スパークス・韓国株ファンド | 投資信託 | スパークス・アセット・マネジメント

スパークス・韓国株ファンド
(愛称:韓国厳選投資)

日経新聞掲載名
韓国厳選
分類
追加型投信/海外/株式
設定日
決算日
毎年12月18日

基準日:2024.04.19

基準価額
14,981
前日比
+215
+1.46%
純資産総額
1.1億円
分配金情報(税引前)
0

基準価額推移

分配金実績

決算頻度:1回/年

設定来合計
0
直近12期計
0

分配金実績一覧

2023年12月18日
0
2022年12月19日
0
2021年12月20日
0
2020年12月18日
0
2019年12月18日
0

月次報告書

2024年

2023年

2022年

2021年

2020年

2019年

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2024年3月の運用コメント

株式市場の状況

 当⽉、KOSPI(韓国総合株価指数、韓国ウォンベース)は前⽉末⽐3.95%上昇しました。当月のFOMC(⽶連邦公開市場委員会)で年内の利下げ回数が3回のまま据え置かれたことも、投資家心理の改善に貢献しました。セクター別では、NVIDIA社(米国)の主催で「GPU Technology Conference 2024GTC 2024)」が開催されたこと、Micron Technology社(米国)の株価が急上昇したことなどを受け、ITセクターが好調に推移しましたが、金融当局による企業価値向上に向けた取り組みにもかかわらず、PBR(株価純資産倍率)が低い銘柄の一部は利益確定の動きに押される形で株価が下落しました。減配による金融株の調整もマイナスに働きました。

ファンドの運⽤状況

 当月、当ファンドは前月末比7.01%上昇しました。一方、KOSPI(韓国ウォンベース)をもとに当社が円換算した「KOSPI(韓国総合株価指数、日本円ベース、参照レートはロンドン時間午後4時のWMロイターレート)」は、同3.97%上昇しました。
 当⽉は、Leeno Industrial(半導体・半導体製造装置)、SK hynix(半導体・半導体製造装置)、ISC(半導体・半導体製造装置)などがパフォーマンスに貢献した⼀⽅で、Park Systems(テクノロジー・ハードウェアおよび機器)、Youngone(耐久消費財・アパレル)、JYP Entertainment(メディア・娯楽)などがマイナスに影響しました。組入上位銘柄に大きな変更はありませんでした。

銘柄紹介

 当月、当ファンドのパフォーマンスに貢献した銘柄の多くは半導体セクターに属する企業で、その中の1社が「SK hynix」でした。
 同社を含むAI(人工知能)関連の半導体企業は、当月18日から21日(米国時間)にかけて前述の「GTC 2024」が開催されたことを受け、株価が上昇しました。同カンファレンスはGPU(Graphics Processing Unit、画像処理装置)のリーディングカンパニーであるNVIDIA社が主催し、ソフトウェアとハードウェアを手がける様々な企業がビジョンとロードマップを発表する場となっています。GPT-3(Generative Pre-trained Transformer-3、OpenAIが開発した事前学習済みの自然言語処理モデル)が書き言葉に革命を起こした言語モデルだとすれば、GPT-4は一歩進んで動画の世界に踏み込んだもの、GPT-4.5は生産性を高める技術革新の集合体と言われています。
 最近まで、GPUメモリの規格としてはGDDRGraphics Double Data Rate、グラフィック処理に特化したメモリ規格の一つ)が最適とされていました。しかし従来型メモリはピン数に上限があるため、メモリ帯域幅の拡大に制約がありました。業界では現在、1,024本の信号線(TSV(シリコン貫通電極)を使用)を備えたHBMHigh Bandwidth Memory、高帯域幅メモリ)が開発されており、さらにまもなく信号線数2,048本のものが登場すると言われています。これによりデータの転送が高速化することで処理能力とスピードの向上が実現する見込みです。最高性能実現のため、チップの数を増やすことや高速化することも選択肢ではありますが、NVIDIA社はHBMを選択しました。しかし、製造と供給面の課題は依然解消されておらず、メモリの性能にも影響しています。
 SK hynixは2024年もHBMに関して高い市場シェアを維持すると予想されています。AI用半導体投資の急拡大に起因するHBM需要の急増によって、Samsung Electronics社やMicron Technology社といった競合先も事業拡大に取り組み始めています。これにより同社は現在の高い市場シェアを維持できない可能性もありますが、性能、歩留まり、容量といった面で競合先を上回ると考えています。

今後の⾒通し

 韓国では輸出が回復しており、好ましい輸出環境は今後も継続する見通しです。韓国貿易協会(KITA)が発表した2024年第2四半期(4月~6月)の輸出産業景気展望指数は、2021年第2四半期以来の高い数値となりました。ここから輸出企業にとって有利な条件が整いつつあることが読み取れます。今後の輸出改善に寄与する要因としては、輸出相手国の経済環境と価格が挙げられるでしょう。米国経済の回復と中国の景気刺激策は、韓国の輸出額に好影響を及ぼした模様です。第2四半期の輸出見通しについては、業種によって内容が異なります。半導体、造船、自動車は改善する見込みですが、鉄鋼、非鉄金属、繊維は苦戦が予想されています。韓国は国内市場の規模が小さいため、海外輸出が成長の起爆剤としての役割を果たしています。そのため、上場企業であっても総売上高に占める海外売上高の比率が比較的高いのが実情です。輸出は韓国経済の最重要基盤であり、株式市場の下支え要因でもあります。

2024年2月の運用コメント

株式市場の状況

 当月、KOSPI(韓国総合株価指数、韓国ウォンベース)は前月末比5.82%上昇しました。FOMC(⽶連邦公開市場委員会)の内容を受け早期の米利下げ期待が後退し、また米国の雇用統計とインフレ率が市場予想を上回ったことを受けて米10年債利回りは4.3%台まで上昇するなか、韓国政府の景気刺激策やAI(人工知能)需要に対する期待感が株価を下支えし、株式市場は上昇しました。韓国政府は上場企業による自発的な企業価値向上計画の策定と開示を促す「企業価値向上プログラム」の導入を発表しました。それを材料視した投資家がPBR(株価純資産倍率)の低いセクターを集中的に買い増したため、該当するセクターを中心に、株式市場全般が上昇しました。

ファンドの運⽤状況

 当月、当ファンドは前月末比0.76%上昇しました。一方、KOSPI(韓国ウォンベース)をもとに当社が円換算した「KOSPI(韓国総合株価指数、日本円ベース、参照レートはロンドン時間午後4時のWMロイターレート)」は、同8.60%上昇しました。
 当月は、SK hynix(半導体・半導体製造装置)、Kyung Dong Navien(資本財)、KCTECH(半導体・半導体製造装置)などがパフォーマンスに貢献した一方で、RAY(ヘルスケア機器・サービス)、ISC(半導体・半導体製造装置)、CS Wind(資本財)などがマイナスに影響しました。組入上位銘柄に大きな変更はありませんでした。

銘柄紹介

 AI関連企業が軒並み好決算を発表したことが、株式市場の上昇を後押ししています。英国の半導体設計会社Arm社は、20231012月期決算が好調だったこと、来期の見通しが明るいことを受け、株価が急上昇しました。NVIDIA社(⽶国)も202311月~20241月期の決算が予想を上回りました。同社CEOのジェンスン・フアン氏はプレスリリースの中で、生成AIが転換期に差しかかり世界的な需要の急拡大につながっていると述べました。これを受け、AI需要の拡大に対する期待感から、米韓両国の株式市場が上昇しました。

 当ファンドの組入銘柄である「SK hynix」は、2022年にHBM3High Bandwidth Memory、高帯域幅メモリー)の生産を開始して以来、NVIDIA社の単独サプライヤーとしての地位を維持しています。同社は20243月から、HBM3Eという第5世代HBMの生産を開始します。NVIDIA社は既に採用を決定しており、2023年に発表したMPUGPU統合型プロセッサーに搭載される予定です。これにより同社のDRAMの売上高に占めるHBMの割合が高まる可能性が高く、そうなれば同社はHBM生産用TSV(シリコン貫通電極)の生産能力が増強されて平均単価が上昇し、競合他社を上回ることになると考えます。平均単価が市場平均を上回れば、2024年の企業業績と株価上昇の大きな原動力となるはずです。

今後の⾒通し

 韓国当局は「企業価値向上プログラム」が国内株式市場のさらなる成長に寄与してくれることに期待を寄せています。その見本となったのは日本の取り組みで、日本では東京証券取引所(東証)が20233月に企業価値向上に向けた対策を講じ、これが株式市場の大幅上昇につながりました。東証は上場企業に対し、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請しました。具体的には、PBR1倍を下回っている上場企業にROE(株主資本利益率)またはROIC(投下資本利益率)がCOE(株主資本コスト)またはWACC(加重平均資本コスト)を上回っているか確認するよう要請し、上回っていない場合は不足の理由を説明するよう求めたのです。ROECOEを上回っていても、PBRが1倍を下回っている場合は、対策として具体的な戦略、目標、スケジュールを開示するよう促しました。これを受け、202312月末時点でプライム市場上場企業の49%815社)が関連対策を講じたか、あるいは検討を開始しました。
 韓国当局も同様の政策を実施することで、日本と同様の結果が出ることを期待しています。しかし、韓国市場における構造的ディスカウントが解消されるまでには相当な時間がかかる可能性があることを認識しておくべきであり、一時的措置ではなく企業の持続的な努力と市場の監視が不可欠と考えます。

2024年1月の運用コメント

株式市場の状況

 当⽉、KOSPI(韓国総合株価指数、韓国ウォンベース)は前⽉末⽐5.96%下落しました。先進国株式市場との連動性は当⽉も⾒られませんでした。⽶国が3⽉に利下げに踏み切る可能性が後退したにも関わらず、⽶国株式市場はAI(⼈⼯知能)需要の⾼まりに対する期待から上昇しました。中国では経済悪化懸念が再燃し、トランプ⽒が⽶⼤統領に返り咲く可能性が拡⼤するにつれ、中国株式市場の下落基調も強まりました。こうした環境において、韓国でも景気低迷の懸念が再燃し、中国株式市場が低迷したこともあって、国内株式市場の下落基調が強まりました。

ファンドの運⽤状況

 当⽉、当ファンドは前⽉末⽐4.45%下落しました。⼀⽅、KOSPI(韓国ウォンベース)をもとに当社が円換算した「KOSPI(韓国総合株価指数、⽇本円ベース、参照レートはロンドン時間午後4時のWMロイターレート)」は、同5.91%下落しました。
 当⽉は、Douzone Bizon(ソフトウェア・サービス)、Leeno Industrial(半導体・半導体製造装置)、Park Systems(テクノロジー・ハードウェアおよび機器)などがパフォーマンスに貢献した⼀⽅で、JYP Entertainment(メディア・娯楽)、CSWind(資本財)、HYBE(メディア・娯楽)などがマイナスに影響しました。組⼊上位銘柄に⼤きな変更はありませんでした。

注⽬のテーマ

 年明け以降、韓国政府が⾦融市場の安定化と株式市場の活性化に向けた取り組みを続けています。韓国資本市場の発展と成⻑は継続しなければならず、そのためには制度的な下⽀えと補完が必要だという点を鑑みると、これは前向きな変化であると考えられます。
 韓国⾦融委員会は2024年上半期に⾃⼰株式制度の改善に着⼿し、⼤株主による便宜的な⽀配権拡⼤のための濫⽤を阻⽌し、⾃⼰株式の購⼊や消却を通じた株主価値向上機能の拡⼤を図る予定です。この中には最も厳格な措置である⾃⼰株式消却の義務化は含まれていませんが、少なくともコリアディスカウントの解消に向けて資本市場の制度改善に関する議論が本格的に始まったことは間違いないと当ファンドはみています。
 この措置の⼀つに「企業価値向上プログラム」というものがありますが、これはPBR(株価純資産倍率)の低い企業に対して⾃主的に企業価値向上対策を講じるよう促すものです。取引所や監督当局の意図は理解できますが、対策を講じるのであれば、韓国企業のPBRが統計上低くなっている点には様々な意味が含まれていることを考慮する必要があると考えます。⾦融、エネルギー、通信などは⼀般的にPBRの低いセクターに分類され、成⻑の価値が⾒出しにくく、「規制」や「制約」が多い業種です。企業価値を脅かすものがほとんどないのであれば、「株主価値」だけを考えた経営を続けても問題はありません。しかし「規制」や「制約」が多い業種では、潜在的なリスクがあるため保守的な企業経営が続いてしまい、PBRの低い状態が常態化するのです。よって、企業価値向上に必要なのは業界と規制環境を⼀体的に⾒ることだと考えます。

今後の⾒通し

 韓国の2023年第4四半期の経済成⻑率は、建設投資は前四半期⽐で4.2%減少したものの、輸出が同2.6%増と回復したことで、同0.6%増で着地しました。しかし2023年通年の成⻑率は1.4%にすぎず、4.3%に達した2021年から⼤幅に減少し、2022年の2.6%にも及びませんでした。韓国銀⾏は輸出の回復と半導体産業の回復による設備投資の改善によって2024年の成⻑率が2%台前半に回復すると予測していますが、中国経済の低迷や建設業界の縮⼩といったリスクが解消しない可能性もあります。
 当⽉末に開催されたFOMC(⽶連邦公開市場委員会)では政策⾦利が据え置かれました。現在、世界⾦融市場は3⽉の利下げを50%の確率で織り込んでおり、少なくとも2024年第2四半期には利下げが始まると踏んでいるようです。経済の状況によって利下げの開始時期は異なるかもしれませんが、物価上昇率の低下、景気減速、利下げという基調は続くでしょう。
 現状では韓国と⽶国の政策⾦利には最⼤2%の差があるので、⽶国が基準⾦利の引き下げに踏み切ったとしても、韓国銀⾏が政策⾦利の引き下げを性急に進めることはないと考えます。しかし、⽶国の利下げ期待とともに韓国国内における下半期の利下げ期待も残ると当ファンドは⾒ています。不動産プロジェクトファイナンスをめぐる危機が拡⼤する可能性はまだ低いとはいえ、そうなった場合の経済や⾦融市場への影響、政策対応に関しても注視していく必要があると考えます。

2023年12月の運用コメント

株式市場の状況

 当⽉、KOSPI(韓国総合株価指数、韓国ウォンベース)は前⽉末⽐4.73%上昇し、前⽉の上昇基調を維持しました。インフレ鎮静化と利下げの期待が⾼まったことで、株式市場は引き続き上昇し、12⽉のFOMC(⽶連邦公開市場委員会)後はとりわけその傾向が強まりました。
 FOMCでは政策⾦利の誘導⽬標が5.25〜5.50%のまま据え置かれ、9⽉と11⽉に続いて3会合連続の据え置きとなりました。最新の⾦利予測分布図によると、2024年末の政策⾦利⾒通しが9⽉の5.1%から4.6%に下⽅修正されており、2024年の利下げ回数に換算すると2回分に相当するものと考えられます。
 FRB(⽶連邦準備制度理事会)のパウエル議⻑は記者会⾒で、インフレ率の低下が予想より速く、労働市場の逼迫がやや緩和しており、⽶国経済のソフトランディングが可能であると主張しました。同議⻑は「経済成⻑の勢いは鈍化しており、労働需給はバランスを取り戻しつつある」と述べ、財価格、住居費、住居費以外のサービス価格の3分野すべてでインフレ抑制に進展がみられると指摘しました。特にFRBが注視している住居費以外のサービス価格(コア・インフレ)の上昇率が低下してきているとして、「11⽉のFOMCまでは利下げは検討されていなかった」が、現在は利下げが議論のテーマになっていると述べ、FOMC内での論調が変化してきていると認めました。
 KOSPIは韓国ウォンベースで前年末⽐18.73%上昇して年を終えました。堅調に推移したのは主として規模が⼤きく景気循環の影響を受けやすいセクターで、⼆次電池、鉄鋼・⾦属、半導体といった業界は⼤きな上昇をみせました。⼀⽅、公益事業、⼩売、ホテル・レジャーなどのセクターはリターンがマイナスとなりました。

ファンドの運用状況

 当⽉、当ファンドは前⽉末⽐2.87%上昇しました。⼀⽅、KOSPI(韓国ウォンベース)をもとに当社が円換算した「KOSPI(韓国総合株価指数、⽇本円ベース、参照レートはロンドン時間午後4時のWMロイターレート)」は、同0.05%上昇しました。
 当⽉は、CS Wind(資本財)、SK hynix(半導体・半導体製造装置)、Park Systems(テクノロジー・ハードウェアおよび機器)などがパフォーマンスに貢献した⼀⽅で、ISC(半導体・半導体製造装置)、RAY(ヘルスケア機器・サービス)、TKCorporation(資本財)などがマイナスに影響しました。組⼊上位銘柄に⼤きな変更はありませんでした。

注目のテーマ

 OpenAIの共同創設者であるサム・アルトマン⽒は2016年の「Moore's Law for Everything.(ムーアの法則を、すべてに)」と題した寄稿を通じて、⽌める術のない技術的変化に対する解決策を提⽰しました。同⽒は現在⼈が⾏っている作業は訓練可能なソフトウェアに着々と取って代わられると主張し、農業⾰命、産業⾰命、コンピューター⾰命に続いてAI(⼈⼯知能)⾰命が起きると予想しています。そしてコンピューターは今後5年以内に法律⽂書を読み、医療に関する助⾔を⾏うようになり、10年以内に製造業の組⽴ラインで⼈間の作業に置き換わると予⾒しました。
 アルトマン⽒の予測によると、AIの発展によって様々な雇⽤が創出されますが、そうした雇⽤はほとんど経済的価値を⽣み出しません。同⽒は富の主な源泉を、1)AIを開発、利⽤する企業(資本)、2)供給に限りのある⼟地の2つに分類しました。その上で、労働の価値が減少していくことを踏まえ、労働よりも資本(権⼒)への課税に重点を置き、徴収した税⾦を原資として、所有権を分配する、あるいは資本と関わる富を直接的に分配することを提唱しました。このアイデアは「アメリカン・エクイティ・ファンド」という形で具現化されていますが、企業の時価総額に対して年率2.5%以上の税⾦を課し、ファンドに転換可能な株式を創⽣するというものでした。同⽒はまた、個⼈所有の⼟地にその価値の2.5%の税⾦を課すことを提案し、「AI⾰命」下の「ベーシック・インカム」という概念を提唱しました。こうした将来展望は不快で過激に聞こえるかもしれませんが、同⽒が⼒説するのは、⼈⼯知能はもはやSFではなく、市場成⻑のペースや強度に潜在的なばらつきはあるにせよ、テクノロジーが指し⽰す⽅向性はきわめて明快なのだという点です。
 AIの急速な進化は、当ファンドの投資戦略にとって好材料にも悪材料にもなり得ます。先進的なAI開発事業者は急成⻑を⽬前に控えており、当ファンドはそうした銘柄を組み⼊れて、ここでみてきたテクノロジーの変化に乗じなければなりません。AIが産業と⼀体化していくことから、慎重な状況分析を⾏って、ポートフォリオの耐久⼒を⾼め、テクノロジーの動向と⽅向性を⼀致させていくことが不可⽋だと考えます。

今後の見通し

 コロナ禍によるこの1年のライフスタイルの変化を振り返ってみると、世界貿易の活動に停滞や混乱がみられました。特に上期は輸送関連の問題が表⾯化し、その後、需要減退の懸念によって国際貿易に対する期待感が萎みました。その余波を⼤いに被ったのが、対外貿易への依存度の⾼い韓国でした。韓国が⻑年⿊字を維持してきた貿易収⽀は2022年から⾚字に転じ、2023年上期までその状態が続きました。貿易条件の悪化によって対外貿易で多額の損失が発⽣し、経済成⻑の⾜枷となりました。
 しかし、原油価格の安定や半導体価格の回復といった好材料によって景気循環にさらされやすい商品の価格上昇が促進され、貿易⿊字への転換を後押しする⼒となりました。
 経済成⻑率の上昇が予想されていること、国際貿易が再開したことは、韓国経済の今後を決定づける事態です。したがって、経済成⻑と貿易を維持するには需要がいつまで続くのかを⾒極めることが不可⽋です。
 AIが世界経済にどのような影響を与えるのかを理解することは、単なる意識の問題ではありません。投資家にとっては戦略決定に⽋かせない検討事項です。AIイノベーションの最前線に位置する企業は、世界情勢の⾏⽅を左右するキープレーヤーとなるでしょう。こうしたトレンドを認識しておくことで、それを投資家としての意思決定材料として⽣かし、経済のパラダイムシフトに乗じる機会を⼿にすることができると当ファンドでは考えています。
 いつも当ファンドをご⽀援いただき、ありがとうございます。新たな年が皆様にとって成功と⽬標達成、そして希望に満ちた1年となりますようお祈り申し上げます。

2023年11月の運用コメント

株式市場の状況

 当⽉、KOSPI(韓国総合株価指数、韓国ウォンベース)は前⽉末⽐11.30%上昇しました。前⽉まで世界⾦融市場に⼤変動をもたらしていた要因にわずかながら安定化の兆しが⾒られたことで、世界の株式市場は⼒強く回復しました。イスラエルとハマスの武⼒衝突は⼀時的な戦闘中⽌と⼈質解放によって進展を⾒せ、近隣諸国への紛争波及に対する懸念は多少和らぎました。⽶国の経済指標が悪化し、インフレ率が低下したことと同時に、FRB(⽶連邦準備制度理事会)の利上げ終了に対する期待感が広がったことが、世界⾦融市場の安定化に寄与しました。
 韓国市場は、Samsung Electronics社がロボティクス、AI(⼈⼯知能)、半導体向けを中⼼とするHBM(広帯域幅メモリ)をNVIDIA社(⽶国)に供給すると発表したことで、⽉前半から⽉半ばにかけて堅調に推移しました。しかしその後は⼆次電池(充電式電池)関連銘柄の急落、FOMC(⽶連邦公開市場委員会)の慎重姿勢、⽶国10年債利回りが4.5%を超えたことに対する懸念など、内外の悪材料を消化する形で調整しました。

ファンドの運用状況

 当⽉、当ファンドは前⽉末⽐9.40%上昇しました。⼀⽅、KOSPI(韓国ウォンベース)をもとに当社が円換算した「KOSPI(韓国総合株価指数、⽇本円ベース、参照レートはロンドン時間午後4時のWMロイターレート)」は、同13.73%上昇しました。
 当⽉は、Leeno Industrial(半導体・半導体製造装置)、Park Systems(テクノロジー・ハードウェアおよび機器)、SKhynix(半導体・半導体製造装置)などがパフォーマンスに貢献した⼀⽅で、JYP Entertainment(メディア・娯楽)、Youngone(耐久消費財・アパレル)などがマイナスに影響しました。組⼊上位銘柄に⼤きな変更はありませんでした。

銘柄紹介

 Leeno Industrialは第3四半期売上⾼が734億韓国ウォン、営業利益が333億韓国ウォンとなったと発表しました。売上⾼は世界的に⼤規模研究開発がメモリ以外の分野に移⾏した影響により、前年同期⽐で減少となりました。ただし、営業利益率が45.4%ときわめて⾼⽔準を維持していることは注⽬に値すると考えます。業績が堅調に推移した要因としては、研究開発で使⽤する検査⽤ソケットの需要が増加したこと、主要顧客の新モデル投⼊に伴って量産時に使⽤する検査⽤ソケットの需要が回復したことが挙げられます。医療機器事業の業績は当ファンドの予想を下回り、やや期待外れに終わりましたが、これは主要取引先が⽣産能⼒を増強する中で⼀部在庫調整を⾏ったためであると考えられ、中⻑期的な需要拡⼤の⾒通しは依然堅調です。
 半導体材料・部品・装置メーカーが軒並み業績悪化に苦しむ中、同社のファンダメンタルズが堅調なのは、⾼付加価値製品(ハイエンドモバイルAP(Application Processor)、⾞載⽤システム・オン・チップ(SoC)など)に注⼒していること、⾼い営業利益率を⽣み出す能⼒があることによるものと考えます。
 市場にはAI関連銘柄への期待感はほとんど広がっていませんが、6G(第6世代移動通信システム)への移⾏を⽬前に控え、同社を堅調な成⻑に導く原動⼒が次々と顕在化し始めていると当ファンドは⾒ています。取引先企業による⾞載⽤SoC事業拡⼤に向けた取り組みやAR/VRデバイス市場の急成⻑が、同社の持続的成⻑の原動⼒となり得ます。また、オンデバイスAIの普及が本格化するなか、NPU(⼈間の脳神経系を模したニューラルネットワークを組み込んだ⼈⼯知能専⽤のプロセッサー)市場も徐々にではありますが回復基調にあります。同社は誰もが認める有望株ではありませんが、堅実なファンダメンタルズがあると考えています。
 同社の業績は、季節的な要因によって次四半期は若⼲減少するでしょう。しかし、ファウンドリ稼働率の回復やモバイル需要の底⼊れなど半導体業界の底⼊れを⽰す兆しがいくつか確認されており、同社の2024年業績⾒通しにとっては好ましい前兆だと当ファンドは考えています。

今後の見通し

 各国の中央銀⾏が2021年下期から続けてきた引き締め政策の終了が間近に迫っていると思われることから、市場の関⼼は緩和がいつ始まるのかという点に集まっています。CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のFedウォッチによると、市場は⽶当局が2024年第2四半期に利下げを開始すると予想している模様です。今後のインフレ率や経済指標の発表で状況が明らかになるまで、緩和のタイミングやペースに関する論争が⽌むことはないでしょう。
 ⽶国の場合、利上げの余波があるために多少の景気減速は避けられないと思われますが、景気後退に陥る可能性は依然低いと考えられています。ただし、こうした⾒通しの前提条件として、物価の安定性を基準にして景気減速の抑⽌を狙った緩和的な⾦融政策が適切な時期に実施されるという想定があります。景気が減速しているにもかかわらず⾼⾦利政策が続けば、将来的な景気低迷がより深刻度を増すでしょう。
 ⽶国以外の国々が景気の底を通過する可能性は⾼いと考えられています。製造業の⽐重の⾼さ、⾼⾦利に対する脆弱性、ドル⾼、原油価格上昇によるエネルギー収⽀の⾚字など、韓国経済にとって不利に働いていた条件が変化してきたことは、韓国経済にプラスに寄与する可能性があると⾒なされています。しかし、2023年下期に明らかになった家計債務の急増は、マクロ経済の安定性にとって引き続き脅威です。債務返済のために消費者の購買⼒が低下し、⾦融政策の障害となる可能性があるため、注視していく必要があると考えています。

2023年10月の運用コメント

株式市場の状況

 当⽉、KOSPI(韓国総合株価指数、韓国ウォンベース)は前⽉末⽐7.59%下落しました。ロシアによるウクライナ侵攻が昨年から続く中、イスラエルとハマスの武⼒衝突が発⽣したことで、世界経済はさらに不透明感を増しています。8⽉末に4%前後だった⽶国債10年物利回りは当⽉半ばには5%まで急上昇し、その影響により世界各国の⾦融市場でボラティリティが上昇しました。中東における地政学的リスクの⾼まりも、株式市場低迷の⼀因となっています。
 ⽶国労働統計局が発表した9⽉の雇⽤統計で雇⽤者数が⼤幅に増加したことで、FRB(⽶連邦準備制度理事会)の引き締め政策⻑期化に対する懸念が再燃しました。さらに⽶国の消費者物価指数が市場予想を上回ったことも、株式市場の下落基調を⻑引かせる要因となりました。

ファンドの運用状況

 当⽉、当ファンドは前⽉末⽐6.82%下落しました。⼀⽅、KOSPI(韓国ウォンベース)をもとに当社が円換算した「KOSPI(韓国総合株価指数、⽇本円ベース、参照レートはロンドン時間午後4時のWMロイターレート)」は、同6.29%下落しました。
 当⽉は、SK hynix(半導体・半導体製造装置)、Kyung Dong Navien(資本財)、Youngone(耐久消費財・アパレル)がパフォーマンスに貢献した⼀⽅で、Park Systems(テクノロジー・ハードウェアおよび機器)、MITECH(ヘルスケア機器・サービス)、JYP Entertainment(メディア・娯楽)などがマイナスに影響しました。組⼊上位銘柄に⼤きな変更はありませんでした。

銘柄紹介

 エンターテインメントセクターの株価調整は予想以上に⻑引いていますが、これはおそらく上半期の株価上昇の反動が出ていることと、⼤物アーティストの新曲発表がなかったためであると思われます。
 JYP Entertainmentは、同社所属ボーイズグループStray Kidsが2023年第3四半期に発表した新曲に加え、同社に所属するガールズグループのNiziUとStray Kidsが発表した⽇本アルバムと⼤規模コンサートの売上が寄与し、2023年第4四半期業績が堅調な内容になる⾒込みです。
 同社は2023年第3四半期に⽇本での活動を⼤幅に拡⼤しました。Stray Kidsは9⽉に⽇本初のEP(Extended Playの略で、楽曲の販売単位のうち、シングルより収録曲数が多く、アルバムよりも少ないもの)をリリースして100万枚以上を売り上げ、4⼤ドームツアー(4都市8公演)も⾏いました。今回の公演は、観客数や会場の質といった点で、前回の来⽇公演を質量とも上回る内容となっています。NiziUもアルバムリリースとコンサートツアー(8都市17公演)の開催を⾏いました。ただし、⽇本であげた売上の計上は⽇本の提携先の決済条件次第で遅れることが多く、財務報告書に反映されるのが翌四半期、あるいは翌々四半期になる可能性があることには注意しておく必要があります。
 ⽇本売上の計上時期に関する問題はあるものの、1) コンサートの観客動員数や1公演あたりのギャランティの増加や、アーティストのパフォーマンスの質が強化されていること、2) 来年度の収益化を予定している新たな知的財産が豊富にあることなど、投資先としての魅⼒は盛りだくさんです。
 アーティストの活動という観点でみると、2023年第4四半期の収益が最も期待できるのはHYBE(メディア・娯楽)でしょう。同社所属のSEVENTEENは、2023年第4四半期に発売予定のニューアルバムの予約枚数が既に520万枚に達し、K-POP界の新記録を樹⽴しました。同社所属のTXT、ENHYPEN、&TEAMなども新曲を発表予定で、⼈気が⼤幅に上昇中です。特筆すべきは、世界中の⾳楽チャートを席巻したデジタル・シングルの成功を受けて11⽉にリリース予定のJUNG KOOKのファーストソロアルバムです。第4四半期業績は通常、年末の出費がかさんで低めに出るものですが、⼤問題さえ発⽣しなければ、同社の営業利益は2023年第2四半期の800億ウォン台を上回る可能性があると考えられます。

今後の見通し

 ⽶国経済の先⾏きについては、いまだに⾒解が分かれています。⼀部指標に景気減速の兆しが⾒られるにもかかわらず、2023年第3四半期のGDP成⻑率は前期⽐4.9%増と、2021年第4四半期以来の⾼い伸びとなりました。これは関係者が懸念していた景気後退が起こらなかったことを裏づける事象と考えられます。その証拠に、当⽉発表された9⽉の⾮農業部⾨雇⽤者数は前⽉(22.7万⼈増)と予想(17.0万⼈増)をともに上回って前⽉⽐33.6万⼈増となり、労働市場の堅調さが続いていることを⽰しました。また、9⽉の⼩売売上⾼が市場予想を上回ったことで、⾦融政策に対する懸念がさらに拡⼤しました。
 韓国では、2023年第3四半期は個⼈消費がわずかに増加したものの、設備投資が低迷したことで、GDP成⻑率は前期⽐0.6%増となりました。これは韓国銀⾏が発表した2023年のGDP成⻑率⾒通し約1.4%と同程度の数字となります。しかしOECD(経済協⼒開発機構)は2023年の潜在成⻑率を1.9%、2024年の潜在成⻑率を1.7%にそれぞれ引き下げており、経済の勢いが依然弱いことを⽰しています。消費者⼼理や企業調査などの信頼感指数は8⽉以降低下傾向にあり、8⽉以降の株式市場の急落も、外国⼈による売りとあいまって、市場関係者の信頼感を損なう要因になったと考えられます。
 今後の成⻑率とインフレ指標をもとに11⽉の利上げを決定するFRBのように、景気がどの程度減速するのか、⾼インフレ率がどの程度継続するのかを予測することではなく、指標の動向を⾒極めて検討し、投資を⾏うことが投資家のあるべき姿であると当ファンドでは考えています。

2023年9月の運用コメント

株式市場の状況

 当⽉、KOSPI(韓国総合株価指数、韓国ウォンベース)は前⽉末⽐3.57%下落しました。FRB(⽶連邦準備制度理事会)による追加の⾦融引き締めを懸念する声が広がり、投資意欲が低下したことが主な要因と考えます。経済の先⾏きに対する憶測、原油価格の⾼騰に起因するインフレ懸念の⾼まり、それに伴う⾦融政策への警戒感から、債券市場も株式市場も継続的に軟化しました。
 保険セクターや銀⾏セクターは、⾼⾦利環境下における業績改善と配当の⾼さが追い⾵となり、株価が堅調に推移しました。電気通信や公益事業といった景気の影響を受けにくいセクターも⽐較的堅調でした。⼀⽅、化学セクターは需要の鈍化が原因で低迷し、インターネットやヘルスケアなどのセクターも、バリュエーションを⾒直す動きが広がったことで株価が下落しました。

ファンドの運用状況

 当⽉、当ファンドは前⽉末⽐7.69%下落しました。⼀⽅、KOSPI(韓国ウォンベース)をもとに当社が円換算した「KOSPI(韓国総合株価指数、⽇本円ベース、参照レートはロンドン時間午後4時のWMロイターレート)」は、同3.18%下落しました。
 当⽉は、CJ CheilJedang(⾷品・飲料・タバコ)、Tokai Carbon Korea(半導体・半導体製造装置)、KCTECH(半導体・半導体製造装置)などがパフォーマンスに貢献した⼀⽅で、ISC(半導体・半導体製造装置)、CS Wind(資本財)、RAY(ヘルスケア機器・サービス)などがマイナスに影響しました。組⼊上位銘柄に⼤きな変更はありませんでした。

銘柄紹介

 当⽉は、当ファンド組⼊銘柄の「Hansol Chemical(素材)」についてご紹介します。
 同社は1980年に設⽴された化学品会社で、半導体やディスプレイ⽤のファインケミカル(化学製品のうち、加⼯度の⾼い多品種・少量⽣産で付加価値の⾼いもの)を製造しています。
 同社は半導体メモリを⼿がける顧客の減産によって収益が減少していますが、その影響は2023年の後半にはピークを過ぎる⾒通しです。主要顧客のうちSamsung Electronics社(韓国)とSK hynix(半導体・半導体製造装置)は、過剰在庫の調整や需要低迷を理由に国内外の半導体⼯場の稼働率を⼤幅に引き下げています。同社の半導体部⾨の収益も2022年第2四半期以降減少傾向を⽰していますが、2023年後半以降は半導体メモリ業界の回復が⾒込まれるため、同社の業績はこれまでの落ち込みを脱し、徐々に回復する⾒通しです。
 同社の短期的な収益低下とメモリ減産による株価の調整は予想以上に⼤きく、⻑期に亘ると思われています。しかし短期的な収益低下の多くは、前述の⽣産量減少に起因するものであることに注意する必要があります。したがって、「メモリ市場の好転とSamsung Electronics社のファウンドリー事業の拡⼤」に伴い、再拡⼤が⾒込まれると考えております。営業利益率は売上⾼の減少によって低下しましたが、それでも17%前後を維持しており、⼀貫して利益を⽣み出している企業であることがわかります。株価の下落によって同社の⻑期的バリュエーションの割安感も⾼まっていることから、当ファンドは今後の業績好転を期待し、同社の組⼊⽐率の拡⼤を検討しています。

今後の見通し

 当⽉はFOMC(⽶連邦公開市場委員会)が開かれ、政策⾦利は市場の予想通り据え置かれましたが、2024年末の予測政策⾦利の中央値は6⽉時点の4.6%から5.1%に上⽅修正されました。これは今後の利下げペースが予想を下回る可能性を⽰すものであることから、市場に失望が広がりました。⼀⽅、ECB(欧州中央銀⾏)は政策⾦利を0.25ポイント引き上げて4.5%としましたが、⼀部メンバーがこれに異論を唱えたこともあり、追加利上げの可能性は低下したと考えます。⽶国では11⽉に利上げが実施される可能性が残っていますが、イングランド銀⾏が⾦利を据え置くという予想外の決定を⾏ったこと、⽇銀が⾦融緩和政策の継続を決めたことなどから、世界各国が他国の⾦融政策の⾏⽅を慎重に⾒定めようという姿勢をとっていることがうかがわれます。
 韓国国内の経済については、先⾏指数の反発と同時に⼀致指数が低下したことで、景気がこれから上向くのか減速するのかの判断が難しくなっています。8⽉の貿易収⽀は、⾃動⾞と機械の輸出が好調で、半導体輸出の減少幅も縮⼩したため、⾚字幅が7⽉の16.4%から8.4%に縮⼩しました。しかし主要輸出相⼿国の景気が低迷しているため、楽観はできません。⾼⾦利環境下にもかかわらず、家計債務、とりわけ住宅ローンが5ヵ⽉連続で増加していることも、⾦融当局が慎重な姿勢をとる要因となっています。
 今後の成⻑率とインフレ指標をもとに11⽉の利上げを決定するFRBのように、景気がどの程度減速するのか、⾼インフレ率がどの程度継続するのかを予測することではなく、指標の動向を⾒極めて検討し、投資を⾏うことが投資家のあるべき姿であると当ファンドでは考えています。

2023年8月の運用コメント

株式市場の状況

 当⽉、KOSPI(韓国総合株価指数、韓国ウォンベース)は前月末比2.90%下落しました。中国の不動産危機をきっかけに景気減速の懸念が広がったことや、米国債の利回りをめぐる問題でマクロ経済の先行きが見通せなくなったことが要因と考えられます。
 中国の前月の輸出(米ドル建て)は前年同月比14.5%、輸入は同12.4%、それぞれ減少しました。貿易統計、鉱工業生産、小売売上高、固定資産投資はいずれも市場予想と前月実績を大幅に下回りました。さらに物価上昇が落ち着いたことや、中国の大手不動産開発会社によるドル建て債の利払いが滞ったことから、デフレへの懸念が高まっています。世界第2位の経済大国である中国がこうした状況に陥ったことで、月内を通じて世界中の投資家心理が冷え込みました。
 そのため株式市場の勢いが落ち込み、投資家は市場の牽引役を明確に見定めようと、様々なテーマや業種で投機取引を行っている模様です。一方で、中国が韓国への団体旅行を全面的に許可したことを受けて、韓国の化粧品や、ホテル、レジャーサービス、小売関連銘柄の株価が上昇しました。化学セクターは大きく下落しましたが、これは充電池の売上不振と中国経済への懸念の高まりによるものと考えられます。その他、鉄鋼セクター、エネルギーセクター、IT家電セクターもパフォーマンスが振るいませんでした。

ファンドの運用状況

 当月、当ファンドは前月末比7.47%下落しました。一方、KOSPI(韓国ウォンベース)をもとに当社が円換算した「KOSPI(韓国総合株価指数、日本円ベース、参照レートはロンドン時間午後4時のWMロイターレート)」は、同4.05%下落しました。
 当月は、Douzone Bizon(ソフトウェア・サービス)、CJ Cheiljedang(食品・飲料・タバコ)、T&R Biofab(ヘルスケア機器・サービス)などがパフォーマンスに貢献した一方で、RAY(ヘルスケア機器・サービス)、JYP Entertainment(メディア・娯楽)、Park Systems(テクノロジー・ハードウェアおよび機器)などがマイナスに影響しました。組入上位銘柄に大きな変更はありませんでした。

銘柄紹介

 当⽉は、当ファンド組⼊銘柄の「RAY」についてご紹介します。
 同社は歯科用機器とソリューションを開発するデジタルデンティストリー(Digital Dentistry)企業です。「デジタルデンティストリー」とは歯科業界のデジタル変革や、歯科治療プロセスのデジタル化を指します。デジタルデンティストリーは、主として1)口腔内スキャナーやCBCT(ConeBeam CT、断層撮影による歯や顔面骨の画像取得)を通じた医療用画像データの取得、2)取得した画像データを使用してCAD(computer-aided design、コンピューターによる設計支援ツール)というソフトウェアで行う様々な歯冠修復用品の設計、3)補綴(ほてつ)用のミリングマシンや3Dプリンターを使用した歯科修復物の製造、という3つの段階に分けて行われます。
 同社の2023年第2四半期決算によると、売上高は前年同期比約26%増の394億ウォン、営業損益は前四半期比プラスに転じています。売上高、営業利益とも当社予想を下回りましたが、これは北米における新規ディーラーへの切り替えや、部品供給が滞るなかでの欧州向け高級製品出荷の遅延などが影響したものと考えられます。
 いまだ部品供給の問題が続いており年内に全面解決が実現する見込みは低いことや、子会社のCEOの交代により日本事業が一時的に混乱していることを踏まえると、2023年第3四半期の業績は市場予想を下回るというのが当ファンドの見方です。とはいえ、2023年第4四半期には米国市場で強力なポジションを確立している北米の新規ディーラーとのシナジー効果と日本事業の正常化が後押しする形で、同社の収益は過去最高に達するのではと予想しています。
 同社のデジタルデンティストリーソリューションは、画像機器からソフトウェア、3Dプリンター、ミリングマシンまで、歯科治療プロセス全体を対象としています。同社の強みは、顧客の具体的ニーズに基づいたオーダーメイド製品の販売によって、歯科医院と歯科技工所の両方のニーズに対応できる点にあります。つまり、特定の商品のみを必要とする歯科医院や歯科技工所に対して、商品単体の販売も可能にしつつ、ソリューションのパッケージ販売することもできるということです。
 また、同社は「RAYFace」というフェイシャルスキャナーの発売を控えており、これにより2023年以降デジタルデンティストリーにおける同社の能力はさらに強化されると考えております。

今後の見通し

 前年のジャクソンホール会議でFRB(⽶連邦準備制度理事会)のパウエル議長が利上げを肯定する趣旨の講演を行って以降、金融市場で利上げの継続と株価下落に対する警戒感が高まりました。しかし講演の方向性はFRBの従来のスタンスから大きく外れていたわけではなく、少し時間が経つと、世界の金融市場には株価の反発や金利の低下といった安定化の兆しが現れました。一方、今後利上げが行われる確率は高まっていると考えられ、追加利上げに対する警戒感は当面続く模様です。
 米国が利上げに踏み切るならば、韓国も利上げの可能性を完全に排除することは難しいかもしれません。しかし韓国の家計債務が増加していることや、韓国銀行が2024年の経済成長見通しを下方修正したことを鑑みると、その可能性はそれほど高くないと当ファンドは考えています。

2023年7月の運用コメント

株式市場の状況

 当⽉、KOSPI(韓国総合株価指数、韓国ウォンベース)は前⽉末⽐2.66%上昇しました。6月の消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったこと、急激なウォン高が進んだことで、KOSPIは2,600ポイント台を回復しました。ただし、月後半にかけて市場のボラティリティは大幅に拡大しました。EV(電気自動車)用電池セクターに投資が集中したことで急騰する銘柄が出た一方で、大量の売りが出て急落する銘柄もあるなど、EV用電池を除く多くのセクターがアンダーパフォームとなりました。
 韓国のGDP成長率は、2022年第3四半期から第4四半期にかけて低下した後、2023年第1四半期と第2四半期はそれぞれ0.3%、0.6%と、2期連続で上昇しました。しかし、この上昇は輸入の減少により貿易収支を純増させ、貿易黒字を牽引する不況型成長であることから、今後を楽観視するのは時期尚早と考えます。

ファンドの運用状況

 当月、当ファンドは前月末比6.08%上昇しました。一方、KOSPI(韓国ウォンベース)をもとに当社が円換算した「KOSPI(韓国総合株価指数、日本円ベース、参照レートはロンドン時間午後4時のWMロイターレート)」は、同4.32%上昇しました。
 当月は、ISC(半導体・半導体製造装置)、Leeno Industrial(半導体・半導体製造装置)、SK hynix(半導体・半導体製造装置)などがパフォーマンスにプラスに貢献した一方で、CS Wind(資本財)、HYBE(メディア・娯楽)、Hansol Chemical(素材)などがマイナスに影響しました。組入上位銘柄に大きな変更はありませんでした。
 世界の半導体セクター(特にAI(人工知能)関連)に対する投資家心理は、NVIDIA社(米国)の2023年第1四半期決算発表を受けて明らかに好転しました。他企業が同社に先立って発表した年内の見通しはやや控えめだったため、投資家はAIに対する需要の実態と関連銘柄の株価上昇余地を懐疑的に見ていました。しかしNVIDIA社の予測は、クラウドサービスや企業向けデータサーバーなど、景気低迷期に投資を控えた企業からの「AI投資」需要が堅調であることを示すものでした。
 世界最大級の半導体メーカーであるSK hynixが2023年第2四半期決算を発表し、DRAM(揮発性の半導体記憶装置(半導体メモリ)の一種)の平均販売価格と販売数量が前四半期比で増加したことが明らかになりました。この価格上昇は新製品による先行者利益をもたらし、同社の業績に大いに貢献しました。画像処理半導体(GPU)メーカーや中国のスマートフォン・メーカーは、先端半導体の供給確保を急いでいます。また、需要全般はまだそれほど多くありませんが、AI関連の需要は堅調です。SK hynixの2023年第2四半期の平均販売価格はSamsung Electronic社(韓国)を上回った模様です。SK hynixが販売数量目標を達成できなかったとしても、平均販売価格の改善は売上高全体にプラスに寄与すると考えます。
 同社は赤字拡大を理由に、NAND(不揮発性の半導体メモリの一種)生産の削減計画を発表しました。ウエハー投入量は既に削減されていますが、最終的には50%程度に達するというのが当ファンドの見方です。日本の半導体メーカーであるキオクシア社は、2022年10月から30%の減産に踏み切りました。
 半導体メーカーにとって、需要の伸びと競争力は長期的にみるときわめて重要な要素ですが、コスト削減と問題解決に着手する時機は今をおいて他にないと考えます。半導体メーカー各社が巨額の損失を計上するなか、投資家はどのような対策がとられるかを注視していく必要があるでしょう。

今後の見通し

 全般的に見て、各国の経済状況に対する評価は前月からそれほど変化していません。ただし米国に関しては、今後の経済情勢に関して相反した見解が出ています。政策金利が2001年以来の高水準である5.5%まで引き上げられたことで、経済の負担が増大し、消費の足枷となる見通しです。一方、ミシガン大学消費者信頼感指数が7月に2021年9月以来の高水準となり、米国の民間調査機関であるコンファレンス・ボードが発表した米消費者信頼感指数も大幅な改善を示して、景気に対する楽観的な見方が裏付けられました。6月に発表された非農業部門雇用者数は市場予想を若干下回ったものの、週間失業保険申請件数が減少したことは、労働市場が引き続き堅調であることを示しています。また、IMF(国際通貨基金)は米国の経済成長率見通しを0.2ポイント上方修正して1.8%に引き上げ、米国経済が予想以上に上昇軌道に乗っていることを示しました。FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長やイエレン財務長官も、米国が景気後退に陥る可能性はそれほど高くないと述べています。
 一方、欧州と中国はいずれも、引き続き経済的苦境に立たされています。ユーロ圏の製造業PMI(購買担当者景気指数)は前月の43.4から42.7に低下、サービス業PMIも前月の52.0から50.9に低下し、景気の減速が鮮明となりました。ドイツの調査会社Sentix社が算出しているユーロ圏投資家信頼感指数もマイナス22.5、ドイツの欧州経済研究センターが発表したZEW景況指数もマイナス14.7と悪化しており、ユーロ圏経済に対する懸念が高まっています。景気減速にもかかわらず、欧州中央銀行がインフレ抑制策を続けていることが欧州経済に負担を強いています。中国の場合、第2四半期(4月~6月)の経済成長率が予想以下の6.3%にとどまり、小売売上高と固定資産投資はいずれも前月比で減少して、景気の低迷が数字となって表れました。中国政府の景気減速食い止めを狙った刺激策に対する期待感も高まっています。
 当ファンドはビジネスモデルに耐久性があり、バランスシートが健全な優良銘柄を選好しています。世界の経済と市場に影響をおよぼす要因は多数存在し、現状は全く予測不可能で不安定な状況ではありますが、当ファンドは収益モメンタムが堅調で、競争⼒の⾼いビジネスモデルを有すると判断した企業を、引き続きポートフォリオに組み⼊れてまいります。

2023年6月の運用コメント

株式市場の状況

 当月、KOSPI(韓国総合株価指数、韓国ウォンベース)は前⽉末⽐0.50%下落しました。月前半に米労働統計局が発表した非農業部門雇用者数と消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率が予想以上に良好な数字だったことから、市場では金融緩和に対する期待感が高まりました。5月の非農業部門雇用者数は前月比33万9千人の増加と市場予想の19万人増を上回り、CPIは昨年6月の前年同月比9.1%上昇から低下を続け、当年5月は同4.0%上昇とかなり落ち着きを見せました。さらに、米議会が債務上限の引き上げに合意しなければ大混乱が生じかねない状況でしたが、幸いにも合意に至ったことから、投資家心理が改善しました。経済指標は改善しましたが、FRB(米国連邦準備制度理事会)の金融政策の方向性は依然として世界の金融市場に影響を及ぼしています。FOMC(米国連邦公開市場委員会)は当月に政策金利を据え置きましたが、7月の追加利上げの可能性が高まりました。
 韓国の5月の輸出は前年比15.2%減と依然低迷していますが、半導体輸出の減少幅が縮小し、日次平均輸出額も回復していることから、市場では底打ちに対する期待感が高まっています。ただし、世界の製造業PMI(購買担当者景気指数)の低迷と中国経済の減速懸念が引き続き経済成長の足枷となっています。

ファンドの運用状況

 当月、当ファンドは前月末比9.38%上昇しました。一方、KOSPI(韓国ウォンベース)をもとに当社が円換算した「KOSPI(韓国総合株価指数、日本円ベース、参照レートはロンドン時間午後4時のWMロイターレート)」は、同3.68%上昇しました。
 当月は、Park Systems(テクノロジー・ハードウェアおよび機器)、Youngone(耐久消費財・アパレル)、SK hynix(半導体・半導体製造装置)などがパフォーマンスにプラスに貢献した⼀⽅で、CJ CheilJedang(食品、タバコ、飲料)、NAVER(メディア・娯楽)、Harim Holdings(食品、タバコ、飲料)などがマイナスに影響しました。組入上位銘柄に大きな変更はありませんでした。

銘柄紹介

 当⽉は、当ファンド組⼊銘柄の「Youngone」について、特に労働権の観点から同社のESG評価に関してコメントいたします。同社は主にアウトドアウェアの製造を行うほか、海外アウトドア・スポーツブランドの製品をOEM(Original Equipment Manufacturer、メーカーが自社ではないブランドの製品を製造すること)の形で生産しています。
 同社のバングラデシュにおける労働争議や途上国における縫製産業の問題を鑑みると、同社のESGには大いに改善の余地があると考えています。
 同社のバングラデシュ工場の労働環境は、2010年12月のストライキによって初めて明らかになりました。同社は、争議の引き金になったのは工場労働者が賃金体系の修正を「誤解」したことだと反論しました。2019年にも、Lululemon社(カナダ)の工場で労働者に対する低賃金での労働強要、言葉や身体的暴力による虐待が行われているという指摘がありました。同社とLululemon社はこれを受けて調査を実施し、3種類の防止措置を導入しました。具体的に述べると、労働者が独自に問題を通報できるホットラインの設置、現行の管理システムと管理方針の徹底的な見直し、工場労働者に対する包括的な教育プログラムという内容です。
 バングラデシュの工場における労働環境や雰囲気を完全に理解することはほぼ不可能ですが、同社と同社の顧客ブランドがその後実施した取り組みや対策について、当ファンドは肯定的に受け止めています。この問題に関しては同社に構造的な追い風が吹いていると考えています。同社の主要顧客であるVFC社(米国)(THE NORTH FACE 、VANS、Supremeなど)、Lululemon、Engelbert Strauss、Patagoniaなどは、消費行動に多大な影響をおよぼすESGに関する問題を重視するグローバルブランドです。
 当ファンドは労働条件の重要性を十分に認識し、状況を注視しながら、この問題に関して同社と継続的に意見交換を行う予定です。

今後の見通し

 急速な利上げによって景気後退に陥る危険性があるのではないかという議論がいまだに続いています。雇用統計が予想を上回り、ミシガン大学とコンファレンスボードの消費者信頼感指数が前月比で大幅に改善したことで、景気後退に対する懸念は多少和らぎましたが、ISMの製造業景況指数とサービス業景況指数は依然低水準にあり、小売売上高と鉱工業生産指数も伸びが鈍化しているため、米国経済の先行きに対する解釈はまちまちです。
 前述の通り、6月のFOMCでは政策金利が据え置かれましたが、ドットチャートを通じて追加利上げが示唆されました。パウエル議長やFRB理事の利上げ擁護派的な発言を受けて、市場は7月末に予定されているFOMCでの政策金利引き上げを高い確率で織り込んでいます。さらに追加利上げの確率に関する見直しも進んでいます。カナダ銀行が1月以降据え置きを続けてきた政策金利を当月に入って突如引き上げたのに続き、オーストラリア準備銀行(中央銀行)も4月に据え置いていた政策金利を5月、6月と連続で引き上げました。英国をはじめ、市場の予想を上回る大幅な利上げを強行し、さらなる利上げ姿勢を強く打ち出してきた国では、金融政策に関わる負担が大幅に拡大しています。
 当ファンドはビジネスモデルに耐久性があり、バランスシートが健全な優良銘柄を選好しています。世界の経済と市場に影響をおよぼす要因は多数存在し、現状は全く予測不可能で⼀瞬先さえ⾒えない状況ではありますが、当ファンドは収益モメンタムが堅調で、競争⼒の⾼いビジネスモデルを有すると判断した企業を、引き続きポートフォリオに組み⼊れてまいります。

2023年5月の運用コメント

株式市場の状況

 当月、KOSPI(韓国総合株価指数、韓国ウォンベース)は前月末比3.02%上昇しました。月前半は米国の債務上限問題や追加利上げ、韓国の輸出不振に対する懸念から、市場が低迷しました。また中国の経済指標が予想を下回ったことで、景気回復の遅れに対する懸念が市場に広がりました。月半ば以降はFRB(米国連邦準備制度理事会)が利上げ停止の可能性を示唆し、債務上限引き上げ交渉の決着に対する期待から、韓国ウォンの対米ドル相場が上昇しました。また、外国人投資家が半導体セクターを中心に買い越しに転じたことが、韓国株式市場の上昇要因となりました。
 韓国の輸出は依然低迷しています。2023年4月の輸出総額は前年同月(約578億米ドル)比で14.2%減少し、約496米億ドルとなりました。2023年に入って貿易は改善傾向にありますが、貿易収支は14ヵ月連続で赤字を記録し、4月も約26億米ドルの赤字となっています。

ファンドの運用状況

 当月、当ファンドは前月末比14.10%上昇しました。一方、KOSPI(韓国ウォンベース)をもとに当社が円換算した「KOSPI(韓国総合株価指数、日本円ベース、参照レートはロンドン時間午後4時のWMロイターレート)」は、同6.60%上昇しました。
 当月は、JYP Entertainment(メディア・娯楽)、SK hynix(半導体・半導体製造装置)、ISC(半導体・半導体製造装置)、RAY(ヘルスケア機器・サービス)などがパフォーマンスにプラスに貢献した一方で、MITECH(ヘルスケア機器・サービス)、Harim Holdings(⾷品・飲料・タバコ)がマイナスに影響しました。組入上位銘柄に大きな変更はありませんでした。

銘柄紹介

 当⽉は、当ファンド組⼊銘柄の「SK hynix」と、半導体市場の見通しについてご紹介します。
 SK hynixの2023年第2四半期のDRAM(揮発性の半導体メモリの一種)販売量は、DDR5メモリの需要が堅調であることや、在庫の減少による需要があることから市場予想を上回る見通しです。4月下旬にはIntel社(米国)が、PCの在庫は正常化し始めていて回復の兆しが見られるが、クラウドとエンタープライズ向けチップの需要は依然軟調であると発表しました。半導体メモリメーカーは2023年の需要見通しを引き下げ、減産に踏み切りました(あるいは減産を拡大しました)。
 景気が回復し始めたと考えるのは時期尚早ではあるものの、当月に入って明るい兆しがいくつか見え始めました。明るい兆しの一つは、SK hynixの2023年第2四半期以降のDRAM販売数量予想に見られます。同社は2023年第1四半期の決算説明会で、DRAMの販売数量は第1四半期に前四半期比で大きく減少したものの、第2四半期には同10%以上増加する見込みであると述べました。半導体は価格を引き下げても販売が不調でしたが、この問題はどうやら解消しつつあるようです。消費と企業投資は当面回復しない可能性がありますが、顧客在庫の枯渇が需要の増加につながっています。もちろん、こうした明るい兆しがすべての半導体メーカーに現れているわけではありませんが、はっきりしていることは在庫が減少している、ということです。例えば、同業他社に先駆けて減産に踏み切った半導体メーカーのキオクシア㈱は在庫を大きく減少させています。半導体の売上高、ハイパースケーラー(100万台以上の大規模なサーバーリソースを保有する企業)の投資額、米国の大手IT企業群の売上高成長率は、いずれも前年同期比で底打ちに近い状態だと考えます。韓国の4月の半導体輸出は前年同月比で約41%減少しました。また、売上の中心がメモリ半導体であるSK hynixの2023年第1四半期売上高は前年同期比58%減少しました。今後明るい兆しが増えれば、同社の半導体売上高は2023年第3四半期以降、前年同期比で急増することが期待できると考えます。

今後の見通し

 株式市場においては、シリコンバレー銀行(米国)の破綻で変動幅が拡大したことを除けば、リスク要因に対する警戒感は和らいでいるように思われます。
 しかしそうした状況の中でも、さまざまな要因が積み重なっていることも見逃せません。例えば総需要の抑制を通じてインフレ率を目標水準まで低下させようと金融引き締め政策が実施されていますが、高金利の環境が実体経済への影響を遅らせています。また、米国の地方銀行破綻による信用供給の減少が引き金となり、本格的な景気後退を引き起こすことが懸念されています。銀行は流動性資金の確保に走って貸出が縮小し、それによる貸出額の減少自体が景気循環の足かせとなりかねません。そして何よりも、景気回復に対する信頼感が不十分であることを認識しておく必要があります。米国の消費需要は減速しており、中国の回復も依然として予想を下回っています。
 当ファンドはビジネスモデルに耐久性があり、バランスシートが健全な優良銘柄を選好しています。世界の経済と市場に影響をおよぼす要因は多数存在し、現状は全く予測不可能で⼀瞬先さえ⾒えない状況ではありますが、当ファンドは収益モメンタムが堅調で、競争⼒の⾼いビジネスモデルを有すると判断した企業を、引き続きポートフォリオに組み⼊れてまいります。

2023年4月の運用コメント

株式市場の状況

 当⽉、KOSPI(韓国総合株価指数、韓国ウォンベース)は前⽉末⽐1.0%上昇しました。当月のKOSPIは上昇して始まりましたが、月前半に発表された米国の経済指標が低調で景気後退に対する懸念が広がり、投資家心理が冷え込んだため、KOSPIの上昇スピードは鈍化しました。月後半にかけては利下げや景気回復に対する期待が弱まったことから軟調に推移し、月前半とさほど変わらない水準で月を終えました。

ファンドの運用状況

 当月、当ファンドは前月末比1.95%下落しました。一方、KOSPI(韓国ウォンベース)をもとに当社が円換算した「KOSPI(韓国総合株価指数、日本円ベース、参照レートはロンドン時間午後4時のWMロイターレート)」は、同0.51%上昇しました。
 当月は、HYBE(メディア・娯楽)、JYP Entertainment(メディア・娯楽)、Kyung Dong Navien(資本財)などがパフォーマンスにプラスに貢献した一方で、MiCo(半導体・半導体製造装置)、Harim Holdings(⾷品・飲料・タバコ)、Leeno Industrial(半導体・半導体製造装置)などがマイナスに影響しました。組入上位銘柄に大きな変更はありませんでした。

銘柄紹介

 当⽉は、当ファンド組入銘柄の「JYP Entertainment」についてご紹介します。
 同社は2022年第4四半期の決算が好調で、収益と株価がいずれも安定した上昇傾向を示しました。同社所属ボーイズグループStray Kidsの7枚目のミニアルバムは累計販売枚数が300万を超え、また所属ガールズグループITZYのアルバム売上も2作連続で100万枚を超えました。ワールドツアーのコンサートや商品の売上増加を背景に、同社のアルバム売上高は前年と比べて増加しています。
 同社は、好調なアルバム売上とワールドツアーの成功がStray Kidsの人気の高さを証明するなど、多様なアーティストとその盤石なファン基盤から、年内は安定的な成長が続く見通しです。3月に発売された所属ガールズグループTWICEの12枚目のミニアルバムは予約件数が170万件を超え、所属ガールズグループNMIXXのデビュー後初のミニアルバムの売上も60万枚以上と順調です。2022年6月には同社の子会社であるJYP Three Sixty社(韓国)が、独自のオンラインショッピングモール「JYP Shop」を開設しました。今後も所属アーティストのファン層拡大と子会社の好調な業績を背景に、同社の売上拡大基調がますます顕著になる見通しです。また同社は本年の夏以降、新グループを4組デビューさせる予定で、それが同社の新たな成長の牽引役となると当ファンドは考えています。

今後の見通し

 4月の経済指標から、経済活動は逆風が強まる中でも順調に回復していることが明らかになりました。短期的な景気後退リスクは低下した模様ですが、米国の金融機関の経営破綻が相次いだことで、経済の先行きを楽観視する声は薄れました。経済指標が改善したとはいえ、景気後退リスクに直面している中ではポートフォリオの分散化が不可欠であると当ファンドは考えます。
 当ファンドはビジネスモデルに耐久性があり、バランスシートが健全な優良銘柄を選好しています。世界の経済と市場に影響をおよぼす要因は多数存在し、現状は全く予測不可能で⼀瞬先さえ⾒えない状況ではありますが、当ファンドは収益モメンタムが堅調で、競争⼒の⾼いビジネスモデルを有すると判断した企業を、引き続きポートフォリオに組み⼊れてまいります。

2023年3月の運用コメント

株式市場の状況

 当⽉、KOSPI(韓国総合株価指数、韓国ウォンベース)は前⽉末⽐2.65%上昇しました。シリコンバレー銀行(米国)の破綻とクレディ・スイス・グループ(スイス)の流動性危機がシステミック・リスク(個別の金融機関の支払い不能や一部市場の決済取引システム等の機能不全が他の金融機関や他の市場に連鎖し、金融システム全体が機能不全に陥るリスクのこと)に発展するのではないかという懸念が高まったことから、銀行株が下落しました。しかし、FRB(米国連邦準備制度理事会)とFDIC(米国連邦預金保険公社)が預金を全額保護すると発表したこと、緊急融資枠(バンク・ターム・ファンディング・プログラム(BTFP))を通じた支援措置が講じられたことで、金融システム全体への混乱の波及懸念が沈静化したことに加え、利上げ打ち止め期待を背景に下落分を取り戻して3月を終えました。当月は電気自動車(EV)関連銘柄の株価が力強い上昇を示し、シクリカル銘柄(景気敏感株)がアウトパフォームしました。

ファンドの運用状況

 当月、当ファンドは前月末比5.33%上昇しました。一方、KOSPI(韓国ウォンベース)をもとに当社が円換算した「KOSPI(韓国総合株価指数、日本円ベース、参照レートはロンドン時間午後4時のWMロイターレート)」は、同1.95%上昇しました。
 当月は、MiCo(半導体・半導体製造装置)、Harim Holdings(⾷品、タバコ、飲料)、CS Wind(資本財)などがパフォーマンスにプラスに貢献した一方で、Leeno Industrial(半導体・半導体製造装置)、SK hynix(半導体・半導体製造装置)、Kyung Dong Navien(資本財)などがマイナスに影響しました。組入上位銘柄に大きな変更はありませんでした。

注目のテーマ

 当⽉は、当ファンドが注目する半導体業界の動向についてご紹介します。
 米国の第34代大統領アイゼンハワーは1958年、軍事技術の開発と保護を目的に国防高等研究計画局(DARPA)の設立を命じました。これは前年に人工衛星「スプートニク1号」を打ち上げた旧ソビエト連邦に対抗するためでした。同局は「国家安全保障に不可欠な画期的技術に投資する」という使命に従い、幅広い分野に投資を行って技術発展を促進してきました。対象分野は人工知能(AI)、宇宙、サイバーセキュリティ、製薬など多岐に渡ります。その間に技術は多様化し大いに進展しましたが、同局の予算は2003年から2016年まで低水準に留まりました。しかし2017年から風向きが変わり、近年は予算が急速に拡大しています。また興味深いことに、同局の支出リストには「半導体パッケージ」という項目もあります。この項目がリストに入ったのは、米国と中国との間で貿易摩擦が発生した時期であり、脱グローバル化は再び将来的成長への投資の鍵を握るテーマとなったものと考えられます。
 同局の2023年度予算の支出リストに目を通したところ、全項目の中で特に予算が拡大しているのが「半導体パッケージ関連技術(3DHI)」でした。これは「産業の発展を通じて技術的優位性を獲得する」ことで、中国との覇権争いに勝てると米国政府が考えているものと思われます。総合的にみると、米国はメモリ以外のバックエンド(配線工程)分野の発展を目指しているといえるでしょう。台湾や韓国の半導体大手企業の長期投資計画は、米国のこの方向性と足並みを揃える形になっています。例えばTaiwan Semiconductor Manufacturing Company社(台湾)は、業界最先端のパッケージング技術を結集する「OIP 3D Fabric Alliance」の立ち上げを発表しています。またSamsung Electronics社(韓国)の李在鎔(イ・ジェヨン)会長は半導体と関連事業部門の強化を目的とする一連の投資計画を発表しましたが、同社のロボティクス分野への投資は2023年第1四半期における注目の投資案件となっています。そのため半導体業界、特に同社の主力事業であるバックエンド分野は有力な投資候補になると考えています。当ファンドはさらに、同バリューチェーン内の関連銘柄にも注目していく予定です。

今後の見通し

 金利が上昇したことから、金融システムにひずみが発生していることを示す兆候がますます多くなっています。その影響は実体経済でも顕著になると当ファンドは考えております。株式市場の低迷が始まってから早くも1年が経とうとしています。しかし金利上昇の影響が世界中で実感できるようになってきていることから、さらなる問題発生に備えなければなりません。
 当ファンドはビジネスモデルに耐久性があり、バランスシートが健全な優良銘柄を選好しています。世界の経済と市場に影響をおよぼす要因は多数存在し、現状は全く予測不可能で一瞬先さえ見えない状況ではありますが、当ファンドは収益モメンタムが堅調で、競争力の高いビジネスモデルを有すると判断した企業を、引き続きポートフォリオに組み入れてまいります。

2023年2月の運用コメント

株式市場の状況

 当⽉、KOSPI(韓国総合株価指数、韓国ウォンベース)は、前⽉末⽐0.50%下落しました。市場ではインフレとディスインフレ、景気後退とソフトランディング、金融引き締めと緩和についての議論が絶えず巻き起こる中、株価はほぼ横ばいで推移しました。市場に大きな動きは見られませんでしたが、韓国ではコーポレートガバナンスに関して興味深い出来事がいくつかありました。Activist Insightsによると、2022年第1四半期の韓国における株主アクティビズムの対象企業数は33社で、2019年比313%増加しました。特に目を引いたのがSM Entertainment社、KT&G社、銀行の事例です。これは始まりに過ぎないと当ファンドは考えています。韓国における株主還元政策はこれまで低水準に留まっていましたが、上述した劇的な変化は韓国の株主還元の改善に伴う興味深い収益機会をもたらすでしょう。

ファンドの運用状況

 当月、当ファンドは前月末比4.53%下落しました。一方、KOSPI(韓国ウォンベース)をもとに当社が円換算した「KOSPI(韓国総合株価指数、日本円ベース、参照レートはロンドン時間午後4時のWMロイターレート)」は、同2.99%下落しました。
 当月は、Harim Holdings(食品、タバコ、飲料)、Park Systems(テクノロジー・ハードウェアおよび機器)、JYP Entertainment(メディア・娯楽)などがパフォーマンスにプラスに貢献した一方で、CJ CheilJedang(食品、タバコ、飲料)、Suheung(ヘルスケア機器・サービス)、Leeno Industrials(半導体・半導体製造装置)などがマイナスに影響しました。組入上位銘柄に大きな変更はありませんでした。

 当月、HYBE(メディア・娯楽)によるSM Entertainment社の買収の発表がありました。
 SM Entertainment社(以下、「SM」)の経営権紛争は、韓国のエンターテインメント業界に大きな影響を与えるでしょう。SMの現行経営陣はKakao社と提携し、SM創設者で筆頭株主である前総合プロデューサーの李秀満(イ・スマン)氏を排除しました。李秀満氏が自身の保有株を韓国最大のK-POP企業であるHYBEに譲渡したため、巨大なK-POP企業が誕生しました。
 2月9日、HYBEは筆頭株主であり、チーフプロデューサー兼創設者である李秀満氏が保有するSMの普通株式14.8%分を取得することで合意しました。またHYBEは、SM株式の公開買い付けを発表し、同社株を1株あたり12万ウォンでの取得することを目指しています。
 SMをめぐるアクティビズムはファンや業界関係者の間で繰り返されているテーマであり、主に創設者兼筆頭株主に関連する、経営慣行、財務上の取引、意思決定プロセスの透明性の欠如を批判してきました。SMはアクティビストファンドや投資家からの要求に応え、音楽制作およびコンサートのプロダクションに関して創設者の個人所有企業との契約を終了し、李秀満氏を中心とした意思決定構造を水平化する計画を発表しました。これは、経営陣がガバナンスの改善や、株主に寄り添った利益還元方針にこれまで以上に前向きかつ真摯に取り組むことが可能となる注目すべき出来事です。

今後の見通し

 ガバナンスの問題はより一般化しており、韓国企業にこれまで以上に頻繁に脅威を与えるようになっています。韓国企業は主要株主を支援し、少数株主を軽視するあらゆる種類の策略をとることで知られていますが、こうした状況が改善しているのは好材料です。公的な株主アクティビズムの事例が増加しており、政府は少数株主を保護する規制を繰り返し導入してきました。文在寅(ムン・ジェイン)氏が率いた前政権では、家族経営の「子会社」へのトンネリングや内部取引が厳格に監視され、管理されました。韓国政府は先日、スプリットオフ(特定の事業や部門を切り離して独立した新会社の株式と親会社の株式を交換した後に親会社が減資をする会社分割)をより困難にする法律を可決しました。LG Chem社やLG Energy Solution社の事例のように、企業が事業会社に関する計画や上場を発表すると、持株会社の株価は大幅に下落します。最近では、企業は持株会社の少数株主に、事業会社の株式を購入するオプションを付与することが義務付けられています。ただし、政府が状況に対応するのと同様に、韓国企業も進化します。企業は常に、新たな抜け道を見つけ出します。当ファンドは、今後もダイナミクスの変化を常に注視し、そうしたガバナンスリスクが当ファンドにとってリスクとなる場合は、積極的かつ大胆に行動していきます。

2023年1月の運用コメント

株式市場の状況

 当月、KOSPI(韓国総合株価指数、韓国ウォンベース)は、前⽉末⽐8.44%上昇しました。インフレの進⾏が鈍化したことを受け、FRB(⽶国連邦準備制度理事会)が政策を⽅向転換する可能性が出てきたのではないかという期待が⾼まりました。韓国株式市場は「ドクターKOSPI」とも呼ばれ、世界のマクロ環境の先行指標とされています。中国経済再開への期待と不動産規制の緩和、先進国の景気回復期待を受けて、韓国株式は大きく反発しました。中でも銀行セクター、半導体セクター、情報技術セクター、ハードウェアセクターが堅調に推移しました。企業の決算発表は期待外れに終わりましたが、半導体業界の景況の早期改善と増配に対する期待が市場を牽引しました。

ファンドの運用状況

 当月、当ファンドは前月末比8.29%上昇しました。一方、KOSPI(韓国ウォンベース)をもとに当社が円換算した「KOSPI(韓国総合株価指数、日本円ベース、参照レートはロンドン時間午後4時のWMロイターレート)」は、同9.71%上昇しました。
 当月は、SK hynix(半導体・半導体製造装置)、JoyCity(メディア・娯楽)、Samsung Electronics(テクノロジー・ハードウェアおよび機器)、MiCo(半導体・半導体製造装置)などがパフォーマンスに貢献した⼀⽅で、CS Wind(資本財)、CJ Cheiljedang Corporation(食品・飲料・タバコ)、DOUZONE BIZON(ソフトウェア・サービス)、Youngone(耐久消費財・アパレル)などがマイナスに影響しました。組入上位銘柄に大きな変更はありませんでした。

注目のテーマ

 半導体の需要は引き続き低調です。IT需要が落ち込み、データセンターへの投資が減少しているため、半導体企業の収益が悪化しました。2022年第4四半期の半導体価格下落は予想以上だった模様で、1月末以降に予定されているSamsung ElectronicsとSK hynixの決算発表でその影響が確認できるでしょう。1月6日に発表されたSamsung Electronicsの2022年第4四半期暫定決算によると、同社のメモリ半導体部門は若干ながら営業損失に転落した模様です。半導体事業の収益低下は当ファンドの予想以上に急速で、行き過ぎた値下げが利益を押し下げたと考えられます。とはいえ、両社は在庫の増加を戦略的に管理しています(両社にはこれまで過剰在庫の取り扱いに関する明確な方針がありませんでした)。メモリ部門が赤字に転落する可能性を考慮すると、Samsung Electronicsは2023年度の生産能力拡張計画の規模を縮小する可能性が高まったと当ファンドは考えます。
 注目すべきは、同社の2023年度会社計画が、テクノロジーノード(製造技術の世代)で競合先を突き放す戦略から主導権を維持する戦略に変化したことです。そうした投資のペースが鈍れば、業界全体の生産ビット成長の鈍化につながる可能性があると考えます。

今後の見通し

 何を好材料と捉えるかが変化し始めていると考えています。世界金融市場の最近の動向を見ると、市場関係者は小さな変化に過剰に反応しています。FRBが利上げのペースを緩めただけで、利下げ幅は2023年下期に0.50%、2024年第1四半期に0.75%という予想が出回り、中国がゼロコロナ政策を緩和しただけで需要、消費、経済の回復に対する期待が高まっています。同じことが韓国国内でも起こっています。決算発表の内容が悪かったことで業界の回復が予想より早まるという憶測が流れ、企業経営者が一言発しただけで配当方針の大転換に対する期待が高まりました。規制緩和によって市場関係者の事業環境や業績改善に関する見方が楽観的になったことも、これに一役買っているようです。しかし過剰な期待は禁物です。FRBの最優先目標がインフレ抑制であることに変わりはありません。中国経済の再開とFRBの政策転換によって、インフレ率が再び急上昇する可能性があります。鉄鉱石、石炭、銅、鉄鋼といった主要なコモディティの価格は中国経済の再開をにらんで上昇基調にあります。
 世界的なマクロ経済の動向は依然不透明です。エネルギーと食品の価格上昇によって貧富の格差が拡大し、低所得国のデフォルトにつながる危険性があります。当ファンドは、インフレ圧⼒、サプライチェーン危機、消費⽀出の減少といった状況を注視しながらポートフォリオを調整し、そうした問題の影響を受けにくく、インフレ圧⼒を価格に転嫁できると判断した企業を、引き続きポートフォリオに組み⼊れてまいります。

2022年12月の運用コメント

株式市場の状況

 当⽉、KOSPI(韓国総合株価指数、韓国ウォンベース)は、前⽉末⽐9.55%下落しました。インフレの進行が鈍化したことを受け、FRB(米国連邦準備制度理事会)が政策を方向転換する可能性が出てきたのではないかという期待が高まりました。しかしFRBは最優先目標がインフレの抑制にあること、政策金利の引き上げはその達成に向けた措置であることを改めて強調しました。
 金融緩和政策に転換して金利を低水準にとどめればインフレが止まらず、現状の金融引き締め策を維持すれば高金利による景気後退という副作用があることから、FRBの立場はかなり微妙です。まさにそうした理由から、FRBは振り子のような姿勢を続け、物価変動の幅を一定にとどめるものと考えられます。
 金利以外では、中国政府がゼロコロナ政策を転換したため、経済再開の恩恵を見越して、韓国の化粧品、基礎化学品、中国の不動産関連銘柄などの株価が上昇しました。中国経済の再開が韓国の一部企業にとって有利に働くことは確かですが、韓国化粧品企業のブランド力低下、化学品サプライチェーンにおける過剰供給、中国不動産の景気循環など、一部業界には構造的な問題があるため、企業のファンダメンタルズの強さをしっかりと見極めることが重要であると考えます。

ファンドの運用状況

 当月、当ファンドは前月末比6.10%下落しました。一方、KOSPI(韓国ウォンベース)をもとに当社が円換算した「KOSPI(韓国総合株価指数、日本円ベース、参照レートはロンドン時間午後4時のWMロイターレート)」は、同10.80%下落しました。
 当月は、JYP Entertainment(メディア・娯楽)、HYBE(メディア・娯楽)、Suheung(ヘルスケア機器・サービス)などがパフォーマンスに貢献した一方で、SK Hynix(半導体・半導体製造装置)、MiCo(半導体・半導体製造装置)、CS Wind(資本財)などがパフォーマンスにマイナスに影響しました。組入上位銘柄に大きな変更はありませんでした。

銘柄紹介

 当⽉は、当ファンド組⼊銘柄の「M.I.Tech(ヘルスケア機器・サービス)」についてご紹介します。
 同社は医療機器の開発と販売を手がける企業で、独自の非血管ステントとその他製品に特化しています。規模こそ小さいものの、韓国国内で高い市場シェアを誇っています。また、世界でも主要なプレーヤーで、米国ではオリンパス㈱のグループ会社、日本ではボストン・サイエンティフィック ジャパン㈱と提携しています。同社が開発した追従性の高い非血管用自己拡張型メタルステント製品群である「HANAROSTENT」は、日本では2016年からボストン・サイエンティフィック ジャパン㈱が販売し、市場シェアは34%で首位に立っています。
 胃腸ステントと呼ばれるチューブ型の医療機器は安全で効果的な内視鏡処置を行うために使用されており、医療上のさまざまな処置の代替技術として利用することもできます。胃腸ステントの市場は、胃や消化器官のがんを患う高齢者の増加や、アジアや南米などの途上国において胃腸ステントの価格が徐々に安定してきたことによって拡大傾向にあります。
 中国を中心とするアジア市場における地位向上を目指しているBoston Scientific社(米国)が2億3,000万米ドル(約300億円)を出資してM.I.Techの株式を約64%取得することに同意していることから、同社はアジアで売上成長をさらに加速することが期待されます。また、欧米でも今後発売が予定されている新しい生分解性ステントを通じて売上を伸ばすことが期待されます。

今後の見通し

 2022年は世界の株式市場が大きく下落し、低調なパフォーマンスに終わりました。その原因は、FRBが金融引き締めに移行したことに加え、地政学的リスクと原材料価格の高騰に由来するサプライチェーン関連の懸念が株式市場の下方圧力として機能したことにあると考えます。2023年に入り、FRBによる強力な金融引き締め政策の影響が目に見える形で現れ、景気後退に対する危機感が広がっています。
 ただし、2023年は景気悪化のリスクは高いものの、株価には既に相当程度織り込まれていると思われます。先行きは不透明ですが、市場間でバリュエーションに大きな不均衡があることから、投資のリターンに関しては、現状では下振れ余地より上振れ余地の方が大きいと考えられます。
 株式市場の先行き不透明感は解消していませんが、当ファンドの役割はマクロ経済が不確実な時期でもファンダメンタルズが強い企業を探し出すことにあります。
 当ファンドは激動の時代にあってもROE(株主資本利益率)が安定的で⾼⽔準な企業、さらにファンダメンタルズが健全な企業を探し出すことによって、ポートフォリオの最適化とパフォーマンスの最⼤化を図ってまいります。

主な投資リスク、費用等

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