ニッポン解剖 ~日本再興へのメカニズム~ Vol.10「2024年のびっくり3大予想」 | レポート | スパークス・アセット・マネジメント

スペシャルレポート ニッポン解剖 ~日本再興へのメカニズム~ Vol.10「2024年のびっくり3大予想」

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 米投資会社ブラックストーンのバイロン・ウィーン氏が2023年10月に逝去されましたが、1986年から毎年公表していた「びっくり10大予想」は年初の風物詩として注目を集めていました。バイロン・ウィーン氏は、「びっくり予想」を「平均的なプロ投資家は3分の1程度の確率しか見込んでいないものの、私たちは50%以上の確率で発生すると信じているイベント」と定義しています(2023年のびっくり10大予想 - Private Wealth Solutions APAC (blackstone.com)。日経平均株価がバブル崩壊後の高値を更新している裏側には、日本の変化を機敏に感じ取る海外投資家の存在がありますが、日本株が世界中の投資家から関心を集める中で、さらに関心が集まる条件について、筆者の「2024年のびっくり3大予想」として考えたいと思います。

びっくり予想1「賃上げが議決権行使基準の主要テーマに」

 日本企業全体のROE(株主資本利益率)は長期の時間軸では改善傾向にあります。一方で、その主要なドライバーである利益率改善の要因を分解してみると、人件費や研究開発費、設備投資などの長期的な成長に必要な領域に対して、十分に資金を回さずに利益を捻出してきたことが分かります。必要な投資を抑制したROEの改善は持続的ではないと言えます。積極的な成長投資を継続させることによる長期目線でのROEの改善が、競争力が失われたと言われて久しい日本にとって必要なことだと思います。昨今、日本企業において賃上げの機運が高まりつつあります。賃金の上昇は、個人消費の拡大やそれによる企業業績の改善、ひいては株価上昇に寄与するとも考えられますので、株主が株主総会で決議への賛否を表明する議決権行使の基準において、賃上げが主要なテーマになる可能性はあるのではないでしょうか。

びっくり予想2「新規の親子上場が禁止に」

 親子上場とは、親会社と子会社の両社がともに株式上場している状態をいいます。従来、親子上場については様々な弊害が指摘されています。2007年6月に東京証券取引所(以下、東証)は、親子上場を一律的に禁止するのは適当ではない反面、投資者をはじめ多くの市場関係者にとっては必ずしも望ましい資本政策とは言い切れない旨を表明し、親会社を有する上場会社に対し、株主の権利や利益への一層の配慮、投資者をはじめとする市場関係者に対する積極的なアカウンタビリティ(経営者が株主・投資家に対して企業の状況や財務内容を報告する責任)の遂行を求めています。そして今般、2023年12月に東証は、親子関係や持分法適用関係にある上場会社に対して、少数株主保護やグループ経営に関して情報開示を充実するように求めました。株式市場においても、親子上場解消への注目が集まっています。親子上場により少数株主の利益が損なわれる恐れがあり、新規の親子上場へのハードルは高まっていく可能性があると思います。

びっくり予想3「日本の上場会社数が減少」

 昨今、「MBO」という言葉を各種メディアで目にする機会が増えたように感じます。MBOは「マネジメント・バイアウト(Management Buyout)」の略称で、企業の経営陣が既存の株主から自社の株式を買い取ることで経営権を取得することをいい、株式の非公開化(上場廃止)をするための手段として活用されることがあります。東証による「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請を皮切りに、上場企業は上場を維持する意義について考え直す時期にきていると思います。上場維持の意義が薄れた会社が、上場廃止に踏み切り、その数が新規上場(IPO)数を上回ることで、日本の上場会社数が減少する可能性もあると思います。真に資本市場と向き合う企業のみで株式市場が構成される未来が来ることを期待しています。

 以上、筆者の考える2024年のびっくり3大予想でした。当たるか当たらないかは分かりませんが、日本の株式市場が世界中の投資家から関心を集める中で、日本企業に対して大きな期待が向けられています。ぜひ、このびっくり予想が少しでも当たって日本がより良い方向に変化していくことを願ってやみません。

スパークス・アセット・マネジメント株式会社
チーフ・アナリスト 川部 正隆


当レポートは執筆者の見解が含まれている場合があり、スパークス・アセット・マネジメント株式会社の見解と異なることがあります。

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