ニッポン解剖~日本再興へのメカニズム~「ジェンダーだけじゃない、企業価値を高める"スキルの多様性"とは」 | レポート | スパークス・アセット・マネジメント

スペシャルレポート ニッポン解剖~日本再興へのメカニズム~「ジェンダーだけじゃない、企業価値を高める"スキルの多様性"とは」

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 本連載では、日本企業の成長力を高める施策として、社外取締役によるアニマルスピリット喚起や、資本コストを意識した事業ポートフォリオ改革、株式報酬制度の導入によるインセンティブ強化について提言してきました。今回は4つ目の施策として、「多様性」について考えます。

 2018年のコーポレートガバナンス・コードの改訂で、ジェンダーや国際性といった「多様性」が明記されたことを受け、企業経営や上場株式への投資においても、多様性への意識が急速に浸透しています。多様な人材が活躍できる社会を目指すという方向性については、論を待たないと思います。上場企業における女性役員数(取締役、監査役および執行役)も、2012年の630人から、2024年には5,000人を超える水準まで増加してきており、女性の活躍や多様な視点が企業経営に与える好影響が期待されています。しかし、筆者個人の見解としては、企業価値を高める多様性は、ジェンダーなどの「属性」だけでなく、取締役会の「スキル」の多様性が企業業績に大きな影響を与えると考えます。

 2021年に改訂されたコーポレートガバナンス・コードでは、スキル・マトリックスの策定が要請されました。スキル・マトリックスとは、各取締役の知識・経験・能力等を一覧化したものです。ジェンダーや国際性といった属性による多様性だけでなく、企業の事業特性に応じたスキルの多様性についても求められるようになったといえます。スキル・マトリックスは、単に各取締役が有するスキルを一覧表として開示するだけなく、中長期的な事業戦略に照らして必要なスキルが、取締役会全体として確保されることが問われるものです。

 スキル・マトリックスの導入が進む一方で、まだいくつかの課題もあると考えています。本来であれば、各社の事業戦略を踏まえて備えるべきスキルを特定し、その上でスキル・マトリックスを開示すべきです。しかし、多くの企業においては、スキル項目が画一的なものとなっていると感じられます。財務や法務など、事業戦略に関わらず共通して必要とされるような汎用的スキルに加えて、各企業が持つ独自の事業戦略に応じて必要となる特有のスキルも、スキル・マトリックスに反映されてくることが望ましいと考えます

 また、ほぼ全てのスキル項目にチェックマークがついている取締役も見受けられます。しかし、一人の取締役で全てのスキル項目を満たす必要はなく、取締役会がワンチームとして必要なスキルを満たせば良いと考えられます。もちろん上場企業の取締役になられるような方であれば、多くのスキルを持っていると考えられますが、むしろ各取締役が専門性を発揮し、相互に補完し合うことが重要です。

 社外取締役や女性役員の増加により、日本企業における取締役会は、従来の同質性から、着実に多様性の方向に向かっているように思います。ここに中長期的な事業戦略に照らしたスキル・マトリックスの本質的な活用が加わることで、企業価値がより一層高まっていくことを期待しています

スパークス・アセット・マネジメント株式会社
チーフ・アナリスト 川部 正隆

当レポートは執筆者の見解が含まれている場合があり、スパークス・アセット・マネジメント株式会社の見解と異なることがあります。

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