模なデータセンター投資や、中国での自動化投資)の恩恵を受けるにも関わらず、株式市場に認識されていない企業を投資ターゲットにしています。収益構造が変化する可能性が株価に織り込まれていない企業は、隠れた成長企業と言えます。引き続きボトムアップ・リサーチを通じて、投資魅力のある企業の発掘を徹底していきます。

2023年1月の運用コメント

株式市場の状況

 2023年1月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比4.42%の上昇となりました。
 当月の日本株式市場は下落から始まりました。月前半に米サプライマネジメント協会(ISM)が発表した2022年12月の米製造業景況感指数が2年7カ月ぶりの低水準だったことや、中国製造業購買担当者景気指数(PMI)も低迷が続いたことから、景気後退への懸念が高まったのが主な要因と見られます。月半ばには、日銀が金融政策決定会合で大規模な金融緩和を維持すると発表したことを受け、株式市場は上昇に転じました。月後半には、米国連邦準備制度理事会(FRB)の理事が利上げ幅緩和の支持を表明したことや、米有力紙による早期利上げ停止の観測報道を受け、日本でも成長株を中心に株価が堅調に推移した結果、最終的に前月末を上回る水準で月を終えました。

ファンドの運用状況

 2023年1月、当ファンドのパフォーマンスは前月末比3.64%の上昇となりました。参考指数のTOPIX(配当込み)は同4.42%の上昇となりました。
 当月、ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した企業はベイカレント・コンサルティング、東洋炭素などでした。一方、マイナスに影響した企業はエフピコなどでした。ベイカレント・コンサルティングは1月中旬に2023年2月期第3四半期決算を発表しました。9ヶ月累計の対前年同期比では36.9%の営業増益となり、株式市場に好感されました。東洋炭素は会社からのニュースは特にありませんでしたが、自動車向けパワーデバイス業界の成長に株式市場の注目が集まっている流れを受けたものと当ファンドは考えます。エフピコも当月の株価に影響を与えうるニュースはありませんでしたが、2022年後半、同社の株価が堅調に推移してきた反動と当ファンドでは考えます。なお、同社は当月末に2023年3月期第3四半期決算を発表しており、第3四半期(3ヶ月)の対前年同期比は49.6%の営業増益と、業績の底打ちが示されています。
 当月は、当ファンド組入上位銘柄の「MARUWA」に関して、投資の魅力をコメントしたいと思います。
 MARUWAは放熱用セラミック部品の世界的大手企業です。セラミックとは、家庭で使われているお皿などに代表されるような、窯で無機物を焼結させた物を指します。どの家庭にも陶磁器があるように、セラミックは比較的簡易に焼き上げることが出来ますが、同社が得意としている「ファインセラミック」の分野では更に高度な製造ノウハウを必要とします。ファインセラミックを製造するには、焼き上げる粉体を常に均質に混ぜる技術、粉体を均一な状況に保つ最適なバインダー(接着剤)などに加え、焼成時も高度なプロセス管理が必要となり、製造工程自体が高い参入障壁になっています。同社は窒化アルミニウム製品で世界シェア60%以上、アルミナジルコニアでは世界シェア70%以上を持っていると当ファンドでは推測しています。
 同社は様々な種類のファインセラミック製品を製造・販売していますが、多くの用途は放熱用です。そして、当ファンドが最も期待している分野はEV(電気自動車)向け、およびデータセンター用を中心とした情報通信向けのファインセラミック製品です。EVはバッテリーの電気でモーターを駆動するのが基本的な仕組みですが、バッテリーとモーターの間に、スイッチに相当するパワーデバイスが組み込まれます。このパワーデバイスは、流れる電気を最適化する一方で、高電圧が流れるためパワーデバイス自体が発熱します。発熱によってパワーデバイスが膨張し、電子回路が破壊されてしまうことを防ぐため、セラミックが放熱用途で使われます。放熱基板の素材には、プラスチック、金属、セラミックの3つが存在しますが、EV向けやデータセンター向けのように使用年数が長く、発熱温度が高い分野では、セラミックが高価ではあるものの、最も信頼できる素材となっています。
 上記のように同社のセラミックの売上は拡大していくと考えられることに加え、高い参入障壁によって高収益を維持できると当ファンドでは判断しています。しかし、同社は株式市場から注目されているとは言えず、バリュエーションもそれほど高くありません。当ファンドではその理由の1つとして、同社がこれまで株式市場と対話をしてこなかった、具体的には2021年3月期まで決算説明会を開催しておらず、決算説明資料を作成してこなかったことにあると考えております。同社の株式市場との対話では改善が続いておりますが、情報開示の質・量ともに引き続き課題が残っていると当ファンドでは考えております。また同社が高収益であることの裏返しとなりますが、キャッシュの蓄積スピードが早く、資本効率が低下する可能性が高いことも、株式市場からの評価を押し下げていると思われます。当ファンドでは、株式市場との対話の改善にも期待しながら保有を継続してまいります。

今後の運用方針

 当ファンドでは、上記のMARUWAにおけるEV市場の拡大のように、世界の大きな潮流の恩恵を受けると考えられるにも関わらず、株式市場に認識されていないと考えられる企業を投資対象としています。日本の株式市場には、グローバルで成長が期待できる企業でありながら、株式市場から注目されていない企業が多く存在していると当ファンドでは考えます。これらの隠れた成長企業への投資であれば、リスクに対し高いリターンが期待できるといえるでしょう。これこそがボトムアップ・リサーチの醍醐味であり、アクティブファンドの存在意義であると考えます。引き続き投資魅力のある企業の発掘を徹底してまいります。

2022年12月の運用コメント

株式市場の状況

 2022年12月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比4.57%の下落となりました。
 当月の日本株式市場は、11月30日にFRB(米国連邦準備制度理事会)のパウエル議長が12月のFOMC(連邦公開市場委員会)における利上げ減速を示唆したことを受け、上昇して始まりましたが、その後は米国景気悪化懸念の高まりなどから下落基調をたどりました。月半ばには、欧米中銀の金融引き締め継続による景気悪化懸念や、日銀が長期金利の許容変動幅を修正したことなどを受け、金融政策の転換懸念から株式市場は大幅に下落しました。月後半にかけては、中国が事実上「ゼロコロナ政策」を終了したことでインバウンドや中国経済再開期待が生じる一方、米国の半導体株安や円高の進行を受けて、一進一退で推移しました。

ファンドの運用状況

 2022年12月、当ファンドのパフォーマンスは前月末比5.58%の下落となりました。参考指数のTOPIX(配当込み)は同4.57%の下落となりました。
 当月、ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した企業は神島化学工業、ダイレクトマーケティングミックスなどでした。一方、マイナスに影響した企業はMARUWAなどでした。神島化学工業は2023年4月期第2四半期決算を発表し、6ヶ月累計の対前年同期比では7.5%の営業減益でしたが、第2四半期(3ヶ月)の対前年同期比では17.5%の営業増益となり、株式市場に好感されました。ダイレクトマーケティングミックスは会社からのニュースはありませんでしたが、為替相場が円高になる中、内需企業が選好されたものと思われます。MARUWAも会社からのニュースはありませんでしたが、世界経済の減速懸念、円高が進んだ為替相場を嫌気した動きであると思われます。当ファンドではMARUWAは中長期的に成長が持続すると判断しております。
 当月は、当ファンド組入上位銘柄の「ダイレクトマーケティングミックス」に関して投資の魅力をコメントしたいと思います。
 ダイレクトマーケティングミックスは2007年に設立されたコールセンターの大手企業です。設立当初より、アウトバウンドコールによる営業支援を事業の柱として成長してきました。ここでアウトバウンドコールについて簡単に説明します。コールセンター業界は、大きくインバウンドコール(電話を受ける)業務とアウトバウンドコール(電話をかける)業務の2つに分かれます。同じコールセンター業務ですが、この2つは全く異なる性質を持ちます。インバウンドコールはユーザーからの問い合わせに答えることであり、待ちの姿勢が基本です。対してアウトバウンドコールは、ユーザーの獲得、セールスの電話をすることが求められ、能動的に行動することが基本です。同社の社名が「マーケティング」を含むのは、同社がアウトバウンドコールを軸に、マーケティングサポートを事業としているためです。また同社が電話を掛ける先は、同社にマーケティング支援を依頼する企業が持つ顧客リストに基づいています。具体例を上げると、携帯電話会社からマーケティング支援を受託した場合、同社が電話を掛ける相手は、携帯電話会社の現在のユーザー、または過去にユーザーだったなど、何かしらの接点を持った人たちに電話をし、適切な料金プランへの切り替えや、各種保険のオプションの提案、ユーザーの掘り起こしなどを行います。
 具体的な統計がないため推測ではありますが、当ファンドでは2つの背景から上記のようなアウトバウンドコール営業支援の市場は拡大していると考えています。1つ目は、コロナ禍を経て企業の営業活動が対面重視から非対面に切り替わりつつあることです。多くの企業が「インハウスセールス」という言葉を使い始めていますが、インハウスセールスも基本は電話による営業です。まずは電話でコンタクトを取り、興味を示した場合に対面での営業活動に進める、という流れです。既に米国では、国土の広さや生産性重視の風潮からアウトバウンドコールの重要性が確立しており、日本もその流れが強まると考えます。2つ目は、生産性を重視する企業が増えたことです。営業は社員が行うべきであるという価値観から、現在は社員が行うべき業務とアウトソーシング出来る業務を切り分け、アウトソーシングできることは専門業者に任せる方が会社全体の生産性が改善する、という考えが強まっています。
 アウトバウンドコールの市場が成長するならば、競争の激化が気になる点です。コールセンター業務は電話があれば誰でも出来る業務ですので、新規参入企業が増える可能性があります。しかし同時にアウトバウンドコールには難しさもあります。まずインバウンドコールに比べて、オペレーターの精神的な負担が重い点です。精神的負担が重い分、労働環境を整備する必要があります。同社はオペレーターの定着を重視しているため、気分転換しやすいオフィス空間のみならず、柔軟な労働時間や上司とのコミュニケーションなど、働きやすい環境を意識して構築しています。次に、成約を取るオペレーターの処遇の仕組みも重要です。客観的で納得できる仕組みを作らないと組織として成り立ちません。最後は、成約を取りたいオペレーターが過剰な営業トークをしてしまうリスクです。同社は成約後に、別のオペレーターに確認電話をさせることで、サービス品質を確保しています。つまりアウトバウンドコール事業を拡大させるには、組織運営のノウハウが必要になるということです。
 株式市場では来期以降の同社の業績を懸念していると思われます。同社はアウトバウンドコールが主業務ですが、2020~2022年は新型コロナウイルス対応のインバウンドコール受付業務が特需的に発生しています。当ファンドでも、新型コロナウイルス関連の特需は2023年以降急速に縮小すると考えています。加えて、携帯電話関連の大手顧客の短期的なマーケティング予算の変更も懸念点として挙げられます。この顧客動向を正確に予想するのは難しいですが、営業コストの効率性を考えると、同社にマーケティング支援業務が戻ってくるものと思われます。上記による業績の短期的な変調は同社の実態価値を反映したものではないと当ファンドでは判断しており、同社は社会構造の変化を追い風に中長期で成長できると考えています。

今後の運用方針

 2022年12月に日銀によるイールドカーブ・コントロール(短期金利と長期金利の誘導目標を定め、その水準を実現するように国債の買い入れを行う金融緩和策)の修正が行われました。以降、日本株式市場でも銀行業界の株価が上昇し、いわゆるバリュー株がアウトパフォームしています。一方、当ファンドでは中期的な成長に対し、株価が割安か、という視点を一貫して取り続けています。結果、当ファンドでは上記のダイレクトマーケティングミックスのように、短期的に業績懸念があっても、中長期には利益成長が期待できる企業に投資しています。バリュー株かグロース株か、ではなく、株価が中長期的な利益成長を織り込めていない企業への投資であれば、リスクに対し高いリターンが期待できると考えます。引き続き投資魅力のある企業の発掘を徹底してまいります。

主な投資リスク、費用等

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