スペシャルレポート ニッポン解剖~日本再興へのメカニズム~ Vol.26「『漢字』で振り返る2024年の株式市場:減少する上場企業」
今回のニッポン解剖では、2024年の日本の株式市場を少し違った角度から振り返りたいと思います。スパークスでは、2024年の"日本株式市場を表す漢字"(※1)の意識調査を行っており、1位は「乱」、2位は「変」となりました。2024年2月22日に日経平均株価がバブル期の高値を34年ぶりに更新しましたが、8月5日には、1日で4,451円下落し、史上最大の下げ幅を記録したことから、日本版ブラックマンデーとも称されました。このような乱高下の相場環境を反映し、「乱」が1位に選ばれたようです。なお、2023年は、株高や物価上昇を象徴する「高」や「上」が上位となっていました。
2位には「変」が選ばれましたが、2024年は株価以外の面においても株式市場では大きな変化のあった年だと思います。筆者は年初のニッポン解剖において、「2024年のびっくり予想」として「日本の上場会社数が減少」を挙げました。背景としては、東京証券取引所(以下、「東証」)による「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請を皮切りに、上場企業は上場を維持する意義について考え直す時期にきており、上場維持の意義が薄れた会社が上場廃止に踏み切り、その数が新規上場(IPO)数を上回ることで、日本の上場会社数が減少する可能性もあると予想しました。そして12月には、東証の上場企業数が初めて減少に転じる見通しという報道があり、このびっくり予想が当たる結果となりそうです。
上場企業が上場の意義を考え直すきっかけとしては、日本においてアクティビストの活動が活発化してきていることも要因として考えられます。アクティビストとは、株主としての権利を積極的に行使することで、経営改善など、企業活動に対して株主の考えを反映させようとする投資家のことです。アクティビストに対しては、短期的に過度な株主利益のみを追求するといったようなネガティブなイメージを持つ方も多いかと思います。過去のアクティビストにはそのような側面も多分にあったと思いますが、昨今のアクティビストの活動については、短期的な株主利益のみを追求するのではなく、投資先企業の持続的な企業価値向上を目的として対話を行うケースが増えつつあります。企業は株式市場に上場することで、円滑な資金調達が可能となるといったメリットがあります。一方で、多数の株主によって保有されることになるため、株主共同の利益の追求が求められる状態になります。そのため、上場のメリットと引き換えに、企業経営の自由度は一定の制限を受けることになります。アクティビストや株式市場参加者からの主張が、中長期的な企業価値向上を求めたものであっても、企業とは時間軸や変化の規模について考えが折り合わない場合もあります。その際は、資金調達の可能性など上場しているメリットが小さいのであれば、株式の非公開化も選択肢としてあり得ると思うのです。過去に強い意識を持って行った上場を所与のものとせず、なぜ今上場している必要があるのかを常に考えながら、資本市場に向き合う必要性が増してきていると思います。
2024年の干支は、「物事のはじまり」と「大きな成長」を表すとされる辰の中でも甲辰(きのえたつ)でした。2025年は、巳の中でも乙巳(きのとみ)に当たり、これまでの取り組みが結実し始める時期と考えられています。2025年が、上場企業や株式市場の皆さまにとって、実り多き一年になりますよう、心からお祈り申し上げます。
スパークス・アセット・マネジメント株式会社
チーフ・アナリスト 川部 正隆
※1:スパークス・アセット・マネジメント調べ(https://www.sparx.co.jp/report/report/doc/PressJ241205.pdf)
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