ニッポン解剖~日本再興へのメカニズム~「バランスシート改革の次章:事業・商品ポートフォリオの見直し」 | レポート | スパークス・アセット・マネジメント

スペシャルレポート ニッポン解剖~日本再興へのメカニズム~「バランスシート改革の次章:事業・商品ポートフォリオの見直し」

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 本稿では、日本企業のバランスシート改革の重要性についてこれまで繰り返し述べてきました。現在、改訂作業が進められているコーポレートガバナンス・コードにおいても、企業が保有する現預金等の有効活用について検証を求める項目が盛り込まれる見込みとなっています。筆者は、議論が進んでいる現預金等の有効活用から、さらに一歩踏み込んで、事業ポートフォリオや商品ポートフォリオの改革についても目を向ける必要があると考えています。今回のニッポン解剖では、現預金にとどまらない経営資源配分について考察します。

 コーポレートガバナンス・コードは5年ぶりの改訂に向けて議論が進んでいます。企業におけるリスクの回避・抑制や不祥事の防止といった「守りのガバナンス」だけでなく、企業の「稼ぐ力」の向上に向けた「攻めのガバナンス」の重要性が注目されています。今回の改訂では、「現預金等の金融資産や実物資産等の経営資源を成長投資等に有効活用できているかを含め、不断に検証を行うべきである」との文言が記載される見込みです。日本企業の保有する現預金が、2010年度には約190兆円だったものが、2024年度には350兆円超まで拡大してきており、いかに有効な再投資先を見出し、次の成長投資に繋げられるかが重要な課題であると認識しています。各種報道ではこの現預金の活用に注目が集まっていますが、筆者は、「事業ポートフォリオの見直し等の経営資源の配分等に関し具体的に何を実行するのかについて説明を行うべきである」という記載に注目しています。事業ポートフォリオの見直しについては、現行のコーポレートガバナンス・コードにも記載されているものの、その重要性に比して議論は十分に深まってこなかった印象があります。今回の改訂が、現預金の使い道にとどまらず、事業そのもののあり方を改めて問い直す契機となることを期待しています。

 企業が高い収益性を誇る事業を持つ一方で、役割を終えた事業やそもそも花開かなかった事業をそのまま保有し続けている結果として、全社ベースの収益性が低水準にとどまるケースが見受けられます。また、事業間のシナジーやリスクが見えにくいことで、株式市場から十分な評価を得られず、いわゆるコングロマリット・ディスカウント(事業を多角化した複合企業の価値が、事業単体の価値の合計よりも低くなってしまう状態)に陥っている場合もあります。このような事業ポートフォリオ上の課題について、「重要だが緊急ではない」ものとして対応が先送りされてきたケースが多いように感じています

 また、商品ポートフォリオについても、事業ポートフォリオと同様に見直しの余地があるケースが少なくありません。過去の取り組みを積み重ねる中で商品ラインアップが広がり、その結果、全体として総花的な構成となっている企業も見受けられます。重点プロダクトを確認すると、多くの商品が重要な位置付けとされており、経営資源の配分に明確な優先順位を付けることが難しくなっている場合もあります。一方、グローバルな競合企業の中には、成長性や競争優位性が見込まれる商品を絞り込み、重点的に投資することで、商品ごとの競争力を高めている例も見られます。こうした違いは、個別商品を比較する中で徐々に顕在化してくる可能性があり、商品ポートフォリオについても中長期的な視点での継続的な見直しが重要だと考えています

 今回のコーポレートガバナンス・コード改訂が、単なる現預金等の有効活用にとどまらず、事業や商品のあり方を含めた経営資源配分全体を問い直す契機となることが期待されます。限られた経営資源を有効に活用することが、日本企業の中長期的な競争力向上につながると考えています。

スパークス・アセット・マネジメント株式会社
ファンドマネージャー 川部 正隆

当レポートは執筆者の見解が含まれている場合があり、スパークス・アセット・マネジメント株式会社の見解と異なることがあります。

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