スペシャルレポート ニッポン解剖~日本再興へのメカニズム~「This time is different のその後」
日本株が上昇傾向にある背景には、日本の変化を機敏に感じ取る海外投資家の存在があります。海外投資家による日本株の買い越しは、2025年に続き、2026年1-6月期も継続しています。日本株上昇のけん引役は半導体関連など一部の業種に偏っている面もありますが、日本企業の資本効率に対する意識の高まりを期待した海外投資家の評価の変化も、株価上昇に寄与していると考えています。
筆者は先日、イタリア、イギリス、フランスを訪問し、現地の機関投資家と日本株について意見交換を行う機会を得ました。そこでは、日本のコーポレートガバナンス改革の進捗、中国との競争環境、AI(人工知能)・半導体関連の動向などに関する質問が多く寄せられました。なかでも日本のコーポレートガバナンス改革への関心は高く、2023年から東京証券取引所(以下、「東証」)が要請している「資本コストや株価を意識した経営」については、その趣旨が既に浸透し始めている印象を受けました。議論の中心は要請そのものの説明ではなく、各企業が実際にどのような取り組みや変革を進めているかに移っており、日本企業の変革に対する海外投資家の期待の大きさがうかがえました。
東証が公表した「2025年度株式分布状況調査」によると、日本株における海外投資家の保有比率は約35%まで上昇し、調査開始以来最高水準になりました。一方で、事業法人等の保有比率は約18%まで低下し、過去最低水準となっています。この背景には、自己株式取得の拡大に加え、持ち合い解消が進展したことがあると考えられます。持ち合いの解消は「物言わぬ安定株主」の減少を意味し、企業経営に一定の緊張感をもたらします。経営者がいわゆる「平穏な生活("Quiet Life")」を志向し、必要なリスクを取っていない場合には、成長投資や株主還元の強化など、株主から資本効率の改善を求める声が高まる可能性があります。
筆者は、東証による「資本コストや株価を意識した経営」の要請から約1年後の2024年2月に、「This time is different(※ニッポン解剖~日本再興へのメカニズム~ Vol.11(https://www.sparx.co.jp/report/detail/1320.html)」という表題で本連載を執筆しました。株式市場では、その時々でさまざまな投資テーマがあり、そのテーマが長続きすると期待されると、「This time is different(今回は違う)」と言われるようになります。そしてそのテーマが一時的なブームに過ぎなかったとき、株価はそれまでの上昇分を失い、元の水準(場合によってはそれ以下)に戻ることがあります。当時、海外投資家は日本企業の変化に対して半信半疑だったため、「本当に"This time is different"なのか」という見方を皮肉交じりに示していたように思います。
しかし、その後2年余りが経過した現在、海外投資家の見方には明らかな変化が生じています。関心の対象は、日本全体の変化の有無を見極める段階から、その変化の恩恵を享受できる企業を選別する段階へと移りつつあるように感じます。実際、日本企業では政策保有株式の売却や事業ポートフォリオの見直し、株主還元の強化など、資本効率を意識した経営が広がっています。経営陣が株価や資本コストを以前にも増して意識するようになったことは、もはや疑いはないように思います。もっとも、こうした変化を一過性のものに終わらせてはなりません。持続的な取り組みによって期待を実績へと変え、日本企業の収益力や資本効率の向上につなげていくことが重要です。そうした成果が着実に積み重なれば、日本株に対する再評価の流れは一時的なものではなく、より長期的な潮流へと発展していくものと考えています。
スパークス・アセット・マネジメント株式会社
ファンドマネージャー 川部 正隆
※ニッポン解剖~日本再興へのメカニズム~ Vol.11は以下のサイト
https://www.sparx.co.jp/report/detail/1320.htmlでご覧いただけます。
当レポートは執筆者の見解が含まれている場合があり、スパークス・アセット・マネジメント株式会社の見解と異なることがあります。