ニッポン解剖 ~日本再興へのメカニズム~ Vol.12「⽇本がベストオプションになるために」 | レポート | スパークス・アセット・マネジメント

スペシャルレポート ニッポン解剖 ~日本再興へのメカニズム~ Vol.12「⽇本がベストオプションになるために」

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 ⽇経平均株価の最⾼値更新が意識(本稿を記載している時点では更新していない)される中で、先般、北米でグローバルな機関投資家やファミリーオフィス(※超富裕層の家族の資産を運用する投資会社)に対して、⽇本株の魅⼒についてお伝えする機会を得ましたので、今回はその生の声を考察と共にご紹介します。
 "Tell me a bullish story. I think Japan is the best option post China era." (「強気の話をして欲しい。中国が選択肢から外れる中で、⽇本がベストオプションだと思っている」)
 複数の投資家から、⽇本企業の変化やポジティブな意⾒について聞きたいという発⾔がありました。2023年7月にもシンガポールで、複数の海外投資家と⽇本株投資について議論する機会がありましたが、当時の⽇本企業の変化や⽇本株への投資妙味についての懐疑的な⾒⽅が多かった状況からは、大きく変化しているように感じます。当時は、"Japanese equity valuation is very attractive. But..." (「⽇本株のバリュエーションはとても魅⼒的だ。しかし・・・」)という発⾔が目⽴ち、⽇本企業の資本収益性の改善に懸念を感じているようでした。これに対して、今回の北米訪問では、東京証券取引所(以下、「東証」)による「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応の要請」は、とても⽇本的な要請であり興味深いといった意⾒や、地政学リスクや経済動向等から中国へのエクスポージャー(投資⽐率)を減らす中で、⽇本を選択肢として本格的に考えているので、背中を押すようなストーリーが欲しいといった旨の発⾔が頻繁になされました。大きな変化です。

 一⽅で、⽇本企業は本当に大きく変化してきているのでしょうか。私は、企業の変化には個社毎に濃淡があり、今後海外投資家からの資⾦流⼊が拡大した際に格差が広がっていくと考えています。東証は1月15⽇に、上述の要請に対応した企業の実名⼊りのリストの公表を開始し、2月15⽇には2回目の公表を⾏いました。リストは毎月更新される予定となっています。このリストに載っていない企業に対して、対応を促す効果があると考えられており、東証プライム市場への上場企業のうち、前回公表時の開示企業数が660社だったのに対して、今回の公表では726社となり、開示企業数は増加しています。開示企業数がこれからも増えていくことを期待していますが、今後は開示内容の充実とその着実な実⾏が焦点になってくると思います。実際に、リスト上では「開示済」となっている企業のIRページを確認すると、既存の計画を焼き直ししているだけのものが散⾒され、開示内容の「質」には濃淡があります。また、株式市場には、将来の企業業績に対する期待感から買われる「理想買い」と、好業績の発表など現実となった材料を元に買われる「現実買い」という⾔葉があります。ここまでの上昇が東証の要請に対する期待感が影響しているとすると、今後も上昇していくためには、各企業の開示内容が着実に実⾏され具体的な成果として確認される「現実買い」に移⾏していく必要があると思います。冒頭でご紹介したように、海外投資家の資⾦が本格的に⽇本に流⼊してくるのはこれからかもしれません。その際に、しっかりとその資⾦を受け取ることができるのは、資本コストや株価を意識した経営を本質的に⾏っている企業になると思います。これから多くの⽇本企業が、付け焼き刃の対応ではなく、本質的に変化していくことを期待しています。

スパークス・アセット・マネジメント株式会社
チーフ・アナリスト 川部 正隆


当レポートは執筆者の見解が含まれている場合があり、スパークス・アセット・マネジメント株式会社の見解と異なることがあります。

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