スペシャルレポート ニッポン解剖~日本再興へのメカニズム~「長期投資とは何か - 『長期』は目的ではなく結果である」
投資家の「長期投資」や企業の「長期的な成長」は、資本市場でよく語られるテーマです。筆者の考える「長期投資」とは、単に株式を長く保有すること自体を目的とした投資ではありません。より高い企業価値の成長とそれに伴うリターンが期待できるからこそ、結果として保有期間が長くなるのであり、「長く持つこと」そのものが目的ではないと考えています(詳細は、Vol.55「長期投資とは何か - 長く持つこと自体が目的ではない」(https://www.sparx.co.jp/report/detail/2719.html)をご参照ください)。今回は視点を企業側に移し、企業の「長期的な成長」について考えてみたいと思います。なお、長期投資や長期的な成長についてはさまざまな考え方があり、本稿は筆者個人の見解であることをご承知おきください。
企業には本来、社会に対して果たすべき使命や存在意義、いわゆる「パーパス」があります。創業時の夢や志を実現するために企業が存在するのであれば、本来そこに「長期」や「短期」といった時間軸の区別はないはずです。もちろん、その高い目標や大きな志を早く実現できるのであれば、それに越したことはありません。しかし、社会に大きな価値をもたらすような高い目標やパーパスを実現するためには、研究開発や設備投資、人材育成への投資に加え、多くの試行錯誤が必要になります。その結果として、経営の時間軸が長くなるのであり、それこそが企業の長期的な成長の本質ではないでしょうか。
企業と株式市場との対話では、「長期的な成長」という言葉が頻繁に使われます。しかし、時としてそれが便利な説明として用いられているように感じることも少なくありません。例えば、投資家から足元の収益性や資本効率の低さについて指摘された際に、「当社は短期ではなく長期を見ている」と説明されることがあります。しかし、単に「長期を見ている」と語るだけでは十分ではありません。そこに具体的な成長戦略や資金配分の考え方が示されなければ、資本効率の低迷を正当化する「免罪符」として受け取られてしまう恐れがあります。
また、「戦略を語るのではなく結果で示したい」という、いわゆる不言実行の姿勢をとる企業も散見されます。結果を出すことは経営者として極めて重要ですが、株式市場との対話においては、将来どのような価値を創造していくのか、その道筋を示すことも同じくらい重要です。成長戦略が十分に伝わらなければ、市場参加者は月次の業績や短期的な変化に注目せざるを得ません。その結果、株価も短期的な材料に左右されやすくなり、本来の企業価値が十分に評価されない可能性があります。
投資家の「長期投資」が長く保有すること自体を目的としないのと同様に、企業の「長期的な成長」も時間をかけること自体が目的ではありません。企業の目標が壮大であればあるほど、その実現には結果として長い時間を要することがあります。しかし、それはあくまでも結果であり、目的ではないと考えています。企業が株式市場に対して語るべきなのは「長期で成長します」という時間軸ではなく、「何を実現したいのか」「どのように価値を創造していくのか」という中身そのものです。市場は時間軸も考慮しますが、評価するのは時間の長さではありません。真に評価されるのは、価値創造の中身だと考えます。
スパークス・アセット・マネジメント株式会社
ファンドマネージャー 川部 正隆
当レポートは執筆者の見解が含まれている場合があり、スパークス・アセット・マネジメント株式会社の見解と異なることがあります。