スパークス・企業価値創造日本株ファンド
- 日経新聞掲載名
- 企業価値創造
- 分類
- 追加型投信/国内/株式
- 設定日
- 決算日
- 毎年5月14日
基準日:2023.12.01
- 基準価額
- 10,777円
- 前日比
-
+32円
+0.3% - 純資産総額
- 922.0億円
- 分配金情報(税引前)
- 発表年
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2023年10月の運用コメント
株式市場の状況
2023年10⽉、⽇本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前⽉末⽐2.99%の下落となりました。
当⽉の⽇本株式市場は、⽉前半は堅調な⽶雇⽤統計を受けての⽶⻑期⾦利の変動や、中東情勢の緊迫化などを受け乱⾼下の展開となりました。⽉後半に⼊ると、中国の景気刺激策が好感される場⾯があったものの、⽇銀の政策再修正への思惑や⽶テクノロジー企業の低調な決算への失望が株式市場の重しとなり、最終的に前⽉末を下回る⽔準で⽉を終えました。
ファンドの運用状況
2023年10⽉、当ファンドのパフォーマンスは前⽉末⽐2.57%の下落となりました。
当⽉、当ファンドの保有上位銘柄でパフォーマンスにプラスに寄与した企業は、MARUWAなどでした。⼀⽅、マイナスに影響した企業は、三菱重⼯業などでした。
MARUWAは、当⽉後半に発表された2024年3⽉期第2四半期決算で、前年同期⽐減収減益の着地となったものの、先⾏きに対して楽観的な⾒通しが⽰されたことが好感され、株価は上昇したものと思われます。三菱重⼯業は、⽶国製航空機エンジンの品質問題を受けて、業績影響に対する不透明感が強まり、株価の下⽅圧⼒となったものと思われます。
当ファンドでは、企業経営者が誠実であり、⾼い競争優位性を有する企業の中から、更なる成⻑余地のある潜在価値の⾼い企業に⻑期集中投資を⾏い、企業との対話を通じて価値の顕在化を図ることを基本戦略とします。
⽇本には、⾼い技術⼒・開発⼒を持ち、ニッチ市場でグローバルに⾼いシェアやブランド⼒を持つ企業が多く存在します。そうした企業の中には、基礎的な収益⼒が⾼く、中⻑期的な成⻑余地が⼤きいにも関わらず、「⽟に瑕(きず)」があるために株式市場で実態価値を正当に評価されていない企業があります。
当ファンドでは、そのような企業の⻑期的なパートナー株主※として、良好な関係を築きながら粘り強く対話を⾏っています。企業の事業戦略や資本配分、IR体制などの改善を促すことで、企業の実態価値の顕在化に努め、株価上昇のカタリスト(きっかけ)の⼀つとなることを⽬指します。
当レポートでは、投資先企業に対する投資⾒解や対話の進捗などをご報告させて頂きます。
当⽉は、当ファンドの投資先である「全国保証」に対する投資⾒解、対話内容をご紹介します。
全国保証は、国内唯⼀の独⽴系住宅ローン保証会社です。住宅ローン保証事業とは、住宅ローンの借⼊⼈から保証料等をもらう代わりに、連帯保証⼈となる事業を⾔います。住宅ローンの借⼊⼈が返済を出来なくなった場合、保証会社である同社が⾦融機関に住宅ローンを弁済し、⾦融機関に代わって借⼊⼈から住宅ローンを回収する、もしくは住宅ローンの担保物件(住宅・⼟地等)を売却して弁済資⾦を回収する事業モデルです。住宅ローン保証は⾦融機関の⼦会社保証会社が提供するのが⼀般的ですが、同社は⾦融機関に属さない国内唯⼀の独⽴系企業であり、全国のどの⾦融機関の住宅ローン保証でも引き受けが可能です。また、40年以上のローン審査のデータの蓄積を活かし、延滞リスクの低い顧客に保証を⾏うため、代位弁済に関わるコストは限定的であり、営業利益率が約8割に上る⾮常に収益性の⾼いビジネスとなっています。
同社は1981年に厚⽣年⾦転貸住宅融資の保証業務を担う⽬的で設⽴されましたが、業容転換のために1997年から⺠間⾦融機関向け住宅ローンの保証業務に参⼊します。当時、⼤⼿⾦融機関は⼦会社の保証会社のみを使っていたため、全国保証は、信⾦・信組など、中堅・中⼩⾦融機関への保証業務に注⼒し成⻑してきました。中堅・中⼩⾦融機関への保証業務の提供を通じて、同社は与信能⼒や審査時間の短縮化などサービス品質を磨き上げて来ました。今⽇では、同社はその強みを活かし、メガバンクを含む多数の⾦融機関に住宅ローン保証を提供しています。
同社の保証債務残⾼は1998年の1兆円から2023年3⽉末には15.9兆円まで増加しています。特にリーマンショック以降⼤きく増⼤し、⺠間住宅ローン残⾼に占める同社シェアも2023年3⽉末で8.3%まで上昇してきました。その背景には、同社のサービス品質の⾼さに加えて、銀⾏に対するリスク規制強化に伴い、住宅ローン保証リスクを銀⾏グループから隔離したいニーズの⾼まりがあります。
当ファンドでは、同社の業績拡⼤が持続すると考えています。前述の理由から、銀⾏⼦会社によるローン保証から、独⽴系の同社へのシフトが続くことが想定されます。加えて、銀⾏の保証⼦会社の買収や、他社の保証債務の引き受けなどを通じ、残⾼シェアを上げていくことができると思われます。当ファンドでは特に保証⼦会社の買収に注⽬しています。2023年には主要先進国では⻑期⾦利が上昇し、⾦融機関は利ざやを稼ぎやすい環境になりつつあります。⼀⽅、⽇本では依然として⾦融緩和状態が続いていることに加え、銀⾏間の住宅ローンの貸出競争も激しいままです。このような環境では、銀⾏の住宅ローン実⾏によるリターンに対し、⼦会社の住宅ローン保証のリスクをとる合理性は少なくなっていると思われます。こうした背景から銀⾏が同社に保証⼦会社を売却する動きに当ファンドは注⽬しています。
また、同社の株価は、企業の実態価値を反映できていないと思われます。課題は主に2点あり、①事業の安全性に対する理解を株式市場から⼗分に得られていないこと、②成⻑投資や株主還元といった資本政策に⼤きな改善余地があること、であると当ファンドでは考えています。これらの課題についてスパークスはこれまで⻘⽊社⻑と何度も⾯談を実施し、議論を重ねてきました。2023年3⽉に発表された新中期経営計画では、「住宅ローンプラットフォーマー」としてリスクを抑えながら更なる事業成⻑が可能なことや、成⻑投資・株主還元などに余剰資本を積極活⽤していく⽅針が⽰されました。当ファンドでは引き続き、同社の企業価値が株式市場で顕在化する⼀助となれるよう、経営陣との対話を継続していく⽅針です。
今後の運用方針
当ファンドでは潜在価値の⾼い企業に選別して集中投資を⾏い、⻑期的なリターンを追求しています。潜在価値の⾼い企業とは、スパークスの投資アプローチである3つの着眼点(経営者の質・企業収益の質・市場の成⻑性)に照らし、企業の実態価値や成⻑性が株式市場で⼗分に評価されていないと考えられる企業を指します。
⽇本には強固な事業基盤を有していながら、事業戦略や資本配分、株式市場への向き合い⽅に改善余地があることから株価が実態価値よりも低く評価されている企業が数多く存在します。当ファンドはパートナー株主として、投資先企業との中⻑期的な関係構築と丁寧な対話に努め、課題の改善を促すことで、企業価値の顕在化を積極的に後押しします。
※当ファンドは企業オーナーとして短期業績や株価変動に惑わされない⻑期保有を前提としています。投資先企業と共に企業価値向上を⽬指すとの考えから、短期的に株式を売買する投資家と区別する為、「パートナー株主」との⽂⾔を使⽤しています。
2023年9月の運用コメント
株式市場の状況
2023年9⽉、⽇本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前⽉末⽐0.51%の上昇となりました。
当⽉の⽇本株式市場は、⽉前半は中国製造業購買担当者景気指数(PMI)の改善により中国の景気後退不安が⼀時的に後退したほか、国内では早期衆院解散・総選挙への期待感が⾼まったことを受け、上昇基調となりました。⼀⽅⽉後半は、FOMC(⽶連邦公開市場委員会)で⾦融引き締めの⻑期化が⽰唆されたことや、⽶議会の予算協議が難航し政府機関閉鎖への警戒感が⾼まったことから、市場⼼理が悪化し値を戻す展開となり、最終的に前⽉末を若⼲上回る⽔準で⽉を終えました。
ファンドの運用状況
2023年9⽉、当ファンドのパフォーマンスは前⽉末⽐2.32%の下落となりました。
当⽉、当ファンドの保有上位銘柄でパフォーマンスにプラスに寄与した企業は、パイロットコーポレーションなどでした。⼀⽅、マイナスに影響した企業は、MARUWAなどでした。パイロットコーポレーションは、外部環境の不透明感が強い中でも、主要市場である⽇本と⽶州では底堅い業績を⽰しており、堅調な需要継続が期待されたことが好感されたものと思われます。MARUWAは、半導体やEV(電気⾃動⾞)などテクノロジー関連の需要回復に時間を要するとの懸念が市場全体に広がり、株価の調整に繋がったと思われます。
当ファンドでは、企業経営者が誠実であり、⾼い競争優位性を有する企業の中から、更なる成⻑余地のある潜在価値の⾼い企業に⻑期集中投資を⾏い、企業との対話を通じて価値の顕在化を図ることを基本戦略とします。
⽇本には、⾼い技術⼒・開発⼒を持ち、ニッチ市場でグローバルに⾼いシェアやブランド⼒を持つ企業が多く存在します。そうした企業の中には、基礎的な収益⼒が⾼く、中⻑期的な成⻑余地が⼤きいにも関わらず、「⽟に瑕(きず)」があるために株式市場で実態価値を正当に評価されていない企業があります。
当ファンドでは、そのような企業の⻑期的なパートナー株主※として、良好な関係を築きながら粘り強く対話を⾏っています。企業の事業戦略や資本配分、IR体制などの改善を促すことで、企業の実態価値の顕在化に努め、株価上昇のカタリスト(きっかけ)の⼀つとなることを⽬指します。
当レポートでは、投資先企業に対する投資⾒解や対話の進捗などをご報告させて頂きます。
当⽉は、当ファンドの投資先である「三菱重⼯業」に対する投資⾒解、対話内容をご紹介します。
前⽉は、同社の成⻑戦略であるエネルギーの供給と需要の両⾯のグリーン転換「エナジートランジション戦略」の具体例として、エネルギー供給の脱炭素化を推進するエナジー事業についてご紹介させて頂きました。当⽉は、エネルギーの需要側である社会インフラの脱炭素化を牽引する、物流・冷熱・ドライブシステム事業についてご説明します。
三菱重⼯業の物流・冷熱・ドライブシステム事業は、主にフォークリフトなどの物流機器、冷熱製品、エンジン・ターボチャージャから構成されています。この事業セグメントは、ガスタービンのような受注⽣産品と⽐較して、製品の出荷数量が多いことから中量産品事業とも呼ばれます。フォークリフト事業は、ニチユ三菱フォークリフト㈱とユニキャリア㈱が統合して発⾜した三菱ロジスネクスト㈱が運営しており、eコマース(電⼦商取引)市場拡⼤による物流機器の需要増⼤の恩恵を受けて成⻑してきました。冷熱機器は冷凍冷蔵倉庫や⼤型空調機器などの業務⽤冷熱機器が、エンジン・ターボチャージャは⾮常⽤発電装置とガソリン⾞向けの⾞両⽤過給機が、それぞれ主⼒製品になっています。ターボチャージャは⾃動⾞の電動化による市場縮⼩が予想されますが、冷熱機器はデータセンター向けという新市場を開拓することで、成⻑機会を捉えることが出来ています。eコマース物流、コールドチェーン(⽣産・輸送・消費の過程で途切れることなく低温に保つ物流⽅式)、データセンターなど、同社の中量産品の対⾯市場は現代の社会インフラであり、消費電⼒が⼤きく、安定的な運⽤が求められる点が共通しています。
当ファンドは、カーボンニュートラルの達成のためには、エネルギーの川上にある発電インフラの脱炭素化に加えて、川下の製品群で効率的な電⼒利⽤を⾏うことは必須であると認識しており、多⾓的な事業ポートフォリオを保有する三菱重⼯業は、脱炭素に向けた広範な設備投資の恩恵を受けることの出来る貴重な企業であると考えています。
⼀⽅で、多⾓化した事業ポートフォリオの複雑さゆえ、株式市場において企業価値が低く評価されるコングロマリットディスカウントの議論はつきものですが、当ファンドでは、エネルギーの供給から消費まで⼀貫して関わることが可能な同社の事業ポートフォリオは、単⼀プロダクトでは難しい、事業間シナジーを創出できると考えています。当ファンドは、同社の価値創造の基盤である技術資産・顧客資産・⼈的資本などの無形資産に関する議論を深め、それらが今後どのようにして持続的な価値を⽣むのか、適切にコミュニケーションするための対話を⾏っています。将来的には、コングロマリット“ディスカウント”から“プレミアム”への転換を⽬指して、今後もエンゲージメントを継続していきます。
今後の運用方針
当ファンドでは潜在価値の⾼い企業に選別して集中投資を⾏い、⻑期的なリターンを追求しています。潜在価値の⾼い企業とは、スパークスの投資アプローチである3つの着眼点(経営者の質・企業収益の質・市場の成⻑性)に照らし、企業の実態価値や成⻑性が株式市場で⼗分に評価されていないと考えられる企業を指します。
⽇本には強固な事業基盤を有していながら、事業戦略や資本配分、株式市場への向き合い⽅に改善余地があることから株価が実態価値よりも低く評価されている企業が数多く存在します。当ファンドはパートナー株主として、投資先企業との中⻑期的な関係構築と丁寧な対話に努め、課題の改善を促すことで、企業価値の顕在化を積極的に後押しします。
※当ファンドは企業オーナーとして短期業績や株価変動に惑わされない⻑期保有を前提としています。投資先企業と共に企業価値向上を⽬指すとの考えから、短期的に株式を売買する投資家と区別する為、「パートナー株主」との⽂⾔を使⽤しています。
2023年8月の運用コメント
株式市場の状況
2023年8⽉、⽇本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前⽉末⽐0.43%の上昇となりました。
当⽉の⽇本株式市場は、⼤⼿格付け会社フィッチ・レーティングス社(⽶国)による⽶国債の格下げを背景とした⽶国株安の流れを受け、下落から始まりました。⽉半ばは、中国の軟調な経済指標(消費者物価指数など)や、中国不動産開発⼤⼿の⽶国破産法の申請が嫌気され、下げ幅を広げました。⽉後半は、中国の追加利下げが好感されたほか、ジャクソンホール会議においてさらなる利上げへの懸念が後退したことで値を戻す展開となり、最終的に前⽉末を上回る⽔準で⽉を終えました。
ファンドの運用状況
2023年8⽉、当ファンドのパフォーマンスは前⽉末⽐0.70%の上昇となりました。
当⽉、当ファンドの保有上位銘柄でパフォーマンスにプラスに寄与した企業は、三菱重⼯業、MARUWAなどでした。
三菱重⼯業は、8⽉に発表した2024年3⽉期第1四半期の決算で、市場の期待を上回る好決算であったことや、主要セグメントにおいて、好調な受注環境が⽰唆されたことなどが好感され、株価は上昇を継続しました。MARUWAは、2024年3⽉期第1四半期の決算説明会の中で、下期にかけて業績が成⻑軌道に回帰する⾒通しが述べられたことに伴って、株価が上昇したものと思われます。
当ファンドでは、企業経営者が誠実であり、⾼い競争優位性を有する企業の中から、更なる成⻑余地のある潜在価値の⾼い企業に⻑期集中投資を⾏い、企業との対話を通じて価値の顕在化を図ることを基本戦略とします。
⽇本には、⾼い技術⼒・開発⼒を持ち、ニッチ市場でグローバルに⾼いシェアやブランド⼒を持つ企業が多く存在します。そうした企業の中には、基礎的な収益⼒が⾼く、中⻑期的な成⻑余地が⼤きいにも関わらず、「⽟に瑕(きず)」があるために株式市場で実態価値を正当に評価されていない企業があります。
当ファンドでは、そのような企業の⻑期的なパートナー株主※として、良好な関係を築きながら粘り強く対話を⾏っています。企業の事業戦略や資本配分、IR体制などの改善を促すことで、企業の実態価値の顕在化に努め、株価上昇のカタリスト(きっかけ)の⼀つとなることを⽬指します。
当レポートでは、投資先企業に対する投資⾒解や対話の進捗などをご報告させて頂きます。
当⽉は、当ファンドの投資先である「三菱重⼯業」に対する投資⾒解、対話内容をご紹介します。
三菱重⼯業は1884年創業の重⼯業メーカーです。海運業で財を成した三菱グループ創設者の岩崎彌太郎⽒が、⻑崎にて興した造船事業が起源となっています。祖業である造船事業を営む三菱造船は、1934年には、重機、航空機、鉄道⾞両を事業に加え、現在の社名である三菱重⼯業となりました。第⼆次世界⼤戦後の財閥解体を⽬的とした会社の分割と合併という戦後の混乱期を乗り越え、発電設備、船舶、航空機等の社会インフラ供給を通じて、戦後⽇本の復興と⾼度経済成⻑期を⽀えてきました。
当ファンドが注⽬しているのは、脱炭素投資の恩恵を⼤きく受ける同社の事業ポートフォリオです。同社は「リアリティのあるエナジートランジション」を重視し、エネルギーの供給と消費の両⾯のグリーン転換を成⻑の柱に掲げています。当⽉は電⼒領域の脱炭素化に⼤きく貢献するエナジー事業について、ご説明させていただきます。
同社のエナジー事業は、主にガス⽕⼒発電⽤ガスタービン、⽯炭⽕⼒発電⽤スチームタービン、原⼦⼒発電事業から構成されています。2008年の世界⾦融危機以降、欧州を中⼼に、再⽣可能エネルギーへの移⾏の流れが強まり、化⽯燃料に対する開発投資が抑制されたことで、ガスタービンの市場は縮⼩の⼀途を辿ることとなりました。2011年の東⽇本⼤震災を経て、原⼦⼒発電についても、世界的に新設プロジェクトが減少し、同社のエナジー事業は低迷期を迎えました。
2022年2⽉にロシアとウクライナの紛争が勃発して以降、世界的にエネルギー供給が不安定化し、天然ガスの市況価格⾼騰など深刻な問題を引き起こしました。この混乱は、特定のエネルギー源や輸出国に依存しないエネルギーセキュリティの重要性が再認識されるきっかけとなりました。国家安全保障と気候変動対応の両⽴のためには、安定稼働が可能な信頼性の⾼い低炭素電源が要求されます。優れた発電効率から、ガス⽕⼒発電の低炭素化に貢献する同社の⼤型ガスタービンは、世界シェア1位を誇ります。加えて、同社のガスタービンは、アンモニアや⽔素といった次世代エネルギーとの混焼に対応しており、将来的には更なるCO2排出量削減を実現する可能性を秘めています。当ファンドでは、三菱重⼯業は、今後益々増える世界のエネルギー需要とネットゼロ⽬標の両⽴という「理想」と「現実」のギャップを満たす解決策を提供し、⻑期に亘って中⼼的な役割を担う企業であると考えています。
しかし、追い⾵が吹いている事業環境に反して、エナジー事業は過去3期連続で前年同期⽐減益を記録しています。その主因として、福島県で稼働中の新型⽯炭⽕⼒発電プラントでの度重なる不具合対策費⽤の発⽣が挙げられます。当ファンドでは、リスクマネジメント体制の強化に加えて、今後新設の可能性が低い⽯炭⽕⼒関連製品に対する中⻑期的な向き合い⽅について、様々な観点から議論を進めています。計画外の⼤型損失計上など、決算時のバッドサプライズを極⼒防ぎ、株式市場からの信頼を獲得することで、資本コストの抑制に繋がると考えています。エナジー事業が牽引する事業利益・資本収益性の改善と両輪となって、持続的に企業価値が拡⼤することを期待し、対話を継続していきます。
今後の運用方針
当ファンドでは潜在価値の⾼い企業を選別して集中投資を⾏い、⻑期的なリターンを追求しています。潜在価値の⾼い企業とは、スパークスの投資アプローチである3つの着眼点(経営者の質・企業収益の質・市場の成⻑性)に照らし、企業の実態価値や成⻑性が株式市場で⼗分に評価されていないと考えられる企業を指します。
⽇本には強固な事業基盤を有していながら、事業戦略や資本配分、株式市場への向き合い⽅に改善余地があることから株価が実態価値よりも低く評価されている企業が数多く存在します。当ファンドはパートナー株主として、投資先企業との中⻑期的な関係構築と丁寧な対話に努め、課題の改善を促すことで、実態価値の顕在化を積極的に後押しします。
※当ファンドは企業オーナーとして短期業績や株価変動に惑わされない⻑期保有を前提としています。投資先企業と共に企業価値向上を⽬指すとの考えから、短期的に株式を売買する投資家と区別する為、「パートナー株主」との⽂⾔を使⽤しています。
2023年7月の運用コメント
株式市場の状況
2023年7月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比1.49%の上昇となりました。
当月の日本株式市場は、FOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨にて年内2回以上の利上げが示唆されたことや、米国の雇用統計の結果を受け、利上げ継続への懸念が強まり下落して始まりました。一方で月半ばには、米国のCPI(消費者物価指数)が市場予想を下回り、利上げ停止が近いとの期待から堅調に推移しました。月後半は、日銀によるYCC(イールドカーブ・コントロール)の柔軟化が発表され、一時的に値動きの激しい展開となりましたが、現行の緩和姿勢を維持するとの受け止めから市場に安心感が広がり、最終的に期初を上回る水準で月を終えました。
ファンドの運用状況
2023年7月、当ファンドのパフォーマンスは前月末比2.86%の上昇となりました。
当月、当ファンドの保有上位銘柄でパフォーマンスにプラスに寄与した企業は、東洋炭素などでした。
東洋炭素は、株式市場における半導体業界の底打ち期待に伴って株価が上昇したものと思われます。電気自動車向けの半導体市場の成長とともに、同社の製品需要が長期的に拡大し続けると当ファンドは期待しております。
当ファンドでは、企業経営者が誠実であり、高い競争優位性を有する企業の中から、更なる成長余地のある潜在価値の高い企業に長期集中投資を行い、企業との対話を通じて価値の顕在化を図ることを基本戦略とします。
日本には、高い技術力・開発力を持ち、ニッチ市場でグローバルに高いシェアやブランド力を持つ企業が多く存在します。そうした企業の中には、基礎的な収益力が高く、中長期的な成長余地が大きいにも関わらず、「玉に瑕(きず)」があるために株式市場で実態価値を正当に評価されていない企業があります。
「玉に瑕(きず)」の一例として、非効率的な資本配分が挙げられます。基礎的な収益力が高く、キャッシュフロー創出力が秀でているにもかかわらず、過度に保守的な経営を志向して成長投資や株主還元を拡充せず、多くの現預金を貯めている企業などが該当します。他の例としては、IR(インベスターリレーションズ:企業が投資家に向けて経営状況や財務状況、業績動向等に関する情報を発信する活動)体制が不十分であることが挙げられます。セグメント開示が不明瞭であったり、決算説明会を実施していなかったりすることで、本来その企業がもつ価値を投資家に伝えられていない例などがあります。
当ファンドは、そのような企業の長期的なパートナー株主※として、良好な関係を築きながら対話を行っております。企業の事業戦略や資本配分、IR体制などの改善を促すことで、企業の実態価値の顕在化に努め、株価上昇のカタリスト(きっかけ)となることを目指します。
当レポートでは、投資先企業に対する投資見解や対話の進捗などをご報告させて頂きます。
当月は、当ファンドの投資先である「森永製菓」に対する投資見解、対話内容をご紹介します。
森永製菓は1899年創業の大手菓子メーカーです。アメリカで菓子製造技術を学んだ創業者森永太一郎氏が、「日本の人々においしく栄養価の高い西洋菓子を届けたい」という想いをもって日本の菓子産業の礎を築いたのが同社の始まりです。今では菓子だけでなく、アイス、「inゼリー」に代表されるゼリー飲料、通販など、製品・事業の幅を広げ、日本だけでなく海外にも積極的に展開しています。
当ファンドが注目しているのは、米国における「HI-CHEW(ハイチュウ)」の成長です。米国では、2008年に現地子会社を設立し本格的な販売を開始しました。メジャーリーガーの間でHI-CHEWブームが起こったことをきっかけに、ソフトな食感とフルーツのおいしさを合わせた商品特性が評判となり、米国小売大手ウォールマート等も取り扱うようになりました。2022年度の米国売上高はHI-CHEW以外の商品も含め146億円に達し、足元も順調に成長が続いています。今後は「inゼリー」の海外ブランドである「Chargel」の本格的な拡大も始まり、「HI-CHEW(ハイチュウ)」で培った営業網を生かして新しい市場を開拓できる可能性もあると考えます。同社は、生産体制の拡充など積極的な海外投資を行う姿勢を示しており、当ファンドは米国での更なる成長に期待をしています。
一方で、本業ともいえる国内菓子事業は、低い収益性が課題だと当ファンドでは考えています。特に直近は、原材料価格高騰の影響等を受け、2022年度のセグメント営業利益率は2.0%程度に留まっています。当ファンドでは、この国内菓子事業の在り方について同社と何度も議論してきました。議論の中で同社は、「総合菓子屋」としての看板を下ろすことなく、老朽化した製造ラインの廃止を通じ商品の選択と集中を進め、事業の生産性向上に努める意思を示しています。当ファンドでは、売上高の大きい国内菓子事業の収益性改善が同社の成長にとって不可欠であると考え、構造改革の進捗を見守るとともに、対話を続けております。
加えて、同社が食品企業「MORINAGA」としてグローバルにブランド力・存在感を高め、新たな成長ステージへの移行を加速するためには、森永乳業㈱との経営統合がカギになると当ファンドは考えております。森永製菓・森永乳業の両社の持つ高い技術力・品質に、資本や人材などの限られた経営資源をより効率的に活用することで、強固な一枚岩のブランドが生まれると当ファンドは考えます。このような考えから、当ファンドは両社の経営統合への期待も面談で伝えています。
最後に、同社が合理的な資本政策の実行に舵を切り始めていることにも当ファンドは注目しております。当ファンドでは従来から、株主還元の拡充についても議論を重ねてきました。同社は2022年度の決算説明会で、自己株の取得などによるネットキャッシュの大幅な圧縮を発表しました。今後のさらなる資本政策の改善により、ROE(株主資本利益率)が向上する可能性があると考え、対話を続けてまいります。
今後の運用方針
当ファンドでは潜在価値の高い企業を選別して集中投資を行い、長期的なリターンを追求しています。潜在価値の高い企業とは、スパークスの投資アプローチである3つの着眼点(経営者の質・企業収益の質・市場の成長性)に照らし、企業の実態価値や成長性が株式市場で十分に評価されていないと考えられる企業を指します。
日本には強固な事業基盤を有していながら、事業戦略や資本配分、株式市場への向き合い方に改善余地があることから株価が実態価値よりも低く評価されている企業が数多く存在します。当ファンドはパートナー株主として、投資先企業との中長期的な関係構築と丁寧な対話に努め、課題の改善を促すことで、実態価値の顕在化を積極的に後押しします。
※当ファンドは企業オーナーとして短期業績や株価変動に惑わされない⻑期保有を前提としています。投資先企業と共に企業価値向上を⽬指すとの考えから、短期的に株式を売買する投資家と区別する為、「パートナー株主」との⽂⾔を使⽤しています。
2023年6月の運用コメント
株式市場の状況
2023年6月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比7.55%の上昇となりました。
当月の日本株式市場は、月前半は米連邦債務の上限停止による米国株高の流れを受け、大幅に上昇いたしました。月半ばには、FRB(連邦準備制度理事会)による追加利上げの示唆を受けた軟調な米国株の影響や、衆院解散への期待剥落が嫌気された一方、日銀の金融緩和の維持、米著名投資家の日本株追加投資の発表が好感され、一進一退の動きで推移しました。月後半は、株価上昇の反発と見られる下落の局面もありましたが、米景気悪化懸念の後退と円安進行が下支えをし、最終的に前月末を上回る水準で月を終えました。
ファンドの運用状況
2023年6月、当ファンドのパフォーマンスは前月末比5.05%の上昇となりました。
当月、当ファンドの保有上位銘柄でパフォーマンスにプラスに寄与した企業は、MARUWA、三菱重工業などでした。
MARUWAは、株式市場における半導体業界の底打ち期待に伴って株価が上昇したものと思われます。三菱重工業は、5月に発表した2024年3月期の通期業績予想で当期純利益が過去最高を更新する見通しとなったことなどが好感され、株価は上昇を継続しました。
当ファンドでは、企業経営者が誠実であり、高い競争優位性を有する企業の中から、更なる成長余地のある潜在価値の高い企業に長期に集中投資し、企業との対話を通じて価値の顕在化を図ることを基本戦略とします。
日本には、高い技術力・開発力を持ち、ニッチ市場でグローバルに高いシェアや高いブランド力を持っている企業が多くあります。そうした企業の中には基礎的な収益力が高く、中長期的な成長余地が大きいにも関わらず、「玉に瑕(きず)」があるために株式市場で実態価値を評価されていない企業が存在します。
企業によって課題は様々ですが、当ファンドは長期的なパートナー株主※として、投資先企業と良好な関係を築きながら粘り強く対話を行い、事業戦略や資本配分、IR(インベスターリレーションズ:企業が投資家に向けて経営状況や財務状況、業績動向等に関する情報を発信する活動のこと)体制などの改善を促すことで、企業の実態価値の顕在化に努めます。
当レポートでは、投資先企業に対する投資見解や対話の進捗などをご報告させて頂きます。
当月は、当ファンドの投資先である「MARUWA」に対する投資見解、対話内容をご紹介します。
MARUWAはセラミック部品の世界的大手メーカーです。陶芸家の一族である神戸家が江戸時代から陶磁器の製造販売を営み、焼き物の技術を継承してきました。高度成長期の1960年、急速にニーズが拡大しつつあった電子部品(通信機器向け特殊磁器、固定抵抗器用セラミック)の分野へ進出し、現在のMARUWAに至ります。
セラミックは一般家庭の皿にも使われるなど、身近な素材であり、窯があれば作ることが出来ますが、同社が得意としている高付加価値セラミックの分野では高度な製造ノウハウが必要となります。セラミックは焼成前後でサイズが大きく変化するため、均質なセラミック製品を量産するのは簡単ではありません。この製造工程の秘匿化が参入障壁となり、同社は様々なセラミック製品で世界トップシェアを獲得していると当ファンドでは推定しています。そして、今後最も需要が伸びると期待されているのはEV(電気自動車)向けのセラミック製品です。EVでは、高い電圧を使う電子部品が使われており、発熱によって電子部品が膨張し部品寿命が悪化する可能性が高いため、発熱対策が課題となっています。同社のセラミック部品はそれを防ぐ放熱基板として使われています。自動車のように耐用年数が長期かつ発熱温度が高い分野では、セラミックは高価ではあるものの最も信頼できる素材とされています。
前述のようにMARUWAのセラミック部品が使われる市場は拡大する見通しであり、同社は参入障壁によって高い収益性と世界シェアを維持できる可能性が高い企業であると考えられますが、株式市場で評価される余地はまだ大きいと当ファンドでは考えています。
過去、MARUWAは長期にわたって決算説明資料を作っておらず、決算説明会も開催しておりませんでした。その点が株式市場で同社の知名度が上がらなかった要因と考え、IR体制の改善を期待して同社との対話を継続してきました。そうした粘り強いエンゲージメントの甲斐もあり、同社は2021年から決算説明会資料を作成し決算説明会をオンラインで開催しております。さらに2023年5月の通期決算説明会では、あまり公の場で発言することのなかった神戸誠会長が登壇し、自ら投資家からの質疑に回答しました。こうした点からも、当ファンドでは同社の株式市場との対話姿勢に大きな改善が見られていると考えています。
また、同社は高い収益性を誇る一方、余剰資金の蓄積スピードが早く同社のROE(株主資本利益率)が低下する可能性が高いことも、株式市場からの評価を押し下げている要因と思われます。当ファンドでは引き続き、同社の実態価値が株式市場で顕在化する一助となれるよう、IR体制とROEの改善を主題に、経営陣との対話を継続していく方針です。
今後の運用方針
当ファンドでは潜在価値の高い企業を選別して集中投資を行い、長期的なリターンを追求しています。潜在価値の高い企業とは、スパークスの投資アプローチである3つの着眼点(経営者の質・企業収益の質・市場の成長性)に照らし、企業の実態価値や成長性が株式市場で十分に評価されていないと考えられる企業を指します。
日本には強固な事業基盤を有していながら、事業戦略や資本配分、株式市場への向き合い方に改善余地があることから株価が実態価値よりも低く評価されている企業が数多く存在します。当ファンドは長期的なパートナー株主として、投資先企業との中長期的な関係構築と丁寧な対話に努め、課題の改善を促すことで、実態価値の顕在化を積極的に後押しします。
※当ファンドは企業オーナーとして短期業績や株価変動に惑わされない長期保有を前提としています。投資先企業と共に企業価値向上を目指すとの考えから、短期的に株式を売買する投資家と区別する為、「パートナー株主」との文言を使用しています。
レポート
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スパークス・企業価値創造日本株ファンド「進捗を見せる企業との対話」(1.2 MB)
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スパークス・企業価値創造日本株ファンド「パフォーマンス状況と組入銘柄」(1.1 MB)
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スパークス・企業価値創造日本株ファンド「設定後のポートフォリオと組入銘柄」(1.9 MB)
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スパークス・企業価値創造日本株ファンド「"今"こそ、日本企業が変わる時」(1.4 MB)
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主な投資リスク、費用等
- 当ファンドの投資リスクについては、交付目論見書(投資信託説明書)記載の「投資リスク」をご覧ください。 (2.0 MB)
- 当ファンドに係る費用等については、交付目論見書(投資信託説明書)記載の「ファンドの費用、税金」をご覧ください。 (2.0 MB)
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