スパークス・アジア中東株式ファンド(隔月分配型)
- 日経新聞掲載名
- アジ中東
- 分類
- 追加型投信/海外/株式
- 設定日
- 決算日
- 毎年1月、3月、5月、7月、9月、11月の各月10日
基準日:2025.11.10
- 基準価額
- 13,301円
- 前日比
-
-151円
-1.12% - 純資産総額
- 18.5億円
- 分配金情報(税引前)
- 30円
- 交付目論見書(2.8 MB)
- 請求目論見書(3.2 MB)
- 月次報告書 (1.4 MB)
- 交付運用報告書(861.5 KB)
- 運用報告書(全体版)(707.5 KB)
基準価額推移
分配金実績
決算頻度:6回/年
- 設定来合計
- 4,455円
- 直近12期計
- 360円
分配金実績一覧
- 2025年11月10日
- 30円
- 2025年09月10日
- 30円
- 2025年07月10日
- 30円
- 2025年05月12日
- 30円
- 2025年03月10日
- 30円
- 2025年01月10日
- 30円
- 2024年11月11日
- 30円
- 2024年09月10日
- 30円
- 2024年07月10日
- 30円
- 2024年05月10日
- 30円
- 2024年03月11日
- 30円
- 2024年01月10日
- 30円
- 2023年11月10日
- 30円
- 2023年09月11日
- 30円
- 2023年07月10日
- 30円
- 2023年05月10日
- 30円
- 2023年03月10日
- 30円
- 2023年01月10日
- 30円
- 2022年11月10日
- 30円
- 2022年09月12日
- 30円
- 2022年07月11日
- 30円
- 2022年05月10日
- 30円
- 2022年03月10日
- 30円
- 2022年01月11日
- 30円
- 2021年11月10日
- 30円
- 2021年09月10日
- 30円
- 2021年07月12日
- 30円
- 2021年05月10日
- 30円
- 2021年03月10日
- 30円
- 2021年01月12日
- 45円
- 2020年11月10日
- 45円
- 2020年09月10日
- 45円
- 2020年07月10日
- 45円
- 2020年05月11日
- 45円
- 2020年03月10日
- 45円
- 2020年01月10日
- 45円
- 2019年11月11日
- 45円
- 2019年09月10日
- 45円
- 2019年07月10日
- 45円
- 2019年05月10日
- 45円
- 2019年03月11日
- 45円
- 2019年01月10日
- 45円
- 2018年11月12日
- 45円
- 2018年09月10日
- 45円
- 2018年07月10日
- 45円
- 2018年05月10日
- 45円
- 2018年03月12日
- 45円
- 2018年01月10日
- 45円
- 2017年11月10日
- 45円
- 2017年09月11日
- 45円
- 2017年07月10日
- 45円
- 2017年05月10日
- 45円
- 2017年03月10日
- 45円
- 2017年01月10日
- 45円
- 2016年11月10日
- 45円
- 2016年09月12日
- 45円
- 2016年07月11日
- 45円
- 2016年05月10日
- 45円
- 2016年03月10日
- 45円
- 2016年01月12日
- 45円
- 2015年11月10日
- 45円
- 2015年09月10日
- 45円
- 2015年07月10日
- 45円
- 2015年05月11日
- 45円
- 2015年03月10日
- 45円
- 2015年01月13日
- 45円
- 2014年11月10日
- 45円
- 2014年09月10日
- 45円
- 2014年07月10日
- 45円
- 2014年05月12日
- 45円
- 2014年03月10日
- 45円
- 2014年01月10日
- 45円
- 2013年11月11日
- 45円
- 2013年09月10日
- 45円
- 2013年07月10日
- 45円
- 2013年05月10日
- 45円
- 2013年03月11日
- 45円
- 2013年01月10日
- 45円
- 2012年11月12日
- 45円
- 2012年09月10日
- 45円
- 2012年07月10日
- 45円
- 2012年05月10日
- 45円
- 2012年03月12日
- 45円
- 2012年01月10日
- 45円
- 2011年11月10日
- 45円
- 2011年09月12日
- 45円
- 2011年07月11日
- 45円
- 2011年05月10日
- 45円
- 2011年03月10日
- 45円
- 2011年01月11日
- 45円
- 2010年11月10日
- 45円
- 2010年09月10日
- 45円
- 2010年07月12日
- 45円
- 2010年05月10日
- 45円
- 2010年03月10日
- 45円
- 2010年01月12日
- 45円
- 2009年11月10日
- 45円
- 2009年09月10日
- 45円
- 2009年07月10日
- 45円
- 2009年05月11日
- 45円
- 2009年03月10日
- 65円
- 2009年01月13日
- 65円
- 2008年11月10日
- 65円
- 2008年09月10日
- 65円
- 2008年07月10日
- 65円
- 2008年05月12日
- 65円
- 上記以前の分配金については、「選択した期間のデータをダウンロード」ボタンからご確認いただけます。
月次報告書
2025年
2024年
- 12月(1.4 MB)
- 11月(1.4 MB)
- 10月(1.4 MB)
- 9月(1.4 MB)
- 8月(1.4 MB)
- 7月(1.5 MB)
- 6月(1.5 MB)
- 5月(1.4 MB)
- 4月(1.5 MB)
- 3月(1.4 MB)
- 2月(1.4 MB)
- 1月(1.4 MB)
2023年
- 12月(1.4 MB)
- 11月(1.5 MB)
- 10月(1.4 MB)
- 9月(1.5 MB)
- 8月(1.5 MB)
- 7月(1.4 MB)
- 6月(1.7 MB)
- 5月(1.7 MB)
- 4月(1.7 MB)
- 3月(1.8 MB)
- 2月(1.7 MB)
- 1月(1.7 MB)
2022年
- 12月(1.7 MB)
- 11月(822.6 KB)
- 10月(816.4 KB)
- 9月(822.7 KB)
- 8月(801.4 KB)
- 7月(811.4 KB)
- 6月(789.4 KB)
- 5月(823.8 KB)
- 4月(812.4 KB)
- 3月(1.2 MB)
- 2月(1.5 MB)
- 1月(1.3 MB)
2021年
- 12月(1.2 MB)
- 11月(1.2 MB)
- 10月(1.2 MB)
- 9月(1.2 MB)
- 8月(1.4 MB)
- 7月(1.2 MB)
- 6月(1.2 MB)
- 5月(1.4 MB)
- 4月(1.2 MB)
- 3月(1.2 MB)
- 2月(1.3 MB)
- 1月(1.3 MB)
2020年
- 12月(1.3 MB)
- 11月(1.4 MB)
- 10月(1.5 MB)
- 9月(1.5 MB)
- 8月(1.5 MB)
- 7月(1.4 MB)
- 6月(1.3 MB)
- 5月(1.2 MB)
- 4月(1.3 MB)
- 3月(1.2 MB)
- 2月(1.3 MB)
- 1月(1.5 MB)
2019年
- 12月(1.5 MB)
- 11月(1.5 MB)
- 10月(1.3 MB)
- 9月(1.4 MB)
- 8月(1.1 MB)
- 7月(1.0 MB)
- 6月(1.0 MB)
- 5月(1.1 MB)
- 4月(1.1 MB)
- 3月(1.1 MB)
- 2月(1.1 MB)
- 1月(1.1 MB)
2018年
- 12月(1.1 MB)
- 11月(1.1 MB)
- 10月(1.1 MB)
- 9月(1.1 MB)
- 8月(1.1 MB)
- 7月(1.1 MB)
- 6月(1.1 MB)
- 5月(1.1 MB)
- 4月(1.1 MB)
- 3月(1.0 MB)
- 2月(1.1 MB)
- 1月(1.1 MB)
2017年
- 12月(1.1 MB)
- 11月(1.1 MB)
- 10月(1.1 MB)
- 9月(1.1 MB)
- 8月(1.1 MB)
- 7月(1.1 MB)
- 6月(1.0 MB)
- 5月(1.0 MB)
- 4月(1.0 MB)
- 3月(1.1 MB)
- 2月(1.1 MB)
- 1月(1.0 MB)
2016年
- 発表年
- キーワード検索
「」の検索結果
2025年9月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当月、⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋指数(⽇本を除く、⽶ドル建て)は、前⽉末⽐5.80%上昇しました。アジア・オセアニアの株式市場を国別で見ると、韓国、中国、台湾などが上昇した一方、フィリピン、オーストラリアなどは下落しました。韓国のKOSPI(韓国総合株価指数)は前月末比7.49%上昇し、前年末比では42.72%上昇しました。中でも上昇幅が大きかったのがSamsung Electronics社(韓国)で、同社の広帯域メモリ(HBM)がNVIDIA社(米国)の認証試験に合格したと報じられたことが、大幅な再評価につながりました。また、AI(人工知能)投資関連の拡大を背景に、NAND型及びDRAM型メモリに対する世界的な需要が引き続き堅調であることも、投資家が同銘柄を好感する要因となりました。
AI投資の加速は様々な分野に表れています。Taiwan Semiconductor Manufacturing Company社(台湾、以下「TSMC」)は2025年の売上高について30%程度を見込み、2025年中に380~420億米ドルの設備投資を行い、チップ需要の急増に対応する意向を改めて示しました。Alibaba Group Holding社(中国)は最新型のAI言語モデルを公開、NVIDIA社と「フィジカルAI」の強化に向けて戦略的提携を行うと発表し、今後3年間でAI関連インフラに530億米ドルを投資すると明言しました。当月、Samsung Electronics社は前月末比20.4%、TSMCは同12.5%、Alibaba Group Holding社は同53.0%、それぞれ上昇しました。
一方、その他のアジア市場は相対的に軟調でした。インドのITサービスセクターでは、米国がH-1Bビザ(特殊技能を有する外国人向けの就労ビザ)制度を刷新、新規申請に必要な手数料を現在の最低1,000ドル程度から10万米ドルに引き上げると発表したことを受け、株価が下落しました。現在、H-1Bビザ保有者は70%以上がインド人であり、この政策変更は長期的な業績への影響は限定的とみられるものの、短期的には人件費調整などに伴う利益率の不確実性を生じさせました。
ASEAN諸国では、タイの新政権が施政方針を発表し、国内消費の活性化、中小企業支援、観光客誘致、AIやEV(電気自動車)産業への投資に取り組む姿勢を示しました。しかし新政権は4か月以内に議会を解散して総選挙を行う予定で、政策の持続性に懸念が高まっています。
<中東株式>
当月、MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前月末比4.90%上昇しました。WTI原油先物は前⽉から下落して⽉を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は、対日本円でまちまちの値動きとなりました。特にオーストラリアドル、マレーシアリンギット、台湾ドルなどが対日本円で上昇し、フィリピンペソ、韓国ウォンなどが対日本円で下落しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドのパフォーマンスはプラスとなりました。
セクター別では、情報技術セクター、一般消費財・サービスセクターなどがプラスに寄与した一方、資本財・サービスセクター、ヘルスケアセクターなどがマイナスに影響しました。
当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した銘柄は、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、Alibaba Group Holding(中国/⼀般消費財・サービス)、Tencent Holdings(中国/コミュニケーション・サービス)などでした。⼀⽅、マイナスに影響した銘柄は、China State Construction International Holdings(香港/資本材・サービス)、Transurban Group(オーストラリア/資本財・サービス)、MediaTek(台湾/情報技術)などでした。
First Pacific
当月はFirst Pacific(⾹港/⽣活必需品)の経営陣と面会しましたので、同社の最新情報をお伝えします。
2024年6月の運用コメントで取り上げたように、同社は⾹港市場に上場しているコングロマリット企業で、主にASEAN諸国で各種事業を展開しています。当ファンドが同社の組み入れを開始したのは2024年で、株価はその後75%以上上昇しています。
同社は消費者向け食品、インフラ、通信、天然資源という4つの主要セクターに重点を置き、各セクターにおける有力企業の株式を戦略的に保有し、戦略面の意思決定や業務改善を積極的に後押しすることで、単なる資本拠出以上の価値を創出しています。
インフラ部門(Metro Pacific Investments社、以下「MPIC社」)
MPIC社はMaynilad Water Services社(フィリピン)を子会社としています。Maynilad Water Services社は、1,000万人以上の人口を有するマニラ首都圏西地区で水道事業を運営する水道事業会社です。同社は2023年から2027年までの間に実施することが認められている料金改定の一環として、2025年1月に水道料金を13%値上げしました。同社は2025年上期に、前年同期比15%増となる131億フィリピンペソの新規設備投資による給水範囲の拡大と漏水削減によって再成長し、需要拡大に対応する計画です。また、2025年11月には新規株式公開(IPO)を予定しており、それが再評価のきっかけとなる可能性があります。
MPIC社のもう一つの成長の原動力は、フィリピン、インドネシア、ベトナムの有料道路事業です。First Pacificの経営陣は、マルコス政権下における規制環境の改善で料金の値上げが進むことが有利に働き、さらに交通量の増加と新規道路開通もあいまって、売上がさらに拡大すると見込んでいます。数十年にわたる有料道路のコンセッション契約を獲得すると、収益が長期的に見通せるようになり、キャッシュフローの予測が立ちやすくなります。またMPIC社は、インドネシアのトランスジャワ有料道路を買収したことで(2024年9月に株式の35%を取得)、東南アジア最大の非政府系有料道路運営会社となりました。
通信部門(PLDT社)– Maya社が価値増大の原動力
フィリピンの通信事業であるPLDT社はセクター内の熾烈な競争で利益の伸びが鈍化しており、2025年上期には通信事業の業務純益が前年同期比4%減少しました。一方、同社が38%出資するフィリピン最大のデジタル銀行・フィンテック企業のMaya Bank社は、半期黒字を達成しました。Maya Bank社の顧客数は現在820万人を超え(2022年には200万人未満)、主に銀行口座を持たない人々(フィリピン国民の半数近く)にサービスを提供しています。累積融資額はわずか2年半前にはほぼゼロでしたが、1,400億フィリピンペソに増加しました。Maya Bank社の業績が上昇軌道を描いており、今後数年間にわたりPLDT社の企業価値向上に寄与する可能性が高く、将来的にはMaya Bank社のIPOも視野に入ってきます。
リスクと展望
政治的リスクは依然として根強い問題で、特にフィリピンとインドネシアにおけるインフラ資産の料金改定に関してはその傾向が顕著です。しかしFirst Pacificの経営陣は、同社には40年以上にわたる経験と現地政府との強い絆があることから、ASEAN諸国の長期的成長を足場に据え、その恩恵に浴することが可能な立場にあると力説しました。
同経営陣が今後も力を入れたいとしているのは、成長著しいアジア市場において、足腰が盤石でディフェンシブな特性を有する業界(消費者向け食品、インフラ、通信、天然資源)の企業を保有し、⼈⼝構成の有利さ、中間層の消費⽀出拡⼤、継続的なインフラ整備の恩恵に浴することです。持株会社はこうした事業会社から定期的かつ継続的に配当収入を得ており、大規模投資案件が発生しない限り、株主への配当を毎年増やしていく意向を示しています。配当利回りが約4%であることから、当ファンドは複数のASEAN企業とつながりを持ち、その成長軌道に乗じる上で比較的有望な投資対象として、同社の組み入れを続けていく予定です。
当ファンドは、引き続き組入銘柄を注視するとともに、今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月は、Saudi Awwal Bank(サウジアラビア/金融)がプラスに貢献した一方、First Abu Dhabi Bank(アラブ首長国連邦/金融)がマイナスに影響しました。両行は2025年上期決算を発表し、融資残高が大幅に伸び、利益が拡大したことを明らかにしました。First Abu Dhabi Bankは記録的な増益を達成し、営業利益は前年同期比16%増、有形自己資本利益率は20.5%に達しました。同行はさらに、年内の融資パイプラインが豊富であることから、融資残高の予想成長率を上方修正しました。長期的には、政府主導で石油依存からの脱却、石油以外のセクターへの投資、持続的成長の促進に向けた取り組みが進んでいることから、銀行セクターでは新たな事業機会が継続的に生まれていると考えます。
<通貨>
当月、アジア地域および中東地域の通貨は、対日本円でまちまちの値動きを見せましたが、全体としては当ファンドのリターンにプラスに貢献しました。
今後の見通し
アジア株式市場の見通しは、米国の貿易政策交渉の行方、AI導入の加速、さらに各国市場の動向に左右されています。
中国は今秋に「第15次5カ年規画」の発表を控えていることから、現状の好調さを保つと予想されます。同規画では、テクノロジー主導の成長と国内経済の耐久力、とりわけテクノロジーの自給体制構築に重点を置いたものとなる見通しです。中国の国産AIチップ開発は大きな進展を見せており、米国の輸出規制による供給制約が緩和されつつあります。今後、世界ではNVIDIA社とその提携企業(台湾や韓国の企業も含む)による米国主導のAIエコシステムと、中国国内企業群によるAIエコシステムという「二極構造」が形成される可能性があると考え、当ファンドは両陣営の投資機会を探っていきたいと考えています。
インドには有望な長期投資の機会が豊富に存在します。世界的な貿易摩擦が続いているにもかかわらず、中間層の拡大と製造能力の向上によって経済の勢いが保たれています。政府による戦略的な「メイク・イン・インディア」政策や生産連動型奨励策(PLI)の推進が製造インフラに対する多額の投資につながっており、インドは中国のような世界的生産大国への変貌を実現できる可能性があります。
今後の運用方針
当ファンドは組入銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと目に見える形の一貫した収益とキャッシュフローに支えられ、不透明な市場環境の中でも力強い耐久力を示してきました。
かねてから述べているように、当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を⾏っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することはきわめて困難であると考えます。まさにそうした理由から、当ファンドは一時的な逆風に耐え(特にアジアの新興国市場)、風が収まった時にさらに強くなれる優良企業の発掘に力を注いでいます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
2025年8月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当月、⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、前⽉末⽐1.62%上昇しました。アジア・オセアニアの株式市場を国別で見ると、シンガポール、中国などが上昇した一方、インド、韓国などは下落しました。当月、中国の上海総合指数は10年ぶりの高値に達しました。一方、インドは、米国から50%という想定外の懲罰的関税を課されたことで、市場が低迷しました。
中国市場が上昇したのは、素材セクターと情報技術セクターが好調なパフォーマンスを記録したことによるものです。中国政府の「反内巻政策(中国国内における過度な価格競争や生産過剰の抑制を目指す政策)」によって景気循環銘柄の株価が押し上げられ、AI(人工知能)やロボット関連への設備投資の勢いが底堅かったことが、テクノロジーセクターの株価上昇要因となりました。さらに、香港市場はストックコネクト制度(上海証券取引所と香港証券取引所の相互間で行われる人民元建て上場株式の取引)により、中国本土から記録的な資金が流入したことも追い風となりました。これは中国本土の投資家が香港の上場株式に高い関心を持っていることを示しています。
一方、インド市場では、トランプ米大統領がインドのロシア産石油購入について、インドに対し25%の追加関税を課すという予想外の発表を行ったことで、株価が急落しました。この措置により、インドの対米輸出に課せられる関税率は当月後半から最大50%に拡大しました。これによりインドは他のアジア諸国より不利な立場に置かれ、主要輸出セクター、とりわけ繊維・衣料、資本財、宝石・宝飾品などに影響が及ぶ見通しです。
インドネシアでは当月後半に主要都市で国会議員の住宅手当の引き上げに対する抗議デモが発生しましたが、これは生活費の上昇と所得格差の拡大に対する国民の不満が高まっていることを示しています。この事態を受けて、プラボウォ大統領は議員手当を一部見直すと発表し、国民感情の鎮静化と市場の信頼回復に努めています。
<中東株式>
当月、中東株式市場は下落しました。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前月末比1.59%下落しました。WTI原油先物は前⽉から下落して⽉を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は、対日本円で下落しました。特にインドルピー、インドネシアルピアなどが対日本円で下落しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドのパフォーマンスはマイナスとなりました。
セクター別では、コミュニケーション・サービスセクター、一般消費財・サービスセクターなどがプラスに寄与した⼀⽅、情報技術セクター、金融セクターなどがマイナスに影響しました。
当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した銘柄は、Tencent Holdings(中国/コミュニケーション・サービス)、First Pacific(香港/⽣活必需品)、Lemon Tree Hotels(インド/⼀般消費財・サービス)などでした。⼀⽅、マイナスに影響した銘柄は、China State Construction International Holdings(香港/資本財・サービス)、CSL(オーストラリア/ヘルスケア)、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)などでした。
当月は、当ファンドが今年新たに組み入れた銘柄の一つである、「E Ink Holdings(台湾/情報技術)」についてご紹介します。
同社は電子ペーパー表示技術における世界的リーディングカンパニーで、電子書籍リーダー、電子棚札(ESL)、デジタルサイネージ、IoT機器向け超低消費電力ディスプレイパネルおよびフィルムの研究開発、製造、販売を専門的に手がけ、台湾と中国に先端製造拠点を構えています。また電子ペーパー関連技術の特許を数多く保有しています。
同社の電子ペーパーは紙のように目に優しく、文字が読みやすいのが特徴で、コンテンツを書き換える時にのみ電力を消費するため、卓越したエネルギー効率を誇ります。この技術はマイナスに帯電した白色粒子とプラスに帯電した黒色粒子が入った数百万個のマイクロカプセルでできたインクを基材に塗布し、電界に電気を通すと、帯電した粒子(白または黒)がカプセルの上部に移動し、その部分がディスプレイ上で白色または黒色に見えるようになるというものです。同社の技術は、読みやすさの点でデジタル書籍に革命を起こした機器として有名なAmazon社(米国)のKindle Paperwhiteに使用されており、他にもKobo、BOOX Leaf、reMarkableといった主要電子ペーパー機器すべてに使用されています。このような利点がある一方で、画面のリフレッシュレート(1秒間で画面を書き換えられる回数)が低いこと、モノクロであること、競合技術(液晶や有機EL)と比べてコストが高いことなどから、広く普及するまでには至っていませんでした。
しかしこの数年、リフレッシュレートの向上とカラー電子ペーパーの開発によって、電子リーダーに対する消費者の需要が再び高まってきています。Amazon社は先日、同社の「Kaleido3」カラー技術を使用したKindle Colorsoftを発売しました。リーダーが色鮮やかなカラーディスプレイにアップグレードされたことで、大規模な買い替えサイクルが始まろうとしています。カラー電子ペーパーへの移行によって、販売台数と平均販売価格は今後数年にわたって伸びることになるでしょう。
電子ペーパーの用途としてもう一つ有望なのは、電子棚札(ESL)です。ここ数年、米国のWalmartやAldiといった大手小売企業が自社店舗で積極的にESLを導入しています。従来の棚札管理では、数千種もの商品の価格を変更するために、何時間もかけて棚札を付け替える必要がありました。しかしESLを使えば、人件費の大幅な削減、精度の向上、ダイナミックプライシング(需要と供給に応じて商品やサービスの価格を変えること)が可能になります。例えばWalmartはE Inkの値札を採用することで価格チェックに要する時間を大幅に削減し、その時間を顧客サービスやその他の活動に充てることができました。中国のスーパーマーケットであるHema Freshは、ESLを使用してタイムセールを行うことで、食品廃棄物が25%減少し、売上が15%増加しました。ESLの普及率はまだ低く、大手チェーンが他社に先駆けて導入する事例が中心ですが、システムの成熟とコストの低下に伴い、より広範な普及が見込まれます。
技術向上やコスト改善に伴い、同社技術を使用したデジタルサイネージ(より大きなサイズの電子ペーパー)も登場しています。例えば、屋外にあるバス停の標識に同社のデジタルサイネージは、太陽光発電で稼動し、リアルタイムで交通情報を表示することができます。こうしたディスプレイは従来の液晶画面と異なり、直射日光の下でも(紙のように)問題なく読み取ることができます。日本では、伊豆箱根バスが運行する羽田空港と三島エリアを結ぶ高速シャトルバス(三島羽田シャトル)にE Inkのデジタルサイネージが導入されています。その用途は今後長期にわたって、さらなる広がりを見せるでしょう。デジタルサイネージの市場規模は電子リーダーやESLよりはるかに大きくなると予想されており、同社のさらなる成長要因となる見通しです。
業績の観点でも、同社は目覚ましい成果を上げています。2025年上半期は売上高が前年同期比41%増、純利益が同55%増、営業利益率は34%、純利益率は27%となりました。同社はネットキャッシュポジションが引き続き健全で、配当利回りは2%ほどです。カラー電子ペーパーの採用拡大と、大型デジタルサイネージが持つ高い将来性により、収益と利益率の継続的な拡大が見込まれます。当ファンドは同社がディスプレイの革新を主導し、市場の拡大に乗じることで、長期間にわたって潤沢なリターンをもたらしてくれると考えています。
当ファンドは、引き続き組入銘柄を注視するとともに、今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当⽉は、First Abu Dhabi Bank(アラブ⾸⻑国連邦/⾦融)とSaudi Awwal Bank(サウジアラビア/⾦融)が、いずれもマイナスに影響しました。しかし両行とも堅調なファンダメンタルズを維持し、短期的な逆風にも耐えうる良好なバランスシートを有していると考えます。長期的には、政府主導での石油依存からの脱却、石油以外のセクターへの投資、持続的成長の促進に向けた取り組みが進んでいることから、銀行セクターでは新たな事業機会が継続的に生まれていると考えます。
<通貨>
当月、アジア地域および中東地域の通貨は対日本円で下落し、全体としては当ファンドのリターンにマイナスに影響しました。
今後の見通し
アジア株式市場の見通しは、米国の貿易政策交渉の行方、AI導入の加速、そして、各国市場の動向に左右されています。米国は対中相互関税の適用停止期限をさらに90日延長して11月までとした一方、インドに対する50%の懲罰的関税を含め、多数の国に関税を賦課しました。各国と米国の交渉は今後も続く模様ですが、トランプ氏の関税措置に対抗するため、BRICS諸国は結束を強めています。このような環境下で、企業は地政学的リスクの軽減のため、アジア全域でサプライチェーンの多様化を進めていくことが予想されます。
インド政府は米国から50%という高関税を課されたことによる経済的影響を和らげるため、税制の簡素化と減税を行い、国内消費を強化すると発表しました。同国は長期的な観点から「メイク・イン・インディア」政策を推進し、他国(ロシア、中国、EUなど)との貿易関係を深めるための取り組みを続け、対米輸出への依存軽減に努めています。
当ファンドは先日、インド企業を20社以上訪問しましたが、その大半は現在の一時的な逆風に耐えられる状態にあるという確かな感触が得られました。そうした企業は正規化(非組織化から組織化へ)、現地化(輸入代替)、プレミアム化を通じて国内市場における浸透率を高めていくものとみられ、そこから発生する長期的な投資機会は依然有望です。
ASEAN市場は、米国の関税引き上げと国内政治情勢の不透明さにより、引き続き厳しい状況にあります。同地域の企業はファンダメンタルズがこれまでと同様に盤石でありながら、バリュエーションが一時的に低下しているため、当ファンドは選別的な投資機会が生まれるものと考えて注視しています。
中国、台湾、韓国のテクノロジー関連企業は、目に見える形で底堅く成長を続ける見込みです。AIの利用が消費者と企業の両方で飛躍的に増加することで、半導体サプライチェーン、データセンター、先進コンピューティングに対する投資が促進される見通しで、それがアジアのテクノロジー関連ハードウェアとインフラに対する需要を下支えするでしょう。
今後の運用方針
当ファンドは組入銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと目に見える形の一貫した収益とキャッシュフローに支えられ、不透明な市場環境の中でも力強い耐久力を示してきました。
かねてから述べているように、当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を⾏っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することはきわめて困難であると考えます。まさにそうした理由から、当ファンドは一時的な逆風に耐え(特にアジアの新興国市場)、風が収まった時にさらに強くなれる優良企業の発掘に力を注いでいます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
2025年7月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当月、⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋指数(⽇本を除く、⽶ドル建て)は、前⽉末⽐2.25%上昇しました。 アジア・オセアニアの株式市場を国別で見ると、インドやフィリピンを除き概ね上昇しました。米国の貿易政策によって、世界貿易の先行きは依然として不透明です。トランプ米大統領は新たな国別の関税政策を発表しましたが、今後の交渉には引き続き前向きな姿勢を示しました。
中国・香港市場は、中国政府の「反内巻政策(中国国内における過度な価格競争や生産過剰の抑制を目指す政策)」によって企業の収益性が改善し、合理的な競争につながるとの期待感が高まりました。AI(人工知能)セクターやロボティクスセクターは中国の次なる成長ドライバーとして、加速度的な勢いで市場が拡大しています。NVIDIA社(米国)がH20チップ(AI半導体)の対中国向け輸出を再開したことも、AIに対する市場心理のさらなる向上に寄与しました。
韓国市場は李在明(イ・ジェミョン)新大統領が改革路線を打ち出し、家計支出拡大策、コーポレートガバナンスや株主の権利強化策などが公約として掲げられていることが投資家に好感され、年初来の高値を更新しました。一方で、法人税と証券取引税の引き上げが発表されたことで、一部で利益確定売りが見られました。
タイ市場は、タイ・カンボジアの間で長年にわたって続いてきた国境紛争が再燃したにも関わらず、力強く反発しました。停戦合意後も緊張状態は続いていますが、タイ企業に対する影響は限定的に留まると考えています。
インド市場は、米国が発表したインドからの輸入品に対する関税率が25%と予想を上回ったことから、インド市場は月末にかけて急落しました。
<中東株式>
中東株式市場は地政学的リスクの緩和を背景に、当月も反発を続けました。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前月末比2.42%上昇しました。ブレント原油価格は前⽉から下落して⽉を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は、対日本円で上昇しました。香港ドル、中国人民元、タイバーツなどが対日本円で大きく上昇しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドのパフォーマンスはプラスとなりました。
セクター別では、情報技術セクター、コミュニケーション・サービスセクターなどがプラスに寄与しました。
当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した銘柄は、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、Tencent Holdings(中国/コミュニケーション・サービス)、First Pacific(香港/⽣活必需品)などでした。⼀⽅、マイナスに影響した銘柄は、eMemory Technology(台湾/情報技術)、SBI Cards & Payment Services(インド/金融)、Bharti Airtel(インド/コミュニケーション・サービス)などでした。
当月、当ファンドのパフォーマンスにプラスに貢献した「MediaTek(台湾/情報技術)」をご紹介します。
同社は携帯電話、無線通信機器、自動車、コンピューティング・サーバー、家電製品向けのICチップを設計する半導体ファブレス企業(自社で生産施設を持たない企業)です。ここ数年でモバイル特化型企業から、エッジおよびクラウド・コンピューティング・アプリケーション全般を手がける包括的なAI活用型企業へと進化してきました。2025年第2四半期現在、スマートフォン部門が売上高全体の52%、スマートエッジプラットフォームが同43%、パワーマネージメントICが同6%を占めています。
スマートフォン向けSoC(システムオンチップ)分野では、同社とその長年のライバルであるQualcomm社(米国)が、依然としてAndroidスマートフォン市場をほぼ独占しています。Qualcomm社は高価格帯のスマートフォンで大きな市場シェアを持ち、同社は中低価格帯で高いシェアを占めていますが、近年は、同社の最新SoCである「Dimensity」シリーズが高価格モデルのシェア拡大に寄与しています。5Gの普及が進み、中国のスマートフォンメーカーによる同社製品の採用増加により、同社の2025年第1四半期におけるスマートフォン向けチップセットの世界市場シェアは36%と、Qualcomm社の28%を上回りました。AI搭載スマートフォンの次の波がくれば、スマートフォンSoCセグメントの成長率はさらに上昇することでしょう。業界予測によると、生成AI搭載スマートフォンは2028年までに総出荷台数の54%を占めるまでに増加する見込みで、同社はその恩恵を受ける上で好ましい位置づけにあると考えています。
スマートフォン以外に目を向けると、同社は成長性の高い隣接市場へも進出しています。同社の車載用チップ事業は順調に拡大しており、新型SoCの「Dimensity Auto Cockpit」はNVIDIA社(米国)のGPU(画像処理半導体)を組み込むことで高度な車載AI体験を実現しています。同社は自動車部門の売上が2025年を通じて大幅に成長すると見込んでいます。
何よりも重要なのは、同社がASIC(特定⽤途特化型IC)事業を通じてクラウドAIインフラ市場に積極的に進出していることです。同社は最新のアーキテクチャ設計とTaiwan Semiconductor Manufacturing Company社(台湾)の最先端3nm(ナノメートル)プロセス技術を活用し、クラウドサービスプロバイダー向けのカスタムAIアクセラレータチップを開発しています。同社経営陣は、AIインフラの旺盛な需要を生かして2026年にASIC売上高を10億米ドルに伸ばすという意欲的な目標を掲げています。
同社の財務は引き続き健全で、2025年第2四半期の売上高は前年同期比18%増となりました。また営業利益率は19.5%、純利益率は18.7%でした。キャッシュフロー創出力も、配当利回りが約4%と比較的高水準です。PER(株価収益率)は現在約20倍で、引き続き投資妙味があると判断しています。同社の競争力の源泉は、研究開発能力が堅固であるという点、さらに経営陣が技術の進化を通じて市場の荒波を乗り切る能力を備えているという点にあります。主要事業部⾨であるスマートフォン、スマートエッジ、コンピューティング、⾃動⾞は、いずれも今後数年間で加速度的に成⻑すると見込まれることから、引き続き同社を当ファンドの主要組⼊銘柄として位置付けています。
当ファンドは、引き続き組入銘柄を注視するとともに、今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
First Abu Dhabi Bank(アラブ⾸⻑国連邦/⾦融)は、2025年上半期の業績が好調で、当ファンドのパフォーマンスにプラスに貢献しました。一方、Saudi Awwal Bank(サウジアラビア/⾦融)は収益と今後の見通しが悪化したことから、わずかながらマイナスに影響しました。しかし両行とも堅調なファンダメンタルズを維持し、短期的な逆風にも耐えうる良好なバランスシートを有していると考えます。長期的には、政府主導での石油依存からの脱却、石油以外のセクターへの投資、持続的成長の促進に向けた取り組みが進んでいることから、銀行セクターでは新たな事業機会が継続的に生まれていると考えます。
<通貨>
当月、アジア地域および中東地域の通貨は対日本円で上昇し、全体としては当ファンドのリターンにプラスに貢献しました。
今後の見通し
アジア株式市場の見通しは、進展中の米国の貿易政策交渉の行方、AIの急速な発展、各国市場の動向に左右されています。トランプ米大統領の関税政策を巡る先行き不透明感が、引き続き市場の変動要因となっていますが、今後数か月の間に貿易政策の方向性が明確になれば、企業の長期的投資計画が再開するきっかけになる可能性があります。企業はアジア全域でサプライチェーンの多様化を進め、地政学的リスクの軽減に努めるでしょう。
関税という逆風が吹いているにもかかわらず、AIはアジア地域全体で長期的成長の原動力となっています。AI技術の大幅な進歩によって開発コストが下がり、半導体サプライチェーン、データセンター、先進コンピューティングに対する投資が促進されていますが、台湾、韓国、マレーシアといった市場がその恩恵を享受しています。米国と中国の大手テクノロジー企業は引き続き設備投資の拡大を計画しており、それがアジアのテクノロジー関連ハードウェアとインフラに対する需要を下支えしています。
タイ市場は2024年、国内経済の低迷と政情不安が原因で、パフォーマンスがアジア地域市場全般を下回りました。そのため一部優良企業のバリュエーションがますます割安になっていると考えます。観光業の回復と海外直接投資の再開によって市場心理が好転し、選別的な投資機会が生まれる可能性があるため、当ファンドは同国市場の動向を注視しています。
今後の運用方針
当ファンドは組入銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと目に見える形の一貫した収益とキャッシュフローに支えられ、不透明な市場環境の中でも力強い耐久力を示してきました。
かねてから述べているように、当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を⾏っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することはきわめて困難であると考えます。まさにそうした理由から、当ファンドは一時的な逆風に耐え(特にアジアの新興国市場)、風が収まった時にさらに強くなれる優良企業の発掘に力を注いでいます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
2025年6月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当月、⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋指数(⽇本を除く、⽶ドル建て)は、前⽉末⽐5.78%上昇しました。中東地域における地政学的リスクの高まりによって金融市場は一時的に混乱をきたしましたが、イランとイスラエルの停戦合意を受けて急速に回復しました。また、米中両国はジュネーブで貿易協議を行い、貿易規制を一部緩和すること、さらなる交渉を行うことで合意しました。
韓国市場は当月大幅に上昇しましたが、その要因となったのは米国株式市場の記録的な上昇でした。急速な拡大を続けるAI(人工知能)ソリューションの分野では、関連企業を巡って明るいニュースが次々に発表されるなど、良好な展開が続いています。韓国の大統領選挙は李在明(イ・ジェミョン)氏が勝利しましたが、同氏はコーポレートガバナンス改革の推進と国内消費の活性化を公約に掲げています。これを受けて投資家の間に韓国の企業価値向上プログラムが急速に進展する可能性があるという楽観的な見方が広がったことなどから、韓国株式に対する投資家心理が好転しました。
一方、タイ市場とインドネシア市場は軟調な値動きとなりました。タイ市場の重しとなったのは、新たな政治的混乱が発生したことでした。これはペートンタン首相がカンボジアの前首相フン・セン氏との電話の中でタイ軍幹部を批判したとされる音声が流出した問題で、倫理規範に違反したとして職務停止命令を受けたことによるものです。インドネシアではプラボウォ大統領の目玉政策である学校給食無償化制度や低価格住宅支援制度の実施が依然難航しています。低所得者層向けの支援策は遅れる可能性が高く、消費マインドの低下要因となっています。
<中東株式>
当月、中東株式市場はイランとイスラエルの軍事衝突直後に急落しましたが、その後は力強い反発を見せました。世界で消費される石油の約20%が通過するとされるホルムズ海峡への影響が懸念され、原油価格が急騰しましたが、停戦合意が発表されたことで市場心理は落ち着きを取り戻し、市場は急反発しました。結果、MSCI GCC(湾岸協力理事会)諸国指数(米ドル建て)は前月末比3.14%上昇しました。ブレント原油価格は前⽉から上昇して⽉を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は、対日本円で上昇しました。台湾ドル、オーストラリアドル、韓国ウォンなどが対日本円で上昇し、フィリピンペソなどが対日本円で下落しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドのパフォーマンスはプラスとなりました。
セクター別では、情報技術セクター、金融セクターなどがプラスに貢献した⼀⽅、ヘルスケアセクターがマイナスに影響しました。
当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した銘柄は、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、China State Construction International Holdings(香港/資本財・サービス)、AIA Group(香港/金融)などでした。⼀⽅、マイナスに影響した銘柄は、Bank Central Asia(インドネシア/金融)、Binjiang Service Group(中国/資本財・サービス)、Kweichow Moutai(中国/⽣活必需品)などでした。
Lemon Tree Hotels:インドを代表する中間層向けホテルチェーン
当ファンドの主要保有銘柄の一つであるインドの「Lemon Tree Hotels」は、インドを代表する中価格帯のホテルチェーンです。「Aurika Hotels & Resorts」、「Lemon Tree Premier」、「Lemon Tree Hotels」、「Red Fox by Lemon Tree Hotels」、「Keys Prima by Lemon Tree Hotels」、「Keys Select by Lemon Tree Hotels」、「Keys Lite by Lemon Tree Hotels」という7つのブランドで100軒を超えるホテルを運営しており、2025年初頭時点の運営客室数は10,269室です。同社のポートフォリオは計画中のものも含めるとホテル数は200軒、客室数は17,000室を上回っています。同社グループは70以上の都市で幅広く事業を展開しており、主要都市にもれなく進出した上で、第2階層、第3階層都市にも深く浸透するという戦略を掲げています。
インドのホテル業界は開発の余地が十分にあると考えられます。2025年現在、同国のブランドホテルの客室数は20万室未満ですが、中国の2大チェーン(Jin Jiang International HoldingとH World Group)は中国国内でそれぞれ100万室以上を運営しています。また、2024年のインドの人口100万人当たりホテル客室数はわずか283室と、中国の3,161室や日本の7,560室と比べて大きく遅れをとっており、未充足の需要が大幅に残されていることがわかります。所得の伸びと国内観光の急増によって需要が高まっていますが、規制面の障害、土地取得面の課題、高額な設備投資によって供給が伸び悩んでいます。また、客室料金が低く、客室を新設しても収益増がそれほど見込めないため、運営会社の多くが収容能力の急拡大に及び腰です。
Lemon Tree Hotelsは創業当初、資本集約的なビジネスモデルを採用し、低階層都市に低価格で質の高い宿泊施設を提供することに事業の力点をおいていました。しかし次第にアセットライトな戦略へと転換し、管理客室とフランチャイズ契約の割合が拡大してきています。2025年初頭時点では客室の約44%が管理客室またはフランチャイズで、新設計画客室の大半が管理契約とフランチャイズ契約によるものであり、この割合は今後数年間でさらに増加する見込みです。
同社グループはさらに、より幅広い顧客層の獲得に向け、高階層都市で高級ブランド「Aurika」を展開しています。2023年10月にはムンバイ国際空港近くに旗艦ホテルとなる「Aurika Mumbai Skycity」を開業しました。1年の立ち上げ期間を経て、稼働率は83%、平均客室単価(ADR)は10,566インドルピーに達しました。(Lemon Tree Hotels全体の稼働率は77.6%、ADRは7,042インドルピー)。同社が顧客構成の最適化(航空会社の乗務員への依存から脱却し、出張者およびレジャー旅行者への移行)を続けているため、ADRは引き続き上昇すると予想しています。Aurikaブランドの構築の成功を受けて、今後も「Aurika」ホテルの開発が予定されています。
また、同社は中間層向けブランドではADRの改善に向け、老朽化した客室の改装に着手しています。改装作業の多くは2023年から2024年にかけて実施されたため、設備投資額が増加し、収益減につながりました。しかし設備投資はピークを過ぎており、経営陣によると、改装が進むにつれて収益と利益率は改善する見込みです。
インドのホテル業界は、国内観光や出張者の増加、ブランド客室の供給不足が続いていることから、今後も業界全体の成長が期待されます。同社は強力なブランド力を有し、アセットライト戦略を拡大し、運営効率の改善と高付加価値セグメントへの移行に注力していることから、こうした業界全体の成長の恩恵を受ける上で有利な立場にあります。設備投資がピークを迎え、キャッシュフローが改善していることから、同社は収益性と投下資本利益率の向上が期待され、インドの中間層、中上流層向けホテル部門において主導的な立場を維持できるものと考えます。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月、First Abu Dhabi Bank(アラブ⾸⻑国連邦/⾦融)とSaudi Awwal Bank(サウジアラビア/⾦融)は、イランとイスラエルの軍事衝突発生直後に下落しましたが、月後半に入ると市場全体と歩調を合わせる形で回復に向かいました。両行とも堅調なファンダメンタルズを維持し、短期的な地政学的ショックに耐えうる健全なバランスシートを有しています。長期的にみると、政府主導で石油依存からの脱却、石油以外のセクターへの投資、持続的成長の促進に向けた取り組みが進んでいることから、銀行セクターでは新たな事業機会が継続的に生まれていると考えます。
<通貨>
当月、アジア地域および中東地域の通貨は対日本円で上昇し、全体としては当ファンドのリターンにプラスに貢献しました。
今後の見通し
当月はシンガポールとマレーシアで20社以上のASEAN企業と会談し、同地域の経済発展の状況について貴重な知見を得ることができました。今回の取材旅行で最も力を入れたのは、マレーシアのジョホール州を訪れ、ジョホール・シンガポール経済特別区の変革力を直接評価することでした。
ジョホール州はシンガポールに比べて人件費や地代が安いため、製造業や物流業による同州への移転が進んでいます。マレーシアは電力価格が安く、土地も確保しやすいため、データセンターの設置拠点としても注目を集めつつあります。シンガポールとジョホール州を結ぶ高速輸送システム(RTS)は2026年に完成する予定で、1時間あたり1万人の輸送能力が確保できることから、国境を越えた往来が盛んになる見込みです。当ファンドはこの統合経済圏がもたらす長期的な経済効果について楽観的な見方をしています。
今回はペナン州にある半導体のOSAT(組み立てとテストなど、半導体の後工程を請け負うこと)工場も数か所訪問しました。ペナン州のOSAT企業には世界中の多国籍企業から業務を受注してきた実績があることから、今後も引き続き旺盛な需要とAIチップ複雑化の恩恵にあずかることでしょう。インドも半導体分野で能力を高めていますが、OSAT分野でペナン州の盤石なエコシステムと専門知識に対抗できるようになるには、少なくともあと数年は必要だと考えます。
今後の運用方針
当ファンドは組入銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと目に見える形の一貫した収益とキャッシュフローに支えられ、不透明な市場環境の中でも力強い耐久力を示してきました。
かねてから述べているように、当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を⾏っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することはきわめて困難であると考えます。まさにそうした理由から、当ファンドは一時的な逆風に耐え(特にアジアの新興国市場)、風が収まった時にさらに強くなれる優良企業の発掘に力を注いでいます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
2025年5月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当月、⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋指数(⽇本を除く、⽶ドル建て)は、前⽉末⽐5.13%上昇しました。
台湾、韓国、中国・香港市場を中心に、幅広い市場が上昇しました。米中両国が相互関税の発動を部分的に90日間延期したことで、全面的な貿易戦争は回避されるかもしれないという楽観的な見方が生まれたことも、株価上昇に拍車をかけました。中国にとって比較的好ましい状況が長続きするかは不透明ですが、少なくとも両国は話し合いを続けています。また、トランプ大統領は米国際貿易裁判所から、輸入品に対して全面的に関税を課すことは大統領の権限を逸脱しているという判断を突きつけられました。
中国市場と香港市場は関税発動の延期を受けて上昇基調を維持し、そのため多数の企業が貿易関係やサプライチェーンを調整する時間を確保することができました。香港市場については、大手電池メーカーのContemporary Amperex Technology社(中国)をはじめ、大型の新規株式公開(IPO)が数件実施されたことも支援材料となりました。しかし、EV(電気自動車)セクターは月後半以降、逆風にさらされました。これはBYD Company社(中国)が大半の車種で値下げを行うとの発表を受け、競合他社も追随を余儀なくされたためで、価格圧力は利益率に大きな懸念をもたらし、とりわけ小規模EVブランドにはその影響が色濃く現れました。
インド市場は、英国との間で自由貿易協定(FTA)を締結したという発表や、パキスタンとの紛争による緊張緩和、経済全般のモメンタムが改善など、複数の好材料に牽引される形で力強く上昇しました。また、当月は中小型株が大型株をアウトパフォームしました。
一方、台湾市場と韓国市場ではテクノロジーセクターの市場心理が改善し、ASEAN諸国では7月に迫った貿易交渉の期限を前に、引き続き米国との交渉が進められています。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場のパフォーマンスはまちまちでした。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前⽉末⽐2.13%下落しました。ブレンド原油価格は前月から下落して月を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は、対日本円で上昇しました。特に台湾ドル、韓国ウォン、インドネシアルピアなどが対日本円で上昇しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドのパフォーマンスはプラスとなりました。
セクター別では、金融セクター、情報技術セクターなどがプラスに貢献した⼀⽅、資本財・サービスセクター、ヘルスケアセクターがマイナスに影響しました。
当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した銘柄は、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、AIA Group(香港/金融)、Hong Kong Exchange & Clearing(香港/金融)などでした。⼀⽅、マイナスに影響した銘柄は、China State Construction International Holdings(香港/資本財・サービス)、Aristocrat Leisure(オーストラリア/一般消費財・サービス)、Binjiang Service Group(中国/資本財・サービス)などでした。
2025年の始めに、当ファンドはSingapore Telecommunications(シンガポール/コミュニケーション・サービス、以下Singtel社)を新たに組み入れました。同社はシンガポールに本社を置く大手通信デジタルインフラ・グループで、アジア太平洋地域で通信、データセンター、ITサービス事業を展開しています。モバイルサービスでは、2024年3月時点でシンガポールで約46%、オーストラリアで約31%、関連会社を通じてインドで約33%(Bharti Airtel社)、インドネシアで約50%(Telkomsel社)、タイで約47%(AIS社)、フィリピンで約50%(Globe社)と、圧倒的な市場シェアを誇っています。同社はそうした存在感の高さを生かし、データ利用量の増加、ARPU(ユーザー1⼈当たりの平均売上を⽰す指標)の安定または上昇、AI(人工知能)導入によるデータセンターおよび企業向けサービスの需要増加の恩恵を受けています。
同社の主力市場はシンガポールとオーストラリアですが、いずれも成熟度が高く、加入者数の伸びは限られています。そうした状況にもかかわらず、同社はシンガポールでトップクラスの市場シェアを維持し、高度なモバイル技術、高付加価値サービス、統合型サービス(モバイル、ブロードバンド、有料テレビ)を提供することで、高所得層に対する訴求力を高め、ARPUを高く保っています。オーストラリアでは子会社のOptus社が2024年3月期に減損を計上していましたが、2025年3月期は業績が回復しました。この回復には価格統制、コスト最適化、TPG Telecom社(オーストラリア)とのネットワーク共有に関する新規契約が寄与しており、現在Optus社のEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)マージンは安定的に推移しています。シンガポールとオーストラリアは合わせてグループのEBITDAの大半以上を占め、キャッシュフローを安定的に生成して、新たな成長に向けた投資を支えています。
同社の新たな成長戦略の柱は、デジタルインフラ・プラットフォームの積極的な拡大にあります。同社はデータセンター事業の拡大を模索し、Kohlberg Kravis Roberts社(米国)、日立製作所、NVIDIA社(米国)との提携を通じて2027年までに200MWの容量を確保するという目標を掲げています。こうした次世代AI対応型施設は、高い利益率(目標EBITDA50%)を実現し、それによって地域のデジタルインフラにおける同社の優位性が高まると考えられます。さらに、同社のITサービス部門であるNCSは東南アジアとオーストラリアに進出して30億シンガポールドルの売上をあげるまでに成長しており、デジタル変革とクラウド移行の流れに乗ることで、収益を大幅に伸ばす見通しです。
同社の収益と企業価値を支えるもう一つの重要な要素は、アジア新興国多数で保有している大手通信事業者の株式で、Bharti Airtel社(インド)、Telkomsel社(インドネシア)、AIS社(タイ)、Globe社(フィリピン)などがあります。これら関連会社はいずれも各市場で最大手または第2位の通信事業者で、収益に底堅く寄与し、データ主導で急成長を遂げつつある新興国経済の活力に乗じる上で欠かせない存在となっています。中でもBharti Airtel社は過去2年間、インドにおける「料金正常化」を通じたARPU増加とデータ収益の急速な拡大の恩恵で収益の牽引役としての役割を果たしており、株価が2倍以上に上昇しています。2025年度におけるSingtel社の関連会社における税引前利益は25億シンガポールドルに達しており、主力事業(シンガポールとオーストラリア)のEBITDAが38億シンガポールドルだったことからも、貢献度の高さが伺われます。
Singtel社は2024年5月にグループを複数年で従来の電話会社から多角的デジタル事業へと変革する道筋を示した戦略計画「Singtel28(ST28)」を発表しました。同計画では、(1)非主力資産を整理して関連株式を一部売却し、より成長性の高い分野に資金を充当することで価値を高めること、(2)投資を通じてデータセンター、デジタルプラットフォーム、ITサービスを拡大し、クラウド、AI、事業経営のデジタル化に由来する需要拡大を取り込むこと、(3)増配と自社株買いを通じて株主還元を強化し、ROE(株主資本利益率)を高めることを主眼としています。同社は計画策定後に複数資産の売却を発表し、デジタルインフラに資本を再配分するとともに、2028年までの3年間で最大20億シンガポールドルの自社株買いに着手するとしました。
以上を総括すると、同社は市場における圧倒的な存在感、主力事業の底堅いキャッシュフロー、付加価値の高い関連会社群、ST28変革の規律ある遂行を通じ、アジアにおけるデジタル経済進展の波に乗じる形で持続可能な成長と株主還元の向上を実現できる位置につけていると判断します。グローバル市場の不安定さと貿易関税に由来する先行き不透明感を踏まえると、同社を組み入れれば、デジタルインフラ関連事業を通じた力強い成長が見込める国内通信事業への投資が実現すると言ってよいでしょう。同社の株式にはディフェンシブな特性があり、世界のマクロ環境に関わりなく安定的に上昇する力を保持していると考えます。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月は、First Abu Dhabi Bank(アラブ首長国連邦/金融)がプラスに貢献し、Saudi Awwal Bank(サウジアラビア/金融)がマイナスに影響しました。政府主導で石油依存からの脱却、石油以外のセクターへの投資、持続的成長の促進に向けた取り組みが進んでいることから、銀行セクターでは新たな事業機会が継続的に生まれていると考えます。
<通貨>
当月、アジア地域および中東地域の通貨は対日本円で上昇し、全体としては当ファンドのリターンにプラスに貢献しました。
今後の見通し
米中両国は一部関税の発動を90日間延期することで合意しましたが、今後の状況は予断を許しません。中国がレアアースの輸出制限を続ける一方で、米国は中国を標的にした追加的な半導体規制を発表し、緊張が再燃しています。また、アジア各国では、相互関税の交渉期限を前に、米国への前倒し輸出が急増しています。貿易交渉に失敗すれば「貿易の崖」が立ちはだかり、夏頃から世界貿易とサプライチェーンに深刻な混乱が生じる可能性があります。
米国債利回りは国家財政の健全性に対する懸念の高まりを受けて急上昇しました。こうした懸念が高まったのは、トランプ大統領が「大きく美しい法案」と呼ぶ税制改革法案で大幅な歳出増加が見込まれるにもかかわらず、貿易関税による歳入増加分では多額の資金需要を賄えない可能性が明らかになったためです。投資家は米国資産の保有を続けることに警戒感を示し、その多くが米国外への分散投資を模索しています。こうした動きはアジア株式の押し上げ要因となる可能性があります。
当ファンドは引き続き慎重姿勢をとり、国内事業中心の銘柄と高配当銘柄を優先的に組み入れて、市場の変動から来る影響を緩和しています。当ファンドが投資している銘柄には、First Pacific(香港/⽣活必需品、ASEAN諸国で幅広く事業を展開)、Singapore Telecommunications(配当が安定、5Gを域内全体に展開)、Binjiang Service Group(中国の不動産管理会社で事業基盤が盤石)などがあり、いずれもそうしたディフェンシブな姿勢を反映した銘柄です。
今後の運用方針
当ファンドは組入銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと目に見える形の一貫した収益とキャッシュフローに支えられ、不透明な市場環境の中でも力強い耐久力を示してきました。
かねてから述べているように、当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を⾏っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することはきわめて困難であると考えます。まさにそうした理由から、当ファンドは一時的な逆風に耐え(特にアジアの新興国市場)、風が収まった時にさらに強くなれる優良企業の発掘に力を注いでいます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
2025年4月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当月、⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋指数(⽇本を除く、⽶ドル建て)は、前⽉末⽐1.60%上昇しました。しかしこうした良好なパフォーマンスが出ても、株式市場が月内を通じて激しい上下動を繰り返したということの方にどうしても目が向きます。その発端となったのは、トランプ米大統領が「解放の日」に発表した関税の影響が、範囲の面でも規模の面でも市場関係者の予想をはるかに上回ったことでした。対米貿易に対する依存度が大きいアジア諸国のほぼすべてに甚大な影響がおよぶという見方が投資家の間に広がったことから、MSCIアジア太平洋指数(⽇本を除く、米ドル建て)は発表後数日で10%以上下落しました。
ところが当初はこれほど大きい衝撃があったにもかかわらず、中国以外の大半の国が報復措置を取らず、90日間の発動一時停止期間中に交渉を行う意欲を示したため、アジアの株式市場は総じて徐々に回復しました。現在は米国とアジア諸国の交渉が進行中で、米国と中国の協議は行き詰まったままです。
輸出と経済成長の鈍化に対する懸念から、アジア諸国の中央銀行は年内に金融緩和を実施し、自国経済の下支えを図る意向を示しています。中国も景気刺激策を通じて家計の消費支出を押し上げ、企業に輸出市場の米国以外への拡大を促すことで、貿易混乱の影響を和らげる措置に乗り出しました。BYD Company社(中国)のように対米輸出に対する依存度が低い企業は、競争力の高いEV(電気自動車)を魅力的な価格設定で供給することで、海外市場でも力強い成長を続けています。
こうした状況の中、インドは比較的有利な立場にあるようです。Apple社(米国)がインドにおけるiPhone生産の拡大を計画しているという報道が流れたことで、これに追随して今後インドで設備投資を行う企業が増え、インドが中国に代わる生産拠点としての位置づけを得る可能性があると考えます。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場のパフォーマンスはまちまちでした。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前⽉末⽐0.18%下落しました。ブレント原油価格は前⽉から下落して⽉を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は、対日本円で下落しました。特に中国人民元、インドネシアルピア、香港ドルなどが対⽇本円で大きく下落しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドのパフォーマンスはマイナスとなりました。
セクター別では、資本財・サービスセクター、情報技術セクターなどがプラスに貢献した一方、⾦融セクター、一般消費財・サービスセクターなどがマイナスに影響しました。
当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した銘柄は、eMemory Technology(台湾/情報技術)、China State Construction International Holdings(香港/資本財・サービス)、First Pacific(香港/⽣活必需品)などでした。一方、マイナスに影響した銘柄は、Tencent Holdings(中国/コミュニケーション・サービス)、Haier Smart Home(中国/⼀般消費財・サービス)、AIA Group(香港/金融)などでした。
当ファンドは当月、Binjiang Service Group(中国/資本財・サービス)を新たに組み入れました。同社は主に中国の浙江省杭州市を中心に事業を展開する大手不動産管理会社です。不動産開発事業者として著名なBinjiang Groupの一部門として設立された同社は、2019年3月に分社独立し、香港証券取引所に上場しました。
中国の不動産管理サービスセクターは、都市化、規制緩和、消費者の期待の高まりを背景に急速に拡大しています。特に2014年には価格規制が緩和されて企業による管理手数料の調整が可能になり、収益性とサービスの質が向上しました。また、都市人口の継続的な増加も、住宅・商業用不動産サービスの需要が拡大する要因となっています。さらに中国の家庭が高い料金を支払ってでも生活水準を向上させ、付加価値の高いサービスを得たいと考えていることも、同セクターの支援材料となっています。中国では不動産市場が低迷しているなかでも、不動産管理サービスは必要不可欠なものであることから、その需要は依然堅調に推移しています。
同社の主力事業は以下の2つです。
- セキュリティ、清掃、修理・メンテナンス、土地管理など住宅・商業用不動産管理サービス
-
ハウスキーピング、不動産仲介、住宅リフォーム、駐車場・倉庫管理、その他コミュニティサービスなど付帯サービス
高所得層向けセグメントと杭州市一帯に特化
同社は長い年月をかけて高品質で高級志向の物件に特化した不動産管理会社としての地位を確立してきました。同社が事業拠点としている杭州市とその周辺は、中国の中でも高所得層の多い場所です。このように戦略的に事業範囲を絞ることで、同社は業界平均を上回る管理費と高い利益率を実現しています。平均月額手数料は1平米あたり4.1人民元で、業界平均の2.7人民元を大きく上回っています。品質と安定性を重視する高所得層顧客をターゲットにすることで価格競争が回避できるため、中国における人件費の上昇をよそに、収益力の持続性が高まっているのです。手数料を引き上げて債権リスクを低く保っていることも、利益率がますます底堅く推移している要因となっています。
親会社と第三者開発事業者がともに成長の原動力
同社は強力なブランド力によってグループ会社と独立系開発事業者の両方からプロジェクトを確保し、管理延床面積を拡大してきました。同社は2015年から2024年にかけて第三者開発事業者によるプロジェクトの延床面積全体に占める比率を大幅に高めることにより親会社に対する依存度を引き下げ、質の高い管理サービスを求める開発事業者や不動産所有者の優先発注先としての地位を確保しています。なお、2024年時点で管理延床面積は6,790万平米(グループ会社45%、第三者55%)、契約延床面積は9,290万平方メートルに達しています。管理延床面積と契約延床面積に差があるのは、今後数年の間に物件が完成し、引き渡しが行われることによって、事業ポートフォリオにその分のプロジェクトが追加されるということであり、不動産セクターの低迷が続く中にあって、同社の将来的成長力が確固たるものであることを裏付ける数字だと言えるでしょう。
付帯サービスによる収益源の多様化
同社は強力なブランド力を生かしてテナントと開発事業者の両方から付帯サービスを受注し、収益基盤のさらなる多様化にも成功しています。そうしたサービス(特に住宅リフォーム)はこの数年間における成長の原動力で、同社の収益力と品質に対する評価が高まる要因となっています。
割安なバリュエーションと高い配当利回り
同社の売上高は、中国不動産セクター全体の低迷をよそに、過去5年間で年平均約39%成長しています。純利益率は15.2%、ROE(株主資本利益率)は36%で、バランスシート上のネットキャッシュも潤沢です。予想PERは11倍、配当利回りは約6.5%で、成長性、収益性、株主還元のいずれをとっても申し分ありません。中国不動産市場の回復が始まればそれも追い風となるでしょうが、同社の投資テーマの根底にあるのは高所得層への注力、多様な成長源、強固な財務基盤です。したがって、同社は当ファンドにとって魅力的な投資先であると考えます。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月は、First Abu Dhabi Bank(アラブ首長国連邦/金融)がプラスに貢献し、Saudi Awwal Bank(サウジアラビア/金融)がマイナスに影響しました。原油価格の下落で事業環境が悪化しているとはいえ、両行は中東地域で進行している経済改革の恩恵に浴する上で引き続き好ましい位置につけていると考えます。政府の主導によって石油依存からの脱却、石油以外のセクターへの投資、持続的成長の促進に向けた取り組みが進んでいることから、銀行セクターには新たな事業機会が次々と生まれていると考えます。
<通貨>
当月、アジア地域および中東地域の通貨は対日本円で下落し、全体としては当ファンドのリターンにマイナスに影響しました。
今後の見通し
トランプ米大統領が相互関税の一部を90日間停止すると発表したことで、市場には一時的に安心感が流れましたが、各国との交渉の行方は依然として不透明です。インド、台湾、ベトナムといったアジアの国々は米国からの輸入を増やすことで関税の引き下げを実現するという狙いで交渉に臨んでいますが、シンガポールのローレンス・ウォン首相がシンガポール議会における演説で指摘した通り、様々な国で保護主義への移行が進んでいるのはルールに基づくグローバリゼーションの終焉を告げる兆候に他なりません。
中国はまだ交渉のテーブルについておらず、「報復、刺激、交渉」というアプローチを採用しています。足元の関税合戦は米国と中国のいずれにとっても持続不可能で、両国経済に重大な影響を及ぼすことになるでしょう。世界経済に恒久的な打撃が及ぶのを防ぐためにも、双方が話し合いを始め、状況の悪化を未然に回避することが望まれます
当ファンドは引き続き慎重姿勢をとり、国内事業中心の銘柄と高配当銘柄を優先的に組み入れて、市場の変動から来る影響を緩和しています。最近組み入れた銘柄には、First Pacific(香港上場のコングロマリット、ASEAN諸国で幅広く事業を展開)、Singapore Telecommunications(シンガポール/コミュニケーション・サービス、配当が安定、5Gを域内全体に展開)、Binjiang Service Group(中国の不動産管理会社で事業基盤が盤石)などがあり、いずれもそうしたディフェンシブな姿勢を反映した銘柄です。
今後の運用方針
当ファンドは組入銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと目に見える形の一貫した収益とキャッシュフローに支えられ、不透明な市場環境の中でも力強い耐久力を示してきました。
かねてから述べているように、当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を⾏っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することはきわめて困難であると考えます。まさにそうした理由から、当ファンドは一時的な逆風に耐え(特にアジアの新興国市場)、風が収まった時にさらに強くなれる優良企業の発掘に力を注いでいます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
2025年3月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当月、⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋指数(⽇本を除く、⽶ドル建て)は、前⽉末⽐0.42%下落しました。 パフォーマンスはアジア各国でまちまちで、関税政策を巡る不透明感、米国の景気後退懸念、AI(人工知能)に関する市場心理の悪化が投資家の信頼感を損なう要因となりました。米トランプ大統領が米国に輸入される自動車に25%の関税を課すと発表し、相互関税の発表も予想されることから、世界的に景況感が悪化しました。
とりわけパフォーマンスが軟調だったのは台湾市場でした。米国の関税政策を巡る不透明感とAIに関する市場心理の悪化がいずれも株価の重しとなりました。また、中国のAI開発企業DeepSeekが従来より大幅に低いコストで高性能のAIを開発したことで、テクノロジー銘柄が高い成長率を維持するという期待感が薄まり、株価が急反落しました。それを受けてAIサーバーや機器の需要が予想を下回るという懸念が広がり、関連企業の業績が下方修正されました。
中国市場と香港市場は、不動産セクターに安定化の兆しが出てきたことやバリュエーションが割安であることから、底堅く推移しました。Alibaba Group Holding社(中国)の蔡崇信(ジョセフ・ツァイ)会長がデータセンター投資におけるバブルの可能性を警戒する発言をしたことが香港ハンセンテック指数の下落材料となりましたが、投資家の関心が再燃したことで、これまでの勢いは保たれました。また、BYD Company社(中国)とXiaomi Corporation社(中国)が生産能力拡張に向けて大規模な資金調達を行ったことは、中国EV(電気自動車)企業の市場シェアと普及率の拡大に対する自信の現れと考えられます。
インドネシア市場は前月の急落から当月は小幅上昇に転じました。新たに設立された政府系投資ファンドにガバナンス上の懸念があることや、国軍法の改正によって現役軍人の政府機関に対する監視を強化する道が開かれたことから、投資家は依然として慎重姿勢を維持しています。1月と2月の税収が低迷したことも、プラボウォ大統領の推進する「学校給食無償化」制度の持続性に関する懸念が高まる要因となりました。
一方、インド市場では、Nifty50指数が5か月連続で下落したあと力強い回復を見せ、当月は6.30%上昇しました。その原動力となったのは、銀行に対する規制緩和、外国機関投資家の投資の再開、民間消費や政府支出の拡大など、経済指標が良好だったことが考えられます。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場のパフォーマンスはまちまちでした。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前⽉末⽐0.40%上昇しました。ブレント原油価格は前⽉から下落して⽉を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は、対日本円でまちまちの値動きをみせました。インドルピー、タイバーツなどが対日本円で上昇し、韓国ウォン、台湾ドルなどが対日本円で下落しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドのパフォーマンスはマイナスとなりました。
セクター別では、コミュニケーション・サービスセクター、金融セクターなどがプラスに貢献した⼀⽅、情報技術セクター、資本財・サービスセクターなどがマイナスに影響しました。
当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した銘柄は、Bharti Airtel(インド/コミュニケーション・サービス)、Lemon Tree Hotels(インド/⼀般消費財・サービス)、SBI Cards & Payment Services(インド/金融)などでした。⼀⽅、マイナスに影響した銘柄は、eMemory Technology(台湾/情報技術)、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、China State Construction International Holdings(香港/資本財・サービス)などでした。
当月は、当ファンドのパフォーマンスにプラスに貢献した「Bharti Airtel」をご紹介します。
Bharti Airtelはインドの大手通信会社で、多様なサービスポートフォリオを有し、国際的に大きな存在感を示しています。同社は1995年の創業以来、総合的通信ソリューション事業者へと発展し、移動体音声・データ通信サービス、家庭用ブロードバンド、デジタルTV、企業向けソリューション、デジタルサービスなどを提供しています。インド以外にもアフリカと南アジアで事業を展開し、インド国内の約4億1,400万人を含め、全世界で約5億7,700万人以上の顧客にサービスを提供しています。
同社の主な事業部門は以下の通りです。
- モバイルサービス(インド):
移動体音声・データ通信サービスを中心とする部門。インドは依然としてプリペイド(前払い)市場が主流で、加入者のほとんどがプリペイドプランを選択している。同社のインドにおける市場シェアは、首位を行くReliance Jio社に次ぐ地位を占めている。 - エンタープライズソリューション:
企業にクラウドサービス、IoT(モノのインターネット)ソリューション、サイバーセキュリティ、ネットワークインテグレーションなどを提供する部門。同社は自社の優れたインフラを活用することで、企業間におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)需要拡大に応えることができる。 - 家庭用ブロードバンドおよびデジタルTV:
家庭用高速インターネットと多様なコンテンツを提供するDTH(Direct-to-Home)デジタルTVサービスを中心とする部門。売上貢献度は比較的小さいものの、成長率が高く、バンドルサービス(複数サービスの一括提供)を通じて顧客を囲い込む上で重要な役割を果たしている。 - アフリカおよび南アジア:
アフリカ14カ国で事業を展開しており、顧客数は2億人以上、販売拠点は330万店舗以上。同社のデジタル決済プラットフォームである「Airtel Money」は同地域における貴重な成長ドライバーとなっている。
料金の正常化と長期的成長に向けた好位置
インドの通信業界において、Bharti Airtelはかつて市場シェアで首位を占めていましたが、2016年にReliance Jio社(以下、Jio社)が通信業界に参入し、無料の音声通話と低コストのデータ通信サービスを提供したことで業界に大きな変革がもたらされました。Jio社はサービス開始から半年で1億人以上の加入者を獲得しBharti Airtelをはじめ、Vodafone Group社(英国)、旧Idea Cellular社(インド)といった既存企業は市場シェアを守るために価格の引き下げを強いられました。この2016年から2019年にかけての価格競争は消費者にとって大きな利益をもたらし、モバイルの普及率を急速に高めましたが、ARPU(ユーザー1⼈当たりの平均売上を⽰す指標)は同期間に大きく低下しました。業界再編の波により、小規模事業者は市場から撤退するか、合併を余儀なくされ、最終的に現在の大手通信事業者3社(Jio社、Bharti Airtel、Vodafone Group社)に集約されました。
Jio社の積極的な低価格路線と差別化するため、Bhart Airtelは後払いプランの導入を推進し、より質の高いネットワークを提供し、その他の付加価値サービスを追加することで、消費額の大きい顧客層を取り込む戦略に移行しました。また、ネットワークインフラに多額の投資を続けることで、次世代型コネクティビティソリューションの普及に備えています。これらの戦略により、同社はJio社やVodafone Group社より高いARPUを維持しています。
2019年以降、通信業界はより合理的な価格戦略へと舵を切り直しました。Bharti Airtelは料金の引き上げ、前払いから後払いへの切り替え促進、フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行促進、デジタルサービスの拡充などを通じた「料金正常化」アプローチを実行しました。この戦略により、同社のARPUは2024年12月時点で245インドルピーまで回復し、競合のJio社(203インドルピー)とVodafone社(163インドルピー)を上回りました。EBITDAマージンも2019年の26%から2024年12月時点で54%と大幅に改善しました。しかし大幅に伸びたとはいえ、インドのARPUは依然として世界最低水準です(2023年のデータによると、インドは1.8米ドル、インドネシアは3米ドル、中国は7.1米ドル、マレーシアは10.7米ドル、シンガポールは30.1米ドル)。経営陣は直近の決算説明会で、料金にはまだ正常化の余地があり、それが実現できればインフラと技術への投資を長期継続することが可能になると述べました。
市場の混乱に適応し、優位性の獲得に注力し、次世代技術に投資する力があることから、同社の耐久力の強さと戦略的先見性の高さは疑う余地がありません。同社はモバイルサービス、企業向けソリューション、家庭用ブロードバンド、デジタルサービスなど、ポートフォリオの多様化を進めていることから、国内外で続くデジタル変革の動きに乗じる上で好位置につけているといえるでしょう。同社は5Gネットワークの拡大、価格戦略の合理化を通じたARPUの上昇、利益率の高いセグメントへの拡大を継続すれば、今後も持続的に成長し、ステークホルダーに長期的な価値を提供できると考えます。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当⽉は、Saudi Awwal Bank(サウジアラビア/⾦融)がプラスに貢献し、First Abu Dhabi Bank(アラブ⾸⻑国連邦/⾦融)がマイナスに影響しました。First Abu Dhabi Bankが発表した2024年通期決算によると、売上高は前年比14%増、税引前利益は同13%増となりました。貸出残高は年間9%増加し、収益費用比率は引き続き低下し、24.6%という低水準に達しました。経営陣は、国内外の事業で複数セグメントが好調であることから、2025年の貸出残高成長率が1桁台後半に達するという見通しを示しました。
<通貨>
当月、アジア地域および中東地域の通貨は、対日本円でまちまちの値動きを見せましたが、全体としては当ファンドのリターンにプラスに貢献しました。
今後の見通し
2025年の第1四半期は、主に米国の貿易政策を巡る不確実性が高まったことから、アジア株式市場の変動幅の拡大が顕著になりました。米国の自動車輸入に25%の課税が課されることで、韓国、日本、中国といったアジアの輸出主導型国家には既に影響が及んでいます。4月2日発表予定の「相互関税」によって、サプライチェーンの混乱はさらに深まり、域内全体で投資に関する決定が滞ることが予想されます。「チャイナプラスワン」戦略のもとで生産拠点多様化の安全な聖域とみなされてきたベトナム、タイ、マレーシアでさえ、関税政策の対象になる恐れが出てきました。
今四半期はAI関連の動きが小休止しています。当ファンドはこの数か月の間に台湾を訪問し、テクノロジー企業数社の幹部と面会しました。AIを巡る物語は既に理解が進み、議論も深まっているというのが当ファンドの得た感触です。現状の課題は、AIの需要を正確に予測し、必要な投資を適切なタイミングで行うことにあります。とはいえ、エッジAI、ヒューマノイド、自律走行、量子コンピューティングといった新たな用途向けの半導体製造についてはTaiwan Semiconductor Manufacturing Companyが引き続き優位に立つという当ファンドの考えに変わりはありません。
当月はインドも訪問しましたが、この数か月の株式市場低迷にもかかわらず、インド企業の大半はファンダメンタルズが依然堅調です。同国の企業は引き続き、インフラ需要の拡大、製造業の進歩、消費者の志向の変化から生まれる事業機会を活用することに力を尽くしています。バリュエーションはこの数か月でかなり落ち着き、市場には以前より割安感が出てきているように見受けられます。
アジア株式市場の長期的見通しは、中間層の所得増加、継続的なインフラ整備、政情の安定化といった好材料に支えられ、引き続き良好です。こうした好材料が揃うと、優良企業が実力を発揮する機会を与えられ、当ファンドの投資機会も拡大すると考えています。
今後の運用方針
当ファンドは組入銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと目に見える形の一貫した収益とキャッシュフローに支えられ、不透明な市場環境の中でも力強い耐久力を示してきました。
かねてから述べているように、当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を⾏っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することはきわめて困難であると考えます。まさにそうした理由から、当ファンドは一時的な逆風に耐え(特にアジアの新興国市場)、風が収まった時にさらに強くなれる優良企業の発掘に力を注いでいます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
2025年2月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当月、⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋指数(⽇本を除く、⽶ドル建て)は、前⽉末⽐0.22%上昇しました。パフォーマンスはアジア各国でまちまちで、中国、香港などの上昇幅が大きかった一方、インドネシア、タイ、インドなどは大きく下落しました。トランプ米大統領の関税政策を巡る不透明感の高まりが続いており、とりわけ新興国市場の先行きが不透明となっています。
米国が関税引き上げの姿勢をみせているにもかかわらず、中国市場と香港市場は当月に入って大幅に上昇しました。これは当月に習近平国家主席が民間企業のトップと会談したことを受け、今後を楽観する見方が改めて広がったことによるものです。中国政府は長年にわたって各業界の取り締まりを続けてきましたが、今回の会談によって、民間企業、とりわけテクノロジー企業の活動を明確に下支えする方針が打ち出されたという解釈が広がり、香港の代表的な株価指数であるハンセン指数は13.43%上昇して月を終えました。恩恵に浴したのは主に中国のテクノロジー関連銘柄で、Alibaba Group Holding社、Tencent Holdings社、Xiaomi Corporation社、BYD Company社などの株価が大きく上昇し、ハンセンテック指数は3年ぶりの高水準に達しました。
中国のAI(人工知能)開発企業DeepSeekが前月に話題をさらったことで、中国市場ではAI関連銘柄の上昇が続きました。大手テクノロジー企業であるAlibaba Group Holding社とTencent Holdings社はAI分野で大胆な動きを見せています。Alibaba Group Holding社はクラウドコンピューティングとAIインフラに3,800億元(約7兆8,400億円)を投資すると発表し、Tencent Holdings社は同社が運営するメッセージングアプリ「Weixin(微信)」に対するDeepSeekのAIモデルの試験導入を開始しました。
中国のテクノロジーセクターが好調だった一方で、台湾の半導体セクターは主にAIへの過剰投資に対する懸念から、米国市場に追随する形で下落しました。NVIDIA社(米国)の2025年1月期第4四半期決算発表後に発生した下落によって、とりわけその傾向が強まりました。
インド市場は海外投資家による売りが続いたこと、企業業績がふるわなかったこと、国内市場の成長に関する懸念が広がったことなどから大きく下落しました。政府が予算案に減税を盛り込み、インド準備銀行が利下げと流動資金の注入に踏み切るなど緩和的措置をとっているにもかかわらず、市場心理は全般的に弱含んだままでした。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場のパフォーマンスはまちまちでした。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前⽉末⽐0.07%上昇しました。ブレント原油価格は前⽉から下落して⽉を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は対日本円で下落しました。インドネシアルピア、タイバーツ、インドルピーなどが対日本円で特に大きく下落しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドのパフォーマンスはマイナスとなりました。
セクター別では、金融セクター、生活必需品セクターなどがプラスに貢献した⼀⽅、情報技術セクター、一般消費財・サービスセクターなどがマイナスに影響しました。
当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した銘柄は、Tencent Holdings(中国/コミュニケーション・サービス)、Alibaba Group Holding(中国/一般消費財・サービス)、Hong Kong Exchanges & Clearing(香港/金融)などでした。⼀⽅、マイナスに影響した銘柄は、eMemory Technology(台湾/情報技術)、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、Lemon Tree Hotels(インド/⼀般消費財・サービス)などでした。
中国市場と香港市場の上昇は当月も続きました。市場心理が強気であることから香港証券取引所で取引が活発化し、当ファンドの組入銘柄であるHong Kong Exchanges & Clearingの株価が上昇しました。
同社は香港証券取引所、香港先物取引所、ロンドン金属取引所を運営しています。香港において唯一の取引所運営会社として、同社は株式および株式関連商品の取引を独占的に取り扱える稀有な立場にあります。
同社のビジネスモデルは、投資商品の取引と決済を促進するというシンプルなものです。同社収益の大部分は、現物株式(2024年収益の42%)、派生商品(同28%)、コモディティ(同12%)の取引と決済で得られる手数料によって占められており、その他収入(データ、接続料、金利収入など)が残りの収益を生み出しています。
同社業績にとっての生命線は取引高です。これは市場の健全性のバロメーターとなる指標で、取引所の財務成績に直結します。取引高が増えるということは市場参加者が増えるということであり、それによって手数料収益が拡大します。この基本的な関係性は同社が実施する施策すべての原動力となっており、新たに導入される制度やサービスはいずれも、同社の幅広いプラットフォーム全体で取引活動を強化するように設計されています。
そうした施策の中でも最も革新的なのが、「ストックコネクト」という制度です。この画期的な制度は2014年に始動し、香港と中国本土間のクロスボーダー投資に革新的な変化をもたらしました。この制度によって、上海と深センに上場している中国の適格株式を海外投資家が売買できるようになり、同時に中国本土の投資家にも香港上場株式の取引に関する門戸が開かれました。同制度は継続的改良と対象銘柄の拡大によって目覚ましい進化を遂げており、2024年までに香港側から行われた上海株の1日平均取引高(ADV)は約1,500億人民元、上海側から行われた香港株の取引高は同約480億香港ドルに達しています。同制度に由来する同社の収益は約27億香港ドルに達し、総収益の12%を占めるまでになりました。さらに重要なのは、同プロブラムが香港の株式市場そのものに与えた影響です。上海側から行われた香港株のADVは、今やADV全体の20%を占めるまでになっています。こうした取り組みによって、香港は中国市場と世界市場を結ぶ金融取引の窓口としての地位を固め、その役割はますます重要性を増しています。
ストックコネクトの成功は「ETFコネクト」、「ボンドコネクト」、「スワップコネクト」という新たな制度の導入にもつながり、今後取引高の長期的拡大に寄与することが見込まれます。加えて革新的な金融派生商品の登場や他取引所との重複上場も、今後数年間にわたって取引高拡大の原動力となるでしょう。また、同社は取引高の拡大と複雑化する取引・決済業務に対応するため、技術開発に積極的に投資を行い、業務効率の最適化とコスト削減に努めています。
同社は強力なキャッシュ創出能力を有し、株主に対する安定した配当支払いを可能としています。また、成長見通しの良さと独占的地位に支えられ、刻々と情勢が変化するアジアの金融市場において、持ち前の安定性と成長性を独自の形で生かし、長期にわたって当ファンドのパフォーマンスに貢献する銘柄としての地位を保てると考えます。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月は、First Abu Dhabi Bank(アラブ首長国連邦/金融)とSaudi Awwal Bank(サウジアラビア/金融)が、いずれもマイナスに影響しました。Saudi Awwal Bankが発表した2024年通期決算によると、売上高は前年比10%増、利益は同15%増、貸出残高は同20%増となりました。経営陣は2025年についても前向きな見通しを示しており、政府による投資や企業と消費者の借入需要に支えられ、長期的な貸出残高の伸びと収益性の改善が見込まれます。
<通貨>
当月、アジア地域と中東地域の通貨は、概ね対日本円で下落し、全体としては当ファンドのリターンにマイナスに影響しました。
今後の見通し
トランプ米大統領が先日発表したカナダ、メキシコ、中国に対する関税措置は貿易摩擦を激化させ、アジア各国市場、とりわけ輸出依存度の高い国の市場に短期的な動揺をもたらす可能性があります。
こうした逆風にもかかわらず、中国のテクノロジーセクター、特にAI関連銘柄は見通しが良好です。DeepSeekのAIが話題をさらったことで投資家心理が強気に傾き、ハンセンテック指数は3年ぶりの高水準に達しました。こうした事態は、経済成長の下支えを意図した政府の大規模景気刺激策や民間企業支援に向けた姿勢転換と相まって、中国株への新たな関心を呼び起こしています。
長期的にみるとASEAN諸国は、人口構成が有利に働くことや地域統合の進展が見込めることから、引き続き注目が集まっています。各国企業がサプライチェーンの多様化に向けて「チャイナプラスワン」戦略を追求していることから、海外直接投資(FDI)の受け皿としてのASEAN諸国の役割はますます大きくなってきていると考えます。
台湾は世界の半導体業界における優位性を維持するでしょう。その中心となるのはTaiwan Semiconductor Manufacturing Companyで、同社が米国で大規模投資を行う意向を示していることから、半導体に戦略的重要性があること、台湾が同セクターで世界の覇権を握りたいという野心を持っていることは明らかです。
アジア株式市場の長期的見通しは、中間層の所得増加、継続的なインフラ整備、政情の安定化といった好材料に支えられ、引き続き良好です。こうした好材料が揃うと、優良企業が実力を発揮する機会を与えられ、当ファンドの投資機会も拡大すると考えています。
また、中東諸国、特にサウジアラビアはここ数年、石油依存からの脱却を積極的に進めています。政府の景気刺激策によって経済の多様化が進み、原油への依存度が低下することから、成⻑軌道はこのまま継続すると考えられます。⾦融セクターは中東地域の⻑期的経済成⻑の恩恵を受けると考えられることから、当ファンドは⾦融セクターの保有銘柄を引き続きポジティブにみています。
今後の運用方針
当ファンドは組入銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと目に見える形の一貫した収益とキャッシュフローに支えられ、不透明な市場環境の中でも力強い耐久力を示してきました。
かねてから述べているように、当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を⾏っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することはきわめて困難であると考えます。まさにそうした理由から、当ファンドは一時的な逆風に耐え(特にアジアの新興国市場)、風が収まった時にさらに強くなれる優良企業の発掘に力を注いでいます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
2025年1月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当月、⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋指数(⽇本を除く、⽶ドル建て)は、前⽉末⽐1.40%上昇しました。パフォーマンスはアジア各国でまちまちで、韓国、オーストラリア、シンガポールなどの上昇幅が大きかった一方、ASEAN諸国、インドなどは出遅れました。韓国のKOSPI(韓国総合株価指数)は、前月の政情不安によるパニック売りから、当月は反発に転じました。
中国と香港市場は国内経済の低迷やトランプ氏の米大統領就任後の関税政策の不透明感が、引き続き投資家の懸念材料となって市場心理が弱含んだ状態で年明けを迎えました。しかし意外にも、トランプ米大統領が対中関税の即時発動を見送ったため、米中間で何らかの交渉や合意の可能性への期待感が高まりました。これを受け、中国・香港市場は春節(旧正⽉)休暇を前にして反発に転じました。
当月後半は、世界各国でテクノロジー・セクターが急落しました。そのきっかけとなったのは、中国のAI(人工知能)開発企業DeepSeekが生成AIモデル「DeepSeek- R1」を発表したことでした。この中国製AIは他のAIモデルの大半と同等以上の性能をきわめて低コストで実現したとされており、今後のAI関連投資の先行きに対する懸念が高まっています。この主張が事実なら、AIに対する設備投資、とりわけデータセンターとAI用ハードウェアの需要に大きな影響が及ぶことになります。そのためAI技術における米国の優位が揺らぐのではないかという懸念が投資家の間に沸き起こり、米国S&P500種株価指数は急落しました。またASEAN市場、特にマレーシアのデータセンター関連銘柄が大幅な下落に見舞われました。インド市場は、国内経済の成長に関する懸念と海外資金の流出が主な原因で、引き続き軟調に推移しました。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場は上昇し、MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前⽉末⽐3.05%上昇しました。ブレント原油価格は前⽉から上昇して⽉を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は対日本円で下落しました。インドルピー、インドネシアルピア、香港ドルなどが対日本円で下落し、タイバーツ、韓国ウォンなどが対日本円で上昇しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドのパフォーマンスはマイナスとなりました。
セクター別では、情報技術セクター、金融セクターなどがプラスに貢献した⼀⽅、一般消費財・サービスセクター、資本財・サービスセクターなどがマイナスに影響しました。
当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した銘柄は、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、SBI Cards & Payment Services(インド/金融)、Aristocrat Leisure(オーストラリア/一般消費財・サービス)などでした。⼀⽅、マイナスに影響した銘柄は、China State Construction International Holdings(香港/資本財・サービス)、Lemon Tree Hotels(インド/⼀般消費財・サービス)、AIA Group(香港/金融)などでした。
当月、台湾の半導体関連銘柄(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company、MediaTek、eMemory Technology)の一部を利益確定させて、組入比率を引き下げました。DeepSeekの新モデル発表により、世界のITセクターが調整局面に入ったのはその直後でした。また、中国政府の景気刺激策が株式市場と個人消費に恩恵をもたらすと見て、Hong Kong Exchanges & Clearing(香港/金融)とHaier Smart Home(中国/⼀般消費財・サービス)の組入比率を引き上げました。両社はファンダメンタルズが強固であることから、今後発表されるだろう景気刺激策が意図通りの効果を発揮しなかったとしても、下値は底堅いと考えます。
当ファンドはChina State Construction International Holdingsにも引き続き期待感をもっています。同社は中国国営のインフラ建設会社で、香港やマカオのインフラや建設プロジェクトから長年にわたって強力かつ安定したキャッシュフローを創出しています。さらなる成長と利益率拡大を求め、長い年月をかけて中国国内の事業を拡大してきました。
1979年に香港で設立された同社は、当初は香港とマカオの建設プロジェクトに特化していました。香港は品質と安全性に関する要件が非常に厳格だったため、同社は長年にわたり、より大規模かつ強力な建設会社と競争し、プロジェクトを勝ち取る必要がありました。そのなかで国際的な建設会社との競争に勝ち抜けるだけの実⼒をつけ、香港の政府系プロジェクトにおける市場シェアを伸ばしてきました。また同社は、香港では政府系プロジェクト全件に入札できるライセンスを保有する数少ない施工業者のうちの1社です。
同社の強みの1つは、プレハブ建設において業界屈指のノウハウを持っていることです。同社は中国国内の⾃動化施設で建物の特定コンポーネント(部屋、床のパネル)を遠隔地でプレハブ加⼯し、それを建設現場で組み⽴てることで、コスト(時間、⼈件費、エネルギー)の節約ができます。また香港における高度なモジュール建築技術(高度なプレハブ技術)の豊富な活用実績を生かし、中国で複数のプロジェクト、とりわけ都市再開発や低価格住宅プロジェクトを受注しています。同社は中国において、住宅都市農村建設部や地方政府の支援を得て、今後も成長していくと考えます。
また、同社は住宅プロジェクトだけでなく、インフラプロジェクトにも様々な形で携わっています。2024年には香港の埋立地拡張プロジェクトを落札し、契約総額は約610億香港ドルに達しました。この埋立地は今後数十年にわたって香港の廃棄物処理需要を満たしてくれる見通しです。同社はさらに香港北部都会区の開発(深セン市に隣接する香港新界での大規模土地開発プロジェクト)にも香港政府を支援する形で参画しています。
主要なリスクは人手不足、品質問題、マクロ経済の悪化です。これらはいずれも建設業界全体が直面しているリスク要因ですが、同社は業界で長年にわたって実績を積んできたことや親会社からの支援があることを踏まえると、同業他社より上記リスクに対処しやすい立場にあると言えるでしょう。
同社の現在のバリュエーションは、予想PER(株価収益率)が約5.6倍、配当利回りは5.4%です。同社経営陣は純利益を2桁伸ばし、ROE(株主資本利益率)をより高めることを目標としています。キャッシュフローが改善し、高い技術力を生かした新規契約獲得が続けば、同社は今後も当ファンドに魅力的なリターンをもたらすと考えられます。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月は、First Abu Dhabi Bank(アラブ首長国連邦/金融)とSaudi Awwal Bank(サウジアラビア/金融)が、いずれもプラスに貢献しました。政府による投資や企業と消費者の借入需要に支えられ、長期的な貸出残高の伸びと収益性の改善が見込まれます。
<通貨>
当月、アジア地域と中東地域の通貨は、概ね対日本円で下落し、全体としては当ファンドのリターンにマイナスに影響しました。
今後の見通し
短期的には、市場の振幅は米中貿易交渉の進行、AI技術の覇権争いの激化という2大要因によって決定づけられることになるでしょう。関税を巡る先行き不透明感が世界の貿易活動に影響を及ぼすことで、企業は引き続き生産やサプライチェーンの再編を強いられる可能性があります。DeepSeekの新モデル公開によって、テクノロジーには既存秩序を破壊する力があること、またテクノロジーが飛躍的に進歩すると市場でバリュエーションの見直しが進み、投資家心理が急速に変化する可能性のあることが浮き彫りになりました。
アジア株式市場の長期的見通しは、中間層の所得増加、継続的なインフラ整備、政情の安定化といった好材料に支えられ、引き続き良好です。こうした好材料が揃うと、優良企業が実力を発揮する機会を与えられ、当ファンドの投資機会も拡大します。
また、中東諸国、特にサウジアラビアはここ数年、石油依存からの脱却を積極的に進めています。政府の景気刺激策によって経済の多様化が進み、原油への依存度が低下することから、成⻑軌道はこのまま継続すると考えられます。⾦融セクターは中東地域の⻑期的経済成⻑の恩恵を受けると考えられることから、当ファンドは⾦融セクターの保有銘柄を引き続きポジティブにみています。
今後の運用方針
当ファンドは組入銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと目に見える形の一貫した収益とキャッシュフローに支えられ、不透明な市場環境の中でも力強い耐久力を示してきました。
かねてから述べているように、当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を⾏っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することはきわめて困難であると考えます。まさにそうした理由から、当ファンドは一時的な逆風に耐え(特にアジアの新興国市場)、風が収まった時にさらに強くなれる優良企業の発掘に力を注いでいます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
2024年12月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当月、⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋指数(⽇本を除く、⽶ドル建て)は、前⽉末⽐1.11%下落しました。パフォーマンスはアジア各国でまちまちで、韓国、オーストラリア、インドなどの下落幅が大きかった一方、台湾、香港、中国などは上昇しました。通年でみると、MSCIアジア太平洋指数(⽇本を除く、⽶ドル建て)は前年比10.63%上昇しました。
当月はKOSPI(韓国総合株価指数)が前月末比2.30%下落しました。韓国大統領が戒厳令を発令したことで、市場ではパニック売りが発生しました。政情不安と統治問題に対する懸念は、もともと軟調だった韓国経済に追い打ちをかける形となっています。KOSPIは通年で前年比9.63%下落し、2024年のパフォーマンスはアジア市場の中で最低となりました。
中国市場は景気低迷と対米貿易摩擦の激化に対する懸念が拭えない中で、2024年通年のリターンがプラスとなりました。これは中国政府が景気刺激策の発動を示唆したことを受け、9月に入って株価が急騰したことによるものです。しかし、より具体的な対策が打ち出されなければ消費需要の低迷や不動産市場の苦境からの立ち直りはおぼつかないことから、投資家は慎重姿勢を崩しませんでした。
台湾のテクノロジーセクターは年間を通じて堅調なパフォーマンスを見せました。Taiwan Semiconductor Manufacturing Company社(台湾)やMediaTek社(台湾)といった企業が、半導体やAI(人工知能)技術に対する世界的な需要拡大の恩恵に浴しました。
当月、ASEAN市場のパフォーマンスはまちまちでした。インドネシア市場は通貨安と消費支出低迷の影響で、とりわけ軟調に推移しました。一方、マレーシアの株式市場は、半導体やデータセンターを中心に海外投資の流入が続いたことが支援材料となり、堅調に推移しました。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場は上昇し、MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前⽉末⽐3.69%上昇しました。ブレント原油価格は前⽉から下落して月を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は、対日本円で上昇しました。特にフィリピンペソ、香港ドル、タイバーツなどが対⽇本円で上昇し、韓国ウォン、オーストラリアドルなどが対日本円で下落しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドのパフォーマンスはプラスとなりました。
セクター別では、情報技術セクター、一般消費財・サービスセクターなどがプラスに貢献し、⼀⽅、ヘルスケアセクターがマイナスに影響しました。
国別では、台湾、香港、中国などがプラスに貢献しました。
当ファンドのパフォーマンスにプラスに寄与した銘柄は、eMemory Technology(台湾/情報技術)、MediaTek(台湾/情報技術)、China State Construction International Holdings(香港/資本財・サービス)などでした。⼀⽅、マイナスに影響した銘柄は、Samsung Electronics(韓国/情報技術)、SBI Cards & Payment Services(インド/金融)、Techtronic Industries(⾹港/資本財・サービス)などでした。
当ファンドの2024年通年のリターンは前年末比およそ20%の上昇となりました。一方、参考指数であるMSCI AC Asia Pacific ex Japan Index(円ベース)は同およそ24%の上昇でした。
2024年は当ファンドが組み入れている台湾の半導体関連銘柄(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、MediaTek、eMemory Technology)が、2023年に続いてパフォーマンスに大きく貢献しました。この3社は2022年には金利上昇によるバリュエーションの調整で低迷していたものの、当ファンドはファンダメンタルズと競争優位性は損なわれていないと考え、3社の組み入れを維持しました。
デジタル化とコネクティビティという長期的かつ構造的なトレンドは、引き続き見通しが立ちやすく、持続性を備えており、人工知能(AI)の発展によってさらに加速する見込みです。Taiwan Semiconductor Manufacturing Company、MediaTek、eMemory Technologyは各セクターの牽引役であることから、そうした機会を生かす上で有利な立場にあると考えます。
Taiwan Semiconductor Manufacturing Companyは日本、米国、欧州で生産設備の拡大に成功し、最先端ノードチップで随一の成長力をもつファウンドリとしての地位を固めています。こうした海外展開は、現地生産能力を高め、地政学的リスクやサプライチェーンリスクを軽減するという政府の施策にも合致しています。
一方、MediaTekとeMemory Technologはこの1年で市場シェアを伸ばしました。MediaTekはハイエンドの携帯端末向けシステム・オン・チップ(SoC)市場で大きく躍進し、eMemory Technologyはハードウェアセキュリティの分野で着実に地位を高めています。なお、2024年のトータルリターンはそれぞれTaiwan Semiconductor Manufacturing前年末比83.4%、MediaTek同45.8%、eMemory Technology同37.5%の上昇でした。
当ファンドが組み入れている中国・香港銘柄は、ボラティリティの高い市場や厳しい経済環境中であっても、2024年のパフォーマンスにプラスに貢献しました。AIA Group(香港/金融)は、保険販売の営業認可を中国国内の他都市でも獲得するという大きな前進があったものの軟調に推移しました。しかしその下落分はChina State Construction International Holdings(以下CSCI)やTencent Holdings(中国/コミュニケーション・サービス)といった他の保有銘柄の堅調なパフォーマンスにより補完されました。CSCIは香港および中国本土でのインフラプロジェクト増加と利益率の改善により、力強い成長を遂げました。Tencent Holdingsはゲームと広告分野で勢力を伸ばし、パフォーマンスを総体的に押し上げました。こうした点から、当ファンドのポートフォリオに経済環境の悪化に耐えられるだけの力があることは明らかです。
ASEANとインドの内需主導型グロース銘柄も当ファンドのパフォーマンスにプラスに貢献しました。
例えば、Lemon Tree Hotels(インド/⼀般消費財・サービス)の株価は前年末比27.6%上昇しました。同社の株価は2023年も同39.9%、2022年には同83.8%という目覚ましい上昇を見せています。インドの観光セクターの安定的な成長は、中間層の所得増加で国内旅行の需要が高まる中、今後も続くと予想されます。インドの観光業界では供給が需要の高まりに追いついておらず、同社はそうした業界動向に乗じる上で有利な立場にあります。
当ファンドはエクイティ・インカム戦略を重視しており、その主な特徴の1つは、予測可能な収益を一貫して生成する「優良企業」に投資するという点にあります。当ファンドは業績の実績がなくビジネスモデルが未確定の新興企業は投資対象から外し、既に豊富な実績を有しビジネスモデルを確立していて、今後の収益が見込まれる企業を投資対象としています。たとえ急成長している企業であっても、収益やキャッシュフローの裏付けがない企業への投資は極力避けています。アジア経済の長期的成長トレンドに乗る上で「成長」は重要な要素ではありますが、当ファンドは戦略的にエクイティ・インカムを重視しているため、堅実なキャッシュフローとバランスシートを支えに成長すると見込まれる企業を選好しています。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月は、First Abu Dhabi Bank(アラブ首長国連邦/金融)とSaudi Awwal Bank(サウジアラビア/金融)が、いずれもプラスに貢献しました。政府による投資や企業と消費者の借入需要に支えられ、長期的な貸出残高の伸びと収益性の改善が見込まれます。
<通貨>
当月、アジア地域と中東地域の通貨は、概ね対日本円で上昇し、全体としては当ファンドのリターンにプラスに貢献しました。
今後の見通し
世界的なマクロ経済の見通しは依然として不透明です。トランプ氏の大統領就任後に関税の引き上げがあるのかどうか、またその影響の程度も依然として明確ではないため、市場には部分的にしか織り込まれていません。その結果、今後市場のボラティリティが高まることが予想されます。米国の積極的な貿易政策は、中国のみならず他のアジア諸国にも影響を及ぼし、世界貿易量の減少を招く可能性があります。また、インフレ、為替変動、金利政策もトランプ政権の政策展開に左右される見通しです。
中国政府は内需喚起策を発表し、こうした国外からの逆風を相殺する体制を整えています。不動産価格の下支え、地方政府の債務負担軽減、消費者向け補助金支給といった措置をとることで、景気と市場心理は改善すると予想されます。当ファンドは中国に投資するリスクを認識していますが、強い競争⼒を持ち、⼀時的な逆⾵を乗り切る能⼒を持つ企業を適正に選定しさえすれば、プラスのリターンを⽣み出す余地はあると判断しています。不動産セクターと消費者セクターは短期的には弱含む可能性があるものの、中国はバリューチェーンの強化を図っているため、テクノロジー、脱炭素化、先進産業における⾃動化への投資は継続すると考えます。当ファンドは中国と香港の現行組入銘柄に引き続き高い期待を持っていますが、消費財、資本財、テクノロジー・セクターでも新たな投資機会を注視していきます。
ASEAN市場にとって、米ドル高と米国の利下げ幅縮小は短期的な課題となる可能性があります。しかし、関税を巡る中国と米国の緊張が長引けば、サプライチェーンの再編に伴い、ASEAN諸国が外国直接投資(FDI)の恩恵を受けると予想されます。当ファンドは半導体、データセンター、自動車・電子機器製造、鉱業への投資が引き続き増加すると予想しています。また、観光やヘルスケアセクターにも投資機会があると考えています。
AI関連産業の勢いは2025年まで続くと予想されますが、過去2年間の大幅な成長と株価上昇を考えると、パフォーマンスが収益成長に沿った形でより安定化してくることが想定されます。
アジア株式市場の長期的見通しは、中間層の所得増加、継続的なインフラ整備、政情の安定化といった好材料に支えられ、引き続き良好です。こうした好材料が揃うと、優良企業が実力を発揮する機会を与えられ、当ファンドの投資機会も拡大します。
また、中東諸国、特にサウジアラビアはここ数年、石油依存からの脱却を積極的に進めています。政府の景気刺激策によって経済の多様化が進み、原油への依存度が低下することから、成⻑軌道はこのまま継続すると考えられます。⾦融セクターは中東地域の⻑期的経済成⻑の恩恵を受けると考えられることから、当ファンドは⾦融セクターの保有銘柄を引き続きポジティブにみています。
当ファンドは組入銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと目に見える形の一貫した収益とキャッシュフローに支えられ、不透明な市場環境の中でも力強い耐久力を示してきました。
かねてから述べているように、当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を⾏っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することは困難であると考えます。まさにそうした理由から、当ファンドは一時的な逆風に耐え(特にアジアの新興国市場)、風が収まった時にさらに強くなれる優良企業の発掘に力を注いでいます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
2024年11月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当月、⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋指数(⽇本を除く、⽶ドル建て)は、米国大統領選挙でトランプ氏が勝利し、アジア株式市場が軒並み軟調に推移したことから、前⽉末⽐2.22%下落しました。トランプ氏が勝利したことで、関税の引き上げや中国への技術移転防止策の強化に対する懸念が高まり、投資家の間で今後の混乱に対する警戒感が広がりました。
MSCI中国指数(⽶ドル建て)は4.43%の大幅下落となり、MSCI香港指数(⽶ドル建て)も3.61%下落しました。その主な要因は、トランプ氏が中国からの輸入品に60%の関税を課すという公約を掲げたことで、貿易摩擦の激化を懸念する声が高まったことにあります。さらに中国のテクノロジーセクターに対する規制の強化が予想されることも、市場の変動幅が高まる要因となっています。予期していたこととはいえ、貿易摩擦激化の公算が高まったことで、アジア各国でリスク選好度が低下しました。
世界貿易量の減少や市場のボラティリティ上昇を予想する向きが増えてきたことで、FRB(⽶国連邦準備制度理事会)が来年の利下げ幅を縮小するのではないかという憶測が広がっています。アジア諸国、特にASEAN諸国をはじめとする新興国の経済は資本流出やバリュエーションリスクの影響を受けやすいため、そうした国々ではこの事態が否定的に受け止められています。
台湾と韓国のテクノロジーセクターも、人工知能(AI)サーバーの需要が2025年下期から先細りになるとの懸念が浮上したことから、当月は重い値動きとなりました。特にSamsung Electronics社(韓国)はファウンドリー事業とメモリー事業の両方で大きな競争圧力にさらされており、両国市場が全般的に低迷する要因となっています。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場は下落し、MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前⽉末⽐1.02%下落しました。ブレンド原油価格は比較的安定しており、前月からほぼ横ばいの状態で月を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は、対日本円で下落しました。特にマレーシアリンギット、台湾ドル、中国人民元などが対日本円で下落しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドのパフォーマンスはマイナスとなりました。セクター別では、一般消費財・サービスセクターがプラスに貢献し、⼀⽅、情報技術セクター、金融セクターなどがマイナスに影響しました。国別では、インドがプラスに貢献し、台湾、香港などがマイナスに影響しました。個別銘柄では、Lemon Tree Hotels(インド/一般消費財・サービス)、Aristocrat Leisure(オーストラリア/一般消費財・サービス)、HDFC Bank(インド/金融)などがプラスに貢献しました。一方で、eMemory Technology(台湾/情報技術)、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、AIA Group(香港/金融)などがマイナスに影響しました。
当月のパフォーマンスにプラスに貢献した銘柄の一つであるAristocrat Leisure(以下、「Aristocrat」)はオーストラリアに拠点を置く世界的なゲーム・エンターテインメント企業で、電子ゲーム機(スロットマシン)とカジノ管理システムを幅広く提供していることで知られています。同社の事業はAristocrat Gaming(スロットマシンとカジノ管理システム)、Pixel United(デジタルのカジュアルゲームとソーシャルゲーム)、Aristocrat Interactive(オンラインリアルマネーゲーム)の3部門で構成されています。
Aristocrat Gaming部門(売上高の約55%、粗利益率55.7%)
Aristocrat Gaming部門は同社の本業で、同部門のスロットマシンは世界中のカジノで高い認知度を得ています。「Dragon Link」、「Buffalo Gold Revolution」、「Lightning Link」などの革新的なゲームタイトルが人気を博し、2024年度には平均価格2万米ドルで約3万9,000台のスロットマシンを販売し、40%を上回る市場シェアを獲得しました。
直接販売以外にも北米ゲーム機部門(リース事業)が2024年約7,000台のスロットマシンを追加設置し、総設置台数は71,000台を超えました。リース機の1日あたり平均レンタル料(FPD)は約55米ドルで、同社は日額400万米ドル近い経常キャッシュフローを安定的に創出しています。同社のスロットマシンはゲームが魅力的かつ革新的であるため、プレーヤーは多額を費やすことを厭わず、FPDが一貫して他社を上回っています。
Pixel United部門(売上高の約40%、粗利益率36.3%)
同社は2017年にデジタルのカジュアルゲームとソーシャルゲーム分野に進出し、自社のデジタル技術を規制対象となるゲーム以外でも活用できるように体制を整えました。Plarium社(イスラエル)とBig Fish Games社(米国)を買収し、カジュアルゲームとソーシャルカジノにおけるモバイルゲームの市場シェアを大きく伸ばしたのです。同社はこの統合によって自社のデジタル技術と据置型スロットマシンのコンテンツを融合させることに成功し、新たなゲームタイトルの開発によって両部門とも多大な恩恵を得ることができました。
コロナ禍期間中、物理的なカジノ施設は閉鎖されましたが、プレーヤーがオンラインに移行したことでデジタル部門は大幅な成長を遂げ、据置型ゲーム機の収益減少を一部補填することができました。同社はこうしてカジノ業界最大の試練を乗り超えることができました。
Aristocrat Interactive部門(売上高の約5%、粗利益率27%)
Aristocrat Interactive部門はオンラインによるリアルマネーゲーム(RMG)に特化した新設部門です。北米のRMG市場は認可件数の増加とデジタルゲームやオンラインゲームへのシフトを追い風に、力強い成長を遂げています。同社は規制対象のゲームとデジタル技術の活用で豊富な経験を有していることから、市場拡大に乗じる上で有利な立場にあると考えます。
2024年4月にはNeoGames社(イスラエル)を買収し、iLottery(宝くじ)、iCasino(カジノ)、オンラインスポーツくじといった利益率の高いiGaming市場への参入を実現しました。2024年第1四半期現在、米国ではAristocrat/NeoGamesがiLotteryで71%という圧倒的な市場シェアを占めており、売上高は2023年から2028年にかけて年平均21%成長し、62億米ドルに達すると予測されています。同部門はさらに、Aristocratの規制に関する専門知識とデジタル技術を活用し、オンラインRMGと実店舗型カジノ運営事業者にコンテンツと技術ソリューションを提供しています。同部門は今後数年間、Aristocratにとって貴重な成長の原動力となるでしょう。
規制対象ゲームへの戦略的再注力
Aristocratは当月、子会社Plarium社のモバイルゲーム事業を最大8億2,000万米ドルで売却すると発表しました。この決定には戦略の重点を従来のものから規制対象ゲーム分野(据置型ゲーム機、RMG、ソーシャルカジノ)へと転換し、自社の強みを十分に活用しようという姿勢が現れています。同社の財務状態は健全で、キャッシュ創出能力も申し分ないことから、今回の売却益は成長施策に再投資され、株主に還元される可能性もあると考えます。
同社は規制対象ゲーム機のコンテンツとデジタルイノベーションという得意分野に戦略的軸足を移したことで、持続的成長の実現に向けて有利な立場に立てるでしょう。同社はビジネスモデルを多角化し、財務成績が堅調で、技術の進歩に向けて取り組んでいることから、世界のゲーム業界の中でもとりわけ有望な投資先で、当ファンドに今後も魅力的なリターンをもたらす力があると考えます。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視しつつ、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月は、First Abu Dhabi Bank(アラブ首長国連邦/金融)とSaudi Awwal Bank(サウジアラビア/金融)が、いずれもマイナスに影響しました。Saudi Awwal Bankは2024年第3四半期決算を発表し、貸出残高は前年同期比で約19%増となったものの、貸倒引当金の増加や純利息収益の減少により、当四半期の利益は伸び悩みました。しかし、政府投資や企業・消費者の借入需要に支えられ、貸出残高は長期的にはプラス成長し、収益性も改善されると期待しています。
<通貨>
当月、アジア地域と中東地域の通貨は、対日本円で下落し、全体としては当ファンドのリターンにマイナスに影響しました。
今後の見通し
米国大統領選挙でドナルド・トランプ氏の再選が決まったことで、世界各国、とりわけ中国との貿易摩擦の激化が予想されます。米国が保護主義的な貿易政策をとると世界の貿易量が減少する可能性があるため、市場の変動と貿易の混乱が発生すると中国だけでなく他のアジア諸国にも影響が及ぶことになります。
中国政府はこうした事態を受けて、今後数か月の間にトランプ氏の行動がより明確になるにつれて、より具体的な景気刺激策を発表すると予想されます。状況は依然として厳しいものの、中国は今回、関税の潜在的影響を緩和しようと入念な準備を整えていると考えます。
一方、ASEAN市場はグローバル企業がASEAN諸国の生産コストの低さと国内消費市場の大きさに注目していることから、海外直接投資(FDI)の流入が続くと考えます。また、各国政府が低・中所得層への支援を強化するため、国内消費の改善が期待されます。さらに観光業にも明るい兆しが見え、ASEAN諸国の経済成長に対する貢献度がますます高まっています。
アジア株式市場の長期的見通しは、中間層の所得増加、継続的なインフラ整備、政情の安定化といった好材料に支えられ、引き続き良好です。こうした好材料が揃うと、優良企業が実力を発揮する機会を与えられ、当ファンドの投資機会も拡大します。
当ファンドは組入銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと目に見える形の一貫した収益とキャッシュフローに支えられ、不透明な市場環境の中でも力強い耐久力を示してきました。
かねてから述べているように、当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を⾏っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することは困難であると考えます。まさにそうした理由から、当ファンドは一時的な逆風に耐え(特にアジアの新興国市場)、風が収まった時にさらに強くなれる優良企業の発掘に力を注いでいます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
2024年10月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当月、⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、前⽉末⽐4.86%下落しました。台湾市場はAI(人工知能)需要が予想を上回り、台湾半導体企業の株価が上昇したことから堅調に推移しました。しかし、米国経済が好調であることや、米国大統領選挙の先行きが見通せないことなどから投資家は新興国市場への投資を控え、アジア株式市場の多くで海外資金が流出しました。
中国政府は追加刺激策を示唆して景気の下支えを図りましたが、具体的な内容が明らかにされなかったため、前月の急騰から当月は下落基調に転じました。大統領選挙後に米国の対中輸出(特にバイオテクノロジーやハイテク分野)規制が強化されるのではないかという懸念も投資家のリスク選好度の低下要因となり、選挙が終わるまで様子見の姿勢が広がりました。
インド市場のパフォーマンスは年初から好調を維持してきましたが、当月は一服感をみせました。その一因は、都市部における消費低迷のあおりで消費関連企業の業績が予想を下回ったことにあります。ASEAN市場も投資家の利益確定によって資本が流出し、総じて軟調に推移しました。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場は下落し、MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前⽉末⽐1.46%下落しました。ブレント原油価格は前⽉から上昇して月を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は、対日本円で上昇しました。特にインドルピー、香港ドル、台湾ドルなどが対⽇本円で上昇しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドのパフォーマンスはプラスとなりました。セクター別では、情報技術セクター、コミュニケーション・サービスセクターなどがプラスに貢献し、一般消費財・サービスセクター、⽣活必需品セクターなどがマイナスに影響しました。国別では、台湾、タイなどがプラスに貢献し、中国、韓国などがマイナスに影響しました。個別銘柄では、eMemory Technology(台湾/情報技術)、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、MediaTek(台湾/情報技術)などがプラスに貢献しました。⼀⽅で、AIA Group(香港/金融)、Budweiser Brewing Company APAC(香港/⽣活必需品)、ICICI Lombard General Insurance(インド/⾦融)などがマイナスに影響しました。
半導体セクターの好調な勢いは当月も続き、とりわけ台湾でその傾向が顕著に現れました。当ファンドの組入銘柄であるeMemory Technology、Taiwan Semiconductor Manufacturing CompanyやMediaTekは、各々の事業分野で最先端技術を駆使して確かな地盤を築いていることから、当月(および年初来)、当ファンドのパフォーマンスに大きく貢献しました。当ファンドが長らく投資をしているTaiwan Semiconductor Manufacturing Companyの株価は前月比7.63%の上昇、前年比では約74%の上昇となり、時価総額がアジア最大になりました。
過去の月次報告書で述べたように、当ファンドが同社に投資しているのは⾜元のAI(人工知能)の台頭が理由ではありません。コストに対し顧客にとって最⼤のPPA(パワー、パフォーマンス、エリア)を提供しようと絶え間なく努⼒を続けている姿勢を評価し、何年も前から投資を続けています。同社は顧客向け半導体IC(集積回路)の製造に特化する「ファウンドリーモデル」を採⽤していますが、その強みは規模の大きさ、製造能⼒と技術的能⼒の高さにあります。同社が⼀定の規模に達し、⼀定レベルの技術的知識を蓄積すると、競合他社は容易に追随できなくなります。同社の年間設備投資額がおよそ300億⽶ドル程度に達していることを鑑みると、その困難さが伝わるかと思います。同社はそうした優位性を⽣かすことで、5G(第5世代移動通信システム)スマートフォン、⾃動運転、データセンター、IoT(モノのインターネット)、AI、さらにこれから生まれる思いがけない用途も含め、半導体が関わるあらゆる技術動向に乗じることができます。⾜元のAIの台頭によって、当ファンドの同社に対する信頼感はさらに確固たるものになりました。
同社が技術的優位を継続的に保持していることは、NVIDIA社(⽶国)の最新AIチップやApple社(米国)のiPhone、iPad、Mac用チップの製造において同社が圧倒的な市場シェアを握っていることをみれば一目瞭然です。Intel社(米国)でさえ、自社技術の立ち遅れから、同社に対するチップの製造委託を拡大しています。同社は先端チップの製造に使用する最新式の極端紫外線(EUV)露光装置メーカー、ASML Holding社(オランダ)をはじめ、多数の大手企業と提携し、強力なエコシステムを構築しているため、最新技術を駆使して顧客ニーズの絶え間ない変化に応えることができます。
同社は近年、地政学的リスクの軽減とサプライチェーンの耐性強化に向け、製造拠点を台湾以外にまで拡大しています。日本の熊本工場は間もなく量産を開始する予定で、米国のアリゾナ工場も工事が予定より早く進み、試験生産の歩留まりが予想を上回っていて、2025年の量産開始を目指しています。さらにドイツ新工場も2024年8月に起工しました。同社はこうした世界進出を通じて半導体チップのパートナーやサプライヤーとして優先的な立場を獲得し、地方政府の工場誘致に向けた補助金を活用することができます。
台湾で電気料金が数年の間に約2倍に跳ね上がるなど、電力料金の増加や海外生産拠点の拡大によってコストが上昇していますが、同社は利益率の拡大に成功しています。これは主に先端ノードの需要が旺盛であるためで、同社はその値上げによってコストの上昇を補填しています。そのため2024年第4四半期の業績において、売上総利益率は57~59%、営業利益率は46~48%程度に達する見通しです。同社は今後も年間300億米ドルの設備投資を続け、将来的な成長機会に備えていくでしょう。同社には、需要の大幅な伸びに先駆けて生産能力増強計画を実現してきた実績があり、収益は今後数年間で大幅に増加すると当ファンドは考えています。同社が今後も業界内の主力企業として高い収益性を維持するという当ファンドの考えに変更はありません。当ファンドは今後も同社を主要組入銘柄としていく予定です。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視しつつ、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月は、First Abu Dhabi Bank(アラブ首長国連邦/金融)とSaudi Awwal Bank(サウジアラビア/金融)が、いずれもプラスに影響しました。現状、中東地域の地政学的リスクはサウジアラビアやアラブ⾸⻑国連邦へは及ぶほどではないと考えます。両国は企業と消費者の需要がいずれも旺盛であることから、今後も貸出残高が安定的に伸び続ける見込みです。
<通貨>
当月、アジア地域と中東地域の通貨は、対日本円で上昇し、全体としては当ファンドのリターンにプラスに貢献しました。
今後の見通し
11月に行われる米国大統領選挙の結果は、投資家にとって目の離せないものとなるでしょう。当ファンドは中国政府が米国による対中関税引き上げへの対抗と国内経済の下支えをねらって、米国大統領選挙後により具体的な景気刺激策を発表するのではないかと期待しています。当ファンドはHaier Smart Home(中国/⼀般消費財・サービス)、Kweichow Moutai(中国/⽣活必需品)といった中国の消費関連銘柄を組み入れていることから、消費者心理が改善すれば、その恩恵に浴することになるでしょう。
米国の利下げはASEAN諸国をはじめとする新興国市場に恩恵をもたらすと考えます。グローバル企業がASEAN諸国の生産コストの低さと国内消費市場の規模の大きさを最大限に活用したいと考えていることから、ASEAN諸国に対する海外直接投資(FDI)の増加は今後も続くと予想されます。インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピンにおける政情の安定化によって、投資家の信頼感はさらに高まるでしょう。
アジア株式市場の長期的見通しは、中間層の所得増加、継続的なインフラ整備、政情の安定化といった好材料に支えられ、引き続き良好です。こうした好材料が揃うと、優良企業が実力を発揮する機会を与えられ、当ファンドの投資機会も拡大します。
当ファンドは組入銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと目に見える形の一貫した収益とキャッシュフローに支えられ、不透明な市場環境の中でも力強い耐久力を示してきました。
かねてから述べているように、当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を⾏っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することは困難であると考えます。まさにそうした理由から、当ファンドは一時的な逆風に耐え(特にアジアの新興国市場)、風が収まった時にさらに強くなれる優良企業の発掘に力を注いでいます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
2024年9月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当月、⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、米国が利下げに踏み切ったことや、中国政府が不動産市場の下支えと国内消費の活性化を狙って景気刺激策を導入したことを受け、前⽉末⽐7.90%上昇しました。 米中両国の施策が好感されてMSCI中国指数(⽶ドル建て)は前⽉末⽐23.90%、MSCI香港指数(⽶ドル建て)は同17.08%上昇し、前月までの軟調なパフォーマンスが一転しました。
中国では、預金準備率(RRR)と金利の引き下げ、住宅ローンの頭金比率の引き下げ、銀行に対する流動性供給による企業向け貸し出しの促進などの追加刺激策が発表されました。また、今後は低所得者層の支援を図るため、さらなる財政刺激策が導入される見込みです。
台湾市場と韓国市場では、このところテクノロジーセクターが堅調に推移していましたが、その後上昇が一服しました。一方、ASEAN市場はタイ、シンガポール、フィリピンを中心に、堅調に推移しました
<中東株式>
MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前月末比1.06%上昇しました。ブレント原油価格は前⽉から下落して⽉を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は、対日本円でまちまちの値動きとなりました。特にマレーシアリンギ、タイバーツなどが対日本円で上昇し、インドルピー、フィリピンペソ、香港ドルなどが対⽇本円で下落しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドが保有する株式のリターンはプラスとなりました。セクター別では、金融セクター、コミュニケーション・サービスセクターなどがプラスに貢献し、情報技術セクター、ヘルスケアセクターがマイナスに影響しました。国別では、香港、中国などがプラスに貢献し、韓国、台湾などがマイナスに影響しました。個別銘柄では、AIA Group(香港/金融)、Hong Kong Exchanges & Clearing(香港/金融)、Tencent Holdings(中国/コミュニケーション・サービス)などがプラスに貢献しました。一方で、Samsung Electronics(韓国/情報技術)、MediaTek(台湾/情報技術)、Lemon Tree Hotels(インド/⼀般消費財・サービス)などがマイナスに影響しました。
当月のパフォーマンスにプラス貢献し、当ファンドの長期組入銘柄でもあるAIA Groupはアジア最⼤級の⽣命保険会社です。アジア太平洋地域の18か国で多⾓的に事業を展開し、アジア経済の成⻑⼒による恩恵を受けています。域内で100年以上にわたってサービスを提供しており、「AIA」というブランドは信頼性の高い優良保険会社として広く認知されています。アジア地域では中間所得層が増加しており、保険の需要と保険契約率の差が⼤きいため、保険会社には⻑期的かつ構造的な成⻑機会が存在し、今後も持続的成⻑が⾒込めると考えます。
同社は2024年上期の業績が好調で、VONB(Value of New Business、新規保険契約の価値)が前年同期比25%増加し、主力事業のROE(株主資本利益率)も2023年の13.5%から15.3%に改善しています。VONBは域内全体で増加しており、特に増加幅の大きいのが香港、中国、タイです。
グループ会社のAIA Hong Kong社(香港)は2024年上期のVONBが前年同期比26%増加しましたが、これは香港のVONBが同28%、中国本土からの旅行者のVONBが同24%増加したことによるものです。こうした成長の原動力となったのは、優秀な販売員の採用を続けたことや、銀行経由の販売チャネルを拡大したことでした。AIA Hong Kong社はAIA Group全体のVONBに対する貢献率が引き続き最高で、2024年上期時点でグループVONBの33%を占めています。
一方、同じくグループ会社のAIA China社(中国)はVONBが前年同期比36%増加し、2024年上期のVONB貢献率は30%となりました。中国経済の低迷が同社の成長に悪影響を及ぼすのではないかという懸念が広がる一方で、AIA China社はプレミアム顧客層に注力することで勢いを維持しています。AIA China社の販売員の⽣産性は同業他社を⼤きく上回っており、販売員1⼈当たりVONBは業界平均の4倍、収⼊は同業他社の2倍に達しています。AIA China社はこうした競争優位性を生かして優秀な販売員を集め、定着を図っています。現状、同社VONBの内、代理店チャネルが84%を占めており、残りは銀行経由の販売となっています。同社は質の高い保険商品に対する需要増加に応えるため、新たな省や都市への進出を計画しています。
ASEAN諸国はグループ全体のVONBの約3分の1を占めており、同社は代理店と銀⾏経由の販売を通じて同地域の⽣命保険会社で⾸位の座を守りました。中でもシンガポールは2024年上期のVONB増加率が前年同期比27%と最高でした。富裕層や高資産層をターゲットとした新商品を発売したことで、販売員の生産性が24%向上しました。特筆すべきは、AIA Singapore社にはMDRT(Million Dollar Round Table)の会員資格を持つ販売員が多数在籍しており、シンガポールにおいて一流代理店の地位を確立していることです。
AIA Groupは強固な財務基盤を維持しており、2024年6月30日現在のソルベンシー⽐率(財務健全性を評価する指標)は262%です。財務基盤が強固であることから、同社は配当⾦⽀払いや⾃社株買いを増やすことができると考えます。同社は過去3年間でおよそ120億米ドルの自社株買いを実施しており、配当利回りは約2%に達しています。同社はブランドに独⾃の強みがあり、販売網が効果的で、堅実な経営姿勢を保持し、アジア地域の保険商品に対する需要を長期的に⽣かせる⽴場にあることから、今後も当ファンドに魅⼒的なリターンをもたらしてくれることでしょう。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視しつつ、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月は、First Abu Dhabi Bank(アラブ首長国連邦/金融)がプラスに貢献し、Saudi Awwal Bank(サウジアラビア/金融)がマイナスに影響しました。現状、中東地域の地政学的リスクはサウジアラビアやアラブ首長国連邦へは及ぶほどではないと考えます。両国は企業と消費者の需要がいずれも旺盛であることから、今後も貸出残高が安定的に伸び続ける見込みです。
<通貨>
当月、アジア地域および中東地域の通貨は、対日本円でまちまちの値動きを見せましたが、全体としては当ファンドのリターンにマイナスに影響しました。
今後の見通し
中国政府が不動産セクターと中小企業セクターの下支えを意図した景気刺激策を複数発表したことで、中国・香港市場に対する投資家心理はマイナスからプラスへと急転換しました。この基調が持続するか否かはまだ判断できませんが、当ファンドが組み入れている中国と香港の優良銘柄は、こうした上昇の恩恵に浴することでしょう。
米国の利下げはASEAN諸国をはじめとする新興国市場に恩恵をもたらす模様です。グローバル企業がASEAN諸国の生産コストの低さと国内消費市場の規模の大きさを最大限に活用したいと考えていることから、ASEAN諸国に対する海外直接投資(FDI)の増加は今後も続くと予想されます。インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピンにおける政情の安定化によって、投資家の信頼感はさらに高まるでしょう。
アジア株式市場の長期的見通しは、中間層の所得増加、継続的なインフラ整備、政情の安定化といった好材料に支えられ、引き続き良好です。こうした好材料が揃うと、優良企業が実力を発揮する機会を与えられ、当ファンドの投資機会も拡大します。
当ファンドは組入銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと目に見える形の一貫した収益とキャッシュフローに支えられ、不透明な市場環境の中でも力強い耐久力を示してきました。
かねてから述べているように、当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を⾏っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することは困難であると考えます。まさにそうした理由から、当ファンドは一時的な逆風に耐え(特にアジアの新興国市場)、風が収まった時にさらに強くなれる優良企業の発掘に力を注いでいます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
2024年8月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当⽉、アジア株式市場は様々な値動きとなりました。⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、前⽉末⽐2.36%上昇しました。月前半は円キャリー取引の巻き戻しと米国の景気後退に対する懸念を受けて株価が急落しましたが、その後は反動で回復に向かいました。FRB(⽶国連邦準備制度理事会)のパウエル議長がジャクソンホール会議で近い将来に利下げに踏み切るという主旨の発言をしたことから、市場心理が改善しました。
フィリピン、マレーシア、インドネシア、タイなどアジア新興諸国の当月のパフォーマンスは北アジア諸国やインドを上回り、中でもMSCIフィリピン指数(⽶ドル建て)は前月末比10.37%と高い上昇を示しました。インドネシア市場も同国政府が規律ある次期予算を示したことから、堅調に推移しました。プラボウォ次期大統領が公約に掲げた「学校給食無料提供」制度の予算はGDP比0.3%程度と、当初懸念されていた同2%程度よりはるかに低水準でした。その他補助金やインフラ支出もほぼ横ばいに据え置かれました。
香港の前月の小売売上は数量ベースで前年同月比13.3%減と予想を下回り、13か月にわたって下降傾向が続いています。小売売上の低迷は広範囲にわたり、大半の消費カテゴリーに及んでいます。住宅価格も引き続き低迷し、オフィスの空室率は未だに高水準に留まっています。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場は堅調に推移しました。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前月末比1.1%上昇しました。ブレント原油価格は前⽉から下落して⽉を終えました。
<通貨>
当⽉、アジア地域の通貨は、対⽇本円で様々な値動きをみせました。特にマレーシアリンギ、インドネシアルピア、タイバーツなどが対日本円で上昇し、インドルピー、香港ドル、中国人民元などが対⽇本円で下落しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドが保有する株式のリターンはプラスとなりました。セクター別では、コミュニケーション・サービスセクター、情報技術セクターなどがプラスに貢献し、一般消費財・サービスセクター、金融セクターなどがマイナスに影響しました。国別では、台湾、タイなどがプラスに貢献し、インド、韓国、中国などがマイナスに影響しました。個別銘柄では、eMemory Technology(台湾/情報技術)、First Pacific(香港/⽣活必需品)、Advanced Info Service(タイ/コミュニケーション・サービス)などがプラスに貢献しました。一⽅で、Lemon Tree Hotels(インド/⼀般消費財・サービス)、Samsung Electronics(韓国/情報技術)、Haier Smart Home(中国/⼀般消費財・サービス)などがマイナスに影響しました。
当月は当ファンドが組み入れている高配当銘柄である「Advanced Info Service」をご説明いたします。
同社はタイ最大級の通信サービスプロバイダーで、携帯電話契約数は4,500万件以上、売上高の市場シェアは約48%と、国内第2位につけています。2023年に競合先2社(True Corporation社とTotal Access Communication社)が合併するまでは市場シェアで首位に立っていました。同社は5G(第5世代移動通信システム)ネットワークのカバー範囲が広く、人口の95%に達していることで知られており、タイ経済のデジタル化を支える存在です。
2024年第2四半期決算時点で売上高の内訳は(1)モバイルサービス(総売上高の約60%)、(2)固定ブロードバンドサービス(同14%)、(3)企業向け・その他サービス(同10%)、(4)SIM・機器販売(同15%)となっています。
モバイルサービス
同社の携帯電話契約数のうち、約22%にあたる約990万件が5G契約です。5G契約件数の増加はデータの活用とデジタルアプリケーションの増加を継続的に促進し、ユーザー当たり平均売上(ARPU)の拡大要因となるでしょう。タイの携帯電話契約は依然として前払いが中心で、携帯電話契約者の72%が前払いのプランを利用しており、前払い契約のARPUは月額約137バーツです。しかしここ数年は通信事業者がインセンティブやサービスの拡大によって後払いへの移行を促進した結果、後払いのプランが増加し、後払い契約のARPUは月額約448バーツに達しています。携帯電話のデータ使用量が増加し、また後払いプランへの移行が進んでいることから、タイ国内の携帯電話のARPUにはまだ成長の余地があると考えます。
固定ブロードバンドサービス
同社の固定ブロードバンドサービスは2023年11月にTriple T Broadband社(タイ)を買収してから急成長を遂げました。契約件数は買収により480万件に倍増し、同社の市場シェアは40%を超え、それまで普及が進んでいなかった地域にも進出することができました。また、利用可能地域が広くなったことで、同社はモバイルサービスとのバンドル契約拡大に成功し、ARPUが全般的に向上しました。今後12か月間でサービスプランの統合と調整がさらに進むことから、両サービスの相乗効果はますます高まり、同部門の成長の原動力となるでしょう。
企業向けサービス
エンタープライズ部門はクラウドやデータセンター向けソリューションなどデジタル接続サービス、特定業界をターゲットとした専門ソリューションなど、企業向けサービスの提供に特化しています。Huawei社(中国)、China Unicom社(中国)と協力して5Gプライベートネットワークを構築し、Midea Thailand(Midea社(中国)のタイ工場)によるASEAN諸国初の5G接続型自動化工場の操業を実現したのがその一例です。デジタル変革と自動生産に対する需要の高まりが、今後数年にわたって同部門の成長を牽引するでしょう。
タイは地政学的リスクや政府支出の停滞など経済情勢に関して幅広い問題を抱えている一方、同国の通信市場は引き続き堅調に推移しています。Advanced Info Serviceの2024年上半期の営業キャッシュフローは539億バーツと潤沢で、前年同期比42%増加しています。フリーキャッシュフローは279億バーツ、設備投資額は約250~260億バーツで着地する見通しで、重点はネットワーク品質の維持とサービスの拡充にあります。EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)マージンは52.9%、ROE(株主資本利益率)は37%で、収益力と成長力がともに高いことから、同社は競争の激しいタイの通信業界において継続的に成功を収める上で有利な立場にあります。配当性向85%以上で配当利回りが約4.5%に達していることから、今後の利下げサイクルでますます魅力度が増すことでしょう。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視しつつ、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月は、First Abu Dhabi Bank(アラブ首長国連邦/金融)とSaudi Awwal Bank(サウジアラビア/金融)が、いずれもマイナスに影響しました。両行の2024年上半期決算は好調で、企業と消費者の需要がいずれも旺盛であることから、今後も貸出残⾼が安定的に伸び続ける⾒込みです。
<通貨>
当月、アジア地域および中東地域の通貨は、対日本円で様々な値動きを見せましたが、全体としては当ファンドのリターンにマイナスに影響しました。
今後の見通し
月前半に円キャリー取引(低金利の通貨で調達した資金を高金利の通貨に換えて資産運用し、金利の利鞘を稼ぐ取引)の巻き戻しに起因する株式市場の急落が発生したことで、予想の急変に関するリスクが浮き彫りになりました。短期的にみると、米国の金利、地政学的リスク、主要国の経済成長率低迷などによって、世界の株式市場は先の見通せない状況に置かれるでしょう。
しかしアジア株式市場の長期的見通しは、中間層の所得増加、継続的なインフラ整備、政情の安定化といった好材料に支えられ、引き続き良好です。こうした好材料が揃うと、優良企業が実力を発揮する機会を与えられ、当ファンドの投資機会も拡大します。
当ファンドは組入銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと目に見える形の一貫した収益とキャッシュフローに支えられ、不透明な市場環境の中でも力強い耐久力を示してきました。
かねてから述べているように、当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を⾏っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することは困難であると考えます。そのため、当ファンドは一時的な逆風に耐え(特にアジアの新興国市場)、風が収まった時にさらに強くなれる優良企業の発掘に力を注いでいます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
2024年7月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当⽉、アジア株式市場は様々な値動きとなりました。⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、前⽉末⽐0.22%上昇しました。パフォーマンスで上位につけたのはタイ、シンガポール、フィリピン、インドなどで、株価が堅調に推移しました。台湾と中国は遅れをとり、全般的にみて株価指数の低迷要因となりました。
米国では、カマラ・ハリス副大統領がバイデン大統領に代わって民主党候補に指名され、秋の大統領選挙でトランプ前大統領と対決することになりそうです。一方、FRB(⽶国連邦準備制度理事会)が9月に利下げに踏み切るという観測が広がっています。米国株式市場、特にマグニフィセント・セブン(米国株式市場を牽引する超大手テクノロジー企業7社)の株価の振れ幅が拡大したことも、アジア市場の投資家心理が弱含む原因となりました。AI(人工知能)と米国テクノロジーセクターの低迷は、テクノロジーセクターへの依存度が高い台湾株式市場にとって大打撃となっています。
中国では三中全会(中国共産党の「中央委員会第3回全体会議」の略称)が開催され、政策がいくつか発表されたものの、市場に大きな反応を引き起こすと考えられるものではなく、市場関係者からはあまり材料視されませんでした。一方、香港は依然経済面の課題を抱えており、不動産価格が下落し、小売売上高が低迷しています。6月の小売売上高は、本土に出かけてグレーターベイエリア(大湾区)で買い物をする住民が増えたことで、前年同月比9.7%減少し、4か月連続の減少となりました。
インド市場は幅広い構造改革と良好な事業環境が好材料となって当月も好調を維持し、経済は力強い成長軌道を保ちました。ASEAN諸国は総じて好調で、マレーシアのデータセンター、半導体、観光セクターに引き続き大きな関心が集まっています。インドネシアも景気底打ちの兆しを見せており、投資家は10月に就任する新大統領が政策を明確に打ち出してくれることを期待しています。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場は堅調に推移しました。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前月末比4.23%上昇しました。ブレント原油価格は前⽉から上昇して⽉を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は、対日本円で下落しました。特にオーストラリアドル、台湾ドル、インドルピーなどが対⽇本円で下落しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドが保有する株式のリターンはマイナスとなりました。セクター別では、情報技術セクター、金融セクターなどがマイナスに影響しました。国別では、タイがプラスに貢献し、台湾、香港などがマイナスに影響しました。個別銘柄では、Advanced Info Services(タイ/コミュニケーション・サービス)、ICICI Lombard General Insurance(インド/金融)、Techtronic Industries(⾹港/資本財・サービス)などがプラスに貢献しました。一方で、MediaTek(台湾/情報技術)、eMemory Technology(台湾/情報技術)、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)などがマイナスに影響しました。
当月は当ファンドの長期保有銘柄である「HSBC Holdings(⾹港/⾦融)」をご説明いたします。
HSBC Holdingsは香港上海銀行を母体とする金融機関で、アジア、特に香港で長年にわたって事業を展開してきました。同行は欧州、インド、中国間の貿易資金を調達することを目的として1865年に設立され、1990年代に入ると積極的な世界展開に乗り出し、1992年にミッドランド銀行を買収したあと本社を英国に移転し、欧州における存在感を大きく高めました。現在は60か国以上で事業を展開し、香港と英国を主要拠点に広範なグローバルネットワークを確立し、世界各国の顧客に効果的にサービスを提供しています。
同行の事業は(1)資産運用業務、(2)商業銀行業務、(3)グローバル銀行業務の3大セグメントで構成されています。業務は包括的で多岐にわたり、顧客基盤も個人、法人、機関投資家など多様です。
同行は長年にわたる歴史の中で複数の景気サイクルを乗り切り、金融市場の進化に適応してきました。新型コロナウイルス感染症の流行期には経済活動が急激に落ち込み、不良債権の増加や大幅な成長減速に対する懸念が高まって、株価の下落材料となりました。同行はそれを受けて2020年の配当支払いを停止し、資本を保全するとともに潜在的損失の発生に備えました。そして世界経済が回復軌道に戻ると、2021年から配当支払いを再開し、2023年には年4回の配当支払いを行いました。
同行はこの数年、「アジア回帰」戦略を加速させ、アジア事業の拡大に注力しています。米国、フランス、カナダなど、アジア以外の数か国においてリテール(個人・中小法人向け)事業を売却しました。それにより、高成長と多額の利益が見込めるアジア市場に資本を再配分し、同行の持つ圧倒的な市場シェアと影響力を生かすことが可能になりました。
例えば、成長加速に向けて事業拡大を進めている分野の一つに、中国、とりわけグレーターベイエリア(大湾区)における資産運用事業があります。中国経済にはこのところ逆風が吹いていますが、同行は長期的にみると個人富裕層の増加によって資産運用、保険、プライベートバンキング事業の需要が拡大すると考えています。同行は2021年以降、中国で2,000名近い資産運用担当者を採用しており、2025年までに3,000名を目指すとしています。資産運用部門の2024年第2四半期決算では、アジアの富裕層が増加したことから、前年同期比13%の増収と発表しました。一方で、貸出金残高と預金残高が2024年第2四半期に伸び悩んでいるものの、銀行業務の純金利収入は引き続き安定的に推移し、非金利収入(手数料収入)は前述した資産運用事業に牽引される形で増加しました。普通株式等Tier1(CET1)比率は15.0%と引き続き高く、不良債権比率の顕著な悪化も見られません。直近の有形自己資本利益率(RoTE)は21.4%と、2019年から大幅に改善しています。また経営陣は2022年から自社株買いを行ってきましたが、2024年は追加で30億米ドル相当を買い戻すという計画を発表しました。
主力外事業のスリム化とアジア市場への資本の再配分という同行の戦略は、成長率と収益性の長期拡大要因となると考えます。香港と英国を除くその他3市場(中国、シンガポール、インド)の税引前利益は、「アジア回帰」戦略に支えられています。アジア経済の成長性が大きいこと、同行が個人、法人、機関投資家といった幅広い顧客層に銀行業務、融資業務、資産運用業務を提供できる能力を持つことから、同行の成長力はきわめて高いと考えられます。2024年9月に就任予定の次期CEOには、アジアにおける事業拡大、厳格なコスト管理の維持、技術への投資といった現行戦略を継続し、株主に魅力あるリターンを長期的に提供することが期待されています。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視しつつ、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月は、First Abu Dhabi Bank(アラブ首長国連邦/金融)とSaudi Awwal Bank(サウジアラビア/金融)が、いずれもマイナスに影響しました。企業と消費者の需要がいずれも旺盛であることから、今後も貸出残高が安定的に伸び続ける見込みです。
<通貨>
当月、アジア地域および中東地域の通貨は対日本円で下落し、全体としては当ファンドのリターンにマイナスに影響しました。
今後の見通し
米国の金利は、世界の株式市場にとって引き続き短期的な変動要因となっています。直近の米国経済指標が弱含んでいることから、投資家の関心はFRBによる積極的な利下げが行われるかどうかという点にシフトしています。テクノロジー関連銘柄の力強い上昇はAI需要の拡大に対する期待感に裏打ちされたものであることから、マグニフィセント・セブンの業績と見通しが期待以下に終われば、一気に反転する可能性があります。また、中東地域における緊張の高まりや11月に米国大統領選挙が控えていることから、地政学的情勢はますます不透明になっています。
半導体とAIの関連銘柄は年初から好調なパフォーマンスをみせていましたが、当月に入ってからは、バリュエーションの高さやAIの普及率を楽観視し過ぎていたことに対する懸念から、下方圧力にさらされました。台湾と韓国のテクノロジーセクターは、投資家がAIの成長予想を見直す動きが広がっていることから、短期的に弱含む可能性があります。このように短期的には株価の変動幅が大きくなりますが、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company社やSamsung Electronics社をはじめとするアジアの大手テクノロジー企業は引き続き長期的投資に適した銘柄であると当ファンドは考えています。
中国市場と香港市場は依然低迷しており、短期的には浮上の兆しが見当たりません。中国政府が何らかの支援策を発表することも考えられますが、対中抑圧政策の追加発動を避けるため、米国の大統領選が終わるまで大規模な措置は先送りされる可能性があります。ただし、一部優良企業のバリュエーションが割安な状態になっていることから、有望な投資機会がないか慎重に注視しておく必要があると考えます。
ASEAN株式市場の長期的見通しは、⼈⼝構成による下⽀え、中間層の所得増加、継続的なインフラ整備といった好材料に支えられ、引き続き良好です。インドネシアでは10月に次期大統領が就任する予定であり、政府による投資面の意思決定はそれ以降、積極的に再開される模様です。
中東諸国、とりわけサウジアラビアでは、産業の多角化による石油依存からの脱却に向けた取り組みが勢いを増しています。サウジアラビアの2023年実質GDP成長率がマイナス0.9%だった一方で、非石油セクターは、財政政策の緩和、堅調な個人消費、公共投資施策の下支えによって、同年4.6%のプラス成長となりました。金融セクターは、こうした長期的な経済成長と多角化戦略から恩恵を受ける立場にあると考えます。
当ファンドは組入銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと目に見える形の一貫した収益とキャッシュフローに支えられ、不透明な市場環境の中でも力強い耐久力を示してきました。
かねてから述べているように、当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を⾏っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することは困難であると考えます。まさにそうした理由から、当ファンドは一時的な逆風に耐え(特にアジアの新興国市場)、風が収まった時にさらに強くなれる優良企業の発掘に力を注いでいます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
2024年6月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当⽉、アジア株式市場はまちまちの値動きとなりました。⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、台湾、韓国、インドなどを中心に株価が上昇し、前⽉末⽐3.92%上昇しました。
台湾市場と韓国市場は、テクノロジーセクターの上昇基調が引き続き追い風となりました。台湾で毎年開催されるCOMPUTEX TAIPEI(台北国際コンピュータ見本市)では、AI(人工知能)の能力が急速に向上し、速いペースで導入が進んでいることが明らかになりました。両国の企業はAIサプライチェーンの中で戦略的な立ち位置をとり、今後数年にわたって続くAIの進化の流れに乗ろうとしていると考えられます。
インド市場では総選挙後しばらくの間、変動幅の大きい状態が続きました。モディ首相率いる国民民主同盟(NDA)は下院で293議席を獲得し、予想より少ないながらも、過半数を確保しました。株価はモディ政権発足直後こそ下落したものの、現行政策が継続されるという見方が投資家の間に広がったことで、力強く反発しました。
中国市場と香港市場は4月と5月には好調なパフォーマンスを記録しましたが、当月は上昇基調が一服しました。これは中国政府が7月に開催される長期的な経済政策運営の方針を決める重要会議「三中全会」の後に大規模景気刺激策を打ち出すという見方が薄れ、景気回復のペースをより慎重に見定めようという姿勢が強まったためと考えられます。一方、香港の不動産セクターは引き続き業績が低迷しており、中古住宅価格の指標となる中原城市領先指数(CCL)は2016年以来の低水準に達しました。オフィス市場も苦戦しており、英不動産コンサルティング会社Knight Frank社は香港の空室率は過去最高の12.2%に上ると発表しました。また、ハンセン不動産指数の年初来の下落幅は約19%に達しました。
ASEAN諸国は内需と外需がいずれも低迷したことで、経済成長が総体的に鈍化しました。米ドル高によって新興国通貨にさらなる下落圧力がかかり、新興国経済の直面する課題がまた一つ増えた形となりました。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場は堅調に推移しました。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前月末比3.45%上昇しました。ブレント原油価格は前⽉から上昇して⽉を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は、対日本円で上昇しました。特に韓国ウォン、タイバーツ、オーストラリアドルなどが対⽇本円で上昇しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドが保有する株式のリターンはプラスとなりました。セクター別では、情報技術セクター、コミュニケーション・サービスセクター、金融セクターなどがプラスに貢献しました。国別では、台湾、インド、オーストラリアなどがプラスに貢献し、香港などがマイナスに影響しました。個別銘柄では、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、eMemory Technology(台湾/情報技術)、MediaTek(台湾/情報技術)などがプラスに貢献しました。⼀⽅で、AIA Group(香港/金融)、Haier Smart Home(中国/一般消費財・サービス)、Kweichow Moutai(中国/生活必需品)などがマイナスに影響しました。
First Pacific(香港/生活必需品)-魅力的なディスカウント価格での新興市場エクスポージャー
当ファンドは当月、First Pacificへの新規投資を開始しました。同社は香港市場に上場しているコングロマリット企業で、主にASEAN諸国で各種事業を展開しています。1981年にフィリピン人実業家のマニュエル・パンギリナン氏によって香港で設立され、インドネシアの財閥Salim Group社の力を後ろ盾に成長を続け、同地域を代表するコングロマリット企業となりました。
同社は消費者向け食品、インフラ、通信、天然資源という4つの主要セクターに重点を置き、各セクターにおける有力企業の株式を戦略的に保有し、戦略面の意思決定や業務改善を積極的に後押しすることで、単なる資本拠出以上の価値を創出しています。
主な投資先は以下の通りです。
Indofood Sukses Makmur社(持株比率50.1%): 製粉からアグリビジネス(農業生産とそれに関連する資材供給や加工分野における企業活動)、有名な即席麺「Indomie」の製造販売まで幅広く手がけるインドネシア最大の垂直統合型食品会社。インドネシアで圧倒的な市場シェアを持ち、アフリカでも高いシェアを誇る。
Metro Pacific Investments社(持株比率46.3%): フィリピンで電力、水道、病院、LRT(Light Rail Transit、次世代型路面電車)を所有・運営するインフラ企業。フィリピン、インドネシア、ベトナムの有料道路運営権も保有。
PLDT社(持株比率25.6%): モバイルと固定回線で高いシェアを持つフィリピンの通信事業者。デジタル銀行口座総数で大きく市場シェアを占めるMaya社(フィリピン)に出資。
こうした企業に投資することで、First Pacificは人口構成の有利さ、中間層の消費支出拡大、継続的なインフラ整備といったアジア新興国に共通するトレンドの恩恵に浴することができます。同社は投資先企業の力によって継続的な利益拡大と配当を手にし、新たな成長分野への再投資を実現しています。
企業の価値を考えたときに、First Pacificの投資先であるIndofood Sukses Makmur社とPLDT社の時価総額はそれぞれ約33億米ドル、約53億米ドルです。Metro Pacific Investments社は、2023年の民営化の際、First Pacificが29.6億米ドルで株式の46.3%を購入しました。したがって、3社の企業価値を合計すると約44億米ドルになります(33億米ドル×50.1%+53億米ドル×25.6%+29.6億米ドル×46.3%)。そこから純負債14億米ドル分を差し引くと、純資産価値の総計は約30億米ドルになります(First Pacificが所有する他の投資先の企業価値は度外視した金額で、試算によると他の投資先の企業価値は総計約5億米ドル)。First Pacificの時価総額は約20億米ドルなので、つまり約35%のディスカウントがついていることになります(他の投資先の企業価値を含めると約40%)。
同社の財務内容は健全で、2023年度の売上高は105億米ドル、純利益は5億100万米ドル、ROE(株主資本利益率)も高い水準を維持しています。また同社は累進配当政策を維持し、現在の利回りは6.2%と魅力的な水準です。
今後に目を向けると、同社は有料道路や再生可能エネルギーといった成長分野への再投資を通じて大きく成長する可能性を秘めています。たとえバリュエーションのディスカウント幅が縮小せずとも、同社には市場における優位性、安定的な収益力、高い配当利回りといった好材料があることから、投資先としての妥当性は損なわれないと考えています。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視しつつ、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月は、First Abu Dhabi Bank(アラブ首長国連邦/金融)とSaudi Awwal Bank(サウジアラビア/金融)がプラスに貢献しました。企業と消費者の需要がいずれも旺盛であることから、今後も貸出残高が安定的に伸び続ける見込みです。
<通貨>
当月、アジア地域および中東地域の通貨は対日本円で上昇し、全体としては当ファンドのリターンにプラスに貢献しました。
今後の見通し
米国の金利は、世界の株式市場にとって引き続き短期的な変動要因となっています。FRB(⽶国連邦準備制度理事会)の今後の政策予想の変化によって、世界の株式市場は上下動を繰り返しています。2024年11⽉に行われる米国大統領選挙の結果は、米中関係に加え、ロシアとウクライナ、イスラエルとハマスの紛争に関わる政策の方向性にも影響を与える可能性があります。
台湾市場とインド市場は力強い上昇局面にあります。台湾ではテクノロジーセクターが引き続き市場の成長を牽引していますが、その推進力となっているのはAIの進化です。これは台湾が半導体と情報通信産業のグローバルリーダーとしての役割を担っていることを裏づけとなっており、同国が世界のAIサーバー生産の大半を担っていることも、その証しと言えるでしょう。一方、インド株式市場の上昇要因は、主として国内経済の力強い成長にあります。同国経済のファンダメンタルズは引き続き堅調で、モディ氏が選挙に勝利したことで、現行政策の継続が期待されます。
中国市場と香港市場は力強く反発していましたが、経済のファンダメンタルズの悪化、とりわけ不動産セクターの低迷により、その勢いは失われつつあるようです。ただし、一部優良企業のバリュエーションが割安な状態になっていることから、有望な投資機会がないか慎重に注視しておく必要があります。
ASEAN諸国の株式市場は、海外直接投資(FDI)やサプライチェーン再編に関して好ましい報道が出ているにもかかわらず、パフォーマンスが低調です。これは選挙や新興国通貨に対する下落圧力といった短期的要因に由来するものだと言えるかもしれません。しかし、人口構成による下支え、中間層の所得増加、継続的なインフラ整備といった好材料が揃っていることから、長期的な見通しは引き続き良好だと考えます。
中東諸国、とりわけサウジアラビアでは、産業の多角化による石油依存からの脱却に向けた取り組みが勢いを増しています。サウジアラビアの非石油セクターは、財政政策の緩和、堅調な個人消費、公共投資施策の下支えにより、2023年の成長率が堅調に推移する見通しです。金融セクターは、こうした長期的経済成長と多角化戦略から恩恵を受ける立場にあります。
当ファンドは組入銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと目に見える形の一貫した収益とキャッシュフローに支えられ、不透明な市場環境の中でも力強い耐久力を示してきました。
かねてから述べているように、当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を⾏っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することはきわめて困難であると考えます。まさにそうした理由から、当ファンドは一時的な逆風に耐え(特にアジアの新興国市場)、風が収まった時にさらに強くなれる優良企業の発掘に力を注いでいます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
2024年5月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当月、アジア株式市場はまちまちの値動きとなりました。⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、台湾、シンガポールなどに牽引される形で前⽉末⽐1.91%上昇しました。当⽉パフォーマンスが振るわなかった市場は、インドネシア、フィリピン、韓国などでした。中国市場と香港市場は前月以降の堅調な上昇基調を維持しました。中国政府は当月、不動産セクターに対する政策支援を発表し、地方政府の支援を通じて落ち込んだ不動産市場の安定化を図る意向を示しました。一部投資家の間に中国の不動産セクターは最悪期を脱した可能性があるという見方があることから、MSCI中国不動産指数は過去2か月でおよそ17%上昇しました。
AI(人工知能)関連銘柄は前月に一時的な調整局面に入りましたが、当月は堅調な上昇基調を取り戻しました。NVIDIA社(米国)が好調な業績と見通しを発表したことは、アジアのAIサプライチェーン全体、とりわけ台湾と韓国のハイテク銘柄に恩恵をもたらしました。アジア地域でデータセンターの需要が旺盛であることから、Microsoft社(米国)、Alphabet社(米国)、Amazon.com社(米国)、NVIDIA社などはASEAN諸国に多額の投資を行い、域内の有能なエンジニアと低い運営コストを最大限に生かそうとしています。
インド市場は小幅な値動きで推移しましたが、これは投資家が選挙の行方を見定めようとして待ちの姿勢をとったためだと考えられます。モディ首相が続投して3期目に突入し、現行政策を継続して経済成長を推進するというのが大方の予想となっています。
インドネシア市場は企業業績やマクロデータの低迷や前月に発表された予想外の利上げの影響で軟調なパフォーマンスに終わりました。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場は軟調に推移しました。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前月末比5.77%下落しました。ブレント原油価格は前⽉から下落して⽉を終えました。
<通貨>
当⽉、アジア地域の通貨は、対日本円でまちまちの値動きをみせました。特にオーストラリアドル、マレーシアリンギ、シンガポールドルなどが対日本円で上昇し、フィリピンペソ、韓国ウォン、中国人民元などが対日本円で下落しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドが保有する株式のリターンはプラスとなりました。セクター別では、情報技術セクター、資本財・サービスセクター、コミュニケーション・サービスセクターなどがプラスに貢献し、一般消費財・サービスセクター、生活必需品セクターなどがマイナスに影響しました。国別では、台湾、香港、オーストラリアなどがプラスに貢献し、インド、韓国などがマイナスに影響しました。個別銘柄では、MediaTek(台湾/情報技術)、China State Construction International Holdings(香港/資本財・サービス)、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)などがプラスに貢献しました。一⽅で、Lemon Tree Hotels(インド/⼀般消費財・サービス)、Samsung Electronics(韓国/情報技術)、Techtronic Industries(香港/資本財・サービス)などがマイナスに影響しました。
当ファンドは当月、momo.com(台湾/⼀般消費財・サービス)の経営陣と面会し、台湾の小売市場、特にオンライン小売市場に関する最新情報を入手しました。同社はB2C(企業と消費者間の取引)分野に特化した大手eコマース(電子商取引)企業で、市場シェアは20%を上回っています。また規模の優位性、国内外ブランドの豊富な品揃え、高い物流能力を生かし、競合他社以上に市場シェアを伸ばしていると考えます。
中国企業の台湾事業には様々な制約があり、Alibaba Group Holding(中国/一般消費財・サービス)やJD.com社(中国)といった中国のeコマース事業者が台湾で事業を拡大できなかったため、台湾市場の競争環境はここ数年、比較的穏やかでした。しかし、2021年にCoupang社(韓国)が台湾市場に参入し、市場シェア獲得を狙って積極的な価格戦略を打ち出しました。momo.comの経営陣はCoupang社との競争激化を認めつつも、ブランドオーナーやサプライヤーが末端市場での長期的な価格破壊を支持する可能性は低く、価格割引戦略は長続きしないと考えました。サプライヤーの支持がなければ製品の供給が制限され、顧客体験に悪影響が及ぶと考えます。
momo.comは現在、オンラインB2C分野で独占的な地位を確立し、その顧客基盤と物流能力を活用して(1)加盟店にmomo.comプラットフォームの広告掲載料を課金してオンライン広告を収益化し、(2)厳選したサードパーティの加盟店をプラットフォームに加えて製品供給をさらに充実させることで、収益源の拡大を図っています。どちらの取り組みも、マージン全般を拡大し、eコマース小売業界における同社の独占的地位をさらに強化することになると考えます。
台湾のeコマース普及率はまだ約11.7%と、比較的低水準に留まっています。したがって成長の余地はまだ十分にあり、同社の市場シェア拡大は続くというのが当ファンドの見方です。熾烈な競争、プロモーション、物流への設備投資があったにも関わらず、同社は2014年の新規株式公開(IPO)以降、常に黒字を維持してきました。これはeコマース企業としては稀有な事例で、Alibaba Group Holding 、JD.com社、Amazon.com社(米国)でさえ、eコマース事業で何年も赤字を計上した後でようやく黒字化に成功しています。同社は手元資金が豊富で、利益の多くを配当金として払い出しています。ROE(株主資本利益率)は30%強、今後数年間に予想される売上高成長率は10%強で、同社は長期的に魅力的なリターンをもたらすと当ファンドは考えています。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当⽉は、First Abu Dhabi Bank(アラブ⾸⻑国連邦/⾦融)とSaudi Awwal Bank(サウジアラビア/⾦融)が、中東市場全体の市場心理の悪化を受け、いずれもマイナスに影響しました。両行は貸出残高の伸びが予想を上回ったことを背景に、いずれも2024年度第1四半期決算が好調でした。企業と消費者の需要がいずれも旺盛であることから、今後も貸出残高が安定的に伸び続ける見込みです。
<通貨>
当月、アジア地域および中東地域の通貨は、対日本円でまちまちの動きをみせ、全体としては当ファンドのリターンにプラスに貢献しました。
今後の見通し
<アジア株式>
米国の金利は、世界の株式市場にとって引き続き短期的な変動要因となっています。FRB(⽶国連邦準備制度理事会)の今後の政策措置に関する予想の変化によって、世界の株式市場は上下動を繰り返しています。2024年11⽉に行われる米国大統領選挙の結果は、米中関係に加え、ロシアとウクライナ、イスラエルとハマスの紛争に関わる政策の方向性にも影響を与える可能性があります。
中国市場と香港市場は、2024年に入って力強く反発しました。バリュエーションが割安で政策による⽀援が⾒込めるため、2024年中は投資家の関心が高まると予想しています。中国政府の進める家電製品下取りプログラムによって、旧式の家電製品をエネルギー効率に優れた新型の⾼機能モデルに買い換える動きが促され、個人消費が上向く可能性があります。
インド市場は、選挙結果がモディ政権にとって好ましくないものとなった場合、短期的に乱高下する可能性があります。しかし、インドの長期的かつ構造的な成長は依然魅力的で、銘柄選定の機会は十分にあると考えます。
AI(人工知能)需要の拡大は今後もアジアのテクノロジーセクターの成長を牽引し続けるでしょう。NVIDIA社のCEOを務めるジェンスン・フアン氏が講演で述べた通り、アジアのサプライチェーンがAIのエコシステム全体、とりわけ台湾のハイテク企業にとって不可欠なものであることは明らかです。当ファンドが組み入れている台湾銘柄は、今後もこうしたトレンドの恩恵を受けることでしょう。
<中東株式>
中東諸国、特にサウジアラビアはここ数年、石油依存からの脱却を積極的に進めています。政府の景気刺激策によって経済の多様化が進み、原油への依存度が低下することから、成⻑軌道はこのまま継続すると考えられます。⾦融セクターは中東地域の⻑期的経済成⻑の恩恵を受けると考えられることから、当ファンドは⾦融セクターの保有銘柄を引き続きポジティブにみています。
<通貨>
通貨は短期的には資本フローの影響によって大きく変動すると思われますが、長期的には、アジア地域および中東地域の経済のファンダメンタルズに力強さがみられることから、両地域の通貨は対日本円で上昇すると、当ファンドは考えます。
2024年4月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当月、アジア株式市場はまちまちの値動きとなりました。⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、中国、香港、シンガポールなどに牽引される形で前⽉末⽐0.42%上昇しました。当月パフォーマンスが振るわなかった市場は、インドネシア、韓国、フィリピンなどでした。米国のインフレ率が予想を上回ったことで、米国の金利に対する投資家の見方は「高金利の長期化」シナリオにシフトし、成長株を中心に下落しました。
ナスダック総合指数は4.41%下落し、アジアのテクノロジーセクターにも大きな影響を与えました。韓国市場はテクノロジーセクターに対するエクスポージャーが高いことから、低調に推移しました。
ASEAN市場はインドネシア、フィリピン、タイを中心に全般的に低迷しました。米ドル高の影響から、これらの市場で為替変動とインフレ圧力に対する懸念が高まりました。インドネシアは自国通貨の下支えを狙って唐突に政策金利を0.25%引き上げ、6.25%としました。
一方、中国市場と香港市場は、政策支援、業績回復期待、割安なバリュエーションに後押しされ、堅調に推移しました。不動産セクターとインターネットセクターに投資家の関心が集まりました。AIA Group(香港/金融)は好調な決算と追加の自社株買いを発表し、株価は大きく反発しました。
インド市場は前月の調整後、中小型株の力強い反発に牽引され、上昇基調を取り戻しました。インドの国政選挙は当月半ばに始まり、6月前半の開票まで1か月半あまり続きます。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場は軟調に推移しました。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前月末比2.65%下落しました。ブレント原油価格は前月から上昇し、月を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は、対日本円で上昇しました。特に香港ドル、インドルピー、中国人民元などが対⽇本円で上昇しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドが保有する株式のリターンはプラスとなりました。セクター別では、金融セクター、一般消費財・サービスセクター、コミュニケーション・サービスセクターなどがプラスに貢献し、情報技術セクターなどがマイナスに影響しました。国別では、香港、インド、中国などがプラスに貢献し、台湾などがマイナスに影響しました。個別銘柄では、AIA Group(⾹港/⾦融)、Lemon Tree Hotels(インド/⼀般消費財・サービス)、Haier Smart Home(中国/⼀般消費財・サービス)などがプラスに貢献しました。⼀⽅で、MediaTek(台湾/情報技術)、eMemory Technology(台湾/情報技術)、Samsung Electronics(韓国/情報技術)などがマイナスに影響しました。
当月、当ファンドのパフォーマンスに貢献した「Haier Smart Home」は、世界を代表する家電とスマートホームソリューションのプロバイダーで、1984年に中国の青島で創業し、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどで強力な製品ポートフォリオを確立しています。世界160か国以上に拠点を構え、中国、米国、欧州、豪州といった主要市場で大きなシェアを握っています。2023年時点では中国が売上の約48%を占め、海外売上の割合は約52%でした。
マルチブランド戦略とプレミアム化
同社の主な強みは、マルチブランド戦略とプレミアム化の取り組みにあります。同社は世界の様々な消費者層や地域をターゲットにするため、Haier、Casarte、Leader、GE APPLIANCES、CANDY、FISHER & PAYKEL、AQUAなど、自社開発ブランドと買収ブランドで多様な製品ポートフォリオを構成しています。そのため製品イノベーション、小売店における認知度拡大、マーケティング、プレミアムサービスといった点で差別化を行い、効果的なプレミアム化戦略を追求することができ、特に中国ではCasarteブランドでそうした動きを強めています。中国におけるプレミアム化戦略が成果を出していることは、高価格帯家電分野における市場シェアの高さをみれば明らかでしょう。こうした戦略によって国内高価格帯市場のリーダーとしての地位が強化され、ブランドの影響力と市場シェアが拡大しています。
規模の優位性とデジタル化
同社は英国の調査会社Euromonitor社による「Global Major Appliances 2023 Brandランキング」において、2023年の大型家電・ブランド別世界販売台数シェアで、15年連続で世界No.1の認定を受けました。同社は規模の優位性を活用し、デジタル化への取り組みに注力することで、経営の効率化、コスト競争力や収益性の向上を進めてきました。さらに一元調達戦略を採用し、優先サプライヤーを統合し、製品ライン全体で共通部品の利用拡大を推進した結果、リソースの集約と調達規模の拡大を通じたコスト削減が実現しました。また同社は、研究開発と製品開発のプラットフォームを統合し、効率化と製品の高性能化を進めています。加えて研究開発、製造、サプライチェーン、在庫、販売・販促のデジタル変革施策に多額の投資を行い、事業運営全般の継続的な改善を図っています。
海外進出と企業買収の成功
同社は三洋電機㈱の白物家電事業を買収して日本と東南アジアに進出したのを皮切りに、海外企業の買収を開始しました。他市場への進出はその後も続き、GE Appliances社(米国)、Fisher & Paykel社(ニュージーランド)、Candy社(イタリア)を買収し、最近では2023年にCarrier Global Corporation 社(米国)の業務用冷凍庫事業を買収しています。同社のグローバル化戦略には、組織的成長と戦略的買収がいずれも盛り込まれています。前述の買収ブランドの大半は同社の強力な支援により、その後も市場シェアの拡大を続けています。同社は買収した海外企業の多くで統合に成功したことで、充実した生産・販売ネットワークを活用し、新たな製品カテゴリーに進出するという戦略に対する自信をますます深めています。
課題と展望
Euromonitor社によると、2023年の世界全体における家電の小売売上高は小幅な拡大に留まっており、家電市場は先進国市場の多くで十分に浸透した成熟産業だと言えます。また、中国の調査会社All View Consulting社のデータによると、2023年の中国における家庭用電化製品の成長率は推定3.6%となっています。中国不動産セクターの低迷と欧米の高金利は、家電製品の最終需要に打撃を与えました。しかし同社の決算報告によると2023年の売上高成長率は7.3%、利益成長率は12.8%と、業界平均を上回っています。これは同社がマルチブランド戦略とプレミアム化戦略を採用し、規模の優位性とデジタル化の優位性を兼備しているからに他なりません。
短期的には、同社の中国事業は中国政府の消費財の下取りを促進する政策を追い風に業績を伸ばすでしょう。この政策は2024年第1四半期に発表されたもので、国内消費と経済成長の促進を狙った政府の景気刺激策の一環として、旧式の家電製品をエネルギー効率に優れた新型の高機能モデルに買い換えるよう促す内容となっています。中国政府は2025年までに旧式家電製品のリサイクル量を2023年比で15%以上、2027年までに同30%増やすことを目指しています。同社はエネルギー効率に優れた高機能製品で業界をリードしていることから、中国国内で現状以上に市場シェアを拡大できると考えます。
長期的には、給湯器、浄水器、キッチン家電、スマートビルディングといった新たな製品カテゴリーへの多角化、さらにグローバル展開と買収戦略が、同社の継続的成長に寄与すると予想されます。
同社の時価総額は約370億米ドル、売上総利益率は約30%、純利益率は約6%です。2023年末時点の配当性向は45%で、経営陣は2025年から2026年に配当性向を50%以上に引き上げることを目指していますが、これは将来的なキャッシュ創出力に対する自信の表れでしょう。バリュエーションはPER(株価収益率)2023年末の11倍台から約15倍に上昇していますが、同社が今後も質の高いリターンをもたらしてくれるという当ファンドの見方に変わりはありません。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当⽉は、Saudi Awwal Bank(サウジアラビア/⾦融)がプラスに貢献し、First Abu Dhabi Bank(アラブ⾸⻑国連邦/⾦融)がマイナスに影響しました。Saudi Awwal Bankは法人向け融資が引き続き堅調に伸びています。同行の預貸率が同業他社に比べて相対的に低いことを踏まえると、貸出残高の伸びはさらに加速する可能性があります。同行は国内の住宅ローン需要の高まりに乗じるため、住宅ローン市場にも進出しています。
<通貨>
当月、アジア地域および中東地域の通貨は対日本円で上昇し、全体としては当ファンドのリターンにプラスに貢献しました。
今後の見通し
<アジア株式>
米国の金利は、世界の株式市場にとって引き続き短期的な変動要因となっています。FRB(⽶国連邦準備制度理事会)の今後の政策措置に関する予想の変化によって、世界の株式市場は上下動を繰り返しています。2024年11月に行われる米国大統領選挙の結果は、米中関係に加え、ロシアとウクライナ、イスラエルとハマスの紛争に関わる政策の方向性にも影響を与える可能性があります。
テクノロジーとAI(人工知能)の関連銘柄は年初から大幅な株価上昇を続けていましたが、金利動向に関する見方が「高金利の長期化」に切り替わったことから、当月に入って久しぶりに一服しました。しかしAIの進化は構造的なトレンドであり、今後数年にわたって加速するでしょう。ソフトウェアとハードウェアのプロバイダーはいずれもその恩恵を受けることになると考えられ、アジアではその受益者が台湾や韓国の企業以外にまで広がってきています。ASEAN諸国にAI用データセンターを設立する案件が複数発表されていて、短期的には建設活動の活発化、長期的にはIT能力の強化が見込まれることから、同地域もAI需要の恩恵を受けることになると考えます。
中国市場と香港市場は、2024年に入って力強く反発しました。投資家の関心が再び両市場に向いたのは、バリュエーションが割安で政策による支援が見込めるためです。中国国務院は資本市場の質の向上に向けた「国家九条」を発表しました。その狙いの一つは国営企業の配当と株主還元の重要性を強調することで、日本のコーポレートガバナンス改革や韓国の「企業価値向上」プログラムと通底するものです。
当ファンドは組入銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと目に見える形の一貫した収益とキャッシュフローに支えられ、不透明な市場環境の中でも力強い耐久力を示してきました。
当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を⾏っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することはきわめて困難であると考えます。まさにそうした理由から、当ファンドは一時的な逆風に耐え(特にアジアの新興国市場)、風が収まった時にさらに強くなれる優良企業の発掘に力を注いでいます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
<中東株式>
中東諸国、特にサウジアラビアはここ数年、石油依存からの脱却を積極的に進めています。政府の景気刺激策によって経済の多様化が進み、原油への依存度が低下することから、成⻑軌道はこのまま継続すると考えられます。⾦融セクターは中東地域の⻑期的経済成⻑の恩恵を受けると考えられることから、当ファンドは⾦融セクターの保有銘柄を引き続きポジティブにみています。
<通貨>
通貨は短期的には資本フローの影響によって大きく変動すると思われますが、長期的には、アジア地域および中東地域の経済のファンダメンタルズに力強さがみられることから、両地域の通貨は対日本円で上昇すると、当ファンドは考えます。
2024年3月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当月、アジア株式市場はまちまちの値動きとなりました。⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、台湾、韓国、シンガポールなどに牽引される形で前⽉末⽐2.64%上昇しました。テクノロジーセクターは引き続き堅調な値動きを見せ、代表的な銘柄であるTaiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)の株価は過去最高水準に達しました。AI(人工知能)に対する投資家の期待感は、NVIDIA社(米国)がGPU(Graphics Processing Unit、画像処理装置)技術に関するカンファレンス「GPU Technology Conference 2024」で最新GPU「Blackwell GPU」を発表したことでさらに高まり、AI関連事業を展開するアジアのテクノロジー企業、特に台湾銘柄と韓国銘柄の株価を押し上げました。
韓国市場ではテクノロジーやAIに対する期待感に加え、政府の「企業価値向上プログラム」が投資家の関心を集めたことも追い風となりました。同プログラムには企業経営陣にコーポレートガバナンス、ROE(株主資本利益率)、株主還元の改善を促すことで、最終的に韓国企業の評価を向上させる効力があるというのが一部投資家の見方です。
中国政府が発表したマクロデータは予想を上回る内容でしたが、市場が景気回復の持続性に対して慎重姿勢をとったことから、当月中の株式の上昇は小幅に留まりました。香港市場の当月のパフォーマンスはアジア市場の中で最低水準でしたが、これは不動産セクターとヘルスケアセクターの低迷が原因と考えます。
インドでは、規制当局が中小型銘柄の流動性とバリュエーションに懸念を示したことを受け、当該銘柄の株価が調整しました。しかし同国の大型銘柄はアウトパフォームし、中小型銘柄の低迷を相殺する形となりました。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場は軟調に推移しました。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前⽉末⽐1.11%下落しました。ブレント原油価格は前月から上昇し、月を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は、対日本円でまちまちの値動きをみせました。特にマレーシアリンギ、オーストラリアドルなどが対⽇本円で上昇しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドが保有する株式のリターンはマイナスとなりました。セクター別では、情報技術セクター、コミュニケーション・サービスセクター、資本財・サービスセクターなどがプラスに貢献し、金融セクター、一般消費財・サービスセクターなどがマイナスに影響しました。国別では、韓国、中国などがプラスに貢献し、香港、インドネシアなどがマイナスに影響しました。個別銘柄では、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company、Samsung Electronics(韓国/情報技術)、Tencent Holdings(中国/コミュニケーション・サービス)などがプラスに貢献しました。⼀⽅で、AIA Group(香港/金融)、eMemory Technology(台湾/情報技術)、Telkom Indonesia(インドネシア/コミュニケーション・サービス)などがマイナスに影響しました。
当ファンドの1月から3月のパフォーマンスに貢献した銘柄の⼀つに「MediaTek(台湾/情報技術)」があります。同社の株価は同期間中に17.7%上昇し、過去12か月間の上昇幅は51.8%に達しています。同社は携帯電話、無線通信機器、自動車、コンピューティング・サーバー、家電製品向けのICチップを設計する半導体ファブレス企業(自社で生産施設を持たない企業)です。スマートフォンのシステム・オン・チップ(SoC)分野では、同社とQualcomm社(米国)がAndroidスマートフォン市場をほぼ独占してきました。Qualcomm社は高価格帯のスマートフォンで大きな市場シェアを持ち、同社は中低価格帯で高いシェアを占めています。しかし同社はここ数年、最新型となる「Dimensity」シリーズのSoCで徐々に高価格帯に進出し、市場シェアを拡大しています。
ここ数年間は不透明な経済環境や搭載機能の成熟などが原因で、スマートフォンの売れ行きは世界的に低迷しています。同セクターは在庫消化期間を経て、2023年下期からようやく回復の兆しを見せはじめました。今後の主な成長要因は、リアルタイム翻訳、文字情報の指示による画像生成、ユーザーフレンドリーな音声アシスタントといった端末搭載型生成AIを活用した新機能に由来するスマートフォンのアップグレード需要が考えられます。AIの採用がモデルの学習という段階から推論(応用)という段階に進むにつれ、生成AIの応用範囲は現行の大規模クラウドサーバーから個々の「エッジ」デバイスへと拡大していくことでしょう。同社のDimensity 9300チップのAI処理機能は、独立機関であるETH Zurich(スイス)のAIベンチマークで世界第1位にランクされ、現状ではAI処理機能を搭載したVivoとOppoのフラッグシップモデルに搭載されています。同社は顧客にAI処理機能を効率的に開発してもらうため、「NeuroPilot SDK」というきわめて高性能で使い勝手のよいソフトウェア開発キットをソフトウェア開発事業者に提供しています。こうした取り組みによって、AIに関わるエコシステムの成長が加速し、スマートフォンのアップグレードがさらに促進され、買い替えサイクルが短縮されることになるでしょう。
MediaTekはスマートフォン向けSoCばかりでなく、ASIC(特定用途特化型IC)事業でも力強い成長を遂げています。経営陣によると、今後数年間は企業向けICと車載用ICが大幅に成長する可能性があるとのことです。先日発表された「Dimensity Auto Cockpit」というSoCは、NVIDIA社のGPUを組み込むことで、自動車用のAI処理機能を実装します。同社はこれで車載用SoC分野における代表的事業者の位置に躍り出て、NVIDIA社のADAS(先進運転支援システム)やソフトウェアを実装したeコクピット、5Gテレマティクス、パワーICといったソリューションを提供することになります。
同社の成功の秘訣は、研究開発能力が強力であること、経営陣が優れた手腕を発揮して技術の進歩とともに急速に変化する市場の荒波を乗り切り、会社を進化させてきたことにあります。当ファンドは同社の主要事業部門(スマートフォン、スマートエッジ、コンピューティング、自動車)が、いずれも今後数年間で加速度的に成長すると考えています。2023年12月現在、同社の売上高は約140億米ドル、売上総利益率は47.8%、純利益率は17.8%、ROEは約19%、PER(株価収益率)は約20倍です。同社は今後も当ファンドの長期組入銘柄のひとつであり続けるでしょう。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当⽉は、Saudi Awwal Bank(サウジアラビア/⾦融)がプラスに貢献し、First Abu Dhabi Bank(アラブ⾸⻑国連邦/⾦融)がマイナスに影響しました。両行の配当利回りはいずれも約4~5%で、政府の強固な財政基盤や同地域に対する海外直接投資に支えられ、今後も中東地域の⻑期的な経済成⻑の恩恵を受けて、当ファンドに安定した配当収⼊をもたらすと考えます。
<通貨>
当月、アジア地域および中東地域の通貨は、対日本円でまちまちの値動きを見せましたが、全体としては当ファンドのリターンにマイナスに影響しました。
今後の見通し
<アジア株式>
当ファンドは投資先候補を発掘するため、当四半期中に韓国、台湾、マレーシアを訪問し、多数の企業経営陣と面談しました。韓国では「企業価値向上プログラム」の効果で株主還元を改善する企業が増える見込みであることから、当ファンドにとっても投資機会が拡大すると考えています。引き続き事態の展開を注視し、投資先候補の評価を進めて参ります。
台湾で主な話題となったのはAIでした。当ファンドはTaiwan Semiconductor Manufacturing Companyのバリューチェーンに属する中小企業、あるいはAI関連企業の中小企業数社と面談しましたが、その目的はAI普及の観点から長期的な勝ち組となる企業を特定することにあります。
マレーシアは世界的なサプライチェーン再編の動きからくる対外投資、さらに国内では石油・ガス部門の好調さとグリーンエネルギーへの積極的な移行に支えられ、今後の見通しがきわめて有望です。同国(さらにASEAN諸国全般)は米中両国から投資を呼び込み、製造能力を強化しています。NVIDIA社が同国のコングロマリットと提携し、同国南部にAIデータセンターを開設すると報じられたことで、同国のインフラと技術力の強さが浮き彫りになりました。同国には当ファンドの潜在的な投資先として調査すべき企業がまだまだあると考えます。
当ファンドは組入銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと目に見える形の一貫した収益とキャッシュフローに支えられ、不透明な市場環境の中でも力強い耐久力を示してきました。
かねてから述べているように、当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を⾏っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することはきわめて困難であると考えます。まさにそうした理由から、当ファンドは一時的な逆風に耐え(特にアジアの新興国市場)、風が収まった時にさらに強くなれる優良企業の発掘に力を注いでいます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
<中東株式>
中東諸国、特にサウジアラビアはここ数年、石油依存からの脱却を積極的に進めています。政府の景気刺激策によって経済の多様化が進み、原油への依存度が低下することから、成⻑軌道はこのまま継続すると考えられます。⾦融セクターは中東地域の⻑期的経済成⻑の恩恵を受けると考えられることから、当ファンドは⾦融セクターの保有銘柄を引き続きポジティブにみています。
<通貨>
通貨は短期的には資本フローの影響によって大きく変動すると思われますが、長期的には、アジア地域および中東地域の経済のファンダメンタルズに力強さがみられることから、両地域の通貨は対日本円で上昇すると、当ファンドは考えます。
2024年2月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当⽉、アジア株式市場は力強く反発しました。⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、中国、韓国、台湾などに牽引される形で前⽉末⽐4.51%上昇しました。中国市場が堅調に推移したのは、マクロデータが市場予想を上回ったことや、旧正月の国内観光収入がコロナ禍前の水準を上回ったことなどによるものでした。バリュエーションの割安感と政府系ファンドによる買い支えも、中国株式市場の底打ちに対する信頼感の増大要因となりました。
韓国では、政府が「企業価値向上プログラム」を導入し、PBR(株価純資産倍率)の低い企業に対策を講じるよう促したことを受けて、株式市場が上昇しました。同プログラムは日本で東京証券取引所などが進める市場改革と同様、企業経営陣にコーポレートガバナンス、ROE(株主資本利益率)、株主還元の改善を促すことで、企業のバリュエーション向上を狙ったものです。
また、当月はインドネシアで大統領選挙が行われました。過半数の票を獲得する候補がなく、6月に2回目の投票が実施されると予想されていましたが、世論調査機関4社の集計によると、プラボウォ・スビアント氏が初回投票で約58%の票を獲得し、過半数に到達して当選を確実にしました。新政権の正式発足は10月ですが、短期的には現行の政策方針に大きな変更はないというのが大半の投資家の見方です。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場は堅調に推移しました。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前月末比4.58%上昇しました。ブレント原油価格は前月から上昇し、月を終えました。
<通貨>
当⽉、アジア地域の通貨は、インドルピーとインドネシアルピアを中心に、対⽇本円で上昇しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドが保有する株式のリターンはプラスとなりました。セクター別では、情報技術セクター、金融セクター、一般消費財・サービスセクターなどがプラスに貢献し、ヘルスケアセクターなどがマイナスに影響しました。国別では、台湾、香港、中国などがプラスに貢献し、タイなどがマイナスに影響しました。個別銘柄では、MediaTek(台湾/情報技術)、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、China State Construction International Holdings(⾹港/資本財・サービス)などがプラスに貢献しました。一方で、Advanced Info Service(タイ/コミュニケーション・サービス)、eMemory Technology(台湾/情報技術)、CSL(オーストラリア/ヘルスケア)などがマイナスに影響しました。
当月は、当ファンドの長期的な組入銘柄のひとつである「Telkom Indonesia(インドネシア/コミュニケーション・サービス)」についてご紹介します。同社は約50%の市場シェアを持つインドネシア最大級の通信事業者として、長年にわたって同セクターを支配してきました。子会社Telkomsel社の携帯電話契約数は1億5,000万人超に達しています。
インドネシアの通信セクターでは過去数年にわたって統合が進んでいます。数年前までは複数社が事業を展開していましたが、現在は3社(同社、Indosat社、XL Axiata社)が市場シェアの9割以上を占めています。業界では現在、市場シェアの拡大より収益性が重視されているため、無理な価格競争は沈静化してきています。スマートフォンとデジタルコンテンツの普及が進むにつれ、データ使用量が増加し、ARPU(ユーザー1⼈当たりの平均売上を⽰す指標)が上昇しています。同社は通信網の展開範囲と品質が他社より優れており、特にジャワ島以外ではその傾向が顕著なため、同業他社より高額な料金を請求することができていると考えます。同社のEBITDAマージン(売上⾼に占める償却前営業利益の割合)は約52%と、ASEAN諸国の通信事業者の中でも最高水準です。
当ファンドは先日、同社の経営陣と面談を行いました。彼らは面談の中で、モバイル事業と固定ブロードバンド事業を一部門に統合した社内再編の結果について楽観的な見方を示しました。FMC(Fixed Mobile Convergence、固定・携帯電話融合サービス)は、顧客に提供するサービスの組み合わせ(クロスセル)を改善することで安定的で質の高い収益成長をもたらし、一方で重複する業務を廃止(例えば直販店の閉鎖など)することでコスト削減を実現する見通しです。経営陣はFMCに対する取り組みが2024年から業績にプラスに貢献すると見込んでいます。
もうひとつ話題に上がったのが、データセンターの成長に関することでした。同社は現在、インドネシア全土に小から中規模のデータセンターを複数構え、主として国内企業にサービスを提供しています。加えて、ジャカルタとバタム島には複数の超大型データセンターを建設しています。バタム島のプロジェクトはSingtel社(シンガポール)との提携下で進められており、シンガポールの旺盛な需要に応えるためのものであることは言うまでもありません。経営陣の予想によると、両データセンターのIRR(内部収益率)は10%台半ばになる見込みとのことです。
EBITDAマージンが50%強、純利益率が15%強、ROE(株主資本利益率)が約20%で、キャッシュフローが潤沢、さらに配当利回りが現状で4%強に達していることから、同社がセクター内における優位と高い収益性を維持し、インドネシア社会のデジタル化とともに成長を続けていくという当ファンドの見方に変更はありません。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当⽉は、Saudi Awwal Bank(サウジアラビア/⾦融)がプラスに貢献し、First Abu Dhabi Bank(アラブ⾸⻑国連邦/⾦融)がマイナスに影響しました。両行の配当利回りはいずれも約4~5%で、政府の強固な財政基盤や同地域に対する海外直接投資に支えられ、今後も中東地域の⻑期的な経済成⻑の恩恵を受けて、当ファンドに安定した配当収⼊をもたらすと考えます。
<通貨>
当月、アジア地域および中東地域の通貨は対日本円で上昇し、全体としては当ファンドのリターンにプラスに貢献しました。
今後の見通し
<アジア株式>
当月、中国と香港の株式市場は力強い反発を見せました。バリュエーションの低い状態が続いているにもかかわらず、投資家は経済統計が明確な改善の兆しを見せてから市場に再参入しようと考えて待機しているというのが当ファンドの見方です。香港政府が先日発表した財政予算案では、中国のグレーターベイエリア(大湾区)との接続性を高めるインフラプロジェクトに引き続き重点が置かれていました。当ファンドはボトムアップ・リサーチで銘柄を選定しており、中国市場と香港市場への投資全般をネガティブに捉えながらも、そうしたプロジェクトから恩恵を受ける企業は存在すると考えています。
また、AI(人工知能)投資に対する機運は今後も継続する見込みであることから、テクノロジーセクターは引き続き堅調に推移するでしょう。アジアはテクノロジーのサプライチェーンに属する企業群が作り出すエコシステムの一部として重要な役割を担っており、とりわけ半導体ハードウェアと製造分野ではその傾向が顕著だと考えます。当ファンドは同セクターを引き続きポジティブにみており、この分野の優良企業の発掘を続けていく意向です。
インドとASEAN諸国は人口動態と地政学的位置づけが有利であることから、今後も長期的な「勝ち組」を探す上で格好の場であり続けるでしょう。中産階級の所得増加によって経済の形式化とデジタル化が引き続き進展し、「チャイナ・プラス・ワン(中国のみに⼯場を構えるリスクを回避するため、他のアジアの国に製造拠点を展開すること)」によるサプライチェーンの再編によって、これらの国々の工業化がさらに加速するでしょう。
当ファンドは組入銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと目に見える形の一貫した収益とキャッシュフローに支えられ、不透明な市場環境の中でも力強い耐久力を示してきました。
かねてから述べているように、当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を⾏っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することはきわめて困難であると考えます。まさにそうした理由から、当ファンドは一時的な逆風に耐え(特にアジアの新興国市場)、風が収まった時にさらに強くなれる優良企業の発掘に力を注いでいます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
<中東株式>
中東諸国、特にサウジアラビアはここ数年、石油依存からの脱却を積極的に進めています。政府の景気刺激策によって経済の多様化が進み、原油への依存度が低下することから、成⻑軌道はこのまま継続すると考えられます。⾦融セクターは中東地域の⻑期的経済成⻑の恩恵を受けると考えられることから、当ファンドは⾦融セクターの保有銘柄を引き続きポジティブにみています。
<通貨>
通貨は短期的には資本フローの影響によって大きく変動すると思われますが、長期的には、アジア地域および中東地域の経済のファンダメンタルズに力強さがみられることから、両地域の通貨は対日本円で上昇すると、当ファンドは考えます。
2024年1月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
アジア株式市場は軟調な値動きで年明けを迎えました。⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、主に中国と⾹港、韓国に⾜を引っ張られる形で前⽉末⽐4.78%下落しました。中国政府が⾦融緩和や景気刺激策などで政策的⽀援を⾏ったにもかかわらず、中国市場と⾹港市場に対する投資家⼼理は冷え込んだままでした。国内要因(不動産危機、消費低迷、⼀貫性のない規制)と国外要因(中国に対する⽶国の規制強化、紅海の海運混乱など)が、中国に対する投資意欲をさらに減退させました。
⼀⽅、台湾では、AI(⼈⼯知能)投資の加速とスマートフォン回復への期待から、テクノロジーセクターが好調な勢いを維持しました。台湾総選挙は想定内の結果で決着し、現政権を担う⺠主進歩党(⺠進党)が総統選を制した⼀⽅で、野党の台湾国⺠党(国⺠党)が議席を伸ばしました。また、第三党の台湾⺠衆党(⺠衆党)は獲得議席数こそ少ないものの、今後数年間の政策の⽅向性を左右しうる新たな政治勢⼒として台頭しました。
インドは強⼒な政府、若年層⼈⼝の多さ、⻑期的成⻑⼒といった⽀援材料に恵まれ、引き続き投資対象として投資家の注⽬を集めています。インドネシア市場では消費⽀出に若⼲陰りが⾒られ、とりわけ低価格帯商品にその傾向が⾊濃く表れました。同国では間もなく⼤統領選挙が⾏われる予定で、次期政権発⾜まで⼀時的に投資家の関⼼が向かなくなる可能性があると考えます。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場のパフォーマンスはまちまちでした。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前⽉末⽐0.39%下落しました。ブレント原油価格は前⽉から上昇し、⽉を終えました。
<通貨>
当⽉、アジア地域の通貨は、対⽇本円で上昇しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当⽉、当ファンドが保有する株式のリターンはマイナスとなりました。セクター別では、情報技術セクター、コミュニケーション・サービスセクターなどがプラスに貢献し、資本財・サービスセクター、⾦融セクターなどがマイナスに影響しました。国別では、台湾、インドなどがプラスに貢献し、⾹港、韓国などがマイナスに影響しました。個別銘柄では、eMemory Technology(台湾/情報技術)、LemonTree Hotels(インド/⼀般消費財・サービス)、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)などがプラスに貢献しました。⼀⽅で、AIA Group(⾹港/⾦融)、Samsung Electronics(韓国/情報技術)、China State Construction International Holdings(⾹港/資本財・サービス)などがマイナスに影響しました。半導体セクターの好調な勢いは当⽉も続きました。
当⽉は、当ファンドの⻑期的な組⼊銘柄のひとつである「Taiwan Semiconductor Manufacturing Company」についてご説明いたします。同社の株価は前⽉末⽐5.9%上昇、前年末⽐では40%上昇し、世界の株式市場が不安定な中で当ファンドのパフォーマンスを下⽀えしました。同社は当⽉、2023年の業績が予想を上回ったと発表し、2024年についても明るい⾒通しを⽰しました。経営陣によると、2024年は売上⾼が伸び、第1四半期の売上総利益率は52%〜54%程度になる⾒込みです。データセンター⽤AI(⼈⼯知能)半導体と3nm先進半導体の出荷増によって⼒強い成⻑が実現できると考えています。
2023年は「ChatGPT」が話題となり、⽣成AIの⽤途が拡⼤しましたが、今後はデータセンターだけでなく、スマートフォンのようなエッジデバイスにも⽤途が広がっていくことになるでしょう。多くの⼤⼿テクノロジー企業がAI分野の開発にしのぎを削っている中で、同社はその最先端技術、⽣産能⼒、効率性の⾼さを⽣かして⼤きな市場シェアを獲得すると考えています。
同社はこの数年の間に多額の設備投資を⾏いましたが、経営陣によると今後は投資額が減り、収穫期に⼊る模様です。同社には過去およそ20年間、需要の⼤幅な伸びに先駆けて⽣産能⼒増強計画を実現してきた実績があり、収益は今後数年間で⼤幅に増加すると当ファンドは考えています。同社の熊本⼯場は2024年に稼働を開始する予定で、まもなく熊本第2⼯場の設⽴も発表される⾒通しです。また、⽶国アリゾナ⼯場も建設中です。
当ファンドが同社に投資しているのは⾜元のAIの台頭が理由ではありません。コストに対し顧客にとって最⼤のPPA(パワー、パフォーマンス、エリア)を提供しようと絶え間なく努⼒を続けている姿勢を評価し、何年も前から投資を続けています。同社は顧客向け半導体IC(集積回路)製品の製造に特化する「ファウンドリーモデル」を採⽤していますが、そのモデルの強みは同社が⼀定の規模に達し、⼀定レベルの製造能⼒、技術的能⼒を蓄積すると、競合他社が容易に追随できなくなるという点にあります。同社の年間設備投資額がおよそ300億⽶ドル程度に達していることを鑑みると、その困難さが伝わるかと思います。同社はそうした優位性を⽣かすことで、5G(第5世代移動通信システム)スマートフォン、⾃動運転、データセンター、IoT(モノのインターネット)、AIなど、半導体が関わるあらゆる技術動向に乗じることができます。⾜元のAIの台頭によって、当ファンドの同社に対する信頼感はさらに確固たるものになりました。
前年末時点で売上総利益率が約53%、純利益率が約38%、ROEが約26%に達し、キャッシュフローが潤沢であることから、当ファンドは同社がセクター内における⽀配的地位と⾼い収益性を今後も維持すると考えます。同社はこれからも当ファンドの主要組⼊銘柄であり続けるでしょう。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成⻑の⾒通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当⽉は、First Abu Dhabi Bank(アラブ⾸⻑国連邦/⾦融)がプラスに貢献し、Saudi Awwal Bank(サウジアラビア/⾦融)がマイナスに影響しました。両⾏の配当利回りはいずれも約4〜5%で、引き続き中東地域の⻑期的経済成⻑の恩恵を受け、当ファンドに安定した配当収⼊をもたらすと考えます。
<通貨>
当⽉、アジア地域および中東地域の通貨は対⽇本円で上昇し、全体としては当ファンドのリターンにプラスに貢献しました。
今後の見通し
<アジア株式>
中国市場と⾹港市場は軟調な値動きで年明けを迎えましたが、これは国内経済の成⻑鈍化に対する懸念と⽶国による規制強化の予測が相まってリスク選好度が低下し、投資家が資⾦配分を減らし続けているためと考えます。バリュエーションは現在、史上最低⽔準に近づいています。しかし健全な財務体質と盤⽯な事業のファンダメンタルズを備え、逆境を⽣き抜いてさらに強くなることができる優良企業は複数存在するというのが当ファンドの考えです。
当⽉後半に、韓国政府が国内企業に対して株価純資産倍率の改善策を採⽤するよう奨励する提案を⾏ったことで、韓国株式市場は多少勢いを増しつつあります。同様に、中国政府も上場国営企業の時価総額を経営陣の主要評価指標の⼀部に含める可能性があると発表しました。両国政府は⽇本における同様の取り組みの成果を鑑み、この措置によってコーポレートガバナンスが改善し、最終的に企業のPBR(株価純資産倍率)が改善することを期待しています。よって、改⾰が実際に⾏われるかどうかを注視していくことが今後の課題と考えます。
当ファンドは組⼊銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと⽬に⾒える形の⼀貫した収益とキャッシュフローに⽀えられ、不透明な市場環境の中でも⼒強い耐久⼒を⽰してきました。
かねてから述べているように、当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を⾏っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することはきわめて困難であると考えます。まさにそうした理由から、当ファンドは⼀時的な逆⾵に耐え(特にアジアの新興国市場)、⾵が収まった時にさらに強くなれる優良企業の発掘に⼒を注いでいます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という⻑期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成⻑企業になる潜在性を⽰しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
<中東株式>
中東諸国、特にサウジアラビアはここ数年、⽯油依存からの脱却を積極的に進めています。政府の景気刺激策によって経済の多様化が進み、原油への依存度が低下することから、成⻑軌道はこのまま継続すると考えられます。⾦融セクターは中東地域の⻑期的経済成⻑の恩恵を受けると考えられることから、当ファンドは⾦融セクターの保有銘柄を引き続きポジティブにみています。
<通貨>
通貨は短期的には資本フローの影響によって⼤きく変動すると思われますが、⻑期的には、アジア地域および中東地域の経済のファンダメンタルズに⼒強さがみられることから、両地域の通貨は対⽇本円で上昇すると、当ファンドは考えます。
2023年12月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当⽉、アジア株式市場は中国を除いて概ね堅調に推移しました。⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、オーストラリア、インド、シンガポールなどに牽引される形で前⽉末⽐4.68%上昇しました。中国市場のリターンはマイナスとなりましたが、これは中国経済の成⻑に関する懸念が拭えないためと考えます。⽉後半に中国でオンラインゲームに関する包括的な規制案が公表されたことを受け、今後こうした規制が消費者の⾏動全体に及ぶのではないかという懸念が投資家の間に広がり、その影響はオンラインゲーム関連のセクターに留まらず幅広い分野に及びました。
中国以外のアジア株式市場は、インフレと⾦利の圧⼒が緩和したことで、前⽉以上に好調に推移しました。インド市場は当⽉、企業のファンダメンタルズの底堅さ、安定政権、⻑期的な構造的成⻑のポテンシャルが好材料とみなされて市場への資⾦流⼊が続き、史上最⾼値を更新しました。
台湾市場は⽣成AI(⼈⼯知能)に対する期待感の⾼まり、スマートフォンの需要回復、データセンターの成⻑によって半導体セクターが堅調に推移したことで、2023年通年ではまずまずのパフォーマンスをみせました。
ASEAN各国市場は、国内経済の成⻑と「チャイナ・プラス・ワン(中国のみに⼯場を構えるリスクを回避するため、他のアジアの国に製造拠点を展開すること)」関連の投資に⽀えられ、底堅く推移しました。インドネシアでは2023年、海外直接投資(FDI)が増加、とりわけ鉱物セクターの川下にあたる製造業でその傾向が顕著にみられました。またマレーシアでも⽶国企業や中国企業を含む⼤⼿グローバル企業から半導体産業に対するFDI増加の動きが継続しました。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場は世界的な投資家⼼理の好転を受けて堅調に推移しました。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前⽉末⽐5.80%上昇しました。ブレント原油価格は前⽉から下落し、⽉を終えました。
<通貨>
当⽉、アジア地域の通貨は、円⾼の流れを受け、対⽇本円で下落しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当⽉、当ファンドが保有する株式のリターンはプラスとなりました。セクター別では、資本財・サービスセクターなどがプラスに貢献し、コミュニケーション・サービスセクターなどがマイナスに影響しました。国別では、オーストラリアなどがプラスに貢献し、中国などがマイナスに影響しました。個別銘柄では、MediaTek(台湾/情報技術)、CSL(オーストラリア/ヘルスケア)、Transurban Group(オーストラリア/資本財・サービス)などがプラスに貢献しました。⼀⽅で、Tencent Holdings(中国/コミュニケーション・サービス)、eMemory Technology(台湾/情報技術)、Haier Smart Home(中国/⼀般消費財・サービス)などがマイナスに影響しました。
当ファンドの2023年のパフォーマンスに主に貢献したのは、半導体関連の組⼊銘柄(Taiwan SemiconductorManufacturing Company(台湾/情報技術)、MediaTek、eMemory Technology、Samsung Electronics(韓国/情報技術)など)でした。これらの銘柄は2022年の⾦利上昇に伴うバリュエーション調整と個⼈消費の低迷が原因でアンダーパフォームしました。しかし当ファンドは企業のファンダメンタルズと競争⼒は損なわれていないと判断し、これらの銘柄の保有を継続しました。デジタル化やコネクティビティという⻑期的かつ構造的なトレンドは依然明確で、持続可能であると考えたためです。2023年の「ChatGPT」をはじめとする⽣成AIの台頭により、その確信はより強まりました。当ファンドの組⼊銘柄はこれらのトレンドの恩恵を受ける⽴場にあることから、持続的成⻑⼒と収益性を確保していると判断しています。そうした考え⽅を粘り強く保ったことが2023年に⼊って報われ、これら銘柄は下落分を取り戻し、さらに上昇しました。
国別でみた際にパフォーマンスに特に貢献したのは、ASEAN諸国とインドでした。これらの国はいずれも国内経済の旺盛な成⻑⼒と若年層の厚さが好材料となっています。当ファンドが組み⼊れている同地域の通信セクター銘柄は、モバイル・データ利⽤の増加とARPU(ユーザー1⼈当たりの平均売上を⽰す指標)の拡⼤が原動⼒となり、⽬に⾒える形で堅調な成⻑を遂げました。配当利回りも⽐較的⾼⽔準で推移しました。
コロナ禍後のインド国内観光の回復も、インドのホテル運営会社であるLemon Tree Hotels(インド/⼀般消費財・サービス)の好調なパフォーマンスの要因となりました。同社の客室稼働率と客室平均単価はインドの経済再開を受けて急速に回復し、株価は2022年に前年⽐約80%、2023年には同約40%上昇しました。
中国と⾹港の組⼊銘柄は2023年、当ファンドのパフォーマンスにプラスに貢献しました。AIA Group(⾹港/⾦融)、NewWorld Development(⾹港/不動産)、Haier Smart Homeなどの低迷はマイナス要因となりましたが、NWS Holdings(⾹港/資本財・サービス)、HSBC Holdings(⾹港/⾦融)、China State Construction International Holdings(⾹港/資本財・サービス)などが上昇し、中国・⾹港全体ではリターンがプラスとなりました。
当ファンドの主な特徴はエクイティ・インカム戦略を重視し、予測可能な収益を持続的に⽣み出すと考えられる「優良企業」に投資するという点にあります。当ファンドは、会社設⽴直後で業績の実績がなくビジネスモデルが確⽴していない企業は投資対象から外し、既に豊富な実績を有しビジネスモデルを確⽴し、今後の収益が⾒込まれると判断した企業を主な投資対象としています。注⽬の成⻑企業であっても、実際に利益が出ておらず、キャッシュフローが確⽴していない企業への投資は極⼒避けています。アジア経済の⻑期的成⻑トレンドに乗る上で「成⻑」は重要な要素ではありますが、戦略的にはエクイティ・インカムを重視し、堅実なキャッシュフローとバランスシートを⽀えに成⻑すると⾒込まれる企業を選好しています。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成⻑の⾒通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当⽉は、First Abu Dhabi Bank(アラブ⾸⻑国連邦/⾦融)とSaudi Awwal Bank(サウジアラビア/⾦融)が、世界的な投資家⼼理の改善に⽀えられ、いずれもプラスに貢献しました。当ファンドは当⽉、サウジアラビアで開催された投資会議に出席しました。そこで得られた主な収穫は、インフラ投資と国内産業の開発・多様化に向けた取り組みが続けられていることでした。サウジアラビア公共投資ファンド(PIF)は、戦略上重要なセクターで新企業を育成し、そうした企業を資本市場に組み込む上で重要な役割を果たしています。映画、旅⾏、教育、ヘルスケアといった新興セクターの企業が上場するようになったのはここ数年のことで、その数は今後さらに増えることでしょう。
当ファンドは組⼊銘柄の⼀つであるSaudi Awwal Bankの経営陣とも⾯談を⾏いました。同⾏は引き続き優良法⼈向け融資に注⼒する⼀⽅、個⼈向け融資を選択的に拡⼤しています。同⾏は株式の31%をHSBC Holdingsが所有していることから、世界の銀⾏ネットワークと独⾃のつながりを有しています。同⾏の推計によると、サウジアラビアで事業を展開している多国籍企業の⼤半がHSBC HoldingsあるいはSaudi Awwal Bankを主要取引⾦融機関としています。サウジアラビアは今後も外国企業の誘致を続けていく予定であることから、同⾏は⻑期的にその恩恵を受けることになると考えます。
<通貨>
当⽉、アジア地域および中東地域の通貨の多くは対⽇本円で下落し、全体としては当ファンドのリターンにマイナスに影響しました。
今後の見通し
<アジア株式>
世界的なマクロ経済の⾒通しは依然として不透明です。ロシアによるウクライナの侵攻、さらにイスラエルとハマスの紛争は、依然終結の兆しすら⾒えません。⽶中間の地政学的対⽴は依然として激しく、投資判断に引き続き⼤きな影響を及ぼしています。台湾、インドネシア、インド、⽶国などでは2024年に選挙が⾏われる予定で、政策の⽅向転換がないか注視しておく必要があります。⼀⽅、インフレと⾦利はピークアウトの兆候を⾒せており、2024年には利下げも期待できます。こうした動きは資本市場に何らかの⽀援材料を与えてくれるかもしれません。
当ファンドは中国に投資するリスクを認識していますが、強い競争⼒を持ち、⼀時的な逆⾵を乗り切る能⼒を持つ企業を適正に選定しさえすれば、プラスのリターンを⽣み出す余地はあると判断しています。不動産セクターと消費者セクターは当⾯低迷を続けるかもしれませんが、中国はバリューチェーンの強化を図っているため、テクノロジー、脱炭素化、先進産業における⾃動化への投資は継続すると考えます。
インドとASEAN諸国は、世界的なサプライチェーン再編「チャイナ・プラス・ワン」の動きを活⽤し、引き続き海外からの投資を呼び込むでしょう。そうすることで国内経済の成⻑が加速し、国内の購買⼒が⾼まることが考えられます。当ファンドは⾦融サービスの普及、インフラや消費者のアップグレード、近代的取引・サービスの公式部⾨への移⾏といったトレンドから恩恵を受ける銘柄への投資機会を積極的に模索しています。
当ファンドは組⼊銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと⽬に⾒える形の⼀貫した収益とキャッシュフローに⽀えられ、不透明な市場環境の中でも⼒強い耐久⼒を⽰してきました。
前述の通り、当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を⾏っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することはきわめて困難であると考えます。まさにそうした理由から、当ファンドは⼀時的な逆⾵に耐え(特にアジアの新興国市場)、逆⾵が収まった時にさらに強くなると考えられる優良企業の発掘に⼒を注いでいます。アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という⻑期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成⻑企業になる潜在性を⽰しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
<中東株式>
中東諸国、特にサウジアラビアはここ数年、⽯油依存からの脱却を積極的に進めています。同地域の証券取引所では、新興セクターでIPO(新規株式公開)が多数⾏われ、国内外の投資家がそれを⽀持しています。政府の景気刺激策によって経済の多様化が進み、原油への依存度が低下することから、成⻑軌道はこのまま継続すると考えられます。⾦融セクターは中東地域の⻑期的経済成⻑の恩恵を受けると考えられることから、当ファンドは⾦融セクターの保有銘柄を引き続きポジティブにみています。
<通貨>
通貨は短期的には資本フローの影響によって⼤きく変動すると思われますが、⻑期的には、アジア地域および中東地域の経済のファンダメンタルズに⼒強さがみられることから、両地域の通貨は対⽇本円で上昇すると、当ファンドは考えます。
2023年11月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当⽉、アジア株式市場は反発しました。⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、韓国と台湾に牽引される形で前⽉末⽐7.44%上昇しました。⽶国の労働市場とインフレに関するデータが軟化したことで、市場関係者の⾒⽅は2024年に利下げが⾏われ、低いとはいえ妥当な⽔準の経済成⻑が続くという⽅向に変化しました。これは⽶国市場のソフトランディングシナリオと⾔ってよいでしょう。こうした変化を受けて、テクノロジー関連やインターネット関連セクターなどの成⻑株、とりわけ韓国と台湾の銘柄が底堅く推移しました。
⼀⽅、中国市場は当⽉も引き続き低迷しました。政府の緩和政策にもかかわらず、不動産セクターの状況にはほとんど改善が⾒られませんでした。経済成⻑率の低迷も消費⽀出の抑制要因となり、消費者の間に低価格志向が広がっています。
インドは引き続きアジア諸国の中で⾼い成⻑率を保っている数少ない市場の⼀つで、2023年第3四半期GDP成⻑率は前年同期⽐7.6%上昇しました。構造的な⻑期成⻑が⾒込める市場は、新事業に果敢に取り組もうという気概のある企業に時流に乗じる機会を与えます。政府の⽀援策も効⼒を発揮しており、特に様々な優遇措置を通じて国内の製造業を下⽀えし、海外直接投資を誘致することで、成⻑に寄与していると考えます。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場も世界の株式市場に追随する形で堅調に推移しました。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前⽉末⽐5.31%上昇しました。ブレント原油価格は前⽉から下落し、⽉を終えました。
<通貨>
当⽉、アジア地域の通貨は、対⽇本円でまちまちの値動きをみせました。韓国ウォン、オーストラリアドル、台湾ドルなどが対⽇本円で上昇した⼀⽅で、インドルピー、⾹港ドルなどが対⽇本円で下落しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当⽉、当ファンドが保有する株式のリターンはプラスとなりました。セクター別では、情報技術セクターが引き続きプラスに貢献し、コミュニケーション・サービスセクターなどがマイナスに影響しました。国別では、台湾などがプラスに貢献しました。個別銘柄では、MediaTek(台湾/情報技術)、AIA Group(⾹港/⾦融)、momo.com(台湾/⼀般消費財・サービス)などがプラスに貢献しました。⼀⽅で、Haier Smart Home(中国/⼀般消費財・サービス)、HSBC Holdings(⾹港/⾦融)、Transurban Group(オーストラリア/資本財・サービス)などがマイナスに影響しました。
Kweichow Moutai(中国/⽣活必需品) - 中国を代表する⾼級酒造会社
中国では経済が低迷し、投資家⼼理が弱含んでいますが、当⽉は業績と株価が底堅く推移している中国の優良銘柄を改めて取り上げたいと思います。⼤⼿「⽩酒(バイチュウ)」メーカーのKweichow Moutaiです。「⽩酒」は⽶、⼩⻨、⼤⻨などの穀物から作られる中国酒で、アルコール度数は⼀般に35度から55度程度です。中国では、国賓の晩餐会、企業の接待、結婚披露宴、会⾷などで広く飲まれています。同社は⽩酒セグメントで約20%の市場シェアを握り、⾼級酒セグメントではさらに⾼い市場シェアを誇っています。Goldman Sachs社(⽶国)の試算によると、2022年の⾼級⽩酒セグメントにおける同社のシェアは54%で、2025年には56%に増える⾒込みです。同社の粗利益率は約90%、純利益率は45〜50%です。ROE(株主資本利益率)も⾼い⽔準を維持しており、収益性の⾼さでは世界トップクラスの酒造会社と⾔えるでしょう。
代表的な⽩酒である茅台(マオタイ)酒は貴州省の⼀部地域でしか⽣産できず、かつ品質を⾼く保つにはおよそ5年間に及ぶ⾼度で⼿間のかかる酒造⼯程を経る必要があります。「地域」と「酒造⼯程」という⼆つの要因によって製品の供給量が限られていることから、価格をできる限り⾼く設定することが将来的な成⻑に向けた主要戦略となります。同社は⻑期にわたって効果的なマーケティングと価格設定戦略を展開することによりに⾼級ブランドイメージを構築してきました。2013年には中国政府の腐敗防⽌政策によって公務員による茅台酒の消費量が⼤幅に減少し、業界全体が不振に陥りましたが、同社は⾼価格を維持しました。公務員の消費量減少を補うため、⾼級感と伝統的なブランドイメージを訴え続けて⼩売や⺠間企業での消費を開拓しました。この戦略は功を奏し、同社の業界におけるリーダーシップはさらに確固たるものとなりました。
直販の増加と値上げが収益と利益率の伸びを促進
同社は2023年11⽉から茅台酒「⾶天牌」などの⼯場出荷価格を20%値上げするという待望の発表を⾏いました。⾶天牌は同社の主⼒製品で、売上⾼の⼤半を占めています。値上げは販売代理店のみに適⽤され、直販ルートには影響が及びません。⾶天53%(500ml)の1本あたり⼯場出荷価格が969⼈⺠元(約19,380円)から1,162⼈⺠元(約23,240円)に引き上げられる⼀⽅で、希望⼩売価格は1,499⼈⺠元(約29,980円)に据え置かれます。これはつまり、同社が⼤⼝販売代理店の利ざやを削って茅台酒の収益性を⾼めようとしているということに他なりません。
同社はどうすれば販売代理店から反発を受けずに利ざやを削ることができるのでしょうか。これまでの経緯を⾒ると、同社は製品の販売にあたって販売代理店に⼤きく依存しており、マージンを多めにとって関係を維持してきました。しかし、2022年以降は販売代理店が得ていた⾼⽔準のマージンの⼀部を⾃社が⼿にするため、直販ルートを⼤幅に増やすことにしました。この取り組みを推進するために⽴ち上げたのが、オンラインプラットフォーム「iMoutai」です。直販は2021年は売上⾼の2割程度に過ぎませんでしたが、2023年第3四半期時点では売上の半分近くまで拡⼤しました。直販が増加するということは、(1)直販によって流通販売より⾼いマージンが得られるということ、(2)先⽇の値上げ発表で明らかになったように、⼯場出荷価格の引き上げに関する販売代理店との交渉⼒が強まるということを意味します。どちらをとっても、今後数年間は売上とマージンが拡⼤することになります。しかし代理店というチャネルは今後も幅広い顧客にアピールする上で重要であることから、同社は引き続き販売代理店との強固な関係の維持に努めています。また販売代理店がネットワークを離れ、他社の⽩酒を扱うようなことがないようにすることも重要です。
⼀部の投資家は蒸留酒の消費量が特に若い世代で減少傾向にあることを懸念しています。しかし消費者の⽬が肥えて量より質を好むようになり、茅台酒のような⾼級酒は逆に恩恵を受けることになるというのが当ファンドの⾒⽅です。同社は⾰新的な製品も複数発売し、若年層に⼈気を博しています。2022年には茅台アイスクリームを⼀部の旗艦店で販売して、消費者の間で話題となりました。2023年には中国のコーヒーチェーン店の瑞幸咖啡(Luckin Coffee)とコラボして⽩酒⼊りラテを発売しましたが、これは発売初⽇に540万杯以上売れ、売上⾼は1億⼈⺠元を上回りました。こうした⾰新的商品は、同社のブランディングには好影響をもたらし、とりわけ若年層の間でブランドイメージ向上に繋がると考えます。
同社の時価総額は約3,000億⽶ドル(約43兆円)と、中国A株市場(上海証券取引所と深圳証券取引所に上場している⼈⺠元建ての中国株式)の中でも上位につけています。同社は強⼒かつ安定したキャッシュフローを創出しており、バランスシート上に純有利⼦負債はありません。市場で優位に⽴ち、値上げの余地も⼤きいことから、予想PER(株価収益率)は約30倍に達しています。2022年と2023年には特別配当も実施し、配当利回りは1.5%から2.5%となりました。同社は当ファンドの戦略によく適合していると考えます。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、平均以上の配当性向、持続的な成⻑の⾒通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当⽉は、First Abu Dhabi Bank(アラブ⾸⻑国連邦/⾦融)とSaudi Awwal Bank(サウジアラビア/⾦融)が、いずれもマイナスに影響しました。イスラエルとハマスの武⼒衝突による投資家⼼理の冷え込みは和らぎつつあり、中東地域内における⼤規模戦争の勃発がないと想定すれば、両⾏は引き続き中東諸国の成⻑性に乗じる上で優れた投資先であると当ファンドは考えています。
<通貨>
当⽉、アジア地域および中東地域の通貨は、対⽇本円でまちまちの値動きとなり、全体として当ファンドのリターンにマイナスに影響しました。
今後の見通し
<アジア株式>
世界的なマクロ経済の⾒通しは依然として不透明です。FRB(⽶国連邦準備制度理事会)の利上げはようやく終わりに近づいたようで、投資家の関⼼は利下げがいつ始まるのかという点に移っています。イスラエルとハマスの紛争とロシアによるウクライナ侵攻が、引き続き地政学的リスクの要因となっています。⽶国のバイデン⼤統領と中国の習近平国家主席がサンフランシスコで会談を⾏いましたが、⽶中関係の実質的な改善はありませんでした。2024年は台湾、インドネシア、インド、⽶国などで選挙が予定されており、政策の⼤転換によってアジア地域の株式市場に影響が及ぶことはないかという点をしっかりと注視しておく必要があります。
中国は⾼付加価値経済への移⾏を進めながら経済を⽀える⽅法を模索し続けており、その政策は⾼価格帯商品の製造(特に半導体)、⾰新的技術(AI(⼈⼯知能)、ADAS(先進運転⽀援システム)、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)、製薬)、デジタル化、消費の下⽀えに重点を置いたものとなっています。当ファンドはこうしたローカライズ(現地化)と輸⼊代替政策という時流に乗って台頭する企業があると考えています。
一方、インドははるかに遅れた地点から経済発展が進⾏しているため、成⻑軌道がより明確です。安定政権が⽀援的な政策を実施することで、都市化、系統的なビジネスの浸透、国⺠所得の増加といった優位性を⽣かして、インド企業のより持続可能な成⻑を後押ししていると考えます。
当ファンドは組⼊銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は強固なバランスシートと⽬に⾒える形の⼀貫した収益とキャッシュフローに⽀えられ、不透明な市場環境の中でも⼒強い耐久⼒を⽰してきました。当ファンドは国やセクターを問わず、厳しい市場環境に適応し、事業を拡⼤できる優良企業を⾒出すことに引き続き⼒を注いでいます。
⻑期的観点に⽴つと、優良企業はリスク・リターン特性が最も優れており、とりわけアジア新興国ではその傾向が顕著であると考えられますが、そうした国々では、各企業はマクロ経済リスク、⾦融市場リスク、地政学的リスクなどに対処していく必要があります。質を重視したポートフォリオが(モメンタムや成⻑を重視したポートフォリオと異なり)必ずしも短期的に最⾼のパフォーマンスをもたらすとは限りませんが、ポートフォリオには新興国市場への投資に伴う⼀時的な逆⾵に耐えられるだけの⼒がなければなりません。優良企業は地盤が強固なので、どんな逆⾵が吹いても必ず⽴ち直り、再び成⻑軌道に乗ることができると考えます。
<中東株式>
短期的には、イスラエルとハマスの紛争が中東地域に対する投資家⼼理の重荷となるでしょう。しかし原油に依存しない経済への転換や、経済の多様化を図る政府の景気刺激策によって、成⻑軌道はこのまま継続すると考えられます。⾦融セクターは中東地域の⻑期的経済成⻑の恩恵を受けると考えられることから、当ファンドは⾦融セクターの保有銘柄を引き続きポジティブにみています。
<通貨>
通貨は短期的には資本フローの影響によって⼤きく変動すると思われますが、⻑期的には、アジア地域および中東地域の経済のファンダメンタルズに⼒強さがみられることから、両地域の通貨は対⽇本円で上昇すると、当ファンドは考えます。
2023年10月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当⽉、アジア株式市場は前⽉に引き続き軟調に推移しました。⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、前⽉末⽐4.07%下落し、3か⽉連続の下落となりました。世界的な景気減速が進⾏していること、FRB(⽶国連邦準備制度理事会)が「より⾼く、より⻑期に」という偏った政策を続けていることが世界の株式市場の下落につながりました。また、イスラエルとハマスの紛争が地政学的リスクの新たな震源となりました。
中国政府は1兆⼈⺠元の特別国債発⾏を決議し、各種インフラプロジェクトに資⾦を充当するなどの複数の景気⽀援策を発表しましたが、消費者⼼理は依然弱含みで、市場は引き続き下⽅圧⼒にさらされています。また、⽶国はAI(⼈⼯知能)半導体の対中国への輸出規制をさらに強化し、中国におけるAI能⼒の急速な発展を抑制しようとしています。
韓国市場もEV(電気⾃動⾞)⽤電池とEV⽤素材セクターが調整したことで、アンダーパフォームしました。EV需要の鈍化に対する懸念、Tesla社(⽶国)をはじめとするEVメーカーの値下げが投資家⼼理の重荷となったと考えます。⼀⽅、台湾市場では、5G(第5世代移動通信システム)に対する楽観的⾒⽅とスマートフォン需要の底打ちが要因で、MediaTek(台湾/情報技術、当ファンド組⼊銘柄)などのハイテク部品銘柄の株価が上昇しました。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場のパフォーマンスは軟調でした。イスラエルとハマスの紛争によって中東地域全体の緊張が⾼まったことが株価の押し下げ要因となりました。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前⽉末⽐4.36%下落しました。ブレント原油価格は前⽉から下落し、⽉を終えました。
<通貨>
当⽉、アジア地域の通貨は、対⽇本円で概ね上昇しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当⽉、当ファンドが保有する株式のリターンはプラスとなりました。セクター別では、情報技術セクターなどがプラスに貢献し、コミュニケーション・サービスセクター、⼀般消費財・サービスセクターなどがマイナスに影響しました。国別では、台湾、⾹港などがプラスに貢献し、オーストラリア、中国などがマイナスに影響しました。個別銘柄では、MediaTek(台湾/情報技術)、AIA Group(⾹港/⾦融)、China State Construction International Holdings(⾹港/資本財・サービス)などがプラスに貢献しました。⼀⽅で、Transurban Group(オーストラリア/資本財・サービス)、Telkom Indonesia(インドネシア/コミュニケーション・サービス)、Haier Smart Home(中国/⼀般消費財・サービス)などがマイナスに影響しました。
当⽉は、当ファンドが組み⼊れているオーストラリア銘柄のひとつ、Treasury Wine Estates(オーストラリア/⽣活必需品)を改めて取り上げたいと思います。
同社は当⽉、新株予約権無償割当と負債によって資⾦を調達し、⽶国の⾼級ワイン最⼤⼿DAOU Vineyards社を約10億⽶ドルで買収すると発表しました。この買収によって同社は⽶国事業を変⾰し、同社のプレミアム化戦略をさらに強化するものと思われます。
同社は⾼級ワインに特化したオーストラリアの⽣産・販売業者で、世界70ヵ国以上で販売実績があります。主要ブランドの「ペンフォールズ」は150年以上前にオーストラリアで創設されたもので、⾼い認知度を誇っています。同社は主要ブランドの「ペンフォールズ」に加え、幅広い品種、味わい、価格帯のワインブランドを展開しています。
同社の事業は(1) 主⼒の⾼級ブランドとプレミアムブランドで2023年度EBIT(利息及び税⾦控除前利益)の56%を占める「ペンフォールズ」部⾨、(2) ⾼級、プレミアム、業務⽤で⾼い信⽤を得ている有名ブランドで同年度EBITの13%を占める「トレジャリー・プレミアム・ブランド」部⾨、(3) ⽶国市場に重点を置く部⾨で同年度EBITの31%を占める「トレジャリー・アメリカス」部⾨の3部⾨で構成されています。
「トレジャリー・アメリカス(以下、TAM)」部⾨はここ数年で再編成が進んでいます。近年、⽶国では低価格のプライベート・ブランド・ワインが台頭し、TAMの収益が⼤幅に低下したため、同社の経営陣は⽶国の業務⽤ワイン事業を売却し、⾼級ワインとプレミアムワインに特化することにしました。今回のDAOU Vineyards社の買収は、TAMにとってプレミアム化の取り組みを続ける上で重要な⼀歩だと考えます。
DAOU Vineyards社は⽶国で急成⻑中の⾼級ワインメーカーの⼀つで、収益は過去3年間で年平均45%伸⻑し、2023年には2億1,000万⽶ドル以上に達する⾒込みです。「DAOU」ワインの価格帯はボトル当たり数⼗⽶ドル〜千⽶ドルと幅広く、売上の69%を同20〜40⽶ドルのカテゴリーが占めていて、TAMの現⾏ポートフォリオに⽋けている部分を埋めることができると考えます。経営陣はコストと調達における節減額が買収による相乗効果で年間2,000万⽶ドルに達し得ると⾒込んでいます。
⽼舗メーカーDAOU Vineyards社の買収は、⽶国市場でプレミアム化戦略を推進する上で堅実な戦略だと考えます。特に⾼級ワインの分野では、まったく新しいブランドを⽴ち上げるよりも、確⽴したプランドの販売促進することのほうが容易だと考えられるからです。これが成功すれば「DAOU」ブランドはもう⼀つの「ペンフォールズ」となる可能性があり、⾼級ワイン分野における同社の主導的⽴場をさらに強化することができます。
⽶国市場以外に⽬を向けると、中国市場にも好材料があります。中国当局が2020年にオーストラリア産ワインに課した関税(107〜212%)の撤廃の可能性が浮上しています。課税前の中国向け輸出は、⼤部分が「ペンフォールズ」を中⼼とした利益率の⾼い⾼級ワインやプレミアムワインだったことから、中国への輸出再開は同社にとって売上と利益の伸びに⼤きく貢献する可能性があります。
同社は経営陣の努⼒によって、将来的に堅調な業績を上げられる体制を整えたというのが当ファンドの⾒⽅です。強いブランド⼒、⾼級ワインとプレミアムワインへの注⼒、世界有数の葡萄園、効率的な流通チャネルを有していることを踏まえると、世界で最も評価の⾼い⾼級ワインメーカーになるという経営陣の⻑期的な⽬標は達成可能であると考えます。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、持続的な成⻑の⾒通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当⽉は、First Abu Dhabi Bank(アラブ⾸⻑国連邦/⾦融)とSaudi Awwal Bank(サウジアラビア/⾦融)が、イスラエルとハマスの紛争に由来する投資家⼼理の悪化を受け、いずれもマイナスに影響しました。両⾏ともイスラエルに対する直接的なエクスポージャーは⼤きくありませんが、短期的には同地域におけるボラティリティの上昇が域内の資本市場を圧迫する可能性があります。⼀⽅⻑期的に⾒ると、域内で⼤規模戦争が勃発しないと想定すれば、両⾏は引き続き中東諸国の成⻑性に乗じる上で優れた投資先であると当ファンドは考えています。
<通貨>
当⽉、アジア地域および中東地域の通貨の多くは対⽇本円で上昇し、全体としては当ファンドのリターンにマイナスに影響しました。
今後の見通し
<アジア株式>
世界的なマクロ経済の⾒通しは依然として不透明です。経済成⻑の鈍化は、各国中央銀⾏の「より⾼く、より⻑期に」という偏った⾦利政策と相まって、企業収益の悪化する可能性があります。イスラエルとハマスの紛争は、ロシアとウクライナの戦争に加え、地政学的リスクの新たな震源となっています。
マクロ環境には暗雲が垂れ込めていますが、当ファンドは厳しい市場環境にも適応し、事業を拡⼤できる優良企業を⾒出すことに引き続き⼒を注いでいます。例えばアジア企業の多くは国内市場のみで事業を展開していて、⼈⼝動態、インフラ整備、近代的取引・サービスの公式部⾨への移⾏が追い⾵となっています。国際貿易の影響に晒される企業でも、サプライチェーンの再編成や「チャイナ・プラス・ワン(中国のみに⼯場を構えるリスクを回避するため、他のアジアの国に製造拠点を展開すること)」戦略といった⾜元のトレンドは、チャンスを捉える能⼒のある⼀部企業にとって追い⾵となっていると考えます。
当ファンドは組⼊銘柄に対して引き続き強い信頼感を持っています。当該銘柄は、不透明な市場環境の中でも強固なバランスシートと⽬に⾒える形の⼀貫した収益とキャッシュフローに⽀えられ、⼒強い耐久⼒を⽰してきました。
⻑期的観点に⽴つと、優良企業はリスク・リターン特性が最も優れており、とりわけアジア新興国ではその傾向が顕著であると考えられますが、そうした国々では、各企業はマクロ経済リスク、⾦融市場リスク、地政学的リスクなどに対処していく必要があります。質を重視したポートフォリオが(モメンタムや成⻑を重視したポートフォリオと異なり)必ずしも短期的に最⾼のパフォーマンスをもたらすとは限りませんが、ポートフォリオには新興国市場への投資に伴う⼀時的な逆⾵に耐えられるだけの⼒がなければなりません。優良企業は地盤が強固なので、どんな逆⾵が吹いても必ず⽴ち直り、再び成⻑軌道に乗ることができると考えます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という⻑期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成⻑企業になる潜在性を⽰しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
<中東株式>
短期的には、イスラエルとハマスの紛争が中東地域の投資家⼼理の重荷となるでしょう。同地域における政情不安によって、中東諸国が⽯油依存から脱却しようとする取り組みは勢いを削がれる可能性があります。しかし⽯油に依存しない経済への転換や、経済の多様化を図る政府の景気刺激策によって、成⻑軌道は継続すると考えられます。⾦融セクターは中東地域の⻑期的経済成⻑の恩恵を受けると考えられることから、当ファンドは⾦融セクターの保有銘柄を引き続きポジティブにみています。
<通貨>
通貨は短期的には資本フローの影響によって⼤きく変動すると思われますが、⻑期的には、アジア地域および中東地域の経済のファンダメンタルズに⼒強さがみられることから、両地域の通貨は対⽇本円で上昇すると、当ファンドは考えます。
2023年9月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当⽉、アジア株式市場は前⽉に引き続き軟調に推移しました。⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、前⽉末⽐2.68%下落し、フィリピンとインドを除くアジア市場全体が軒並み下落して⽉を終えました。原油価格の上昇、景気の減速、各国中央銀⾏が「より⾼く、より⻑期に」という偏った政策を続けていることなどから、世界各国の株式市場と債券市場が下落しました。
中国の不動産セクターは当⽉も中国と⾹港の株式市場の重しとなりました。過剰債務をかかえる不動産開発業者は依然として流動性問題の解決を迫られており、政府が住宅ローンの融資条件緩和という⽀援策に踏み切ったにもかかわらず、不動産販売件数に⼤幅な改善は⾒られませんでした。⼀⽅、鉱⼯業⽣産や⼩売売上⾼など、中国の8⽉の経済指標が⼀部プラス成⻑を⽰す数値となったことは好材料と考えます。
インドのNifty50指数は当⽉に最⾼値を更新しました。その要因としては、⽣産年齢⼈⼝の割合増加に由来する経済成⻑、都市化、インフラ投資、「チャイナ・プラス・ワン(中国のみに⼯場を構えるリスクを回避するため、他のアジアの国に製造拠点を展開すること)」の動きが同国経済の⻑期的成⻑を後押しするという⾒⽅が投資家の間に根づいてきたことがあげられます。また、タイの株式市場は観光客数の多さと新政権による景気刺激策にもかかわらず、下落幅がASEAN諸国中で最⼤となりました。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場のパフォーマンスはまちまちでした。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、サウジアラビア市場が低迷した影響で、前⽉末⽐2.53%下落しました。ブレント原油価格は前⽉末から上昇し、⽉を終えました。
<通貨>
当⽉、アジア地域の通貨は、タイバーツを除き、対⽇本円で上昇しました。特に⾹港ドル、中国⼈⺠元、フィリピンペソなどが対⽇本円で上昇しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当⽉、当ファンドが保有する株式のリターンはマイナスとなりました。セクター別では、情報技術セクター、⼀般消費財・サービスセクターなどがプラスに貢献し、⾦融セクター、資本財・サービスセクターなどがマイナスに影響しました。国別では、台湾、インドなどがプラスに貢献し、⾹港、オーストラリアなどがマイナスに影響しました。個別銘柄では、eMemory Technology(台湾/情報技術)、MediaTek(台湾/情報技術)、Bharti Airtel(インド/コミュニケーション・サービス)などがプラスに貢献しました。⼀⽅で、AIA Group(⾹港/⾦融)、China State Construction International Holdings(⾹港/資本財・サービス)、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)などがマイナスに影響しました。
当ファンドの保有銘柄の⼀つに「Shenzhou International Group Holdings(中国/⼀般消費財・サービス)」があります。
同社は主にNIKE、adidas、PUMA、ユニクロといったグローバルブランドにサービスを提供する世界最⼤級の垂直統合型(製品の開発から⽣産、販売にいたるまで上流から下流のプロセスをすべて⼀社で統合したビジネスモデル)アパレルメーカーで、世界のアパレルサプライチェーンにおいて同社の重要性は際⽴っています。同社は投資家からも⾼い注⽬を集めており、売上⾼と純利益は過去10年間で⼤きく増加し、ROE(株主資本利益率)も⾼い⽔準を維持しています。
しかし新型コロナウイルスの⼤流⾏によって、そうした安定的な成⻑軌道にいくつかの点で乱れが⽣じました。第⼀に、政府の景気刺激策が⽶国とEUの消費を押し上げたことで売上⾼は2021年初頭の新型コロナウイルス流⾏初期に⼤幅に増加しましたが、各国中央銀⾏がインフレ抑制を狙って引き締めサイクルに移⾏したため、需要はすぐに軟化し、在庫が増加しました。⽶国とEUの景気減速と時を同じくして、2022年には中国の景気が悪化しました。第⼆に、粗利益率が2021年末には⼤きく低下しました。これは、1) 2021年7⽉から9⽉にかけてコロナ禍のロックダウンによってベトナム⼯場の稼働率が低下したこと、2) エネルギーコストと物流コストの上昇がサプライチェーンに波及し、原材料価格、特に綿花価格が上昇したことによるものです。
信頼性の⾼いビジネスモデル- 粗利益率は平均回帰
同社のビジネスモデルはコストプラス⽅式(実際にかかったコストに、利益を上乗せして価格を算出する⽅法)の価格設定に基づいており、⾐料品1着あたりの粗利益はほぼ固定されています。粗利益率が低下したのは、1) 原材料費と⼈件費が変動したこと(ただし、これは⼀般的に若⼲の時間差で顧客に転嫁されます)、2) スポーツウェアや機能性ウェアなどの複雑性の⾼い製品の⽅が粗利益率が⾼いという製品構成⾯の特性があることによって説明できます。同社の財務記録をみると、粗利益率は10年以上にわたって⾼い⽔準で安定的に推移していることがわかります。
したがって、稼働率と原材料価格が正常化すれば粗利益率は⾼⽔準に戻るというのが当ファンドの⾒⽅です。同社が中国、ベトナム、カンボジアで運営している⽣産施設の稼働率は順次改善しており、当⽉以降は多くの労働者が残業を始めたことからも、回復の兆しが現れていると考えます。原材料価格も2022年にピークへ達し、2023年に⼊ってからは安定化してきています。同社は新たな⽣地⽣産技術への投資を続けており、今後は粗利益率がさらに拡⼤する可能性があります。同社は現在、lululemonやFILAと緊密に協⼒し、伸縮性を有する⾰新的な⽣地の開発に取り組んでいます。
⻑期的な業界再編トレンドは不変
アパレル⼩売業界と異なり、アパレル製造業界では⻑年にわたって再編の動きが進められてきました。品質、環境基準、スケールメリットの向上により、追随できない中⼩企業は淘汰されたり、⼤⼿企業に買収されたりしています。この傾向は今後も続く⾒込みで、当⾯は加速する可能性さえあると考えられます。⼈権、安全性、環境負荷といった点は、いずれもこの数年、世間の注⽬を集めている問題です。環境⾯では、同社は再⽣可能エネルギーに多額の投資を⾏っています。同社は2025年までに、⾐料品⼯場の50%、⽣地⼯場の20%で再⽣可能エネルギーを使⽤することを⽬指しています。⽔の使⽤については、節⽔と再⽣技術を通じて2025年までに⽔の利⽤効率を20%改善し、廃⽔を減らすことを⽬指しています。
当ファンドが先⽇業界関係者と⾏った会議では、ブランドにとって重要な意味を持ちつつあるキーワードとして「事業の継続性」と「⽣産体制の柔軟性」という⾔葉が挙げられました。⽣産体制の柔軟性が重要性を増してきたのは、主に2つの要因が考えられます。第⼀に、⽶中間の緊張によっていわゆる「チャイナ・プラス・ワン」の動きが発⽣し、多数の企業が中国以外の地域、特に東南アジア(インドネシア、ベトナム、カンボジアなど)やインドに⽣産拠点を設⽴していることです。こうした動きは、中国の⼈件費⾼騰を受け、コロナ禍以前からありましたが、両国の緊張関係が近年より⾼まったために、⽶国やEUの顧客とビジネスを⾏う上で避けて通れない課題となっています。ここで指摘しておきたいのは、⽶国とEUのブランドが関⼼を持っているのは主として⽣産施設の所在地であって、⽣産施設の所有者ではないということです。同社は「地産地消」戦略を採⽤し、中国の⼯場では中国国内の需要に応え、ASEAN諸国の⼯場では中国国外からの受注案件に対応しています。今後インドネシアなどで⽣産能⼒を増強することで、今後ASEAN諸国の⽣産量の割合が更に⾼まる⾒通しです。
第⼆に、⽣産体制の柔軟性には短納期案件に対応する⼒も含まれていることです。短納期案件とは、⼀般に受注から出荷までの期間が3ヵ⽉未満の受注案件を指します。マクロ経済の先⾏きがますます⾒通せない中、在庫の積み増しを回避したいというのがブランドの基本姿勢であることから、こうした案件の割合が近年増加してきています。短納期案件の増加は、⾃動化が進むことで強⼒なサプライチェーンを持つ⼤規模事業者に有利に働くと考えます。先⽇発表されたNIKE社(⽶国)の決算をみると、来期の⾒通しが依然不透明であることから、来年は短納期案件がさらに増えることになるでしょう。先⽇、ある業界の専⾨家と話したところ、同社の総売上に占めるNIKEの割合は今後更に拡⼤する可能性があるということです。
興味深い点は、同社の成⻑が需要⾯よりもむしろ供給⾯(すなわち「⽣産能⼒の拡⼤」)の要因の⽅が⼤きいということです。コロナ禍以前は、⼤⼿アパレルメーカーはほぼフル稼働していました。同社の売上⾼が増加しているのは、主に⽣産能⼒の拡⼤によるもので、その幅は年間10%程度に制御されています。世界のスポーツウェア産業は今後5年間で年平均6%成⻑すると予想されており、⼤⼿サプライヤーが業界再編によって成⻑を加速していることを考えると、これは合理的な想定であると考えます。
結論を述べると、同社は有望な投資先でありながら、コロナ禍による混乱、さらに中国、⽶国とEUの市況悪化によって⼤幅に評価を下げてしまいました。しかし、粗利益の圧縮と売上の鈍化は本性的に⼀時的なものであり、⽶国で重⼤な対外紛争やハードランディングシナリオが発⽣しなければ、来年には正常化すると考えられます。そうなれば業界再編は加速し、最終的には最⼤⼿のアパレルメーカーがその恩恵を受けるだろうというのが当ファンドの⾒⽅です。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、持続的な成⻑の⾒通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当⽉は、First Abu Dhabi Bank(アラブ⾸⻑国連邦/⾦融)とSaudi Awwal Bank(サウジアラビア/⾦融)が、世界の株式市場における投資家⼼理の悪化を受け、いずれもマイナスに影響しました。世界経済の⽬先の不確実性にもかかわらず、両⾏は中東経済の発展による信⽤需要の⻑期的な成⻑から恩恵を受けると、当ファンドは考えています。
<通貨>
当⽉、アジアおよび中東地域の通貨は、対⽇本円でまちまちの値動きとなり、全体としては当ファンドのリターンにプラスに貢献しました。
今後の見通し
<アジア株式>
世界的なマクロ経済の⾒通しは依然として不透明です。各国中央銀⾏が「より⾼く、より⻑期に」という偏った⾦利政策を続けていること、原油価格が上昇していること、⽶中両国の対⽴に激化の可能性があることで、世界各国で株式市場と債券市場の変動幅が拡⼤する⾒通しです。
マクロ経済の⾒通しは不透明ですが、当ファンドは引き続きアジア地域の優良企業への投資に注⼒します。当ファンドは、配当収⼊とキャピタルゲインを通じて⻑期的にリターンを上げることを⽬指しています。当ファンドの組⼊銘柄は、様々な分野で主導的⽴場にある企業(または主導的⽴場に⽴つと考えられる企業)、または参⼊障壁の⾼い事業(独占、規制資産など)を営んでいる企業で、⾼い競争⼒を有していると考えられます。そうした企業は、収益とキャッシュフローを⽬に⾒える形で⼀貫して⽣成できる持続可能で明確なビジネスモデルと戦略を有し、強固なバランスシート、安定的または上向きの利益率、⾼⽔準のROEという⽀持基盤に⽀えられています。その経営を担っているのは、外部の⼈間が中⼼になっている場合であれ、創業者やその⼀族が中⼼になっている場合であれ、実績豊富で強⼒な経営陣ばかりです。
⻑期的観点に⽴つと、優良企業はリスク・リターン特性が最も優れており、とりわけアジア新興国ではその傾向が顕著であると考えられますが、そうした国々では、各企業はマクロ経済リスク、⾦融市場リスク、地政学的リスクなどに対処していく必要があります。質の⾼いポートフォリオが必ずしも短期的に最⾼のパフォーマンスをもたらすとは限りませんが、ポートフォリオには新興国市場への投資に伴う⼀時的な逆⾵に耐えられるだけの⼒がなければなりません。優良企業は地盤が強固なので、どんな逆⾵が吹いても必ず⽴ち直り、再び成⻑軌道に乗ることができると考えます。
アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という⻑期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成⻑企業になる潜在性を⽰しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
<中東株式>
政府の景気刺激策によって経済の多様化が進み、原油への依存度が低下することから、成⻑軌道はこのまま継続すると考えられます。中東地域、とりわけサウジアラビアの経済成⻑を押し上げる要因としては、⼥性の労働参加率の上昇もあげられます(S&Pグローバルの調査によると、サウジアラビアの⼥性労働参加率は2016年の19%から2022年には36%に上昇)。⾦融セクターは中東地域の⻑期的経済成⻑の恩恵を受けると考えられることから、当ファンドは⾦融セクターの保有銘柄を引き続きポジティブにみています。
<通貨>
通貨は短期的には資本フローの影響によって⼤きく変動すると思われますが、⻑期的には、アジア地域および中東地域の経済のファンダメンタルズに⼒強さがみられることから、両地域の通貨は対⽇本円で上昇すると、当ファンドは考えます。
2023年8月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当⽉、アジア株式市場は急落しました。⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、前⽉末比6.07%下落しました。米国の経済指標とインフレ率が予想を上回ったため、FRB(⽶連邦準備制度理事会)がさらなる金融引き締めに踏み切るのではないかという懸念が広がり、株式と債券がいずれも下落しました。
また、中国の輸出と住宅セクターの低迷が続いたことで、投資家心理はさらに冷え込みました。中国の前月の輸出(米ドル建て)は前年同月比14.5%減となりましたが、これは世界経済が低迷していることや、米中対立のために市場シェアの継続的な低下が影響していると考えます。中国の不動産開発大手のCountry Garden Holdings社は手元資金が不足し債務返済が滞る可能性があると発表し、それを受けて他の不動産開発業者の株価が下落しました。中国政府は住宅ローンの融資条件を緩和する旨を発表し、不動産セクターへのてこ入れを図りましたが、信頼回復には時間がかかる模様です。
インド市場では大型株が低調な一方、小型株は好調とパフォーマンスに差が生じました。ただし、ここ数年の政府による持続的なインフラ支出と中国からのシェア奪取による輸出増加の効果もあって、経済成長全般は依然堅調です。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場のパフォーマンスはまちまちでした。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、カタール市場とサウジアラビア市場が低迷した影響で、前月末比3.07%下落しました。ブレント原油価格は前月末から上昇し、月を終えました。
<通貨>
当⽉、アジア地域の通貨は、対⽇本円でまちまちの値動きをみせました。インドルピー、香港ドル、インドネシアルピアなどが対⽇本円で上昇した一方で、韓国ウォン、オーストラリアドル、フィリピンペソなどが対日本円で下落しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドが保有する株式のリターンはマイナスとなりました。セクター別では、生活必需品セクターなどがプラスに貢献し、金融セクター、資本財・サービスセクターなどがマイナスに影響しました。国別では、インド、インドネシアなどがプラスに貢献し、香港、中国などがマイナスに影響しました。個別銘柄では、Lemon Tree Hotels(インド/⼀般消費財・サービス)、MediaTek(台湾/情報技術)、Telkom Indonesia(インドネシア/コミュニケーション・サービス)などがプラスに貢献しました。一方で、AIA Group(香港/金融)、Transurban Group(オーストラリア/資本財・サービス)、China State Construction International Holdings(香港/資本財・サービス)などがマイナスに影響しました。
当ファンドの長期保有銘柄の一つに「AIA Group」があります。同社はアジア最大級の生命保険会社としてアジア太平洋地域の18ヵ国で多角的に事業を展開し、アジア経済の成長力による恩恵を受けています。アジアでの中間所得者層の増加と、保険の需要と保険契約率の差は、同社に対して長期的かつ構造的な成長機会を与えるものと当ファンドは考えています。
コロナ禍により事業の成長は大幅に減速しましたが、その後は力強く回復しています。2023年上期決算ではVONB(Value of New Business、新規保険契約の価値)が37%増加し、ROE(株主資本利益率)も2022年の13.0%から14.2%に改善しました。VONBは香港や中国、タイを中心に全地域で増加しています。
香港では、およそ3年ぶりに中国本土からの観光客が戻ったため、2023年上期にはVONBは前年同期比111%増加しました。繰り延べ需要によって香港で中国本土からの観光客による売上が増加し、コロナ禍前の水準を超えました。AIA Groupの2023年上期のVONBに対してグループ会社AIA Hong Kong社(香港)の占める割合は31%で、グループ全体に対する貢献度で首位となりました。
同じくグループ会社のAIA China社(中国)は前年同期比14%増加し、2023年上期のグループ全体のVONBに対して28%を占めました。AIA China社は質の高い代理店網を構築し、AIAの強力なブランド力を活用することで、当初進出した5都市以外に、年間2~3都市のペースで進出地域を拡大しています。経営陣によると、中国保険業界の販売員はコロナ禍で半減しましたが、AIA China社の代理店では大きな販売員の減少がなかったため、コロナ禍収束後に短期間で販売を立て直すことができました。AIA China社の販売員の生産性は同業他社を大きく上回っており、販売員1人当たりVONBは業界平均の4倍、収入は同業他社の2倍に達しています。また、同社は2021年にChina Post Life Insurance社(中国、以下CPLI社)の株式を24.99%取得したことで、CPLI社の販売員や、CPLI社傘下の銀行であるPostal Savings Bank of China社(中国)などの関連会社を経由した新しい市場へのアクセスが容易になっています。中国の経済成長については全般的に懸念が先立っていますが、AIA China社は自社の優位を生かし、長期にわたって収益性を保ったまま成長を維持できる態勢にあると当ファンドはみています。
ASEAN諸国はグループ全体のVONBの約3分の1を占めており、AIA Groupは代理店と銀行経由の販売を通じて同地域の生命保険会社で首位の座を守りました。インドでも合弁企業のTata AIA Life Insurance社(インド)が代理店と銀行を通じた強力な販売網を確立し、インドの巨大な保険市場を手中に収めようとしています。
AIA Groupは強固な資本基盤を維持しており、2023年上期現在のソルベンシー比率(財務健全性を評価する指標)は260%です。したがって、同社は配当金支払いと株主による自社株買いを増やすことができると考えます。同社はブランドと販売網に独自の強みをもち、堅実な経営姿勢を保持し、アジア地域における保険商品の根強い需要を生かせる立場にあることから、今後も当ファンドに魅力的なリターンをもたらしてくれることでしょう。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月は、First Abu Dhabi Bank(アラブ首長国連邦/金融)とSaudi Awwal Bank(サウジアラビア/金融)が、世界の株式市場における投資家心理の悪化を受け、いずれもマイナスに影響しました。世界経済の目先の不確実性にもかかわらず、両行は中東経済の発展による信用需要の長期的な成長から恩恵を受けると、当ファンドは考えています。
<通貨>
当月、アジアおよび中東地域の通貨は、対日本円でまちまちの値動きとなり、全体としては当ファンドのリターンにプラスに貢献しました。
今後の見通し
<アジア株式>
インフレ率の低下は市場予想ほど急速ではありませんが、利上げサイクルが2023年下半期にピークに達するという当ファンドの見方に変更はありません。短期的なマクロ面の懸念は、やはり世界経済の成長鈍化、ロシアとウクライナの地政学的対立、米中貿易摩擦の再燃でしょう。
中国経済は減速しています。国内消費と輸出が低迷し、住宅セクターが問題を抱えていることは、中国に成長余地がないことを示す材料であるかのようにみえます。しかし、消費者の需要を満たすことで経済全体を上回る成長を続ける優良企業を探し出す機会は決してなくならないというのが当ファンドの考え方です。現状の中国に対する悲観的な見方は、こうした優良企業に割安な価格で投資できる好機であると考えています。
当ファンドは当月、インドを訪問しましたが、同国の雰囲気は中国とは対照的でした。取材した企業はいずれも、自社事業の成長に関してきわめて前向きな見通しをもっており、インドの時代が来たという感覚を抱いているようでした。当ファンドが調査対象に加え、注視している数銘柄については、今後も動向をお伝えしていく予定です。
世界のインフレ動向や経済成⻑の短期⾒通しは不透明ですが、アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という⻑期的テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
当ファンドは、配当収⼊とキャピタルゲインを通じて⻑期的にリターンを上げることを⽬指しています。当ファンドのポートフォリオはバランスがとれており、短期的なマクロイベントやスタイル・ローテーションにも耐えることができると、当ファンドは考えています。当ファンドは、グロース株、バリュー株、その他の分類といった市場認識に関係なく、キャッシュフローまたは配当金を生成する能力がある企業のファンダメンタルズを重視しています。
<中東株式>
原油市場は乱高下状態にありますが、政府の景気刺激策によって経済の多様化が進み、原油への依存度が低下することから、成長軌道はこのまま継続すると考えられます。当ファンドは、金融セクターの保有銘柄を引き続きポジティブにみています。
<通貨>
通貨は短期的には資本フローの影響によって大きく変動すると思われますが、長期的には、アジア地域および中東地域の経済のファンダメンタルズに力強さがみられることから、両地域の通貨は対日本円で上昇すると、当ファンドは考えます。
2023年7月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当⽉、アジア株式市場は前月に引き続き堅調に推移しました。⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、中国、マレーシア、シンガポールなどが主にプラスに寄与し、前⽉末⽐5.82%上昇しました。中国政府は消費や、住宅セクター、資本市場向けの刺激策を発表しました。民間企業の支援を目的とする31項目ものガイドラインが発表されたことを受け、中国市場に対する投資家心理は改善しました。
AI(⼈⼯知能)の将来性に対する楽観論が、引き続き情報技術関連銘柄の上昇要因となりました。Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術 )は、AI関連の需要拡大が予想されることから、同分野への設備投資を拡大すると発表しました。しかしスマートフォンやPCは在庫調整がほぼ終了した模様であるにもかかわらず、半導体の需要が引き続き低迷しており、マクロ経済に対する信頼感の低さがうかがわれます。台湾や韓国に拠点を置く他のIT企業も、直近の決算説明会で同様の見解を示しました。
インドとインドネシアは引き続き投資家の注目を集めています。両国は製造業への投資と製造能力の向上を目的に、積極的に外資を呼び込んでいます。インフラ整備はこれまでと同様、今も経済成長の原動力であると当ファンドは考えています。両国では国内消費主導型セクターも好調なパフォーマンスを記録しています。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場のパフォーマンスは全般的に堅調でした。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前月末比3.45%上昇しました。消費支出とインフラ支出の堅調さが中東地域の株価の主な下支え要因となっています。ブレント原油価格は前月末から上昇し、月を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は、対日本円でまちまちの値動きをみせました。韓国ウォン、マレーシアリンギット、タイバーツなどが対日本円で上昇した一方で、台湾ドル、インドルピー、インドネシアルピアなどが対日本円で下落しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドが保有する株式のリターンはマイナスとなりました。セクター別では、資本財・サービスセクターなどがプラスに貢献し、情報技術セクターなどがマイナスに影響しました。国別では、中国、香港、タイなどがプラスに貢献し、台湾、インドネシアなどがマイナスに影響しました。個別銘柄では、Samsung Electronics(韓国/情報技術)、Transurban Group(オーストラリア/資本財・サービス)、Techtronic Industries(香港/資本財・サービス)などがプラスに貢献しました。一方で、eMemory Technology(台湾/情報技術)、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、Bharti Airtel(インド/コミュニケーション・サービス)などがマイナスに影響しました。
当ファンドの保有銘柄の⼀つに、「momo.com(台湾/一般消費財・サービス)」があります。同社は台湾の大手eコマース(電子商取引)企業で、台湾の大手通信事業者であるTaiwan Mobile社(台湾)が同社の株式を約45%所有しています。2004年にテレビショッピングチャンネルとして設立された同社は、長年にわたってeコマース事業を拡大し、現在ではShopee社(シンガポール)やPChome Online社(台湾)などとともに、台湾の大手eコマース企業の一角を形成しています。
台湾のeコマース普及率は約15%と他国と比べると低水準に留まっています(中国31%、韓国30%、米国26%、英国28%)。他市場の例から見ると、オンラインショッピングに対する消費者の抵抗感が和らぐにつれて、この普及率は上昇すると当ファンドは考えています。momo.comはB2C(企業と消費者間の取引)セグメントで高い市場シェアを握り、競合他社を上回っています。同社の同業他社に対する強みには、主として以下のようなものがあります。
(1) 規模が大きいため調達コストが低く、割安な価格で商品を提供できる。
(2) 460万点以上の商品(2023年第2四半期時点、前年同期比23%増)、26,000種に上る国内外のブランドを扱っており、 他社より品揃えが格段に豊富。
(3) 台湾全土に倉庫55ヵ所と大型配送センター1ヵ所を整備しており、強力な物流能力を駆使した即日配送が可能。配送センターがさら 2ヵ所、今後数年内に稼動開始予定。
中国企業による台湾事業には様々な制約があり、Alibaba Group Holding(中国/一般消費財・サービス)やJD.com社(中国)といった中国のeコマース事業者が台湾で事業を拡大できなかったため、台湾市場の競争環境はここ数年、比較的穏やかでした。しかし2021年にCoupang社(韓国)が台湾市場に参入し、昨今積極的なプロモーションを開始したため、競争激化に対する懸念が高まりました。momo.comの経営陣は直近の決算説明会で、Coupang社の積極的なプロモーションによって一部の消費者が新サービスを試してみたいと考える可能性は確かにあると認めました。しかし前述した同社の強みを踏まえると、Coupang社の一時的なプロモーション活動が終われば、消費者は再びmomo.comの利用を続けるだろうというのが当ファンドの見方です。それを裏付けるように、2023年第2四半期の台湾全体のオンライン小売売上高が前年同期比0.5%増だったのに対し、momo.comのeコマース事業の売上高は前年同期比5.6%増となり、同業他社を上回りました。
2023年第2四半期に台湾全体の成長が鈍化したのは、2022年の比較基準が高かったこと、コロナ禍以降に消費者の行動が変化し、オンライン購入から実店舗での購入へ、さらに娯楽や旅行、食事、コンサート、その他のレジャー活動などのサービスへと支出がシフトしたことに原因があると考えます。コロナ禍で大きな打撃を受けた百貨店やコンビニエンスストアが力強い回復を見せた一方、オンライン小売売上高は微増にとどまりました。しかし今後、台湾におけるオンライン小売の普及路線が再開して、同社に恩恵をもたらすと当ファンドは考えています。
また同社は、同業他社との競争や物流への設備投資などにもかかわらず、2014年の新規株式公開(IPO)以降、常に黒字を維持してきました。これはeコマース企業としては稀有な事例です(Alibaba Group Holding、JD.com社、Amazon.com社(米国)でさえ、eコマース事業で何年も赤字を計上した後でようやく黒字化に成功)。同社は手元資金が豊富で、利益の80%強を配当金として払い出しています。平均ROE(株主資本利益率)は25%強、今後数年間に予想される売上高成長率も高く、同社は魅力的な長期リターンをもたらすと当ファンドは考えています。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月は、Saudi Awwal Bank(サウジアラビア/金融)がプラスに貢献した一方、First Abu Dhabi Bank(アラブ首長国連邦/金融)はマイナスに影響しました。First Abu Dhabi Bankは、投資銀行部門と法人・商業銀行部門を中心に、全業務部門で業績が改善したことから、2023年上半期決算が好調でした。世界経済の目先の不確実性にもかかわらず、両行は中東経済の発展による信用需要の長期的な成長から恩恵を受けると、当ファンドは考えています。
<通貨>
当月、アジアおよび中東地域の通貨は、対日本円でまちまちの値動きとなり、全体としては当ファンドのリターンにマイナスに影響しました。
今後の見通し
<アジア株式>
ここ数か月のインフレ率の低下を踏まえると、利上げサイクルは2023年下半期にピークに達するのではと当ファンドは考えています。しかし、世界経済の成長に対する懸念、ロシアとウクライナ間や、米中間で続く地政学的対立が、資本市場にとっての短期的リスクであることに変わりはありません。
中国における輸出の落ち込みと不動産販売の停滞は、引き続き中国への投資意欲の低下要因となっています。中国政府は景気刺激策の緊急性を認識している模様で、消費と投資に関する支援措置を発表しました。当ファンドは中国への投資に対する慎重姿勢を崩していませんが、消費財、資本財、テクノロジーなど、市場全体を上回るパフォーマンスをあげているセクターの優良企業には選別的な投資機会があると当ファンドは見ています。
当ファンドはまた、半導体関連銘柄も引き続きポジティブに見ています。このところ「ChatGPT」をはじめとする生成型AIや、自動車に関する話題が様々なメディアで取り上げられていますが、これは同セクターに対する当ファンドの長期的なポジティブな見方をより裏付けるものです。当ファンドは今後もデジタル化の長期的トレンドから恩恵を受ける新興銘柄の調査と発掘に努めてまいります。
世界のインフレ動向や経済成⻑の短期⾒通しは不透明ですが、アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という⻑期的テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
当ファンドは、配当収⼊とキャピタルゲインを通じて⻑期的にリターンを上げることを⽬指しています。当ファンドのポートフォリオはバランスがとれており、短期的なマクロイベントやスタイル・ローテーションにも耐えることができると、当ファンドは考えています。当ファンドは、グロース株、バリュー株、その他の分類といった市場認識に関係なく、キャッシュフローまたは配当金を生成する能力がある企業のファンダメンタルズを重視しています。
<中東株式>
原油市場は乱高下状態にありますが、政府の景気刺激策によって経済の多様化が進み、原油への依存度が低下することから、成長軌道はこのまま継続すると考えられます。当ファンドは、金融セクターの保有銘柄を引き続きポジティブにみています。
<通貨>
通貨は短期的には資本フローの影響によって大きく変動すると思われますが、長期的には、アジア地域および中東地域の経済のファンダメンタルズに力強さがみられることから、両地域の通貨は対日本円で上昇すると、当ファンドは考えます。
2023年6月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当⽉、アジア株式市場は堅調に推移しました。⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、オーストラリア、インド、中国などが主にプラスに寄与し、前⽉末⽐3.17%上昇しました。米国の経済指標が堅調だったことで、投資家心理が世界的に好転し、情報技術セクターを中心に米国の株価指数が軒並み上昇しました。AI(人工知能)の将来性に対する楽観論の広がりによって、アジアの情報技術関連銘柄が引き続き上昇し、中国が大規模な景気対策を打ち出すという観測も市場の下支え要因となりました。
当月は米国のブリンケン国務長官が中国を訪れ、習近平国家主席と会談しました。結果次第では米中関係が改善に向かうのではないかという期待感が広がりましたが、大きな進展はありませんでした。それどころか、米国は半導体製造装置と製品の対中輸出制限を強化する計画を発表し、中国も半導体製造、EV(電気自動車)、通信機器に不可欠な2種類の金属(ガリウムとゲルマニウム)の輸出を制限してこれに応じました。
一方、インドのモディ首相は米国を訪れ、温かい歓迎を受けました。同首相はApple社のティム・クックCEO(最高経営責任者)やTesla社のイーロン・マスクCEOら、米国を代表する企業のリーダーと会談し、今後の投資先としてインドを検討するよう促しました。インドの長期的成長見通しを肯定的に捉える見方が裏付けを得たことで、インドの主要な株価指数のNifty50指数とSENSEX指数が、当月ともに史上最高値を更新しました。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場のパフォーマンスは全般的に堅調でした。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前月末比2.83%上昇しました。消費支出とインフラ支出の堅調さが中東地域の株価の主な下支え要因となっています。ブレント原油価格は前月末からほぼ横ばいで月を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は、対日本円で上昇しました。特にオーストラリアドル、フィリピンペソ、韓国ウォンなどが対日本円で上昇しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドが保有する株式のリターンはプラスとなりました。セクター別では、情報技術セクター、資本財・サービスセクター、金融セクターなどがプラスに貢献しました。国別では、台湾、中国、香港などがプラスに貢献しました。個別銘柄では、eMemory Technology(台湾/情報技術)、NWS Holdings(⾹港/資本財・サービス)、AIA Group(香港/金融)などがプラスに貢献しました。一方で、MediaTek(台湾/情報技術)、CSL Ltd(オーストラリア/ヘルスケア)、SBI Cards & Payment Services(インド/金融)がマイナスに影響しました。
当月のパフォーマンスにプラスに貢献した銘柄の一つに、当ファンドの上位保有銘柄である「eMemory Technology(台湾/情報技術)」があります。同社の株価は当月約20%上昇し、年初来のトータルリターンは約67%に達しました。当ファンドは5月に再度経営陣と面談し、今回の面談でも同社の成長見通しに対して前向きな感触を得ています。
2022年7月の月次報告書でご紹介した通り、同社は埋め込み不揮発性メモリ(eNVM)技術に特化したシリコン関連の知財(IP)管理会社です。このIPは、主に「NeoBit」および「NeoFuse」と呼ばれ、複合電源IC(PMIC)、ディスプレイ用ドライバIC、センサー、RFID(タグの非接触認識システム)、TDDI(ディスプレイドライバチップとタッチパネルチップを統合するチップ)、MCU(マイクロプロセッサをベースとした制御装置)、CIS(コンタクトイメージセンサー)、Bluetoothなどで広く採用されています。同社のIPは過去20年間にわたり、世界で20社以上の半導体ファウンドリと2,000社以上のIC設計企業に採用されています。低価格で、効率性と安全性に優れるため競合他社に対して優位性があり、同社の市場シェアはここ数年間で着実に上昇してきました。同社は2010年以降、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術、当ファンド組⼊銘柄)のベストIPパートナーに認定されています。
IPの技術的な詳細については触れませんが、同社のビジネスモデルは実のところ、⽐較的単純です。ARM Holdings社(英国)のような知的財産管理会社の多くと同様、同社には以下の二つの収⼊源があります。
(1)ライセンス収⼊(売上の25〜30%程度)︓同社は半導体設計企業やファウンドリ企業からライセンス収⼊を得ています。半導体設計企業やファウンドリ企業は、同社と提携して、同社の知的財産を半導体設計や製造プロセスに取り⼊れています。このプロセスには一般に1年から4年程度かかります。
(2)ロイヤルティ収⼊(売上の70〜75%程度)︓同社の知的財産を⽣かした製品(例えばPMICなど)が商⽤化されると、同社はその知的財産が製品に使⽤されている期間、ウエハー価格の⼀定⽐率の料⾦をロイヤルティとして請求します。
当ファンドが最も期待を寄せているのは、同社が先日ハードウェアのセキュリティ分野に進出したことです。相互接続される機器が年々増加し、銀行取引から輸送、防衛、通信まで、あらゆるサービスを扱うデジタルインフラが形成されてきたことから、ハッキングやセキュリティ侵害によって大損害が発生する可能性があります。したがって、セキュリティはデジタル時代のインフラの安全性にとって基本的課題の1つとなっています。同社はこの問題に関する解決策を有していると、当ファンドは考えています。同社は既存のIP(NeoFuse)を活用し、「NeoPUF」(PUFとは物理的複製困難関数の意)という新しいセキュリティIPを開発しました。この技術は各半導体チップに固有の物理的「指紋」を持たせることで、安全かつ安価に暗号化、識別、認証を実現するというもので、現状では米国防総省国防高等研究計画局(DARPA)が設定した完全な自然の無作為性に関する16種類の要件を満たす唯一のソリューションです。さらにサイバーセキュリティに関する他の業界認証も複数取得しています。同社が目指すのは、すべてのチップにNeoPUFソリューションを組み込み、チップ間で通信が行われる度に認証を行ってセキュリティを確保することです。
もちろん最高の技術を持っていても、事業化の成功が約束されているわけではありません。しかしNeoPUFには事業化を進める上で有利な点があると当ファンドは考えています。それはNeoPUFソリューションのベースとなっているIPが、既に10年以上の生産実績を有し、大半のファウンドリやIC設計会社から認定を取得しているeNVM NeoFuse IPであるためです。そのため、ファウンドリやIC設計企業によるNeoPUFの認証手続きにかかる時間が大幅に短縮されます。競合先では認証手続きに数年を要する場合さえあることから、この点は同社にとって大きな優位性です。
NeoPUF IPはIPと生産に対する対応力の高さが評価され、ARM Holdings社の最新のコンフィデンシャル・コンピューティング・アーキテクチャである「ARMv9」に採用されました。これはきわめて心強い材料です。また、IoT(モノのインターネット)、自動車、データサーバー向けのICを手がける他のIC設計会社数社も、次世代型セキュリティ担保ソリューションで同社と協業しています。同社の直近の財務報告書によると、PUF活用ソリューションのライセンス収入が順調に伸びていますが、これは顧客による採用例が増え、将来的なロイヤルティ収入の拡大が保証されていることの証しだと考えます。当ファンドはこのセキュリティ事業が、今後5年から10年の間に従来のeNVMと同程度の規模にまで成⻑する可能性があると考えています。
直近の2023年第1四半期決算報告では、営業利益率は55%、純利益率は46.1%でした。ROE(株主資本利益率)は38.9%と高水準にあります。同社には負債がなく、資産の大部分を現金が占めています。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月は、First Abu Dhabi Bank(アラブ首長国連邦/金融)とSaudi Awwal Bank(サウジアラビア/金融)が、いずれもプラスに貢献しました。アラブ首長国連邦の不動産市場の好調さ、サウジアラビアにおけるインフラプロジェクトの増加が、銀行セクターにおける融資拡大の原動力となっています。世界経済の目先の不確実性にもかかわらず、両行は中東経済の発展による信用需要の長期的な成長から恩恵を受けると、当ファンドは考えています。
<通貨>
当月、アジア地域および中東地域の通貨は、対日本円で上昇し、全体としては当ファンドのリターンにプラスに貢献しました。
今後の見通し
<アジア株式>
短期的にみると、⾦利やインフレの動向に関する先⾏き不透明感、経済成長の鈍化、ロシアによるウクライナ侵攻や⽶中の地政学的リスクの⻑期化などといった要因から、世界的にマクロ経済の激しい変動が続く⾒込みです。しかし、質の高い製品やサービスの提供によって需要ギャップを埋めることに注力している企業は、持続的な成長を遂げることができると当ファンドは考えています。
当ファンドのリサーチチームは当月、インドネシア企業の調査を目的にジャカルタを訪問し、銀行、生活必需品、鉱業、通信、自動車部品など、様々な業界の企業と面談を行いました。インドネシアの状況は、新型コロナウイルス感染症の拡大以降、大きく変化しています。中でも顕著なのは、同国が製造業の川下への移行を進めていることです。同国はかつて、天然資源の一大輸出国でした。しかし、資源の輸出によって経済は天然資源価格の変動に晒され、付加価値もあまり生まれませんでした。そこでインドネシア政府は川下製造業の発展に力を入れるようになりました。その中できわめて有望な分野がEV(電気自動車)です。同国は一部のEVバッテリーの製造に不可欠な金属であるニッケルの埋蔵量が豊富です。同国は電池素材の製造インフラを構築中で、さらに川下産業であるEV用電池の製造を目指しています。それを裏付けるかのように、Contemporary Amperex Technology社(中国)やLG Energy Solution社(韓国)といった世界的なEV用バッテリー企業がインドネシアへの投資を進めています。同国が川下産業への移行に成功すればアジア地域のEV製造の架け橋になる可能性があり、それは同国に大幅な経済成長をもたらすと当ファンドは考えております。
世界のインフレ動向や経済成⻑の短期⾒通しは不透明ですが、アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という⻑期的テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
当ファンドは、配当収⼊とキャピタルゲインを通じて⻑期的にリターンを上げることを⽬指しています。当ファンドのポートフォリオはバランスがとれており、短期的なマクロイベントやスタイル・ローテーションにも耐えることができると、当ファンドは考えています。当ファンドは、グロース株、バリュー株、その他の分類といった市場認識に関係なく、キャッシュフローまたは配当金を生成する能力がある企業のファンダメンタルズを重視しています。
<中東株式>
原油市場は乱高下状態にありますが、政府の景気刺激策によって経済の多様化が進み、原油への依存度が低下することから、成長軌道はこのまま継続すると考えられます。当ファンドは、金融セクターの保有銘柄を引き続きポジティブにみています。
<通貨>
通貨は短期的には資本フローの影響によって大きく変動すると思われますが、長期的には、アジア地域および中東地域の経済のファンダメンタルズに力強さがみられることから、両地域の通貨は対日本円で上昇すると、当ファンドは考えます。
2023年5月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当⽉、アジア株式市場はまちまちの値動きとなりました。⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、前⽉末⽐2.34%下落しました。世界経済の減速、米国の債務上限問題、中国における製造活動の鈍化などが懸念され、投資家の間に不安が広がりました。米中関係には未だに緊張緩和の兆しが見られません。中国は「ネットワークセキュリティ上の深刻なリスク」を理由に、主要インフラプロジェクトで大手半導体メーカーであるMicron Technology社(米国)の製品の使用を禁止すると発表しました。米国政府が中国向け半導体製品の輸出を規制したことから、中国当局が対抗措置に踏み切ったという見方が広がっています。
中国では国営企業の改革が引き続き注目の的となっていますが、これは中国政府が国営企業のガバナンスと収益性の改善に向けた取り組みを強化しているためです。ある規制当局の高官は、投資家は中国国営企業の評価にあたって「中国らしい特色をもった企業価値評価システム」を模索すべきだと述べています。こうした要因から、当月は一部国営企業の株価が上昇しました。
当月の好材料としては、テクノロジー関連銘柄の上昇があげられます。半導体設計会社であるNVIDIA社(米国)が好決算と良好な業績見通しを発表したことを受けて、アジアの半導体関連銘柄に対する投資家心理が改善しました。同社の半導体は生成型AI(人工知能)「ChatGPT」などのアプリケーションに幅広く使用されており、過去数ヵ月にわたってそうしたアプリケーションの伸びが加速しています。台湾と韓国の株式市場では、テクノロジーセクターの好調な業績が最大の上昇要因となりました。
<中東株式>
当⽉、中東株式市場のパフォーマンスは全般的に低調でした。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前月末比3.58%下落しました。世界的な景気後退に対する懸念が、投資家心理に影を落としました。ブレント原油価格は、世界的な景気後退と需要減速に対する懸念を受けて前月から低下し、月を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は、対日本円で概ね上昇しました。特に韓国ウォン、台湾ドル、香港ドルなどが対日本円で上昇しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当⽉、当ファンドが保有する株式のリターンはプラスとなりました。セクター別では、情報技術セクターなどがプラスに貢献し、一般消費財・サービスセクター、資本財・サービスセクターなどがマイナスに影響しました。国別では、台湾、インド、韓国などがプラスに貢献し、中国、香港などがマイナスに影響しました。個別銘柄では、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、MediaTek(台湾/情報技術)、Samsung Electronics(韓国/情報技術)などがプラスに貢献しました。一方で、AIA Group(香港/金融)、China State Construction International Holdings(香港/資本財・サービス)、momo.com(台湾/一般消費財・サービス)などがマイナスに影響しました。
当⽉は、当ファンドの半導体セクターにおける長期組入銘柄がパフォーマンスに貢献しました。同セクターにおいて主な懸念材料となっていたのは、PCやスマートフォンの需要減速による過剰在庫でした。しかし、半導体製品の用途は自動車や、AI、データセンター、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)など、以前と比べてますます多様化しているため、PCやスマートフォンの需要が景気循環の影響で低調に留まっても、その影響を受けにくくなっていると思われます。
NVIDIA社の決算と業績見通しが好調だったことは、生成型AIの採用が加速度的に伸びていることを示しています。「ChatGPT」の人気がこの数ヵ月で急速に高まり、Microsoft社(米国)も検索エンジン「Bing」に「ChatGPT」を採用したことで、生成型AIに注目が集まりました。「ChatGPT」のGPTとは「Generative Pre-trained Transformer」の略で、この技術を用いるとAIが膨大なデータから機械学習したパターンを利用して、新たなコンテンツ(記事、画像、動画、プログラミングコードなど)を生成することができます。AI技術は、今後数十年の間に多くの産業を根底から変革する原動力になると考えられます。
NVIDIA社の好業績から直接的に恩恵を受けると考えられる銘柄の1つに、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)があります。同社はNVIDIA社のファウンドリ(実際に半導体を製造する工場)における主要パートナーで、最先端工程を駆使してNVIDIA社向けの最新式AIチップを製造しています。AIチップはデータセンターだけでなく、車載用や産業用、さらにはIoT製品の多くで使用されるようになることが想定されるため、NVIDIA社向けチップおよびAIチップ全般の需要増加は、今後中長期にわたって貴重な成長の原動力となるでしょう。
また、NVIDIA社は当月、MediaTek(台湾/情報技術)と提携し、車載インフォテインメントシステムに対するAIの組み込みに使用するチップを自動車メーカー向けに共同開発すると発表しました。MediaTekはこの提携によって、自動車部門の成長を加速させ、スマートフォン分野以外の事業の拡大も実現できることになると当ファンドは考えています。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月は、Saudi British Bank(サウジアラビア/金融)がプラスに貢献し、First Abu Dhabi Bank(アラブ首長国連邦/金融)がマイナスに影響しました。Saudi British Bankは、Awwal Bank社との合併に伴って社名を「Saudi Awwal Bank」へ変更すると発表しました。当ファンドは、同行は中東経済の発展による信⽤需要の⻑期的成⻑から恩恵を受けると考えています。
<通貨>
当月、アジア地域および中東地域の通貨は、対日本円で概ね上昇し、全体としては当ファンドのリターンにプラスに貢献しました。
今後の見通し
<アジア株式>
短期的にみると、米国の債務上限問題、金利やインフレの動向、経済成長の鈍化、ロシアによるウクライナ侵攻や米中の地政学的リスクの長期化などといった要因から、世界的にマクロ経済の激しい変動が続く見込みです。しかし、質の高い製品やサービスの提供によって需要ギャップを埋めることに注力している企業は、持続的な成長を遂げることができると当ファンドは考えています。
デジタル化とイノベーションの流れが止まることはなく、一部半導体関連企業には引き続き成長機会が見いだせると当ファンドは考えています。また、中国は米国との対立によって国内で独自に半導体エコシステムを構築せざるを得ないため、当ファンドにとっては新たな投資先を発掘する好機が到来していると考えています。
世界のインフレ動向や経済成長の短期見通しは不透明ですが、アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
当ファンドは、配当収⼊とキャピタルゲインを通じて長期的にリターンを上げることを⽬指しています。当ファンドのポートフォリオはバランスがとれており、短期的なマクロイベントやスタイル・ローテーションにも耐えることができると、当ファンドは考えています。当ファンドは、グロース株、バリュー株、その他の分類といった市場認識に関係なく、キャッシュフローまたは配当金を生成する能力がある企業のファンダメンタルズを重視しています。
<中東株式>
原油市場は乱高下状態にありますが、政府の景気刺激策によって経済の多様化が進み、原油への依存度が低下することから、成長軌道はこのまま継続すると考えられます。当ファンドは、金融セクターの保有銘柄を引き続きポジティブにみています。
<通貨>
通貨は短期的には資本フローの影響によって大きく変動すると思われますが、長期的には、アジア地域および中東地域の経済のファンダメンタルズに力強さがみられることから、両地域の通貨は対日本円で上昇すると、当ファンドは考えます。
2023年4月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
当⽉、アジア株式市場はまちまちの値動きとなりました。⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、前⽉末⽐1.69%下落しました。世界経済の低迷、米国の銀行危機の波及、中国の製造活動の鈍化に対する懸念が広がり、慎重姿勢をとる投資家が増加しました。米バイデン政権が最先端技術や機器の中国への輸出規制を厳格化する意向を示したことから、米中間の緊張はますます高まりました。
また、スマートフォンやPCの需要低迷が、引き続きテクノロジー銘柄の重石となっています。Samsung Electronics(韓国/情報技術)は、主力の半導体メモリーの需要低迷が原因で、2023年1月~3月期決算が低調でした。Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)も、半導体業界の成長が短期的に弱含むという予想を明らかにしました。ただし両社はいずれも、将来的に成長が見込める技術の研究開発と投資を続け、半導体関連製品、とりわけ自動車、AI(人工知能)、データセンター、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)の構造的な需要増加に対応していく意向を示しました。
一方、コロナ禍後の回復が続いたことが、アジア全域のサービスセクターの追い風となりました。海外へ出かける人も多く、とりわけ復活祭期間中の旅客数が堅調でした。中国人旅行者の姿が香港に戻り、ショッピングモール等の小売売上高が好調に推移しています。
インドネシアとインドは、外国企業の生産拠点移転先としての人気がますます高まっています。インドネシアに対するルピア建て海外直接投資(FDI)は2023年第1四半期だけで前年同期比20.2%増加し、この勢いは今後も続くと当ファンドは考えています。Apple社(米国)のティム・クック最高経営責任者(CEO)はインドを訪問し、同国への投資をさらに拡大し、同社輸出製品の生産拠点としての役割を漸次拡大していくと発表しました。
<中東株式>
当月、中東株式市場のパフォーマンスはまちまちでした。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前月末比5.05%上昇しました。原油価格は、月前半にOPEC(石油輸出国機構)が予想外の減産を発表したことで急騰しましたが、世界経済の低迷に対する懸念が再燃したことで鎮静化に向かいしました。ブレント原油価格は若干低下して月を終えました。
<通貨>
当⽉、アジア地域の通貨は、対⽇本円で上昇しました。特に⾹港ドル、フィリピンペソ、インドネシアルピアなどが対⽇本円で上昇しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当⽉、当ファンドが保有する株式のリターンはマイナスとなりました。セクター別では、金融セクター、資本財セクターなどがプラスに貢献し、情報技術セクターなどがマイナスに影響しました。国別では、インド、オーストラリア、香港などがプラスに貢献し、台湾、中国などがマイナスに影響しました。個別銘柄では、China State Construction International Holdings(香港/資本財・サービス)、AIA Group(香港/金融)、Lemon Tree Hotels(インド/一般消費財・サービス)などがプラスに貢献しました。一方で、MediaTek(台湾/情報技術)、Tencent Holdings(中国/コミュニケーション・サービス)、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)などがマイナスに影響しました。
当月のパフォーマンスにプラスに貢献した銘柄であるChina State Construction International Holdings(香港/資本財・サービス)は中国国営のインフラ建設会社で、香港やマカオのインフラや建設プロジェクトから長年にわたって強力かつ安定したキャッシュフローを創出しています。同社はさらなる成長と利益率拡大を求め、長い年月をかけて中国国内の事業を拡大してきました。
1979年に香港で設立された同社は、当初は香港とマカオの建設プロジェクトに特化していました。香港は品質と安全性に関する要件が非常に厳格だったため、同社は長年にわたり、自社より大規模かつ強力な建設会社と競争し、プロジェクトを勝ち取る必要がありました。そのなかで国際的な建設会社との競争に勝ち抜けるだけの実力をつけ、香港の政府系プロジェクトにおける市場シェアを伸ばしてきました。同社は香港において、政府系プロジェクト全件に入札できるライセンスを保有する数少ない施工業者のうちの1社です。
同社の強みの1つは、プレハブ建設において業界屈指のノウハウを持っていることです。同社は中国国内6ヵ所の施設で建物の特定コンポーネント(部屋、床のパネル)をリモートでプレハブ加⼯し、それを建設現場で組み⽴てることで、コスト(時間、⼈件費、エネルギー)の節約ができます。同社の高度なモジュール建築技術(高度なプレハブ技術)は、コロナ禍に香港政府の要請を受けて感染症予防対策を担う病院を短期間で建設するなど、複数のプロジェクトが高い評価を得たことで、急速に認知度を高めました。今回の事例で同社の実務能力の高さが証明され、ブランド力はさらに高まり、将来的な受注拡大が見込まれると当ファンドは考えます。
香港政府は今後長期間にわたり、公共住宅新築戸数を倍増し、香港北部を新たな都市圏として開発し、鉄道路線網、公共施設、その他あらゆる関連インフラを整備していく計画です。同社は香港で大きな市場シェアを持つインフラ建設会社の一角として、再び大規模案件を受注する可能性があると当ファンドは考えています。
中国国内もまた、同社にとっては重要な市場です。中国政府は比較的低価格な住宅の供給を引き続き政策として掲げ、都市再生プロジェクトを加速していますが、同社はこうした分野にも積極的に参加していく予定です。中国ではこのところ、ガイドラインを作成することで住宅やインフラ関連のプロジェクトにおけるプレハブ技術の利用を促進しようとする都市が増加しています。そうすることで環境に対する負荷が減り、工期の大幅短縮に繋がるためです。同社は中国におけるモジュール建築市場の拡大を背景に、先端技術と香港での豊富な実績を生かして、優先発注先としての地位を固めようとしています。
主なリスクは、人手不足、品質問題、マクロ経済の悪化などです。これらはいずれも建設業界全体が直面しているリスク要因ですが、同業界で長期にわたって実績を積んできたことなどを踏まえると、同社は同業他社より上記リスクに対処しやすい立場にあると当ファンドは考えています。
同社のPER(株価収益率)は約6.6倍、配当利回りは約4.6%です。キャッシュフローが改善し、高い技術力を生かした新規契約の獲得が続けば、同社は今後も当ファンドに魅力的なリターンをもたらすと考えられます。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月は、First Abu Dhabi Bank(アラブ首長国連邦/金融)とSaudi British Bank(サウジアラビア/金融)が、いずれもプラスに貢献しました。First Abu Dhabi Bankが当月発表した決算は、非金利収入が増加し、費用が減少したため、予想を上回りました。融資の伸びは引き続き底堅く、財務体質も依然として健全です。世界経済の目先の不確実性にもかかわらず、同行は中東経済の発展による信用需要の長期的な成長から恩恵を受けると、当ファンドは考えています。
<通貨>
当月、アジア地域および中東地域の通貨は、対日本円で概ね上昇し、全体としては当ファンドのリターンにプラスに貢献しました。
今後の見通し
<アジア株式>
短期的にみると、⾦利やインフレの動向の先⾏き不透明感、コロナ禍収束後の経済成⻑の不均衡、ロシアによるウクライナ侵攻や⽶中の地政学的リスクの⻑期化などといった要因から、世界的にマクロ経済の激しい変動が続く⾒込みです。米国の地銀が抱える問題が露呈したことで、金融市場の変動幅はさらに拡大しています。リスクは現状では概ね米国の銀行システム内にとどまっていますが、他市場に波及するリスクは注視すべきだと考えます。
中国では、3月のPMI(非製造業購買担当者景気指数)調査によって生産活動の縮小が明らかになりました。これは国内外の両方で需要が弱含んでいることを示すものです。一方、非製造業指数には引き続き活動拡大の兆しが見られ、特に旅行やエンターテインメント関連の業界ではその傾向が顕著です。近日中に発表されるゴールデンウィークの消費支出額は今後を占う重要な指標となるでしょう。当ファンドは香港とマカオを中心に小売売上高が順調に回復すると予想しています。
また、中国政府がガバナンスや収益性の改善に向けた取り組みを強化していることから、国営企業の改革も順調に進んでいます。一部の国営優良企業はバリュエーションが割安で、成長の見通しがよく、収益性に優れており、前述のChina State Construction International(香港/資本財・サービス)などはその好例です。
インドとASEAN諸国では、インフラの整備度にばらつきがあること、中間所得層の収入が拡大していることから、国内需要が堅調に推移する見込みで、企業の多くが内需主導の成長だけに的を絞って事業を展開できる状態にあります。またFDIも順調に伸び、外国企業がアジアの製造拠点を設立する動きが加速しています。そうした動きは持続的な経済成長を促し、1人当たりの所得を成長させるため、当ファンドは銀行セクター、保険セクター、消費財セクターに魅力的な長期投資の機会があるとみています。
世界のインフレ動向や経済成⻑の短期⾒通しは不透明ですが、アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という⻑期的テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
当ファンドは、配当収⼊とキャピタルゲインを通じて⻑期的にリターンを上げることを⽬指しています。当ファンドのポートフォリオはバランスがとれており、短期的なマクロイベントやスタイル・ローテーションにも耐えることができると、当ファンドは考えています。当ファンドは、グロース株、バリュー株、その他の分類といった市場認識に関係なく、キャッシュフローまたは配当金を生成する能力がある企業のファンダメンタルズを重視しています。
<中東株式>
原油市場は乱高下状態にありますが、政府の景気刺激策によって経済の多様化が進み、原油への依存度が低下することから、成長軌道はこのまま継続すると考えられます。当ファンドは、金融セクターの保有銘柄を引き続きポジティブにみています。
<通貨>
通貨は短期的には資本フローの影響によって大きく変動すると思われますが、長期的には、アジア地域および中東地域の経済のファンダメンタルズに力強さがみられることから、両地域の通貨は対日本円で上昇すると、当ファンドは考えます。
2023年3月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
アジア株式市場は当月、軟調な値動きで幕を開けましたが、その後反発して月を終えました。⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、前⽉末⽐2.8%上昇しました。世界経済の悪化に対する懸念、米シリコンバレー銀行の破綻、スイスの金融大手UBSによるクレディ・スイス・グループの買収提案などが相次いだことで、投資家の信頼感は揺らぎ、金融システムにその余波が及ぶのではないかという懸念が広がりました。FRB(米国連邦準備制度理事会)とスイス当局の迅速な対応によってリスクは回避され、市場は足元では落ち着いていますが、世界の銀行セクターに長期にみてどのような影響を及ぼすのかは未だ不透明です。
当月、中国では年に1度の全国人民代表大会が開催されました。予想通り習近平氏が過去に例のない3期目の国家主席に選出され、新首相には李強氏が選出されました。GDP成長率は5%程度と控えめな数値に設定され、内需拡大策、企業の信頼感向上策、ならびにEV(電気自動車)、グリーンエネルギー、人工知能(AI)、先進的製造業、半導体といった主要産業のテコ入れ策などに注力することが発表されました。また、不動産セクターとインターネットセクターの規制緩和を示唆する発言もありました。これを受けて投資家心理が好転し、中国市場と香港市場は堅調なパフォーマンスを記録しました。
ASEAN諸国では外国企業による生産拠点設置の動きが続いています。インドネシアはニッケル鉱石の埋蔵量が豊富であることから、EVとそのサプライチェーンに関わる企業に対する海外からの投資が拡大しています。
<中東株式>
当月、中東株式市場のパフォーマンスはまちまちでした。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、前月末比2.1%上昇しました。ブレント原油価格は下落して月を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は、概ね対日本円で下落しました。特にオーストラリアドル、香港ドル、インドルピーなどが対⽇本円で下落しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当⽉、当ファンドが保有する株式のリターンはプラスとなりました。セクター別では、コミュニケーション・サービスセクター、情報技術セクターなどがプラスに貢献し、金融セクター、ヘルスケアセクターなどがマイナスに影響しました。国別では、中国、台湾などがプラスに貢献し、香港、オーストラリアなどがマイナスに影響しました。個別銘柄では、Tencent Holdings(中国/コミュニケーション・サービス)、MediaTek(台湾/情報技術)、momo.com(台湾/一般消費財・サービス)などがプラスに貢献しました。一方で、HSBC Holdings(香港/金融)、Haier Smart Home(中国/一般消費財・サービス)、AIA Group Ltd(香港/金融)などがマイナスに影響しました。
当月、当ファンドの運用チームが新型コロナウイルス感染拡大以降、初めて台湾を訪問しました。企業経営陣や他の投資家の方々と投資カンファレンスで顔を合わせて意見交換できたことは、組み入れている(または注目している)企業や業界に関する最新の見通しを理解するうえできわめて有意義な場となりました。面談を行ったのは世界経済の動向に敏感な企業と内需主導企業の両方です。例えば半導体セクター(MediaTek(台湾/情報技術)、eMemory Technology(台湾/情報技術)、Global Unichip社(台湾))、繊維セクター(Makalot Industrial社(台湾))、自転車セクター(Giant Manufacturing社(台湾)、KMC International社(台湾))などです。こうしたセクターの企業は、世界の景気循環や地政学的リスクの影響に敏感です。これら企業の目下の課題は、在庫水準が通常より高いこと、さらに最終需要が通常より弱いことにあると考えます。スマートフォン、スポーツウェア、自転車に対する消費需要と支出額は、2023年下期に回復傾向に転じる見込みです。こうした企業の多くはそれぞれの事業で高いシェアを誇っており、短期的な逆風に耐えて長期的に体力を強化することが可能だと考えます。
一方、小売関連企業やヘルスケア関連企業は、台湾国内市場の動向に敏感です。今回の訪台では、President Chain Store社(台湾、台湾におけるセブンイレブン、スターバックスなどの運営企業)、Poya International(台湾/一般消費財・サービス、台湾最大級の雑貨販売業者)、91APP(台湾/情報技術、実店舗のデジタル化を支援するSaaS(Software as a Serviceの略、インターネット経由で利用できるソフトウェアのこと)企業)、Universal Vision Biotechnology社(台湾、台湾最大の眼科チェーン)の経営陣と面談することができました。台湾国内市場は成熟度が高く、成長余地が限定的ではあると考えられますが、前述のような企業は市場シェアを拡大して成長を続け、新規カテゴリーに進出することで新たな事業機会を創出しています。
前述の通り、当ファンドは今回、オンラインとオフラインの両面から小売事業者の拡販を支援する台湾の大手小売SaaS企業の91APPを訪問取材しました。同社は2013年の設立で、当初は中小企業がオンラインストアの開設に使用するソフトウェアソリューションを提供していました。しかしその後、同事業で得た経験と実績を生かし、大手小売事業者向けD2C(消費者への直販)、OMO(オンラインとオフラインの融合)デジタルソリューションの実装に軸足を移しました。
設立者のスティーブン・ホー氏は台湾eコマース(電子商取引)業界の重鎮です。同氏は著名な起業家で、同社の設立まではC2C(消費者間)ウェブサイトの創設やB2C(企業と消費者間)企業の設立に携わりながら、D2Cが次のトレンドになると考えていました。
D2Cはeコマース業界で急上昇中のトレンドで、小売事業者やブランド所有企業がeコマースプラットフォームを通じてではなく、顧客と直接的に接点を持つという形態のビジネスモデルです。eコマース売上の大部分はこれまで、Amazon.com社(米国)、Alibaba Group Holding(中国/一般消費財・サービス)などといったプラットフォーム運営企業が担ってきました。プラットフォーム運営企業は顧客情報を保有しており、自社のプラットフォームで商品を販売する小売事業者やブランドに各種料金、手数料を課金しています。ところがここ最近は、小売事業者やブランドがプラットフォームへの依存度を低下させ、顧客エンゲージメントを高めるため、独自の公式ウェブサイト、アプリ、会員プログラムを構築することで、D2C戦略を推進する事例が増えています。91APPは、台湾においてそうした企業のウェブサイト、アプリ、会員プログラム創設を支援する大手サービスプロバイダーの一角を占め、決済、物流、マーケティングサービス用のソリューションも提供しています。既にいくつかのグローバルブランドは、同社のソリューションを利用して台湾のオンライン事業を展開しています。
同社のもう一つの注力分野は、OMOソリューションの支援です。台湾の実店舗専業業者の多くはmomo.com(台湾/一般消費財・サービス)をはじめとするeコマースプラットフォームの脅威に直面し、オンライン販売の開拓方法を模索しています。ウェブサイトを開設してオンラインで商品を販売するだけの単純な手法から、完全なデジタル化によるさらに総合的なアプローチまで、OMO戦略の採用によって増収と効率改善を図る実店舗型小売事業者が増加しています。同社はコンビニエンスストアのFamily Mart、日用品店のCOSMEDをはじめ、台湾の大手実店舗型小売事業者の多くでオンラインプレゼンスと売上の拡大を支援してきました。
同社は定額料金制でデジタルソリューション事業を運営していますが、クライアントがオンラインであげた売上の一部を課金することで、追加収入も得ています。同社の売上高上位の企業でさえオンライン販売の普及率が低水準に留まっていることを踏まえると、同社の将来的な成長性はクライアントのオンライン販売拡大を支援することでどの程度手数料収入を増やせるかにかかっています。D2CとOMO戦略を採用する小売業者が増えるにつれ、同社は従来以上にクライアントを獲得し、クライアント当たりオンライン販売も時間とともに増加していくというのが当ファンドの見方です。
競争は熾烈ですが、同社は大手小売ブランドのリーダーとしての立場を確立しています。世界と中国でオンラインSaaSを手がける他のプロバイダーが継続的に多額の資金を投じて市場シェアを獲得しているのと比べ、同社は少しずつ収益を確保しながら成長しています。今回訪問した台北郊外のオフィスは、それほどコストはかかっていませんが、スタッフにとっては快適な場に思えました。様々な場所を見学させてもらい、スタッフの活気を感じることもできました。そして設立者であるスティーブン・ホー氏の起業家精神をオフィスのいたるところで実感しました。
同社の粗利益率は約74%、純利益率は約27%です。時価総額は約4億4,000万米ドルであり、売上高も比較的小規模です。同社はD2CとOMOの上昇トレンドに由来する成長力を戦略的に活用できる立ち位置にあり、当ファンドに有望な投資機会を長期的に提供してくれることでしょう。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月は、Saudi British Bank(サウジアラビア/金融)がプラスに貢献し、First Abu Dhabi Bank(アラブ⾸⻑国連邦/⾦融)がマイナスに影響しました。世界経済の目先の不確実性にもかかわらず、同行は中東経済の発展による信用需要の長期的な成長から恩恵を受けると、当ファンドは考えています。
<通貨>
当月、アジア地域および中東地域の通貨は、対日本円で概ね下落し、全体としては当ファンドのリターンにマイナスに影響しました。
今後の見通し
<アジア株式>
2023年第1四半期は何かと出来事の多い3ヵ月でした。短期的にみると、金利やインフレの動向の先行き不透明感、コロナ禍収束後の経済成長の不均衡、ロシアによるウクライナ侵攻や米中の地政学的衝突の長期化などといった要因から、世界的にマクロ経済の激しい変動が続く見込みです。
GDP成長率目標は5%前後と控えめに設定されましたが、中国は引き続き投資機会を探るべき重要な市場であると考えます。規制緩和や低水準のバリュエーションを鑑みると、一部インターネットプラットフォーム企業は魅力を取り戻していると当ファンドは考えています。Alibaba Group Holdingが事業部門を分割し、各事業が独立した経営体を構成するという報道がありましたが、これは同業他社が同様の価値創出戦略を採用するきっかけになる可能性があります。当ファンドは同セクターの状況を慎重に注視し、投資機会を探ってまいります。
米国は中国による先進半導体技術へのアクセスを引き続き制限しています。そのため、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)やSamsung Electronics(韓国/情報技術)といったアジアのファウンドリー企業の優位性が強まると考えられます。ただし、中長期的にみると、中国は自国独自の半導体技術を開発せざるをえないため、中国系の半導体企業が台頭してくる可能性があると考えます。
インドとASEAN諸国では、インフラの整備度にばらつきがあること、中間所得層の収入が拡大していることから、国内需要が堅調に推移する見込みで、企業の多くが内需主導の成長に的を絞って事業を展開できる状態にあります。当ファンドは、銀行セクター、保険セクター、消費セクターに魅力的な長期投資の機会があるとみています。
世界のインフレ動向や経済成⻑の短期⾒通しは不透明ですが、アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という⻑期的テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
当ファンドは、配当収⼊とキャピタルゲインを通じて⻑期的にリターンを上げることを⽬指しています。当ファンドのポートフォリオはバランスがとれており、短期的なマクロイベントやスタイル・ローテーションにも耐えることができると、当ファンドは考えています。当ファンドは、グロース株、バリュー株、その他の分類といった市場認識に関係なく、キャッシュフローまたは配当金を生成する能力がある企業のファンダメンタルズを重視しています。
<中東株式>
中東株式市場は引き続き原油高の恩恵を受けると考えます。各国政府の景気刺激策には経済を変革し、産業を多様化して原油への依存を低下させる力があるため、このまま好ましい成長軌道を描くと考えられます。当ファンドは、金融セクターの保有銘柄を引き続きポジティブにみています。
<通貨>
通貨は短期的には資本フローの影響によって大きく変動すると思われますが、長期的には、アジア地域および中東地域の経済のファンダメンタルズに力強さがみられることから、両地域の通貨は対日本円で上昇すると、当ファンドは考えます。
2023年2月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
アジア株式市場の大半は、1月に堅調に推移した後、当月は下落しました。日本を除くアジア太平洋市場に使用される一般的な指数であるMSCIアジア太平洋(日本を除く、米ドル建て)指数は、前月末比6.75%下落して月を終えました。これは主に、MSCI中国(米ドル建て)指数の同10.37%下落が影響しました。中国の経済活動再開を受けた消費回復に関する好調なデータにもかかわらず、米国領空内の中国の偵察気球疑惑を巡って米中間の緊張が再燃し、人民軍と関係する中国企業に対する制裁が強化されたことで、投資家心理は冷え込みました。また11月以降に大きく上昇していた中国のインターネット関連銘柄も、高まる規制懸念やJD.com社(中国)による積極的な補助金キャンペーンを契機とした価格競争の可能性を受けて、下落に転じました。
米国の力強いインフレおよび労働市場データも、米国利上げのペース加速と長期化に対する懸念を引き起こし、新興市場の株価に下押し圧力を加えました。インドの指数は当月もAdani危機が重石となり、Adani group社(インド)関連銘柄は大幅にアンダーパフォームしました。台湾のテクノロジー企業は、2022年第4四半期決算説明会で2023年第1四半期の低調な収益見通しを発表しましたが、一部の投資家はそれをサイクルの「底」と解釈し、一部企業の株価の下支え要因となりました。また、最近のChatGPT(AIチャットプログラム)の急速な普及が、半導体やメモリの需要増につながる可能性を指摘する声もあります。
<中東株式>
当月、中東株式市場のパフォーマンスはまちまちでした。MSCI GCC(湾岸協⼒理事会)諸国指数(⽶ドル建て)は、サウジアラビアとカタールの低調なパフォーマンスを受け、前月末比4.94%の下落となりました。ブレント原油価格は安定して推移しました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は対日本円でまちまちの値動きをみせました。香港ドル、インドルピー、フィリピンペソなどが対日本円で上昇した一方で、韓国ウォン、タイバーツなどが対日本円で下落しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドが保有する株式のリターンはマイナスとなりました。情報技術セクターがパフォーマンスにプラスに貢献し、資本財・サービスセクター、不動産セクターなどがマイナスに影響しました。国別では、台湾、インドなどがプラスに貢献し、中国、香港などがマイナスに影響しました。個別銘柄では、eMemory Technology(台湾/情報技術)、Poya International(台湾/一般消費財・サービス)などがプラス貢献しました。一方で、Tencent Holdings(中国/コミュニケーション・サービス)、Techtronic Industries (香港/資本財・サービス)、Alibaba Group Holding(中国/一般消費財・サービス)などがマイナスに影響しました。
当月のリターンにプラス貢献した銘柄の1つに、Poya International(台湾/一般消費財・サービス)があります。同社は、台湾最大級の雑貨販売業者の1つです。同社の主要ブランドである「Poya」は女性客をターゲットにし、化粧品、スキンケア、パーソナル美容商品、その他の家庭用品の販売に注力しています。2019年に発表された第2ブランドの「Poya Home」は家庭用品の顧客をターゲットとしており、工具、家の修繕用品、自動車部品など家庭用ハードウェアの販売に注力しています。
同社の設立者である夫妻は、1970年代に台湾南部の夜市の露天商として事業を開始しました。1990年代にPoyaの1号店を台湾南部で出店し、現在では台湾全体で320店近くを運営しています。Poyaは露天商で販売される商品のようなバリュー・フォー・マネー(価格に見合った価値のある)商品を、それよりもはるかに良い、組織化された店舗環境で提供しています。Poya店舗はヘアクリップ、リップスティック、マニキュアなどの女性用アクセサリーや化粧品の品揃えが豊富なことで広く知られています。一般的な薬局やパーソナルケアストアのSKU(Stock keeping Unit、受発注・在庫管理を行うときの最小の管理単位)が15,000 SKUであるのに対し、典型的なPoya店舗は60,000 SKUを扱っています。同社は露天商と、パーソナルケアストアやドラッグストアの中間の業態を作り出すことに成功し、台湾の女性客の間で絶大な人気を誇ります。
過去3年間はコロナ禍が売上高に影響を与え、同社の事業拡大計画にブレーキがかかりましたが、経済活動の再開と小売環境の正常化に伴い、同社は市場シェア獲得を目指して店舗拡大計画を再始動しています。マスク着用義務の撤廃により、女性客は化粧品を補充しようとするので、目先の売上高は増加すると予想されます。同社は2022年、化粧品と美容商品に特化した「Poya Beauty」という新たな店舗形態を立ち上げました。2022年末時点で数店舗出店しており、2023年の店舗拡大の中心となる見通しです。同社はまた、社内eコマース(電子商取引)・ソリューションを実装し、サードパーティー・プラットフォームを採用することでオムニチャネル戦略(チャネルを問わずあらゆる顧客接点においてユーザーにアプローチする販売戦略)を強化し、より多くの商品を顧客に提供しています。
同社の粗利益率は2010年の約30%から2022年の43%と着実に上昇してきました。純利益率も2010年の4.7%から2022年の10.6%へと上昇しました(コロナ禍前の2019年は12%)。利益率の改善をもたらした主な要因は、(1)店舗数の増加に伴う、サプライヤーに対する規模の優位性、(2)効率を高めるITおよび物流システムへの早期投資、(3)市場シェアの獲得および業界統合(競合企業の市場撤退)による価格競争の緩和の3点です。同社は台湾にPoyaを約500店出店できると考えており、(現在約320店舗)、成長見通しは依然魅力的です。
2019年には家庭用品の顧客をターゲットにした第2ブランドの「Poya Home」を立ち上げ、家庭用ハードウェア事業に参入しました。経営陣は、台湾で家庭用ハードウェアを販売する1,500店舗の大半が家族経営の小店舗であるという、業界の細分化した性質を踏まえ、同社の経営経験とインフラを活用することでセグメントを統合できるとも考えています。「Poya Home」は2022年末時点で40店舗程度出店しています。経営陣は依然として最適な製品構成や価格戦略を微調整しており、同事業は予想したほど順調には成長していませんが、事業が成功すれば、同セグメントが同社の新たな成長ドライバーとなるでしょう。
経営陣の強力なリーダーシップ、持続可能な高い利益率、明確な成長戦略により、同社のROE(株主資本利益率)は約37%であり、高いキャッシュフロー創出力を有しています。2022年度の配当利回りは約4%、PER(株価収益率)は24倍程度であり、同社は台湾での成長が見込め、魅力的な長期投資機会を提供している希少な小売業者の1つであると当ファンドは考えています。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月はFirst Abu Dhabi Bank(アラブ首長国連邦/金融)がプラスに貢献し、Saudi British Bank(サウジアラビア/金融)がマイナスに影響しました。世界経済の目先の不確実性にもかかわらず、同行は中東経済の発展による信用需要の長期的な成長から恩恵を受けると、当ファンドは考えています。
<通貨>
当月、アジアおよび中東地域の通貨は、対日本円でまちまちの値動きとなり、全体としては当ファンドのリターンにプラスに貢献しました。
今後の見通し
<アジア株式>
株価は前月に力強く上昇した後、当月は一服しました。中国の経済活動再開後の最初の上昇局面はほぼ終了したと考えられ、投資家は業績や見通しに再び注目するようになっています。3月に開かれる中国の全国人民代表大会(全人代)は、経済、政局、対外関係の政治的方向性を探る手がかりとして大いに注目されています。習近平主席は、消費の押し上げが最優先事項であると強調しており、消費関連セクターにとって良い兆しとなっています。当ファンドはまた、中国国内サプライチェーン(特に半導体およびテクノロジー)の発展や、再生可能エネルギーおよび電気自動車(EV)業界などの環境への取り組みを促進する支援的な政策が打ち出されると予想しています。当ファンドは、これらセクターで当ファンドの投資基準を満たす企業を吟味しています。
ASEAN諸国およびインドでは、中国からサプライチェーンを移管する動きが引き続き国内経済に追い風となっています。Apple社(米国)のサプライヤーであるFoxconn Technology Group社(台湾)は、インドでiPhone製造工場の建設を計画しています。人口動態が良好で、米中の政治関係に対して中立的な立場を取るASEAN諸国は生産基盤を分散する移管先として魅力的であることから、これらの国ではインフラ、資本財、個人消費の成長が促されると予想されます。
世界のインフレ動向や経済成長の短期見通しは不透明ですが、アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
当ファンドは、配当収入とキャピタルゲインを通じて長期的にリターンを上げることを目指しています。当ファンドのポートフォリオはバランスがとれており、短期的なマクロイベントやスタイル・ローテーションにも耐えることができると、当ファンドは考えています。当ファンドは、グロース株、バリュー株、その他の分類といった市場認識に関係なく、キャッシュフローまたは配当金を生成する能力がある企業のファンダメンタルズを重視しています。
<中東株式>
中東株式市場は引き続き原油高の恩恵を受けると考えます。各国政府の景気刺激策には経済を変革し、産業を多様化して原油への依存を低下する力があるため、このまま好ましい成長軌道を描くと考えられます。当ファンドは、金融セクターの保有銘柄を引き続きポジティブにみています。
<通貨>
通貨は短期的には資本フローの影響によって大きく変動すると思われますが、長期的には、アジア地域および中東地域の経済のファンダメンタルズに力強さがみられることから、両地域の通貨は対日本円で上昇すると、当ファンドは考えます。
2023年1月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
2023年はアジア株式市場の大半が好調な滑り出しを見せました。⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、前⽉末⽐8.63%上昇して⽉を終えました。台湾、韓国、中国、香港が好調だった一方、インド、インドネシアがマイナスとなりました。
中国では経済再開の動きが継続しました。春節(旧正月)期間中の旅行や支出額に関する統計指標は堅調で、新型コロナウイルスの感染者数にも増加の兆しが見られないため、今後も経済再開の動きは継続するものと思われます。これを受けて中国のインターネット関連銘柄、EV(電気自動車)関連銘柄がアウトパフォームしました。
台湾と韓国の堅調なパフォーマンスを牽引したのはテクノロジー関連セクターでした。半導体セクターについては、2023年上半期業績に関する不安感は拭えていないものの、投資家が短期的な株価動向以外にも目を向け、データサーバやAIアプリケーション、自動車、IoT(モノのインターネット)などによってセクター全体が再び構造的成長軌道に乗ることへの期待が高まったため、株価が反発しました。一方、インド株式市場では資金の流出が続きました。その一因は投資家が再び資金を中国、台湾、韓国に配分していることにあります。加えてAdani Group社(インド)の危機で時価総額が約1,080億米ドル(約13兆9,000億円)消失したことによって、国有銀行のコーポレートガバナンスや潜在的損失に関する懸念が生じ、投資家心理が悪化したことも要因の一つです。
<中東株式>
当月、中東株式市場のパフォーマンスはまちまちでした。MSCI GCC(湾岸協力理事会)諸国指数(米ドル建て)は、前月末比1.53%上昇しました。ブレント原油価格はほぼ横ばいで月を終えました。
<通貨>
当月、アジア地域の通貨は概ね対日本円で上昇しました。特にタイバーツ、インドネシアルピア、オーストラリアドルなどが対日本円で上昇しました。一方、インドルピー、香港ドルが対日本円で下落しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドが保有する株式のリターンはプラスとなりました。セクター別では、情報技術セクター、一般消費財・サービスセクター、資本財・サービスセクターなどがプラスに貢献し、金融セクターがマイナスに影響しました。国別では、台湾、中国、香港などがプラスに貢献し、インドなどがマイナスに影響しました。個別銘柄では、eMemory Technology(台湾/情報技術)、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、MediaTek(台湾/情報技術)などがプラスに貢献しました。一方で、SBI Cards & Payment Services(インド/金融)Lemon Tree Hotels(インド/⼀般消費財・サービス)などがマイナスに影響しました。
中国経済の再開を受け、ようやく事業活動の正常化が近づいたという期待感が生まれ、当ファンドの組入銘柄であるNWS Holdings(香港/資本財・サービス)が好調なパフォーマンスを見せています。同社は香港の不動産開発業者New World Development(香港/不動産)の傘下のコングロマリットです。NWS Holdingsは長期にわたって安定したキャッシュフローを創出する企業群を傘下に抱えています。同社には(1)道路、(2)建設、(3)生命保険という3大部門があり、成長戦略の重点はグレーターベイエリア(大湾区)の4大都市(香港、マカオ、深圳、広州)に置かれています。これら3大部門はいずれも中国経済の再開後、著しい事業の改善が見られます。
道路部門について見ると、同社は中国本土全体で6ヵ所の戦略重点地区で16本の有料道路の一部権益を保有しています。コロナ禍による散発的なロックダウン(都市封鎖)、交通運輸部が実施した高速道路の無料開放期間やその他の規制にもかかわらず、2022年度の主要高速道路の交通量は6%の減少、収入は8%の減少にとどまっています。経済が再開したことから、物流セクターの構造的成長(商用車の高速料金は乗用車より高額)やグレーターベイエリアの相互接続性向上が下支えとなり、同部門が生み出すキャッシュフローは安定成長を続けるというのが当ファンドの見方です。
一方、同社の建設部門は香港政府のインフラ支出に対する依存度を高めています。同社の子会社であるHip-Hing社(香港)は、香港における主要元請業者の1社として、香港北部都会区プロジェクトや公団プロジェクトなど、香港で今後10年間に予想される大規模インフラプロジェクトの恩恵に受けやすい立場にあります。
生命保険は比較的最近になってから同社のポートフォリオに加わった事業で、2019年に215億香港ドルで買収したFTLife Insurance社(香港、以下「FTLife」)が母体です。FTLifeは香港市場で30年間にわたって事業を展開しており、外交員2,500名を擁し、230社の仲介業者やIFAと提携しています。FTLifeの市場シェアは2%程度と規模は大きくありませんが、コロナ禍の厳しい環境でも安定的に収益を上げ、成長を続けてきました。不動産、小売、ホスピタリティ、ヘルスケアと多岐にわたって事業を展開する親会社New World Developmentからの支援があれば、他事業とのシナジーは長期的に高まっていき、とりわけFTLifeがNew World Developmentの信用とブランド力をうまく活用できれば、その効果はますます顕著になるというのが当ファンドの見方です。
同社は3大部門以外にも幅広い企業の株式を保有して、戦略的に事業ポートフォリオを構築しています。近年は航空、汚水処理、輸送サービスといった事業を売却する一方で、物流(倉庫)、施設管理(展示場、病院など)といった事業を維持拡大することによって、ポートフォリオを最適化してきました。2022年にはオーストラリアの物流グループGoodman Group社(オーストラリア)と合弁会社を設立し、中国における物流施設事業を拡大しています。
同社の財務体質は健全で、現金残高は約135億香港ドル(約2,250億円)、負債比率は19%です。また、収益およびフリーキャッシュフローの成長に見合った形で配当を増額すると確約しています。現在の株価でみると配当利回りは8%を超えており、前述のように収益成長の可能性を鑑みると、依然として魅力的な投資先であると考えられます。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月は先月に引き続き、Saudi British Bank(サウジアラビア/金融)とFirst Abu Dhabi Bank(アラブ首長国連邦/金融)がいずれもマイナスに影響しましたが、両行は不確実なマクロ環境を乗り切り、中東経済の改善から引き続き長期的恩恵を受けるというのが当ファンドの見方です。
<通貨>
当月、アジア地域および中東地域の通貨は、対日本円でまちまちの値動きとなり、全体としては、当ファンドのリターンにマイナスに影響しました。
今後の見通し
<アジア株式>
アジア株式市場は当月、中国経済の再開が好感されたこともあり、大幅に上昇しました。中国株式市場は2022年10月に底値をつけてから大幅に上昇しており、経済再開直後の上昇局面は終わりに近づいたと当ファンドは見ています。投資家は今後、企業収益と経済が予想通りに回復するかを注視することになるでしょう。当ファンドは中国のインターネットセクターと不動産セクターに対する規制が緩和されると予想しています。景気を下支えする政策は、中国国内でサプライチェーンを構築するセクターや、再生可能エネルギー、EVなど環境への取り組みを推進するセクターにも有利に働くと考えます。
また当ファンドは、インドとインドネシアの製造業関連銘柄の動向も注意深く見守っていく方針です。これまでタイ、ベトナム、マレーシアなどの輸出品製造業が成長を遂げてきたのと同様に、インドとインドネシアには外国からの投資資金が流入し、現地に工場を設立して人件費の安さとインフラの改善という好環境を活用しようとしています。したがって両国には魅力的な長期投資の機会があると考えられます。
インフレ、ロシア軍によるウクライナ侵攻、米中関係などには引き続き注意が必要です。しかしアジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
当ファンドは、配当収入とキャピタルゲインを通じて長期的にリターンを上げることを目指しています。当ファンドのポートフォリオはバランスがとれており、短期的なマクロイベントやスタイル・ローテーションにも耐えることができると、当ファンドは考えています。当ファンドは、グロース株、バリュー株、その他の分類といった市場認識に関係なく、キャッシュフローまたは配当金を生成する能力がある企業のファンダメンタルズを重視しています。
<中東株式>
中東株式市場は引き続き原油高の恩恵を受けると考えます。各国政府の景気刺激策とコロナ禍後の経済再開によって成⻑が下⽀えされるため、この基調は継続すると考えられます。当ファンドは、⾦融セクターの保有銘柄を引き続きポジティブにみています。
<通貨>
通貨は短期的には資本フローの影響によって大きく変動すると思われますが、長期的には、アジア地域および中東地域の経済のファンダメンタルズに力強さがみられることから、両地域の通貨は対日本円で上昇すると、当ファンドは考えます。
2022年12月の運用コメント
株式市場の状況
<アジア株式>
アジア株式市場は11月には堅調なパフォーマンスを記録しましたが、当月はまちまちの値動きとなりました。香港市場などは堅調でしたが、韓国、台湾、インドなどのパフォーマンスが振るいませんでした。⽇本を除くアジア太平洋市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア太平洋(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、前月末比0.44%下落して⽉を終えました。中国のゼロコロナ政策が予想以上に早期に緩和されたことで、中国と香港の株式市場の地合いが改善しました。新型コロナウイルスの感染者数は今後数週間でいったん急増するものの、その後は中国のビジネスと経済は他国同様に正常化するというのが投資家の見方である模様で、航空、旅行、レストランをはじめとする経済再開の恩恵を受けると期待される銘柄が堅調に推移しました。また、中国政府が不動産セクターなどに対する規制を緩和したことも好材料と見なされたようです。
中国と香港以外では、FRB(⽶国連邦準備制度理事会)がさらなる利上げを行ったこと、2023年に世界経済の成長が鈍化するという懸念が広まったことなどから、投資意欲が低調気味でした。韓国と台湾は世界経済への依存度が高いことから、パフォーマンスが振るいませんでした。半導体関連銘柄は、2023年の短期需要見通しが下方修正されたため、株価が下落基調となりました。インドとインドネシアは2022年のパフォーマンスが他市場を上回ったために好材料に乏しく、投資家の関心は中国と香港株式の買い増しに向かいました。また、日銀が長期金利の誘導目標を修正したことも、円高の要因となりました。
<中東株式>
当月、中東株式市場のパフォーマンスはまちまちでした。MSCI GCC(湾岸協力理事会)諸国指数(米ドル建て)は、カタール、サウジアラビアなどのパフォーマンスが低調だったことから、前月末比4.99%下落しました。ブレント原油価格も下落し月を終えました。
<通貨>
当⽉は日本円の持ち直しが続いたため、アジア地域の通貨は概ね対⽇本円で下落しました。特にインドルピー、香港ドル、台湾ドルなどが対⽇本円で下落しました。
ファンドの運用状況
<アジア株式>
当月、当ファンドが保有する株式のリターンはマイナスとなりました。セクター別では、金融セクター、不動産セクターなどがプラスに貢献し、情報技術セクター、資本財セクターなどがマイナスに影響しました。国別では、香港、中国などがプラスに貢献し、台湾、オーストラリア、インドなどがマイナスに影響しました。個別銘柄では、Tencent Holdings(中国/コミュニケーション・サービス)、AIA Group Ltd(⾹港/⾦融)、Shenzhou International(中国/一般消費財・サービス)などがプラスに貢献しました。一方で、MediaTek(台湾/情報技術)、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、eMemory Technology(台湾/情報技術)などがマイナスに影響しました。
当ファンドのパフォーマンスは、2021年は好調でしたが、2022年はマイナスとなりました。2021年はコロナ禍後の力強い需要回復の恩恵を受け、供給不足も相まって半導体関連企業をはじめとした一部の企業が製品価格の引き上げに成功しました。加えて当時は低金利だったため、収益性とバリュエーションが上昇しました。当ファンドはTaiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、MediaTek(台湾/情報技術)、eMemory Technology(台湾/情報技術)といった銘柄を組み入れており、これらの銘柄が2021年のパフォーマンスに大きく貢献しました。しかし2022年に入ると、米国の利上げ、ロシア軍によるウクライナ侵攻、世界的なインフレの加速が市場の動向を左右するマクロ要因となり、インターネット関連や情報通信関連といった成長セクターが大打撃を被りました。消費支出、とりわけスマートフォンやパソコンなどの売れ行きが低調で、さらに物価上昇や設備投資の増加に利上げをきっかけとするバリュエーションの見直しが重なり、2022年は前述の半導体関連銘柄のパフォーマンスがマイナスとなりました。
マクロ的には厳しい環境ですが、こうした企業のファンダメンタルズと競争力は損なわれていないと当ファンドは判断しています。デジタル化やコネクティビティの長期的かつ構造的なトレンド転換は依然明確で、持続可能であると考えます。前述の企業はこうしたトレンド転換の恩恵を受ける立場にあることから、持続的成長力と収益性を確保していると考えられます。したがって、現状の株価下落を懸念材料とは考えておりません。
一方で、コロナ禍後の経済再開や利上げに関連した銘柄が2022年に良好なパフォーマンスを見せたことは好材料です。当ファンドの組入上位銘柄であるAIA Group Ltd(⾹港/⾦融)は、コロナ禍で代理人による保険販売効率が低下したため、販売が大幅に落ち込みましたが、各国の経済が再開したことで保険の販売も再び成長軌道に乗りました。加えて香港と中国でもまもなく経済が再開するという見通しを受け、同社の株価も上昇しました。同様のシナリオは中国でKFCやPizza Hutなどのフランチャイズ店を展開するYum China Holdings(中国/コミュニケーション・サービス)にも当てはまると考えます。中国で経済が再開すれば通常業務が再稼働し、拡張計画が引き続き進められることになるでしょう。経済再開で最も恩恵を受けると考えられるのは、インドでホテルを運営するLemon Tree Hotels(インド/一般消費財・サービス)です。同社の客室稼働率と平均日次客室料金はインドの経済再開を受けて急速に回復し、株価は2022年に大きく上昇しました。
当ファンドがこうした銘柄を組み入れる理由は、経済再開のテーマだけではありません。これらの銘柄はファンダメンタルズが良好で、優れた経営陣を擁し、長期的かつ持続的な成長が見込めると考えるからです。コロナ禍は成長の一時停滞要因にすぎず、財務は健全で、経営陣が優秀であることから、これらの企業は困難な時期を乗り切り、コロナ禍前よりさらに強力になっていると考えます。
加えてもう一点補足すると、かねてから述べているように、当ファンドは企業のファンダメンタルズに基づいて投資を行っています。マクロ経済は不確実性を伴うため、マクロイベントによってポートフォリオを構築することはきわめて困難であると考えます。まさにそうした理由から、当ファンドは一時的な逆風に耐え(特にアジアの新興国市場)、逆風が収まった時にさらに強くなれる優良企業の発掘に注力しています。AIA Group Ltd(⾹港/⾦融)、Yum China Holdings(中国/コミュニケーション・サービス)、Lemon Tree Hotels(インド/一般消費財・サービス)はその典型例だと考えます。また、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/情報技術)、Samsung Electronics(韓国/情報技術)、MediaTek(台湾/情報技術)、eMemory Technology(台湾/情報技術)などが過去にそうだったように、危機を乗り越えて一層強い企業となることが期待されます。
当ファンドは、引き続き既存の投資先を注視し、また今後の投資先候補の企業に関する調査も継続することで、優れたビジネスモデル、良好なバランスシート、持続的な成長の見通しを備えた「優良企業」を選別してまいります。
<中東株式>
当月は、世界市場の低迷を受け、Saudi British Bank(サウジアラビア/金融)とFirst Abu Dhabi Bank(アラブ首長国連邦/金融)がいずれもマイナスに影響しました。経営面では両行とも貸出残高が増加し、コスト効率が改善していることから、引き続き両行は中東経済の長期的成長の恩恵に浴する立場にあるというのが当ファンドの見方です。
<通貨>
当月、アジア地域および中東地域の通貨は対日本円で下落し、当ファンドのリターンにマイナスに影響しました。
今後の見通し
<アジア株式>
中国経済の再開は、2023年のアジア株式市場の注目点となるでしょう。年初は新型コロナウイルス感染者数の急増で一時的に混乱が生じ、生産や消費にマイナスに影響する可能性があります。しかし中国政府がゼロコロナ政策を撤廃し、経済を下支えしていくという方向性は明らかであると考えられ、早速不動産セクターなどの規制緩和も発表しています。バリュエーションの低さを踏まえると、消費関連、資本財、インターネットプラットフォームなどの分野には投資機会が多数存在すると当ファンドは考えています。
金利とインフレ率は2023年にピークを付ける可能性がありますが、中国における需要の急速な回復は、再び物価の押し上げ要因となる可能性があります。米中間の地政学的な問題が続いているため、脱グローバル化の流れは加速し、両国ともサプライチェーンの安全性確保と国内における代替調達先の確保に努めると考えられます。当ファンドは一部企業がこのトレンドの恩恵を受けると考えているため、引き続き状況を注視します。
当ファンドは引き続き、インド、ASEAN諸国、台湾、韓国に有望な投資機会があるとみています。アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。
当ファンドは、配当収入とキャピタルゲインを通じて長期的にリターンを上げることを目指しています。当ファンドのポートフォリオはバランスがとれており、短期的なマクロイベントやスタイル・ローテーションにも耐えることができると考えています。当ファンドは、グロース株、バリュー株、その他の分類といった市場認識に関係なく、キャッシュフローまたは配当金を生成する能力がある企業のファンダメンタルズを重視しています。
<中東株式>
2022年の中東株式市場は比較的底堅く推移しました。各国政府の景気刺激策とコロナ禍後の経済再開によって成長が下支えされるため、この基調は継続すると考えられます。当ファンドは、金融セクターの保有銘柄を引き続きポジティブにみています。
<通貨>
通貨は短期的には資本フローの影響によって大きく変動すると思われますが、長期的には、アジア地域および中東地域の経済のファンダメンタルズに力強さがみられることから、両地域の通貨は対日本円で上昇すると、当ファンドは考えます。
交付運用報告書
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交付運用報告書(第105期 2025年05月12日決算) (861.5 KB)
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交付運用報告書(第102期 2024年11月11日決算) (622.5 KB)
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交付運用報告書(第99期 2024年5月10日決算) (852.3 KB)
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交付運用報告書(第96期 2023年11月10日決算) (835.2 KB)
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交付運用報告書(第93期 2023年5月10日決算) (830.0 KB)
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交付運用報告書(第90期 2022年11月10日決算) (823.8 KB)
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交付運用報告書(第87期 2022年5月10日決算) (816.5 KB)
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交付運用報告書(第84期 2021年11月10日決算) (725.0 KB)
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交付運用報告書(第81期 2021年5月10日決算) (722.7 KB)
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交付運用報告書(第78期 2020年11月10日決算) (732.6 KB)
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交付運用報告書(第75期 2020年5月11日決算) (970.8 KB)
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交付運用報告書(第72期 2019年11月11日決算) (951.6 KB)
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交付運用報告書(第69期 2019年5月10日決算) (541.5 KB)
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交付運用報告書(第66期 2018年11月12日決算) (539.2 KB)
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交付運用報告書(第63期 2018年5月10日決算) (539.1 KB)
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交付運用報告書(第60期 2017年11月10日決算) (715.8 KB)
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交付運用報告書(第57期 2017年5月10日決算) (565.3 KB)
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交付運用報告書(第54期 2016年11月10日決算) (724.3 KB)
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交付運用報告書(第51期 2016年5月10日決算) (609.0 KB)
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交付運用報告書(第48期 2015年11月10日決算) (551.4 KB)
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交付運用報告書(第45期 2015年5月11日決算) (550.4 KB)
運用報告書(全体版)
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運用報告書(全体版)(第105期 2025年05月12日決算) (707.5 KB)
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運用報告書(全体版)(第102期 2024年11月11日決算) (698.1 KB)
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運用報告書(全体版)(第99期 2024年5月10日決算) (701.9 KB)
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運用報告書(全体版)(第96期 2023年11月10日決算) (679.0 KB)
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運用報告書(全体版)(第93期 2023年5月10日決算) (673.6 KB)
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運用報告書(全体版)(第90期 2022年11月10日決算) (677.1 KB)
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運用報告書(全体版)(第87期 2022年5月10日決算) (672.3 KB)
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運用報告書(全体版)(第84期 2021年11月10日決算) (749.5 KB)
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運用報告書(全体版)(第81期 2021年5月10日決算) (745.2 KB)
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運用報告書(全体版)(第78期 2020年11月10日決算) (758.8 KB)
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運用報告書(全体版)(第75期 2020年5月11日決算) (911.9 KB)
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運用報告書(全体版)(第72期 2019年11月11日決算) (754.8 KB)
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運用報告書(全体版)(第69期 2019年5月10日決算) (821.1 KB)
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運用報告書(全体版)(第66期 2018年11月12日決算) (824.8 KB)
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運用報告書(全体版)(第63期 2018年5月10日決算) (830.2 KB)
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運用報告書(全体版)(第60期 2017年11月10日決算) (524.4 KB)
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運用報告書(全体版)(第57期 2017年5月10日決算) (810.8 KB)
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運用報告書(全体版)(第54期 2016年11月10日決算) (498.6 KB)
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運用報告書(全体版)(第51期 2016年5月10日決算) (952.5 KB)
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運用報告書(全体版)(第48期 2015年11月10日決算) (591.7 KB)
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運用報告書(全体版)(第45期 2015年5月11日決算) (563.9 KB)
主な投資リスク、費用等
- 当ファンドの投資リスクについては、交付目論見書(投資信託説明書)記載の「投資リスク」をご覧ください。 (2.8 MB)
- 当ファンドに係る費用等については、交付目論見書(投資信託説明書)記載の「ファンドの費用、税金」をご覧ください。 (2.8 MB)
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